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第二章―魔法国家フォルトゥナ 『魔導師に潜む闇』
70-4.撤退作戦
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一方で二人の離脱を確認してから転移大結晶へ向かって走り出すリオ。遅れて体勢を立て直したベルフェゴールがそれを追いかける。
そこへ彼女の足を遅らせるべくクリスティーナとノアは魔法を連発した。
水柱を出鱈目にいくつも放っては相手の選択する道筋を狭めて地面を濡らし尽くすノアと、的確にベルフェゴールへ向けて氷を降らすクリスティーナ。
それは全て避けられてしまうが、足を遅らせるという意味に於いてその手段は十分に有効であった。
「――アクア・スフィア」
更に短い詠唱がされると同時に、三十程の水の球体がベルフェゴールの周囲を囲んだ。
そしてそれは瞬く間に破裂し、水飛沫を辺りに散らす。
その様を視界に捉えクリスティーナもまた、彼の魔法に続いて詠唱する。
「アイス・フリーズ」
彼女が唱えたのは中級魔法。一定範囲を凍結させる魔法。
しかし魔法の威力とは元より本人の魔力と周囲の環境によって左右される。用意された条件が術者にとって都合の良いものであればある程その威力は増す。時として行使した魔法よりも上の等級の魔法と同等の効果を齎す程に。
クリスティーナの人並外れた魔力量、そして戦闘を担いながらも密かに仕組まれていた『下準備』。
それは彼女の魔法をより強力なものへと変化させた。
「俺の魔法はさぞ避けやすかったことだろう、ベルフェゴール」
クリスティーナを中心に突如下がる気温。そして凍り付く地面。
凍結はクリスティーナからベルフェゴールの元へと凄まじい速度で広がっていく。
その光景を視界に留め、ノアは不敵に笑う。
「闇雲に撃ち続ける、数だけの魔法。脅威には至らないものだと。そう思っていたんだろう?」
***
「俺の強みはね、相手の油断を誘いやすいことだ」
迷宮『エシェル』の最奥を目指し突き進む一行。
その道中でノアが口を開いた。
「要は、実力者だと自負している奴ほど無意識に俺を舐めてる場合が多いってこと……って、そんな顔しないでくれよ」
相変わらず自身を卑下するようなノアの発言に呆れ混じりの視線が四つ、彼へと集まる。
誤解だと言いながら自分の信用のなさに困り果てる彼は、弁明の為に補足を入れた。
「俺だってめちゃくちゃ不本意さ。けど、それが強みにもなり得るってのも事実。戦場で役立つこともあるんだ」
例えば、と彼は人差し指を立てる。
「天才のミスはその意外性から注目を浴びるが、実力が伴わない者のミスは仕方のないもの、些細なものだと流されやすいだろう? それと同じことが俺にも言える」
「実力不足に見立てて相手を騙す戦法が取れるという事ね」
「そういうこと。ただしこの戦法を取ろうにも俺一人では実現できない」
藍色の瞳がクリスティーナへ向けられる。
彼の眼差しには期待と信頼が含まれていた。
「だから……もし彼女との戦闘が免れない時は君の力を借りることになるだろう、クリス」
そこへ彼女の足を遅らせるべくクリスティーナとノアは魔法を連発した。
水柱を出鱈目にいくつも放っては相手の選択する道筋を狭めて地面を濡らし尽くすノアと、的確にベルフェゴールへ向けて氷を降らすクリスティーナ。
それは全て避けられてしまうが、足を遅らせるという意味に於いてその手段は十分に有効であった。
「――アクア・スフィア」
更に短い詠唱がされると同時に、三十程の水の球体がベルフェゴールの周囲を囲んだ。
そしてそれは瞬く間に破裂し、水飛沫を辺りに散らす。
その様を視界に捉えクリスティーナもまた、彼の魔法に続いて詠唱する。
「アイス・フリーズ」
彼女が唱えたのは中級魔法。一定範囲を凍結させる魔法。
しかし魔法の威力とは元より本人の魔力と周囲の環境によって左右される。用意された条件が術者にとって都合の良いものであればある程その威力は増す。時として行使した魔法よりも上の等級の魔法と同等の効果を齎す程に。
クリスティーナの人並外れた魔力量、そして戦闘を担いながらも密かに仕組まれていた『下準備』。
それは彼女の魔法をより強力なものへと変化させた。
「俺の魔法はさぞ避けやすかったことだろう、ベルフェゴール」
クリスティーナを中心に突如下がる気温。そして凍り付く地面。
凍結はクリスティーナからベルフェゴールの元へと凄まじい速度で広がっていく。
その光景を視界に留め、ノアは不敵に笑う。
「闇雲に撃ち続ける、数だけの魔法。脅威には至らないものだと。そう思っていたんだろう?」
***
「俺の強みはね、相手の油断を誘いやすいことだ」
迷宮『エシェル』の最奥を目指し突き進む一行。
その道中でノアが口を開いた。
「要は、実力者だと自負している奴ほど無意識に俺を舐めてる場合が多いってこと……って、そんな顔しないでくれよ」
相変わらず自身を卑下するようなノアの発言に呆れ混じりの視線が四つ、彼へと集まる。
誤解だと言いながら自分の信用のなさに困り果てる彼は、弁明の為に補足を入れた。
「俺だってめちゃくちゃ不本意さ。けど、それが強みにもなり得るってのも事実。戦場で役立つこともあるんだ」
例えば、と彼は人差し指を立てる。
「天才のミスはその意外性から注目を浴びるが、実力が伴わない者のミスは仕方のないもの、些細なものだと流されやすいだろう? それと同じことが俺にも言える」
「実力不足に見立てて相手を騙す戦法が取れるという事ね」
「そういうこと。ただしこの戦法を取ろうにも俺一人では実現できない」
藍色の瞳がクリスティーナへ向けられる。
彼の眼差しには期待と信頼が含まれていた。
「だから……もし彼女との戦闘が免れない時は君の力を借りることになるだろう、クリス」
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