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To Be Me -after THE day-
第3話
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新宿駅から電車に揺られること一時間弱。窓の外の景色が、都会のビル群の灰色から長閑な田舎町の土色、野山の緑と徐々に色を変え、開閉する扉から流れ込む空気の温度が一駅ごとに下がり、涼しいと言うには些か冷た過ぎる風が吹き込んだその駅が、今日の目的地だった。
「……思ったより涼しいですね」
高尾山口ー、高尾山口ーと繰り返す車内アナウンスに背中を押されてホームに降り立った瞬間、ぶるりと身震わせた大園を視界の隅に捉えて呟くと、彼は同意を示して頷いた。寒いというほどではないが、野山の木々を赤に黄色に染める秋風は、暑さに慣れて緩んだ体には堪える冷たさで、国峰は羽織っていた薄手の防水パーカーのジッパーを首元まで上げた。都会の日差しは未だ夏の名残を残しているが、ここはもうすっかり秋だ。上着はリュックの中だという大園は、よしと呟いて気合を入れたようで、上着は出さずにとんと足を踏み鳴らし、国峰を数歩置き去りにした直後、首を回してこちらを振り向いた。
「……とりあえず、とろろそば?」
最初こそ硬さのあった大園の態度は、車窓から外を眺めるうちに軟化してゆき、緑が視界を埋める頃にはいつもの調子を取り戻していた。そうして、昼着なら登る前にとろろそば食べようと車内で言い出したのは大園で、蕎麦屋の行列を大園は嫌うだろうかという国峰の心配は杞憂に終わり、うどんより蕎麦派という大園の言葉に俺もと応じながら、また一つ大園を知った喜びに、心がふわりと浮き立った。
「とりあえず、とろろそば、ですね」
応じると、うんと頷いた大園はそのまま軽やかに歩み出し、子供のような陽気に国峰は笑い、待ってと呼びかけてすぐに後を追った。
ホーム階から階段を降りるとすぐに改札があり、改札脇には、みやげ屋兼コンビニといった品揃えの小さな店があった。入山すると飲み物が買いにくいという話を聞いて、そこでそれぞれに飲み物を購入する。大学の頃、初めてここに来た時に昼食を買った弁当屋はその隣で、助六寿司やおにぎりといった外でも食べやすい弁当が数種並んだワゴンがあり、観光地の賑々しさにつられて二人で覗き込んだ後で、その隣にだんご屋を見つけて、国峰は思わず旨そうと呟き、その呟きを聞いた大園が楽しげに笑った。
「食べる?」
「……いや……これ上でも売ってるみたいなので、登った後のご褒美にします」
問われて、答える。だんご屋の前には写真付きの看板が置いてあり、登山道の端でも売られていると書かれていた。白くてやや平べったいつるんとした大きめの団子が3個、串に刺さって炭火でこんがりと焼かれている様はものすごく魅力的だったのだけれど。まずはそば、と大園を向くと、国峰くんよく食べるから、我慢しなくたっていくらでも入るだろうと大園はいつもよりも心持ち高いトーンで言い、緑と人に囲まれた開放感は国峰にも伝播し、ふうわりと香る甘い団子の香りの中で二人、声を上げて笑った。
駅前から入山口まで続く道は、やや細い裏通りのような通りで、駅付近の数店舗以外の店はどれも、開いているのかいないのかといった風情だったが、古めかしい外観の建物や、時折ひらりと舞う布製の看板は、ただそこにあるだけで非現実の魅力を放ち、旅気分を盛り上げていた。ぐるりと周囲を見回すと、海外のガイドブックにも紹介されているというだけあって外国人観光客も多く、飛び交う言葉も様々だが、皆一様に浮き足立って、デジタルカメラの電子的なシャッター音、よく響く若者の笑い声、子供たちが走り回る足音など、日々の生活では聞き流してしまう雑多な音が音楽のように踊るのを聴き、そうしてまた、周囲の雑多を音楽のように聴く自分自身も確かに浮き足立っているのだと、ちらりと考えた。
「……意外と急」
「そうですか?」
