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微かな。
しおりを挟む「驚いた。」
「済みません、帰りまで送っていただくことになるなんて。」
誠一が荷物を全部代わりにもって二人ゆっくりと歩く。
小雪は松葉杖をつきながら嬉しそうにする。
「いや、確かに疑われるような言い方をした僕がいけない。」
「それで・・・お仕事なんですが、どういう・・・」
「いや、僕も思いついたばかりでね。それについてはじっくり案を練ってから君に伝えたいと思っているんだ。」
「あの・・よく・・・」
「解れないよね?説明する。僕は君のコンサートで、君の歌声を聞いて、いける!って、思ったんだ。それで、君の現状を知りたい。」
「はい!何でも聞いてくださいっ!!」
シャキンとする小雪。
誠一が笑う。
「君は今はどの事務所に所属しているんだ?良ければ君を売り出したい。協力する。」
「本当・・ですか!?あの、今はジュエルという所で歌わせてもらっているのですが・・・」
「信じてもらえるか解らないけど、僕の父は祥院賢一、政治家なんだ。君が嫌でなければ、自由真論党のイメージモデル、やってみないか?」
「祥院賢一さんって・・・確か、総理大臣さんですよね?」
「ああ。無理にとは言わない。でも・・」
「いえ、うれしいですが、話が大きすぎて・・・」
一生懸命松葉杖をつきながら少し混乱する小雪。
「いきなりだからな、無理はない。タクシー拾わないか?」
「いえ、済みません、お金が・・・そのう・・」
「いいよ。今日は。君の力になりたいんだ。」
手で合図をし、タクシーを捕まえる誠一。
「お客さん、どちらまでだね?」
運転手が気さくに話しかけてくる。
「あの、困ります、そこまで親切に・・・」
荷物を入れ、お姫様抱っこで車の中に入れる誠一。
「彼女の言う行き先に。僕はこれで・・。」
お金を運転手に渡すと、誠一は小雪に笑顔を自然にふりまいた。
小雪が何か言おうとしたが、ドアは閉まり、小雪は頭をぺこりと下げ、段々見えなくなっていった。
誠一はそれをずっと見送る。
かすかに、誠一はかすかな香りに包まれていることに気づいた。
シャンプーのにおいだろうか。
誠一はその場でしばらくその香りに包まれ、癒され続けたいと、願った。
そして自分の沸きあがる、甘く切ない、それでいて暖かな感情を、不思議と受け入れていたー。
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