愛のかたち

凛子

文字の大きさ
8 / 31

8

 ある日、彩華は良からぬ場面に遭遇した。
 翔から頼まれていた取引先への手土産を買いに、デパートへ行った帰りだった。ホームで電車を待っていると、向かい側のホームのベンチに座っているカップルが目に入った。しかしよく見ると、それは翔だったのだ。隣に座る女性は彩華よりも一回り程若そうに見え、かなり派手な容姿をしていた。
 だが女性と一緒にいるだけなら、特に気にも留めなかっただろう。仕事関係で女性と会うことなどたくさんあるからだ。しかし、女性は仕事とは思えないかなりラフな格好をしていた。そして電車到着のアナウンスが流れて二人が立ち上がった瞬間、彩華は息を呑んだ。
 女性が、もう今にも産まれそうなほど、大きなお腹をしていたのだ。

 一体どういう関係なのだろう。

 彩華の胸はざわついた。
 到着した電車に乗ったようで、電車が発車するとホームに二人の姿はなかった。
 親戚にあんな女性はいなかったはずだ。たまたま知り合いにあっただけなのかもしれない。
 気にはなったが、何となく翔には聞けずにいた。

 それから数日後、朝仕事に出掛けた翔が昼前に帰宅した。
「仕事でトラブルがあって」と慌てた様子の翔は、ボストンバッグに荷物を詰めると「今から新幹線で取引先に行くことになったんだ。明日には戻れると思う」と言って家を出た。
 そんなことはよくあることなのだが、その日は何故か胸騒ぎを覚えた。

 まさか……そんなことないよね?
感想 0

あなたにおすすめの小説

君の名を

凛子
恋愛
隙間風は嵐となる予感がした――

15年目のホンネ ~今も愛していると言えますか?~

深冬 芽以
恋愛
 交際2年、結婚15年の柚葉《ゆずは》と和輝《かずき》。  2人の子供に恵まれて、どこにでもある普通の家族の普通の毎日を過ごしていた。  愚痴は言い切れないほどあるけれど、それなりに幸せ……のはずだった。 「その時計、気に入ってるのね」 「ああ、初ボーナスで買ったから思い出深くて」 『お揃いで』ね?  夫は知らない。  私が知っていることを。  結婚指輪はしないのに、その時計はつけるのね?  私の名前は呼ばないのに、あの女の名前は呼ぶのね?  今も私を好きですか?  後悔していませんか?  私は今もあなたが好きです。  だから、ずっと、後悔しているの……。  妻になり、強くなった。  母になり、逞しくなった。  だけど、傷つかないわけじゃない。

愛していると気づいたから、私はあなたを手放します

妄夢【ピッコマノベルズ連載中】
恋愛
愛しているのに、触れられない。 幼なじみの夫は、こう言った。 「もう、女性を愛することはできない」と。 それでも「君がいい」と言い続ける彼と、 子どもを望む現実の間で、私は追い詰められていく。 だから決めた。 彼のためにも、私は他の誰かを探す。 ――そう思ったのに。 なぜあなたは、そんな顔で私を追いかけてくるの? これは、間違った優しさで離れた二人が、 もう一度、互いを選び直すまでの物語。 ※表紙はAI生成イラストを使用しています。

すべてはあなたの為だった~狂愛~

矢野りと
恋愛
膨大な魔力を有する魔術師アレクサンダーは政略結婚で娶った妻をいつしか愛するようになっていた。だが三年経っても子に恵まれない夫妻に周りは離縁するようにと圧力を掛けてくる。 愛しているのは君だけ…。 大切なのも君だけ…。 『何があってもどんなことをしても君だけは離さない』 ※設定はゆるいです。 ※お話が合わないときは、そっと閉じてくださいませ。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

嘘をつく唇に優しいキスを

松本ユミ
恋愛
いつだって私は本音を隠して嘘をつくーーー。 桜井麻里奈は優しい同期の新庄湊に恋をした。 だけど、湊には学生時代から付き合っている彼女がいることを知りショックを受ける。 麻里奈はこの恋心が叶わないなら自分の気持ちに嘘をつくからせめて同期として隣で笑い合うことだけは許してほしいと密かに思っていた。 そんなある日、湊が『結婚する』という話を聞いてしまい……。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

秘められた薫り

La Mistral
恋愛
エブリスタにて、トレンド#恋愛で最高位 55位を獲得した作品です。 「愛しているよ」という夫の言葉が、今の美咲には虚しい空気にしか聞こえない。 欠けていたのは、理性を焼き尽くすような衝動。 ​クライアントの慎吾と交わす視線。ビジネスという仮面の下で共有される、剥き出しの欲望。 指先が触れる。名前を呼ばれる。ただそれだけで、美咲の積み上げてきた「良き妻」としての世界は音を立てて崩れ去る。 ​完璧なアリバイ、塗り固めた嘘。 夫の隣で微笑みながら、心は別の男の指先を求めている。 一度知ってしまった濃厚な「薫り」は、もう彼女を元の場所へは戻してくれない。 ​守るべき家庭と、抗えない本能。 二つの世界の境界線で、美咲が選ぶ「最後の一線」とは――。 欲望の熱に浮かされた女の、美しくも残酷な堕落の記録。