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一周目
偽りのはじまり ☆
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「殿下……」
暗闇を淡く照らす金色の髪を頼りに両手を伸ばして、ジェラルドを探す。
初めて触れた髪は、思いのほか細く柔らかい。髪に指を埋めるように撫でると、切ない愛おしさが胸を満たした。
「ジェラルド、と。これからはそう呼んで欲しい」
「ジェラルド、様」
懇願するような声色が望むまま、心の中で何度呼びかけたか分からない名前を口にする。
エリアーヌの声はかすかに震えていた。
変装を解いてエリアーヌ自身を曝している不安と、これから一つに重なり合う歓喜と、愛され求められているイザベルへの醜い嫉妬が華奢な身体の中で混じり、どうしたらいいのか分からなくなる。
ジェラルドの首に両手を回し、縋りつく。
身代わりであることなんて、最初から分かっていたではないか。
両親も、ジェラルドも、エリアーヌのことなんて少しも見てはいない。それを分かっているうえで、身代わりとなる要求を突き放しきれなかったのはエリアーヌだ。
涙が滲む目尻にひんやりとした薄い何かが優しく触れる。
ジェラルドの吐息が近い。目尻に口づけられたことを知ると、もっと欲しくなって抱え込んでいた様々な思いが消えて行った。
「ぁ……」
慰めにも思える口づけは鼻先に落ち、エリアーヌの浅ましい欲情を煽る。慈しむような口づけだけじゃ物足りなくて、自分に向けられたものではないのにそれ以上の想いを求めた。
頬が熱い。
ずっと頬を包み込んだままのジェラルドにも、感情の昂ぶりが伝わっているはずだ。
焦れったくて唇が薄く開く。
指先が熱い。
(この熱は……私だけの熱……?)
そう思った瞬間、吐息が重なる。エリアーヌの唇を啄みながら何度も角度を変え、物欲しげに開かれたままの唇を熱い舌先が割った。
「んぅ……っ」
エリアーヌはこらえきれずに声をあげた。
無意識に媚びるような色が混じっていることを恥ずかしいとは思わなかった。
次はないかもしれない。
後悔だけはしたくない。
ジェラルドの舌に、ぎこちなく自らのそれを絡める。音のない寝室にかすかに響く水音はひどく淫らで、口づけで得られた高揚感を抑え込んだ吐息を荒く乱すには十分だった。
「……っ!」
エリアーヌの身体がひくんと跳ねた。
頬を包んでいたジェラルドの指が首筋から鎖骨を辿り、エリアーヌの胸元を行き来する。レースの薄い布地越しに感じるジェラルドの指の動きは、さらなる官能を呼び起こした。激しく刻まれる鼓動はきっとジェラルドにも伝わっている。
どうやらネグリジェのボタンを探していたらしい。ジェラルドの指が、ボタンの上で一旦止まった。一つ、また一つと外され、開かれた隙間から指が忍んだ。
重ねられた唇が離れて行く。
首に回した手に力をくわえて追い縋ろうとするよりも先に、ジェラルドの右手がエリアーヌのふくらみを包み込んだ。素肌に触れられ、甘い刺激に身体が震える。柔らかく弾むそれに指を沈み込ませるように揉みしだかれると、小さな先端に熱が集中して硬くしこりだしているのが自分にも分かった。
「っふ……。ん……」
「ここには僕と君の二人しかいない。大丈夫だから君の声を聞かせて」
控え目な声をあげれば、もっと、と促すようにジェラルドがふくらみを揺らす。
白い肌と、薄っすらと桃色に色づく部分の境目を指先でなぞられてかぶりを振った。誰にも触れられたことなんてないのに、先端が甘く疼いている。そこを弄られればどうなるのか、エリアーヌは本能で知っていた。
