愛のかたち

凛子

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 次の日、出勤した彩華が冷蔵庫の中を確認すると、昨日取り分けて残しておいたものが、全てなくなっていた。外から戻った社員が食べて帰ったのだろう。
 しばらくすると一人の男性社員がキッチンにやってきた。

「おはようございます。昨日会社に戻ったの遅くて、冷蔵庫に残してくれてたハンバーグ、持って帰って晩御飯にいただきました。すげー旨かったです」

 男性社員は、キラキラした笑顔で保存容器を彩華に差し出した。

「あ、そうなんですね。食べてもらえて良かったです」

 彩華は受け取り、笑顔を返した。
 綺麗に洗われた容器を見て、嬉しさが込み上げてきた。自分の作った料理をわざわざ持ち帰ってまで食べてくれたというのだから……。今までは自分と翔の為に料理をすることが殆どだったが、たくさんの人に食べてもらって、美味しいと言ってもらえる喜びを知った彩華は、実家の両親が毎日頑張れる理由がわかったような気がした。

 今日も買い物からスタートする。昨日予定していた中華にするつもりだった。昨日の様子から、必要な米の量やスープの量はわかったが、メインのおかずの量が足りていたのかどうかが分からない。全員残さず食べてくれたが、基準は、自分と翔なのだ。こういうことは、飲食店をしている実家の両親に聞けば一番手っ取り早いのだが、最近電話したのは、一ヶ月前の翔との離婚報告が最後だった。何となく連絡するのは気が引ける。一度社員にアンケートをするのがいいだろうかと考えた。
 
 買い物から戻ると野上がキッチンにやってきて、コーヒーを淹れながら今日の献立を尋ねた。

「今日は、エビチリと春巻き、具だくさんの春雨スープの予定です」
「うーわ、旨そう。じゃあ今日も出来たら教えてね。……本当は、個人的に俺だけの為に作ってくれたら嬉しいんだけどね」

 冗談とも本気ともとれそうなことをさらっと言ってから、野上はふわりと笑った。
 野上のような外見も中身も非の打ち所がない男性からそんなことを言われて、ドキドキしない女性はいないだろう。
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