愛のかたち

凛子

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 その日は米も購入し、かなりの大荷物になった。

「彩華ちゃん」

 エレベーターを降りたところで、野上に声を掛けられた。

「はい」

 買い物袋を両腕にぶら下げ、更に十キロの米袋を抱きかかえた格好で、頭を傾け返事をした。
 足元が見えていなかった彩華が、段差に躓いてバランスを崩した瞬間――米袋ごと野上に抱えられていた。

「おいおい! 彩華ちゃん、それでスーパーから帰ってきたの?」
「はい」
「はい、じゃないよ。危ないだろ!」

 米袋を抱えた野上の表情は、明らか怒気を帯びていた。

「すみません……」

 彩華が表情を強張らせると、野上は慌てた様子を見せた。

「あ、ごめん。違うんだ。怒ってるんじゃなくて、怪我されたら困るから言ってるんだよ」

 当然のことだ。勤務時間中に社員に怪我をされては、会社としては色々困ることがあるだろう。

「すみません」

 彩華はもう一度謝った。

「荷物が多い時は声掛けてくれれば車も出すし、俺も運ぶの手伝うから。次から絶対に無理はしないで」
「わかりました」

 初めて向けられた野上の険しい表情と強い口調に気圧され、彩華は俯いた。

「彩華ちゃんに怪我されると、俺が困るんだ」

 彩華が顔を上げると、野上はいつもの優しい表情を向け、頭をポンポンと撫でた。


 昼食が完成すると、いつも通り野上に声を掛けた。

「今日も旨そうだな。俺、天丼すげー好きなんだ」

 いつもの笑顔を見せてから、野上は箸をつけた。

「彩華さん、今日何か元気ない?」

 いつも元気な末っ子社員が声を掛けてきた。視界の隅に野上の視線を感じていた。

「そんなことないですよー。週末で疲れが溜まってきたのかなぁ?」

 彩華は笑顔を取り繕ったが、実は朝の野上との出来事をまだ引きずっていた。野上は怒っていないとは言っていたが……。それに、最後に頭を撫でられたことも気になっていた。

「怒ってないから気にするなよ」という軽いノリだったのだろうか。


 片付けを終えて帰り支度をしていると、野上がキッチンにやってきた。
 
「彩華ちゃん、今朝はごめんね」
「え? いえ、そんな……」

 野上も気にしていたのだろうか。

「来週から、また元気に来てね」

 そう言われ、何故か胸がキュンと鳴いた。
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