山登りなんてこんなもんじゃないですかね?と国峰はからりと応じ、鬱蒼と茂る森の中を軽やかに進む。別に、登れないほどではない。ないのだけれど。東京の山なんてと舐めてかかっていたせいで、思ったよりもずっと山らしいその雰囲気に面食らった。江ノ島に毛が生えた程度なんて、そんな風にはとても言えない。
駅から続く小道を抜けてすぐ、大きく開けた視界の向こうに、ニュースでよく見る『高尾山』と書かれたゲートが現れ、大園は思わずおおと声を上げた。一度来たことがあるという国峰は、あのゲートはリフト券売り場だと説明し、地面剥き出しコースの入り口がゲート脇、舗装されたコースはこっち、とそれぞれ指し示しながら続けた。ゲートの向こうの高尾山は、びっしりと茂った深緑の木々に覆われたどっしりとした霊山で、その壮麗さに大園は思わず見入った。観光地の賑わいの中にあって尚清廉なその立ち姿からは、確かなエネルギーが溢れ出ており、日々人工物の中で過ごす内に失われた一生物としての本能がじくじくと刺激され、大園は、立ちのぼる土の香りを胸一杯に吸い込んだ。それから、とりあえず蕎麦の言葉通り、30分ほど列に並んで啜った蕎麦は、冷たいつゆに蕎麦、とろろ、トッピングはネギと海苔、真ん中にうずらの生卵がちょこんと乗ったシンプルな冷やしとろろで、しっかりとした歯応えのある麺がとろろと絡んで絶品だった。本当は、蕎麦がきつまみに日本酒も付けたいところではあったのだが、この後山を登るのにそれもどうかと断念し、名残惜しくメニューから顔を上げたところで、同じく酒のページを眺めていた国峰を見つけ、大園はちょっと愉快な気分になり、夏場は山の中でビアガーデンもやってるってと、ここ数日で仕入れた知識を披露し、くっと勢いよく顔を上げた国峰が、じゃあ次は夏ですねと間髪入れずに答えたのが面白くて、思わず笑った。酒なしの昼食はあっという間に済み、山を登り始めたのは13時過ぎだった。
舗装された登山道は、入口こそアスファルトという感じだったが、所々にはやや足場の悪い箇所もあり、終始傾斜は思いの外急で、木々はびっしりと空を覆い、まさに森の中を進んでいると言った感覚だった。開けていたのは、夏にはビアガーデンの会場になるというリフトの終点の広場くらいで、国峰御所望の団子もそこで販売していたが、歩くのが楽しくなってきたらしい国峰は帰りでいいとそこを素通りした。平たく開けたその場所を過ぎると、その先はずっと斜面が続いており、息が上がるほどでもないが徐々に足が重くなるような道を黙々と歩く間、時折、隣を歩くもう一人の存在が意識の外へ飛んでゆき、何を考えるでもない静かで穏やかな孤独に満たされる瞬間があり、その時、大園は確かに、この自然の一部だった。ざっ、ざっ、と規則的に続く自身の足音を聞きながら、馬鹿馬鹿しくなるなと、そう思う。こういう場所にいると、馬鹿馬鹿しくなる。表とか裏とか、普通とか、普通じゃないとか。そんなことに囚われている自分が馬鹿みたいだ。青く澄んだ冷たい空気が、鼻腔から気道を通って肺に落ちる。肺の中に、外の世界が侵入する。吐き出す吐息は空気に混じり、再び世界の一部になる。内も外もない。最後には、全て混じり合う。
「……休憩します?」
不意に声をかけられて顔を上げると、無言の大園をどう思ったのか、立ち止まって振り返った国峰が斜面の上からこちらを見下ろしていた。その背後には、枝先の葉がぼんやりと赤く染まり始めた一振りの大枝があり、滑らかな肌の白と思たげな赤、育ちきった幹の無骨とそれらのコントラストの中に、弾けるような自然の、生きたエネルギーを見つけた気がして、大園はぴたりと足を止めた。木々のさざめき。人々の声。この場所では全てが一つだと、不意に思う。人も木も、国峰も、知らない誰かも、ここに在るという、その一点において確かに一つだった。区別なく、一つだった。
「……大園さん?」
