思い思われ嵌め嵌まり

凛子

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七話

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「展開が早すぎない!? どう思う?」

店に戻った景子は、広美に状況を説明した。

「良かったじゃん」

広美はこともなげに笑顔で言った。

「でも、さっき初めて話したんだよ?」

「そんなもんじゃないの? 話したのは初めてだけど、お互い前から顔は知ってるわけだし」

「まあ、そうだけど……」

手放しに喜べない自分がいた。

「何が心配? 嵌められてるんじゃないかって思ってるの? 食事に行くふりして、如何わしいところに連れて行かれたり……とか?」

「やだ! そんなことは絶対にないよ!」

「でしょ? だいたい景子だって『ダレダレ詐欺』してるじゃん!」

広美は微苦笑した。

「そうなんだけど……」

「心配だったら連絡しておいで。駆けつけてあげるから」

そう言ってから広美は接客についた。


広美は簡単にそう言ったが、受け流したわけではない。実際景子のデートに二度も駆けつけているのだ。

一度目は、友達の紹介で知り合った彼との初デート。人見知りが故に間が持たず広美に助けを求めると、広美は彼氏を連れ偶然を装って現れた。そしてダブルデートという形で、違和感なく取り持ってくれたのだ。

二度目は、ドライブデートの最中に大喧嘩してしまった時だ。頭に血が上って、咄嗟に彼の運転する車から降りて歩き出したものの、知らない土地と慣れないヒールで歩けなくなり、途方に暮れて広美に連絡した。
車を飛ばして駆けつけてくれた広美は呆れ果てていたが、その後彼の元へ送り届けてくれた。

すが君――当時の彼の名前――から電話あったよ! 渋滞中で景子を追いかけることも出来なくて、相当焦ったみたいだよ」

車内で広美から聞かされ、彼には悪いことをしたな、と反省したが、それ以上に、広美には感謝してもしきれない気持ちだった。
広美には頭が上がらない。


先に仕事を終えた景子は「行ってくるね」と広美に声を掛けた。

「心配してたわりには、さりげなく着替えてるじゃん!」

クールなパンツスタイルからワンピースに着替えた景子に、広美が突っ込む。

「だって……嬉しくて楽しみな気持ちはあるんだもん」

「じゃあ楽しんでおいで」

広美は景子に優しい眼差しを向けながら言った。

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