「ゃ……。ジェラルド、様……」
もどかしさで一人でに腰が浮いてしまう。けれど言葉にしてねだることはできず、ただ口を開いては閉じて呼吸を繰り返した。
「あ、ん……っ」
ふいにジェラルドの指が、触れるか触れないかの絶妙さで乳首を掠める。
「ぁ――っ!」
わずかな刺激にもたまらずに身体が大きく反応した。背中をのけぞらせた拍子に乳首が軽く弾かれると一気に快楽が全身に広がり、羞恥と恐怖でかぶりを振った。
「君はすごく敏感みたいだね」
「ごめ……なさ……」
「いや、僕の伝え方が悪かったかな。たくさん感じてくれて、可愛いと思うよ」
もう焦らされることなく乳首をつままれ、捏ねられる。切なさを孕んで熟れ切った小さな果実に与えられる刺激は、予想以上の強さでエリアーヌを翻弄した。
欲しいとねだっていたはずなのに手に負えない。エリアーヌは初めての快楽を受け止めるのに必死だった。
ネグリジェの合わせ目が左右に開かれ、ふくらみが曝け出される。
ジェラルドが身を屈める気配がした。さらりと流れ落ちる髪が、しっとりと汗ばむ肌をくすぐる。
真っ暗で何も見えないことが良くも悪くも作用していた。制止した方が良いのに、何を制止したら良いのか分からない。今のエリアーヌにできることは、なす術もなく身を任せることだけだ。
片方の乳首を指で弄られたまま、もう片方の乳首は熱い何かに迎え入れられた。
「っ、ぁ……!」
それがジェラルドの咥内だと気がついて目を見開く。
熱く濡れた肉厚な舌に転がされて身を捩った。
「僕の花嫁は本当に可愛いな」
乳首を甘噛みされたかと思えば舐られ、吸い上げられる。その度にエリアーヌが切ない啼き声をあげると、ジェラルドは可愛いと褒めてくれた。
快楽を与えられているのは間違いなくエリアーヌの身体で、可愛いと褒められているのもエリアーヌの反応だ。
それはエリアーヌの心を、とても軽くしてくれた。
暗闇を淡く照らす金色の髪を頼りに両手を伸ばして、ジェラルドを探す。
初めて触れた髪は、思いのほか細く柔らかい。髪に指を埋めるように撫でると、切ない愛おしさが胸を満たした。
「ジェラルド、と。これからはそう呼んで欲しい」
「ジェラルド、様」
懇願するような声色が望むまま、心の中で何度呼びかけたか分からない名前を口にする。
エリアーヌの声はかすかに震えていた。
変装を解いてエリアーヌ自身を曝している不安と、これから一つに重なり合う歓喜と、愛され求められているイザベルへの醜い嫉妬が華奢な身体の中で混じり、どうしたらいいのか分からなくなる。
ジェラルドの首に両手を回し、縋りつく。
身代わりであることなんて、最初から分かっていたではないか。
両親も、ジェラルドも、エリアーヌのことなんて少しも見てはいない。それを分かっているうえで、身代わりとなる要求を突き放しきれなかったのはエリアーヌだ。
涙が滲む目尻にひんやりとした薄い何かが優しく触れる。
ジェラルドの吐息が近い。目尻に口づけられたことを知ると、もっと欲しくなって抱え込んでいた様々な思いが消えて行った。
「ぁ……」
慰めにも思える口づけは鼻先に落ち、エリアーヌの浅ましい欲情を煽る。慈しむような口づけだけじゃ物足りなくて、自分に向けられたものではないのにそれ以上の想いを求めた。
頬が熱い。
ずっと頬を包み込んだままのジェラルドにも、感情の昂ぶりが伝わっているはずだ。
焦れったくて唇が薄く開く。
指先が熱い。
(この熱は……私だけの熱……?)