黙ったままで世界を見続けると、怪訝そうに眉をしかめた国峰がそう呼び、かくんと首をかしげた。その瞬間、国峰の頭で遮られていた秋空の木漏れ日がきらりと顔を覗かせ、大園の目を射った。光の刺激は鋭く直線的で、外から身を破り中に侵入し、大園を内から灼いた。外が、侵入する。恐怖はない。ただ、満ちる。内が満ちていく。空虚が埋まる。そんな感覚。
「……あと、ちょっとだろ」
登っちゃおうと口にして、大園は足を進めた。目に見えるもの全てが、突然、きらきらと輝き出す。アスファルトの斜面、人々の姿、覆い被さる木々の緑、その隙間から覗く空の抜けるような青。それから。
「……なんだ。大園さん、元気ですね」
目の前で笑む男の姿。楽しげに弾む声、地面を踏みしめる足、前に立って進む背中、それら全てが、きらきらと目映い。その全身から、細かな輝きがぽろぽろと零れ、砂金のような小さな塊が地面に落ちて、黄金の道を作る。その道を踏みしめて進む。区別はない。世界の中にある存在には多分、明瞭な区別など存在しない。森も人も、異性愛者も同性愛者も、あなたも私も、遠い高みから見下ろせばきっと、みんな同じだ。知らない誰かが消えてしまおうと、知らない誰かが異質であろうと、遠くの誰かは何も気がつかない。ひとつの細胞が、人体に特段の影響を及ぼさないのと同じように、世界という枠の中では、一人の存在は酷くちっぽけで、心許ない。だからこそ、きっと。この感情は自分だけのものだ。大園にとって、国峰だけが特別なのだ。他の誰でもない、この男を、自分は選んだのだ。国峰は心臓だと、そう思う。空虚を埋めるポンプ。熱を生む、エネルギーの源。黄金を踏みしめる靴底から染み入る煌めきが、皮膚を抜けて内を照らす。
「……大園さん」
内から溢れる煌めきに視界を奪われていた大園は、国峰の声に引かれて顔を上げた。
「着いた」
光源が笑う。その笑顔を追いかけて踏み出した次の一歩が踏みしめたのは平たい大地で、笑顔の国峰の背景から、覆い被さる緑が消え、視界が、ぱっと開けた。
空が広いと、そう思った。今、大園の前には、無限に広がる青空が、遠く果てしなく続いていた。長い緑の洞窟を抜けた登山者を迎える切り開かれた大地は、数多の人々に踏みしめられて硬く、風に晒されて乾いていた。さらりと吹く風が、足元の砂を巻き上げて吹き過ぎる。
「……大園さん!こっち、展望デッキありますよ」
離れた場所から声がかかる。見える世界の変化に見入り、思わず足を止める大園とは対照的に、国峰は頓着せずに前に進む。斜面を登ってきたのと同じ歩幅で、同じペースでとんとんと進んでいくその背中は、すぐに大園を置き去りにする。置き去りに、するのだけれど。
こっちと振り返る国峰は、足を止めて待ってくれるのだ。テンポが違う。一歩の、歩幅が違う。それでも、先を行く国峰は折々に振り返り、自分を待つ。待っていてくれる。だから、一人きりになることはない。まるっきり同じように進むわけではないけれど、ちゃんと立ち止まって、隣に並ぶまでの時間をくれる。こくりと頷いて、止まっていた足を国峰に向けて進める。その一歩を踏み出す一瞬、ちらりと俯いて、緩む口許を隠す。なんだかくすぐったい。
「……面白い景色ですよね」
大園を伴って展望デッキに到達した国峰は、落下防止の柵を掴んで周囲を見回しそう呟いた。面白い。隣で、国峰に倣って柵に手をかける。
「あぁ……なんか不思議」
車で登るような山と比べたら、高尾山の標高はそれほど高くはない。近景は緑が覆う斜面で、山の麓は以外と近い。ただ、遠景に都心がはっきりと見えるのだ。新宿、東京。点在する高層ビルの島、赤い三角の東京タワー、遠目にはコミカルな形をしたスカイツリー。ここ数日晴れが続いたせいもあり、遠景は靄の彼方でくっきりとは捉えられないが、自然物にはない造形が、深い自然の中に混じり込むこの光景は、確かにちょっと珍しかった。
「……なんか、おもちゃみたい」
「確かに。つまめそうですよね。あの辺のビルとか」
言いながら、国峰は遠くの建物に向けて手を伸ばし、親指と人差し指でつまむような動きをした後で、面白い写真撮れそうですねと無邪気に笑った。
「撮る?」
