月明かり

凛子

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 仕事が忙しいと言っていたが、デートの時間は作ってくれた。エリートと付き合うにあたって気掛かりだったのは育った環境の違いだったが、時生とは価値観が合い、美和子は胸を撫で下ろした。
 けれど、隠していることがひとつあった。

 育ってきた環境イコール我が家だ。

 時生は、心配だからとデートの帰りは必ず家まで送ってくれた。

 いつものようにマンションの前で手を振り、時生が角を曲がるのを確認すると、美和子はその前を通りすぎて隣のアパートの階段を上る。
 六畳一間のアパートは単身者の入居が殆どで、いつも静かだった。
 壁が薄い木造のボロアパートの部屋から漏れ聞こえる笑い声は、紛れもなく弟のものだ。

「おかえり!」

「ただいま」を言うより先に耳に飛び込む「おかえり」に思わず苦笑する。中からも外からも筒抜けということだ。

 美和子が何度か引っ越しを提案してみるも、家族が首を縦に振らないのだった。今の暮らしに不満はないという。貧乏性が染み付いてしまっているのだろうか。

 引っ越すのが先か、時生にバレるのが先か……

 美和子はひやひやしながら過ごしていた。
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