New World・New Life・New Battle

山神悠

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第六章『夜の町』

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   お店の掃除を終えて、外に出ると、日はすっかり暮れていた。街には、温かみのあるオレンジの火が灯った街灯が店の前の通りを照らしている。夜になったら人々は町にはあまりいないのかと思ったら、昼間の市場は、夜市になっていて、家族で市場の屋台で外食する人々で賑わっていた。
「あの…家に帰るっておっしゃったばかりで申し訳無いのですが、何処でご飯食べても良いですか?実は、俺達朝から何も食べていなくて…」
大聖が申し訳なさそうに頭を掻きながらクリストファーさんに言った。
よくよく考えると、俺が起きたのは昼過ぎだし、この世界に来て何か食べたのは果物屋のおじさんがくれたモモだけだ。ちゃんとした食事なんかは、向こうの世界で食べた朝食が最後かも知れない。向こうの世界では頭が痛くて、昼ご飯を食べずに寝て、その後にこの世界に来たから、だいぶ長いこと何も食べていない。
「家で食べようかと思ったけど、せっかくだから、家に帰る前にこの町の食べ物をどこかで食べるか!」
 クリストファーさんが大聖の肩を叩いて、夜市の方へ歩いていく。
「ここら辺の人って、家で料理したりしないんですか?」
 クリストファーさんに肩を叩かれてからずっと肩を組まれた大聖がクリストファーさんに聞く。
「この町の人はあまり料理はしないねー。朝も昼も夜も市に行って食べる人が多いし。まぁ、わしらはこの町の少し外れのところに
住んでるから料理は普通にするがね。今日は君達にわしの行きつけのお店に連れて行くよ。」
 そう言いながら、クリストファーさんはお目当てのお店に向かって歩いていく。俺や楓生、ライ、太陽は前を歩く二人に付いていく。町は日本では体験できないような独特な雰囲気を感じる。
昼とは違った夜の町の雰囲気に目を奪われながら歩いていると、
「さぁ、ここだよ!」
 クリストファーさんが俺達を店に入るように促す。
 てっきり、夜市の屋台とかで夜ご飯を食べると思っていので、オシャレなレストランで驚いた。

