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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
168-2.致命的な癖
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「そう言えば、ジルベール様は珍しい武器をお使いになるのですね」
「ああ……。お察しの通り、魔導具の一種ですね。従者が武器を晒して歩くわけにもいきませんから、こちらの方が都合が良いのです」
先の戦闘を思い出してかふと呟かれた声にジルベールは瞬きをしてから、自身の懐を探る。
そしてクリスティーナやリオに見える様に剣の柄を取り出した。
「従者は武力を求められる職ではありません。しかし同じ量を熟すことの出来る従者候補が二人いるならば万一の際に主人をお守りできる者であった方が安心できる。その様な理由からシャルロット様の従者に選ばれたものですから、特別にこれを持ち歩く事が許されているのです」
「持ち運びが楽で隠し持てる上に、折れても修復する武器ですか。便利ですね」
「ええ。……しかし、問題点はあります」
「問題点ですか」
ジルベールは剣柄を懐へしまいながら苦笑する。
「まず、刃を生む為の魔力の消耗が激しいことです。そして魔力で生み出される刃は実際に職人によって作られた武器よりも酷く脆い」
「なるほど。となると扱える剣士も限られてきますね……。剣術を極める方には魔力量に恵まれず魔導師を志すことが出来なかった方も多いと聞きますから」
クリスティーナは何度も折れては彼方へと弾かれた細剣の刃を思い出す。壊れやすく、修復には大きなエネルギーを必要とする代物。強敵と相対した時、修復する為に必要な魔力が枯渇した状態で刃を失ってしまえば剣士になす術はないだろう。
「はい。故に実戦で使う者は殆ど居らず、普及もしていないのです」
「という事は裏を返せばジルベール様の魔力量は相当なものであるという事ですね」
「人並み以上ではあります。ただ、私は剣の名家の出ですし……争いを嫌っていましたから。家から魔法を学ぶ機会が与えられることもなければ、戦の腕を磨く為に自ら魔法の知識を学ぼうとすることもありませんでした。魔導の腕は素人同然と言えるでしょう」
クリスティーナはジルベールの話に耳を傾けながらも周辺に異質な気配がないことを確認する。だが周囲に『闇』は見えず、嫌悪感等を感じる事もない。
何か怪しい箇所はあるかと問う様に向けられたジルベールには首を横に振った。
それに彼は頷きを返すと再び進路へと視線を向ける。
「私が細剣を好むのは、魔力の消費量を削減するという目的の為でもありますが……ちょっとした反抗でもあるのです」
「反抗?」
「はい」
聞き返すクリスティーナの言葉にジルベールは頷く。
「何かを傷つける為の意図で生まれる武器……特に近接武器は鋭さと相応の重量を兼ね備えているものが多い。銀色に鋭く輝く刃も、受けた血による鈍い輝きも……私はそのどちらも好きではありません。できれば見たくはないのです」
鋭く尖っているという共通点こそあれど、細剣は他の刃物に比べれば刃の面積が狭いと言える。更に刃が細いからこそ、獲物を求める獣の如く反射する銀色が他に比べて目立つことはない。
「何かを傷付ける為の武力だけが全てではないのだ、という……家や、戦う力を評価するこの世の中に対する対抗心、の様な物です。……武器を手にしている時点で結局は同じ穴の狢なのですが」
ジルベールは顔だけをクリスティーナ達へ向けると、困った様に眉を下げて自嘲する。
その語りを静かに聞いていたリオは、意外そうに瞬きをした。
「ああ……。お察しの通り、魔導具の一種ですね。従者が武器を晒して歩くわけにもいきませんから、こちらの方が都合が良いのです」
先の戦闘を思い出してかふと呟かれた声にジルベールは瞬きをしてから、自身の懐を探る。
そしてクリスティーナやリオに見える様に剣の柄を取り出した。
「従者は武力を求められる職ではありません。しかし同じ量を熟すことの出来る従者候補が二人いるならば万一の際に主人をお守りできる者であった方が安心できる。その様な理由からシャルロット様の従者に選ばれたものですから、特別にこれを持ち歩く事が許されているのです」
「持ち運びが楽で隠し持てる上に、折れても修復する武器ですか。便利ですね」
「ええ。……しかし、問題点はあります」
「問題点ですか」
ジルベールは剣柄を懐へしまいながら苦笑する。
「まず、刃を生む為の魔力の消耗が激しいことです。そして魔力で生み出される刃は実際に職人によって作られた武器よりも酷く脆い」
「なるほど。となると扱える剣士も限られてきますね……。剣術を極める方には魔力量に恵まれず魔導師を志すことが出来なかった方も多いと聞きますから」
クリスティーナは何度も折れては彼方へと弾かれた細剣の刃を思い出す。壊れやすく、修復には大きなエネルギーを必要とする代物。強敵と相対した時、修復する為に必要な魔力が枯渇した状態で刃を失ってしまえば剣士になす術はないだろう。
「はい。故に実戦で使う者は殆ど居らず、普及もしていないのです」
「という事は裏を返せばジルベール様の魔力量は相当なものであるという事ですね」
「人並み以上ではあります。ただ、私は剣の名家の出ですし……争いを嫌っていましたから。家から魔法を学ぶ機会が与えられることもなければ、戦の腕を磨く為に自ら魔法の知識を学ぼうとすることもありませんでした。魔導の腕は素人同然と言えるでしょう」
クリスティーナはジルベールの話に耳を傾けながらも周辺に異質な気配がないことを確認する。だが周囲に『闇』は見えず、嫌悪感等を感じる事もない。
何か怪しい箇所はあるかと問う様に向けられたジルベールには首を横に振った。
それに彼は頷きを返すと再び進路へと視線を向ける。
「私が細剣を好むのは、魔力の消費量を削減するという目的の為でもありますが……ちょっとした反抗でもあるのです」
「反抗?」
「はい」
聞き返すクリスティーナの言葉にジルベールは頷く。
「何かを傷つける為の意図で生まれる武器……特に近接武器は鋭さと相応の重量を兼ね備えているものが多い。銀色に鋭く輝く刃も、受けた血による鈍い輝きも……私はそのどちらも好きではありません。できれば見たくはないのです」
鋭く尖っているという共通点こそあれど、細剣は他の刃物に比べれば刃の面積が狭いと言える。更に刃が細いからこそ、獲物を求める獣の如く反射する銀色が他に比べて目立つことはない。
「何かを傷付ける為の武力だけが全てではないのだ、という……家や、戦う力を評価するこの世の中に対する対抗心、の様な物です。……武器を手にしている時点で結局は同じ穴の狢なのですが」
ジルベールは顔だけをクリスティーナ達へ向けると、困った様に眉を下げて自嘲する。
その語りを静かに聞いていたリオは、意外そうに瞬きをした。
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