「いや、いいです」
「いいの?……なんだっけ?えーっと……映え?」
国峰を振り返り、テレビで聞き知った若者言葉を疑問符付きで告げると、目が合った瞬間に笑われた。
「大園さん、そういうとこ疎そうですよね。若者文化と縁なさそう」
「は?若い子とだって話せるよ」
「話せないなんて思ってないですよ。会社の人たちとも仲良さそうでしたもんね……俺とも、最初の時から色々、話、してくれたし」
大園さんは話しやすい人ですよ、と国峰は言い、だからこっちの問題なんですけどと視線を再度彼方に投げた。
「……なんか大園さんって、大人、って感じするんですよね。一本筋が通ってる感じ。それで怖じ気づいちゃうというか。子供っぽいところ見られたくないなって思っちゃうんです。多分」
さらさらと吹く風に、国峰の髪が煽られて揺れる。明るい日差しに目を眇める横顔が、白く、眩しい。
知っていることがあると、そう思う。国峰について、知っていることがある。何事もそつのない彼が、意外と臆病なこととか。あんなに無邪気に笑うくせに、自分が嫌いで卑屈なこととか。冷たく見える三白眼が、本当はどんなに優しいかとか。外見と中身がちぐはぐで。ちぐはぐ、なのだけれど。自分は、そんな国峰に惹かれている。ばらばらでちぐはぐな、国峰の全部を、好きだと思う。
「……別に、大人じゃないよ」
小さく、呟く。怖かっただけだと、そう思う。自分をさらけ出すのが、怖かっただけ。ばらばらもちぐはぐも許さない、歪みのない表向きの仮面が、板についてしまっただけ。物わかりの良い大人として振る舞うのが一番楽だった。ただ、それだけ。本当の自分は、もっとずっと子供で、わがままだ。見映えばかり完璧に仕立てた一張羅を身に纏った子供と同じ。立派な服に着られてしまい、落ち着かなくてもじもじする。みんなはそれを誉めてくれるのだけれど、本当は、その堅苦しい衣装を脱ぎ捨てたくてたまらない。そのくせ誉められたくて仕方がないから、にこにこにこにこ笑って見せる。
理想があって、妥協も知って、一本筋が通ることが“大人になる”ということならば。俺は全然、大人じゃない。
誰かに聞かせる意図のない言葉は、柔く吹きすぎる風が立てる葉擦れよりも、更に小さく密やかで、大園自信の耳にすら、届く前に揺らいで消えた。きっと、誰にも届かない。最初から、そういうつもりで口にした。……それなのに。
見つめる横顔がふわりと笑み、視線がついとこちらに向いた。
「……知ってます」
その目の優しさに、どきりとする。目尻がはんなりと優しく落ちて、美しい彼が蕩け出す。その表情に見入っていると、不意に指先に熱を感じた。ふわりとした心地に囚われたまま、ほとんど無意識に熱源を探して視線を落とし、他の誰からも見えない身体の陰で、柵をつかんだ大園の小指に、隣接した国峰の小指が控えめに絡み付いたのを見つけて、瞬間、びくりと肩を揺らす。国峰がふっと笑うのが、気配で分かった。
「……大園さんは、可愛いですよね」
すごく、と告げる声が近い。近すぎて、顔を上げられない。といって、この手を振り払いたいとも思わないのだ。小指ひとつの熱が、こんなに嬉しい。本当はもっと、くっついていたい。でも、これ以上くっついたら、自分が自分でなくなりそうで、それはそれで、少し怖い。
「……可愛くは、ない」
うつむいたまま口にした小さな抵抗は、語尾が揺らいで、甘えただだっ子のようだった。重なった指が痺れるようで、柵を握り込む手が、知らず強まる。白っぽく色を変えた指の上を、国峰のそれが宥めるようにゆるりと滑る。じわりと、首筋に熱が昇る。笑みを含んだ国峰の声が、可愛いですよと、密やかな囁きを落とす。
「……格好良くて、可愛いです」
