悪役令嬢の私は死にました

つくも茄子

文字の大きさ
29 / 85
20年後

28.公爵視点3


「国王陛下はたった一人の弟が可愛いのでしょう。公爵に現状を理解させることもなく無責任な言葉で思考を停止させてしまった。一国の為政者ではなく兄の立場を取った。知っていますか?公爵。この国はもうずいぶん前から国際的に孤立し始めていた事を」

「え?」

「その様子からして御存知なかったようですね。まぁ、無理もない。公爵は主に内政を取り仕切っていましたし、外交面は王家が主導してましたから。たかだか女一人。この国で頼る身内のいない弱い立場の女性をに仕立て上げて、愛人との暮らしを満喫していらっしゃったのですから」

「殿下、お言葉が過ぎるというもの」

「まぁ、仮面夫婦は多いです。公爵が妻をどういう扱いをしていたとしてもそれは家庭内の問題として誰も気に留めなかったでしょう。神殿に虚偽の報告をあげなければの話ですが」


 そこまで言うと踵を返して去って行く王太子の後ろを黙って見送るしかなかった。

 王太子の言った通り、現在、この国は非常に厳しい立場に置かれている。

 理由は一人の女性が原因だ。
 それが私の亡き妻。
 
 彼女が国際的に知名度がそれなりにある絵師だとは知らなかった。

 結婚してから暫くして知った。
 
 数年前に亡くなった。
 今、世間では彼女は殺されたと噂されている。
 全くの出鱈目だというのに。
 さも、王家に、私に殺されたかのように噂が流れている。
 事実無根だ。

 火葬したのがいけなかったのか?

 血を大量に吐いて亡くなったのだ。
 何かの感染症と疑っても仕方ないだろう。
 遺体をそのままにしておくことはできなかった。

 兄上と相談して「消毒」した。
 彼女が住んでいた離宮も全て焼き払った。

 まさかそれが神殿から隠蔽工作だと疑われるとは。

 それだけではない。
 ミリアリアの実家が横領していた事が発覚した。最悪な時期に最悪な展開だった。横領したのは彼女の弟だというから余計にだ。

 その他には神殿のメスが入り、色々な問題が表面化していった。


 数年後、国として成り立たなくなった我が国は、とある帝国の属国となり生き永らえることになる。



 帝国の要求の一つが私の幽閉だった。

 私一人が犠牲になるのなら喜んで幽閉されよう。
 幽閉先の離宮は何処かで見た覚えがあった。


「すまない」

「兄上、そんなことを仰らないでください」

「良かれと思ってしたことがこうも裏目にでようとは……」

「私は幸せでした。兄上の弟として生まれ、愛する女性と結ばれて息子を授かった。諦めていた全てのものを兄上が取り戻してくださった。感謝しています」

「レミーオは南に向かった。お前の近況を報告しているが、この国に戻る事はできないだろう」

「分かっています。兄上、ミリアリアは?」

「…………彼女なら大丈夫だ。侯爵家が潰れる前に他家に嫁ぐことができた」

「そうですか。よかった」

「本当に良かったのか?正式に結婚して一緒に暮らす事はできたのだぞ?」

「この離宮で生活させるのは酷です。いつ出られるか分からないというのに」

 この森のような場所にポツンと建つ館。
 最低限の使用人たち。
 訪れる者は帝国の許可がいる。

 祖国をスキャンダルに塗れさせ果ては属国に貶めた男には似合いの末路だ。

 それでも、大切な者は守れた。

 最愛の恋人、そして息子を――――

 私は満足だ。


 六年後、死ぬまで閉じ込められたままだと思った幽閉期間が終わった。長いのか短いのか判断がつかない期間だ。ただ、その年数が私と妻との結婚年数であった事に気付いたのは大分後の事だった。


 

感想 126

あなたにおすすめの小説

【完結】「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と言っていた婚約者と婚約破棄したいだけだったのに、なぜか契約聖女になってしまいました

