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第三章―魔法国家フォルトゥナ 『遊翼の怪盗』
178-2.一時の別れ
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困った様に浮かべられた笑みこそが答えと言ってもいいだろう。クリスティーナはその表情で全てを悟ってしまう。
他の三人も遅れて何かを悟った様に押し黙る中、ディオンだけが静かに話を続けた。
「簡単な話だ。人の傷付け方を一番理解しているのは人だろ? 人を傷付ける為の兵器を作る。その兵器に頭脳を組み込みたい。そう思うならば真っ先に浮かぶ一番都合の良い方法は――」
「――人間。そういう事なのね……」
眩暈がした。
他国同士の衝突などは耳にすれど、昔の言い伝えに比べれば随分平穏な世の中。その更に治世の安定した大国で生きて来たクリスティーナには到底考えられない様な非人道的行為だ。
「ま、開発者が人なのか魔王軍なのかは定かではないが、今回の魔導具は対人用兵器って事だ。宝石の姿をしてたって事だが、人を植物化する魔法があったくらいだ。人間の体や脳を別の物へ変換する方法位いくらでも……っと、すまねぇな。大丈夫かい」
「ええ……」
衝撃的な現実を突きつけられ、顔を青くするクリスティーナに気付いたのだろう。彼女を気遣う声が掛けられる。
それに何とか頷きながらも、それ以上何かを話すことが出来ずにいると、ディオンがバツの悪そうな顔になる。
「とにかく、もう明け方も良いとこだ。お前さん達も戻って休むと良い」
宥めるような声に促される様にして、クリスティーナ達は解散を促される。
それに素直に従い、ディオンの見送りを受けながら一行は拠点を後にすることとなった。
***
心身共に募る疲労。今日一日だけであまりにも多くの事を見聞きしたクリスティーナの足取りは重かった。
宿が目前となるまで一行は言葉を交える事無く歩いていたが、やがて建物が近づくとジルベールが足を止める。
「今日もありがとうございました。……皆様は明日の調査にご同行されるのですよね」
「……ええ」
彼は頭を下げて礼を述べた後、心配する様に三人を見やる。
拠点を立ち去る際、クリスティーナ達は見送りのディオンと今後について話し合っていた。
ディオンとしては十分に貢献してくれた事、元から臨時の人手として依頼していた事などから情報を秘匿してくれるのであればオリオール邸の古代魔導具関連についてこれ以上の介入はしなくても構わないとの事だった。
それに加え、古代魔導具の処理へ本格的に乗り出そうとしている今、首を突っ込めば今日以上の危険が訪れる可能性も告げられたのだが、結局クリスティーナ達は協力関係の継続を申し出たのだった。
他の三人も遅れて何かを悟った様に押し黙る中、ディオンだけが静かに話を続けた。
「簡単な話だ。人の傷付け方を一番理解しているのは人だろ? 人を傷付ける為の兵器を作る。その兵器に頭脳を組み込みたい。そう思うならば真っ先に浮かぶ一番都合の良い方法は――」
「――人間。そういう事なのね……」
眩暈がした。
他国同士の衝突などは耳にすれど、昔の言い伝えに比べれば随分平穏な世の中。その更に治世の安定した大国で生きて来たクリスティーナには到底考えられない様な非人道的行為だ。
「ま、開発者が人なのか魔王軍なのかは定かではないが、今回の魔導具は対人用兵器って事だ。宝石の姿をしてたって事だが、人を植物化する魔法があったくらいだ。人間の体や脳を別の物へ変換する方法位いくらでも……っと、すまねぇな。大丈夫かい」
「ええ……」
衝撃的な現実を突きつけられ、顔を青くするクリスティーナに気付いたのだろう。彼女を気遣う声が掛けられる。
それに何とか頷きながらも、それ以上何かを話すことが出来ずにいると、ディオンがバツの悪そうな顔になる。
「とにかく、もう明け方も良いとこだ。お前さん達も戻って休むと良い」
宥めるような声に促される様にして、クリスティーナ達は解散を促される。
それに素直に従い、ディオンの見送りを受けながら一行は拠点を後にすることとなった。
***
心身共に募る疲労。今日一日だけであまりにも多くの事を見聞きしたクリスティーナの足取りは重かった。
宿が目前となるまで一行は言葉を交える事無く歩いていたが、やがて建物が近づくとジルベールが足を止める。
「今日もありがとうございました。……皆様は明日の調査にご同行されるのですよね」
「……ええ」
彼は頭を下げて礼を述べた後、心配する様に三人を見やる。
拠点を立ち去る際、クリスティーナ達は見送りのディオンと今後について話し合っていた。
ディオンとしては十分に貢献してくれた事、元から臨時の人手として依頼していた事などから情報を秘匿してくれるのであればオリオール邸の古代魔導具関連についてこれ以上の介入はしなくても構わないとの事だった。
それに加え、古代魔導具の処理へ本格的に乗り出そうとしている今、首を突っ込めば今日以上の危険が訪れる可能性も告げられたのだが、結局クリスティーナ達は協力関係の継続を申し出たのだった。
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