こくりと、喉が鳴る。声が、出ない。心臓が喉元までせり上がり、声が出せない。触れ合った指先に、意識の全てが集中する。その声に、聴覚を全て持っていかれる。二人を包む空間だけが、世界から切り取られてしまったかのようだった。静寂の中に、二人きり。冷静な自分も、いないわけではない。こんな場所でと、思う気持ちがないでもない。ただ、好かれている実感と喜びが、それを凌駕する勢いで溢れ出して、止まらない。逃げ出したいほど恥ずかしいのに、この喜びを手放したくない。前にも後ろにも行けなくなって、ここから一歩も動けない。ゆるりゆるりと隠微に動く指先を見つめながら、お前の方こそ、と大園は思う。格好良くて可愛いのは、お前の方だ。思えば最初から、国峰は可愛かった。真っ直ぐで素直で、嬉しいとか悲しいとか、感情表現豊かなくせに、相手へのペーシングが上手いから、振り回される感じは全くない。朗らかで、周りを明るくする人柄は、みんなに好かれる人たらしだ。それでその上。こんなに格好よくなられたら、たまったもんじゃない。国峰は、ほしい言葉をくれる。寂しくなりかけるその瞬間に。“一人ではない”と熱をくれる。“分かっている”と笑顔をくれる。身に纏った一張羅ごと、大きな胸に抱き留めて、それを脱いでも素敵だよと、そんな風に誉めてくれる。
時間にしたら多分、ほんの一瞬の出来事だった。
「……さて、と」
大園の視線の先で、国峰の手がぱっと開く。絡んだ指がするりと離れ、声の調子を戻した国峰が爽やかに言った。
「一休みしたら下んなきゃですよ」
全てを拐う熱波が遠退き、現実が戻る。切り取られた世界が、融合する。唐突に、静寂でなどあり得ない真昼の行楽地のざわめきを認識し、大園ははっとして顔を上げた。喉元の心臓。熱い指先。余韻でぼうっとした視界は少し霞んでいて、ベンチ探しましょうとすぐに背中を向けた国峰の表情は、良く分からなかった。
「……思ったより涼しいですね」
高尾山口ー、高尾山口ーと繰り返す車内アナウンスに背中を押されてホームに降り立った瞬間、ぶるりと身震わせた大園を視界の隅に捉えて呟くと、彼は同意を示して頷いた。寒いというほどではないが、野山の木々を赤に黄色に染める秋風は、暑さに慣れて緩んだ体には堪える冷たさで、国峰は羽織っていた薄手の防水パーカーのジッパーを首元まで上げた。都会の日差しは未だ夏の名残を残しているが、ここはもうすっかり秋だ。上着はリュックの中だという大園は、よしと呟いて気合を入れたようで、上着は出さずにとんと足を踏み鳴らし、国峰を数歩置き去りにした直後、首を回してこちらを振り向いた。
「……とりあえず、とろろそば?」
最初こそ硬さのあった大園の態度は、車窓から外を眺めるうちに軟化してゆき、緑が視界を埋める頃にはいつもの調子を取り戻していた。そうして、昼着なら登る前にとろろそば食べようと車内で言い出したのは大園で、蕎麦屋の行列を大園は嫌うだろうかという国峰の心配は杞憂に終わり、うどんより蕎麦派という大園の言葉に俺もと応じながら、また一つ大園を知った喜びに、心がふわりと浮き立った。
「とりあえず、とろろそば、ですね」
応じると、うんと頷いた大園はそのまま軽やかに歩み出し、子供のような陽気に国峰は笑い、待ってと呼びかけてすぐに後を追った。
ホーム階から階段を降りるとすぐに改札があり、改札脇には、みやげ屋兼コンビニといった品揃えの小さな店があった。入山すると飲み物が買いにくいという話を聞いて、そこでそれぞれに飲み物を購入する。大学の頃、初めてここに来た時に昼食を買った弁当屋はその隣で、助六寿司やおにぎりといった外でも食べやすい弁当が数種並んだワゴンがあり、観光地の賑々しさにつられて二人で覗き込んだ後で、その隣にだんご屋を見つけて、国峰は思わず旨そうと呟き、その呟きを聞いた大園が楽しげに笑った。
「食べる?」
「……いや……これ上でも売ってるみたいなので、登った後のご褒美にします」
問われて、答える。だんご屋の前には写真付きの看板が置いてあり、登山道の端でも売られていると書かれていた。白くてやや平べったいつるんとした大きめの団子が3個、串に刺さって炭火でこんがりと焼かれている様はものすごく魅力的だったのだけれど。まずはそば、と大園を向くと、国峰くんよく食べるから、我慢しなくたっていくらでも入るだろうと大園はいつもよりも心持ち高いトーンで言い、緑と人に囲まれた開放感は国峰にも伝播し、ふうわりと香る甘い団子の香りの中で二人、声を上げて笑った。
