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王子5

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「殿下は度々キャサリン様がアリス嬢に嫉妬していると仰せでしたが、それは有り得ません」

「……何故そう思う」

「他国からも才媛と認められ、貴族の尊敬を集める正式な婚約者なのですよ?嫁ぎ先の王家の期待を背負ったキャサリン様が、どうしての愛人如きに嫉妬する必要性があるのですか?」

「……それは僕の寵愛が受けられないと思って」

「何故、殿下の寵愛が必要になるんですか?」

「え?僕と結婚して王妃になるんだから欲しがるのは当たり前だろう?」

アレックスは一体何が言いたいんだ?
白い結婚でもいいとでも言うつもりか?
王家の世継ぎは僕一人しかいないんだ。気に入らないキャサリンとの間に子を儲けないといけないのは嫌でも解っている。キャサリンが産んだ子供など可愛がれるはずがない。きっとキャサリンのように完璧さを求めてくるに決まっている。

「誤解がないように言いますが、コムーネ王国に必要なのはグランデン帝国皇帝の血を受け継ぐ跡取りの存在キャサリンが産む子供なのです。キャサリン様の御相手が殿下でなければならない理由はありません」
 
「この僕にお飾りの夫に成れと言うのか!?幾ら忠臣と名高いベデヴィア伯爵家の嫡男とはいえ言っていい事では無い!王家の血を引いていてもキャサリンは臣下ではないか!」

「殿下こそ何を仰っているんですか?キャサリン様はコムーネ王国の公爵令嬢である前に殿で有らせられます。まさか殿下は属国の王家が宗主国の皇族よりも立場が上だとでも思っているのですか?」

「それはキャサリンの母親である前のブロワ公爵夫人の事だろう?母君が帝国皇女でもキャサリンは我が国の公爵令嬢でしかない!」

グランデン帝国の皇女殿下はキャサリンの母親であるエリーザベト様の事では無いか!
何故、エリーザベト様の娘でしかないキャサリンが「皇女殿下」になるんだ!

「……それは我が国がグランデン帝国の属国だからです。殿下が仰っているのは帝国にとって同等の立場の者が言える言葉でしかありません。我がコムーネ王国は数代前に帝国の属国に成りました。属国の中では新参者のせいか帝国をよく理解していない者もおりましょう。帝国は庇護を求めにきた国に対して余程の事情が無い帝国に不利益が及ばないかぎり受け入れる国です。属国となった国の王家に皇女を嫁がせて友好を結ぶ事でも有名です。属国に嫁ぐ皇女は『帝国皇女』の地位をそのまま属国に持ち込むことが結婚条件とされております。それは皇女がお産みになった「娘」にも自動的に『帝国皇女』と地位が受け継ぐ仕組みになっているんです。ですから、殿下よりもキャサリン様の方が立場は上なのです」

言われた言葉が脳に上手く伝わらない。
いや、違う……完全に受け入れる事を拒否しているといってもいい。
何なんだその訳の分からない輿入れ条件は?
キャサリンは何も言っていなかったぞ?  
完全に凍り付いている僕を放って、アレックスの話は直も続いた。
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