As-me.com
恋愛
完結しました。 番外編(編集済み)と、外伝(新作)アップしました。  とある日、偶然にも婚約者が「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」とお友達に楽しそうに宣言するのを聞いてしまいました。  例え2番目でもちゃんと愛しているから結婚にはなんの問題も無いとおっしゃっていますが……そんな婚約者様がとんでもない問題児だと発覚します。  なんてことでしょう。愛も無い、信頼も無い、領地にメリットも無い。そんな無い無い尽くしの婚約者様と結婚しても幸せになれる気がしません。  ねぇ、婚約者様。私はあなたと結婚なんてしたくありませんわ。絶対婚約破棄しますから!  あなたはあなたで、1番好きな人と結婚してくださいな。 ※この作品は『「俺は2番目に好きな女と結婚するんだ」と婚約者が言っていたので、1番好きな女性と結婚させてあげることにしました。 』を書き直しています。内容はほぼ一緒ですが、細かい設定や登場人物の性格などを書き直す予定です。

踏み台(王女)にも事情はある

mios
恋愛
戒律の厳しい修道院に王女が送られた。 聖女ビアンカに魔物をけしかけた罪で投獄され、処刑を免れた結果のことだ。 王女が居なくなって平和になった筈、なのだがそれから何故か原因不明の不調が蔓延し始めて……原因究明の為、王女の元婚約者が調査に乗り出した。

聖女を追い出しても平気だと思っていた国の末路

藤原遊
ファンタジー
聖女が国を去った日、神官長は分かっていた。 この国は、彼女を軽く扱いすぎたのだと。 「聖女がいなくても平気だ」 そう言い切った王子と人々は、 彼女が“何もしていない”まま国が崩れていく現実を、 やがて思い知ることになる。 ――これは、聖女を追い出した国の末路を、 静かに見届けた者の記録。

私も処刑されたことですし、どうか皆さま地獄へ落ちてくださいね。

火野村志紀
恋愛
あなた方が訪れるその時をお待ちしております。 王宮医官長のエステルは、流行り病の特効薬を第四王子に服用させた。すると王子は高熱で苦しみ出し、エステルを含めた王宮医官たちは罪人として投獄されてしまう。 そしてエステルの婚約者であり大臣の息子のブノワは、エステルを口汚く罵り婚約破棄をすると、王女ナデージュとの婚約を果たす。ブノワにとって、優秀すぎるエステルは以前から邪魔な存在だったのだ。 エステルは貴族や平民からも悪女、魔女と罵られながら処刑された。 それがこの国の終わりの始まりだった。

【完結】お飾り妃〜寵愛は聖女様のモノ〜

恋愛
今日、私はお飾りの妃となります。 ※実際の慣習等とは異なる場合があり、あくまでこの世界観での要素もございますので御了承ください。

嘘つきと言われた聖女は自国に戻る

七辻ゆゆ
ファンタジー
必要とされなくなってしまったなら、仕方がありません。 民のために選ぶ道はもう、一つしかなかったのです。

私は善意に殺された・完結

まほりろ
恋愛
筆頭公爵家の娘である私が、母親は身分が低い王太子殿下の後ろ盾になるため、彼の婚約者になるのは自然な流れだった。 誰もが私が王太子妃になると信じて疑わなかった。 私も殿下と婚約してから一度も、彼との結婚を疑ったことはない。 だが殿下が病に倒れ、その治療のため異世界から聖女が召喚され二人が愛し合ったことで……全ての運命が狂い出す。 どなたにも悪意はなかった……私が不運な星の下に生まれた……ただそれだけ。 ※無断転載を禁止します。 ※朗読動画の無断配信も禁止します。 ※他サイトにも投稿中。 ※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。 「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」 ※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!

私と幼馴染と十年間の婚約者

川村 あかり
恋愛
公爵令嬢ロゼリアは、王子アルベルトとの婚約を結んでいるが、彼の心は無自覚に幼馴染のミナに奪われていた。ミナの魔法【魅了】が無意識に周りの男性を狂わせ、アルベルトもその例外ではない。 それぞれが生まれつき得意な魔法があり、ロゼリアは見たものや聞いたものを完璧に記録できる【記録・再生】の魔法を持ち、二人の関係に耐えきれず胃の痛みに悩む日々。そんな中、彼女の唯一の理解者の冷静沈着なキースや毒舌のマリーが心の支えとなる。 アルベルトの側近であるガストンは、魔法【増幅】で騒動を盛り上げる一方、ミナの友人リリィは【幻影】の魔法を使ってロゼリアを貶めようと画策する。 婚約者と幼馴染の行動に振り回されるロゼリア。魔法が絡んだ恋愛模様の中で、彼女は本当の愛を見つけられるのか?