そう思った瞬間、吐息が重なる。エリアーヌの唇を啄みながら何度も角度を変え、物欲しげに開かれたままの唇を熱い舌先が割った。
「んぅ……っ」
エリアーヌはこらえきれずに声をあげた。
無意識に媚びるような色が混じっていることを恥ずかしいとは思わなかった。
次はないかもしれない。
後悔だけはしたくない。
ジェラルドの舌に、ぎこちなく自らのそれを絡める。音のない寝室にかすかに響く水音はひどく淫らで、口づけで得られた高揚感を抑え込んだ吐息を荒く乱すには十分だった。
「……っ!」
エリアーヌの身体がひくんと跳ねた。
頬を包んでいたジェラルドの指が首筋から鎖骨を辿り、エリアーヌの胸元を行き来する。レースの薄い布地越しに感じるジェラルドの指の動きは、さらなる官能を呼び起こした。激しく刻まれる鼓動はきっとジェラルドにも伝わっている。
どうやらネグリジェのボタンを探していたらしい。ジェラルドの指が、ボタンの上で一旦止まった。一つ、また一つと外され、開かれた隙間から指が忍んだ。
重ねられた唇が離れて行く。
首に回した手に力をくわえて追い縋ろうとするよりも先に、ジェラルドの右手がエリアーヌのふくらみを包み込んだ。素肌に触れられ、甘い刺激に身体が震える。柔らかく弾むそれに指を沈み込ませるように揉みしだかれると、小さな先端に熱が集中して硬くしこりだしているのが自分にも分かった。
「っふ……。ん……」
「ここには僕と君の二人しかいない。大丈夫だから君の声を聞かせて」
控え目な声をあげれば、もっと、と促すようにジェラルドがふくらみを揺らす。
白い肌と、薄っすらと桃色に色づく部分の境目を指先でなぞられてかぶりを振った。誰にも触れられたことなんてないのに、先端が甘く疼いている。そこを弄られればどうなるのか、エリアーヌは本能で知っていた。
「ゃ……。ジェラルド、様……」
もどかしさで一人でに腰が浮いてしまう。けれど言葉にしてねだることはできず、ただ口を開いては閉じて呼吸を繰り返した。
「あ、ん……っ」
ふいにジェラルドの指が、触れるか触れないかの絶妙さで乳首を掠める。
「ぁ――っ!」
わずかな刺激にもたまらずに身体が大きく反応した。背中をのけぞらせた拍子に乳首が軽く弾かれると一気に快楽が全身に広がり、羞恥と恐怖でかぶりを振った。
「君はすごく敏感みたいだね」
「ごめ……なさ……」
「いや、僕の伝え方が悪かったかな。たくさん感じてくれて、可愛いと思うよ」
もう焦らされることなく乳首をつままれ、捏ねられる。切なさを孕んで熟れ切った小さな果実に与えられる刺激は、予想以上の強さでエリアーヌを翻弄した。
欲しいとねだっていたはずなのに手に負えない。エリアーヌは初めての快楽を受け止めるのに必死だった。
ネグリジェの合わせ目が左右に開かれ、ふくらみが曝け出される。
ジェラルドが身を屈める気配がした。さらりと流れ落ちる髪が、しっとりと汗ばむ肌をくすぐる。
真っ暗で何も見えないことが良くも悪くも作用していた。制止した方が良いのに、何を制止したら良いのか分からない。今のエリアーヌにできることは、なす術もなく身を任せることだけだ。
片方の乳首を指で弄られたまま、もう片方の乳首は熱い何かに迎え入れられた。
「っ、ぁ……!」
それがジェラルドの咥内だと気がついて目を見開く。
熱く濡れた肉厚な舌に転がされて身を捩った。
「僕の花嫁は本当に可愛いな」
乳首を甘噛みされたかと思えば舐られ、吸い上げられる。その度にエリアーヌが切ない啼き声をあげると、ジェラルドは可愛いと褒めてくれた。
快楽を与えられているのは間違いなくエリアーヌの身体で、可愛いと褒められているのもエリアーヌの反応だ。
それはエリアーヌの心を、とても軽くしてくれた。
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