 クリストファーさんが店の扉を開けると、ドアの上の方に付いていたベルのチリンチリンという音が店の中に響く。
 その音がしてからすぐに店に
「いらっしゃいませ!」
 という男性の店員と女性の店員の声が店に響く。
 店の中に入って店内を見渡すと、この世界の植物がセンスよく店内に配置されていている。
 クリストファーさんの行きつけのお店にいる客はクリストファーさん以外が若者だった。
 俺は、クリストファーさんの行きつけだから、クリストファーさんくらいの人々が集まるのかと思っていたが、意外にも二十歳くらいの人達が多かった。
 ベルの音に気づいた若い女性のウエイトレスが俺達のところへ来て、一番近くにいたクリストファーさんと話始めた。
「いらっしゃいませ!クリストファーさん、本日は連れの方々がいますが、何名様ですか?」
 その質問にクリストファーさんがすかさず答えた。
「今日は六名です。」
「六名様ですか。後ろの方々はライちゃんのお友達ですか?」
「いえいえ、今日出会った旅の方達ですよ!せっかくなので、私のオススメのお店の食べ物を食べてもらおうと思ってね。」
「今日って、クリストファーさんは本当に人が良すぎるんですか。」
 クリストファーさんは笑顔でウエイトレスの話を聞いている。
 そのウエイトレスは、他のウエイトレスに聞こえるように大きな声で
「六名様ご案内しまーす!」
 と言うと、俺達は店の一番の窓際の席に案内された。
 俺と大聖と楓生はクリストファーさんとライと向かい合うように座ったが目を太陽だけは、窓際のライの隣に座った。
「では、ご注文が決まりましたらお呼び下さい。」
 そう言うと、彼女は軽く頭を下げ、客の帰った斜め前のテーブルの片付けをしに行った。
「よし!じゃあ早速決めるか!食べたいものを頼みなさい。」
 クリストファーさんはテーブルにメニューを開き、俺達やライに食べたいものを食べるように言った。
 しかし、開いたメニューの字を俺達四人は読むことができなかった。
 すると、楓生が、
「クリストファーさん、申し訳無いのですが、実は僕達は、字を読むことができないんです。申し訳ないんですが、メニュー名を代わりに読んで貰っても良いですか?できればどんな料理かも…」
「良いですよ。ただ、メニューが多すぎるので、私のオススメの料理五品から選ぶので良いですか?」
「すみません!お願いします!」
 そして、クリストファーさんはオススメの五品のメニュー名とどんな料理か丁寧に教えてくれた。大体はどんな料理かは分かったが、それでも、初めてこっちの世界で料理をするので、クリストファーさんとライが頼むものと同じにすることにした。
「よし!みんな決まったかなぁ?」
「はい、決まりました」
 太陽のこの声に俺や大聖、楓生、ライがうなずく。
「すみませんー!」
 俺達の反応を見たクリストファーさんがウエイトレスを呼んだ。
「ご注文はお決まりですか?」
さっきとは別の男性のウエイトレスが来た。
「あれ!クリストファーさんじゃないですか!今日はライちゃん以外にも連れて来たんですね。」
「ああ、これから少しの間この子達と暮らすことになったので、この店の料理を食べてほしいと思ってね。」
「じゃあライちゃんの友達ですか?」
「いやいや、彼らは、今日知り合ってね…」
「今日ですか!いやークリストファーさんの心の広さにはビックリですよ!」
このウエイトレスもさっきのウエイトレスと同じような反応をしていた。
「では、ご注文をお伺いしまします。」
「えーと、ディナーセットを五人分で。」
クリストファーさんが、メニューを開きながら注文する。
「ご注文は以上ですか?」
これに対して、俺達はうなずいて返事した。
「では、お待ちください。」
そう言うと、彼もさっきの女性のウエイトレスのように、軽く頭を下げると、厨房の方へ行った。
俺は、窓から見える外の光景や行き交う人々を見ていた。
すると、さっきの注文を取りに来たウエイトレスが、六人分の水を運んできた。
「遅くなって申し訳ございませんでした。」
彼がそう謝ると、クリストファーさんが、
「大丈夫ですよ。」
と微笑みながら言うと、そのウエイトレスはさっきより深めに頭を下げて、再び厨房の方へ行った。
ライは下を向き、クリストファーさんは何やらノートのようなものに書いて、楓生は外を見ていて、大聖は店内を見渡している。太陽に関してはさっきまでのテンションがどこに行ったのやら、ただ、ぼーっと天井を見ている。
そんな、誰も話さない、気まずい時間が少しの間続いた。
俺は思い切って口を開いた。
「この国に国王はいるんですか?」
するとライが顔を上げて、
「うん、いるよ。海帝っていう国王が。でも、国王は最近、この世界を統一しようとして、周囲の国と揉めてるんだよね…」
「そうなんだ…」
「君たち無知過ぎ!本当にド田舎から来たのね!自分の国の国王の名前も分からず、しかも、今どき時字も読めない、属性も分からない人がいる村がまだあるなんて…」
「これから、勉強します…」
俺は、他に返す言葉が見つからなかった。
「そう言えば、ライたちの家ってここからどれ位で着くの?」
さっきまで、店内を見渡していた大聖がいきなり喋り始めた。
「まぁ、馬車で三十分くらいかなー。」
「結構かかるね。それで、どんな感じの家なの?」
「まぁ、庭はそれなりに広いけど、家自体は平屋のログハウスだから、そこまで大きくないと思うよ。」
「ログハウスなんだー。俺ログハウスに止まるの初めてかも!」
「へーそうなんだ。田舎なのにログハウスじゃないって珍しいね。この国の田舎の家って結構ログハウスが多いけど、この町みたいにある程度大きい町はレンガ造りが多いね。」
ライは俺らの質問にはなんだかんだちゃんと答えてくれる。
「君達はどうして、フォリスト村に行きたいのかね?」
今まで、ノートに何かを書いていたクリストファーが俺達に水の入ったグラスを左手に持ち上げながら尋ねた。
「俺達、その村にいる男性に会いに行こうとしていたんです。そこで、この町に立ち寄ったのですが、ここからどうやって行くかも分からず、旅資金も底をついてしまって…」
そんなときにおじいちゃんに本屋であって、「私の店を紹介されたってことね。」
ライは全てを理解したかのようにそう言った。
しかし、今更だが、どうして、ベットで寝た俺は靴を履いた状態でこの世界に来たのだろ。普通なら、靴は履いていないはずなのに…。その事についてもあのフォリスト村の男の人は知っているんだろうか…
「君たちは明日から、私のお店のために死ぬ気で働いてもらうからね!」
ライは満面の笑みで俺達に向かって話す。
「ご注文のディナーセットです。」
最初にこの席に案内したウエイトレスがディナーセットを六人分運んで来た。
「ご注文の品は揃いましたでしょか?」
「はい。」
クリストファーさんは優しい声でウエイトレスに返答した。
「では、ごゆっくりどうぞ。」
ウエイトレスはさっきと同じように軽くお辞儀をして、厨房へ行った。
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