愛のかたち

凛子

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「彩ちゃん、晩飯まだだろ?」

 健太に聞かれて頷くと、「何か作るね」といつもの笑顔を見せた。

「白藤さんは仕事?」

 野上が尋ねる。

「はい。今日は出張です」
「へえ、忙しいんだね。白藤さんは何の仕事してるんだっけ?」
「ネット通販の……小さい会社ですけど数人の社員抱えてやってます。アウトドア用品を取り扱ってるんですけど、私インドア派なので……妻なのにあまりよく知らなくて。こんなんだから翔ちゃんに『何にも出来ない』なんて言われるんですよ」

 彩華は苦笑いで返した。

「ここ数年、キャンプとかアウトドアブームだよね。奥さんなんて案外そんなものじゃないかな。白藤さんは特に、奥さんに頼るってタイプじゃなさそうだし、仕事とプライベートは分けたい派なんじゃないかな」

 野上は洞察力に長けている。翔は正にそのタイプだった。仕事は家庭に持ち込まないし、頼ってくることもない。それが彩華からすれば少し寂しくもあったが、自分にどうにか出来るとも思えなかった。

「そうですかねえ……。野上さんはどんなお仕事されてるんですか?」

 低姿勢で人当たりが良く、落ち着いた雰囲気を纏う野上は、人を引き寄せる魅力がある、と彩華は思う。

「ああ、うちも小さい会社だけど、インテリア雑貨とか家具の卸販売してるんだ」
「へえー。何かイメージ通りっていうか、野上さんにピッタリのお仕事ですね。野上さんのお宅もきっと素敵なんでしょうね」
「いやいや。飾り気のない部屋だよ。男の独り暮らしだからね」
「え? 野上さん独身なんですか?」

 思わず前のめりになった。

「今は、ね。……二年前に離婚したんだ」
「そうなんですか……。でも野上さんみたいに素敵な人が独身なんて、きっと女性社員がみんな狙ってますよ」

 彩華は冗談めかして笑いながら、数日前に野上が言った同じような冗談を思い出していた。翔との騒動があった時のことだ。
 野上が独身ならば、女性を口説いたって何も問題はない。勿論、既婚者に手を出せば問題となるが……。

 カンカンと金属ヘラが鉄板を打つ音と、ソースの芳ばしい香りが漂ってきた。
 美咲が運んできたのは、『いとう家』人気メニューのミックス焼きそばだった。
「とりあえず食べて」と健太に促され、彩華は「いただきます」と顔の前で手を合わせてから箸をつけた。

「彩華ちゃん、美味しそうに食べるね」

 野上が覗き込むように目を向ける。
 いつもは隣に座っている翔がおらず、野上との距離が近い。そして、「奥さん」ではなく「彩華ちゃん」と呼んだ野上を意識してしまい、頬が熱くなった。
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