駅前から入山口まで続く道は、やや細い裏通りのような通りで、駅付近の数店舗以外の店はどれも、開いているのかいないのかといった風情だったが、古めかしい外観の建物や、時折ひらりと舞う布製の看板は、ただそこにあるだけで非現実の魅力を放ち、旅気分を盛り上げていた。ぐるりと周囲を見回すと、海外のガイドブックにも紹介されているというだけあって外国人観光客も多く、飛び交う言葉も様々だが、皆一様に浮き足立って、デジタルカメラの電子的なシャッター音、よく響く若者の笑い声、子供たちが走り回る足音など、日々の生活では聞き流してしまう雑多な音が音楽のように踊るのを聴き、そうしてまた、周囲の雑多を音楽のように聴く自分自身も確かに浮き足立っているのだと、ちらりと考えた。
「……意外と急」
「そうですか?」
山登りなんてこんなもんじゃないですかね?と国峰はからりと応じ、鬱蒼と茂る森の中を軽やかに進む。別に、登れないほどではない。ないのだけれど。東京の山なんてと舐めてかかっていたせいで、思ったよりもずっと山らしいその雰囲気に面食らった。江ノ島に毛が生えた程度なんて、そんな風にはとても言えない。
駅から続く小道を抜けてすぐ、大きく開けた視界の向こうに、ニュースでよく見る『高尾山』と書かれたゲートが現れ、大園は思わずおおと声を上げた。一度来たことがあるという国峰は、あのゲートはリフト券売り場だと説明し、地面剥き出しコースの入り口がゲート脇、舗装されたコースはこっち、とそれぞれ指し示しながら続けた。ゲートの向こうの高尾山は、びっしりと茂った深緑の木々に覆われたどっしりとした霊山で、その壮麗さに大園は思わず見入った。観光地の賑わいの中にあって尚清廉なその立ち姿からは、確かなエネルギーが溢れ出ており、日々人工物の中で過ごす内に失われた一生物としての本能がじくじくと刺激され、大園は、立ちのぼる土の香りを胸一杯に吸い込んだ。それから、とりあえず蕎麦の言葉通り、30分ほど列に並んで啜った蕎麦は、冷たいつゆに蕎麦、とろろ、トッピングはネギと海苔、真ん中にうずらの生卵がちょこんと乗ったシンプルな冷やしとろろで、しっかりとした歯応えのある麺がとろろと絡んで絶品だった。本当は、蕎麦がきつまみに日本酒も付けたいところではあったのだが、この後山を登るのにそれもどうかと断念し、名残惜しくメニューから顔を上げたところで、同じく酒のページを眺めていた国峰を見つけ、大園はちょっと愉快な気分になり、夏場は山の中でビアガーデンもやってるってと、ここ数日で仕入れた知識を披露し、くっと勢いよく顔を上げた国峰が、じゃあ次は夏ですねと間髪入れずに答えたのが面白くて、思わず笑った。酒なしの昼食はあっという間に済み、山を登り始めたのは13時過ぎだった。
舗装された登山道は、入口こそアスファルトという感じだったが、所々にはやや足場の悪い箇所もあり、終始傾斜は思いの外急で、木々はびっしりと空を覆い、まさに森の中を進んでいると言った感覚だった。開けていたのは、夏にはビアガーデンの会場になるというリフトの終点の広場くらいで、国峰御所望の団子もそこで販売していたが、歩くのが楽しくなってきたらしい国峰は帰りでいいとそこを素通りした。平たく開けたその場所を過ぎると、その先はずっと斜面が続いており、息が上がるほどでもないが徐々に足が重くなるような道を黙々と歩く間、時折、隣を歩くもう一人の存在が意識の外へ飛んでゆき、何を考えるでもない静かで穏やかな孤独に満たされる瞬間があり、その時、大園は確かに、この自然の一部だった。ざっ、ざっ、と規則的に続く自身の足音を聞きながら、馬鹿馬鹿しくなるなと、そう思う。こういう場所にいると、馬鹿馬鹿しくなる。表とか裏とか、普通とか、普通じゃないとか。そんなことに囚われている自分が馬鹿みたいだ。青く澄んだ冷たい空気が、鼻腔から気道を通って肺に落ちる。肺の中に、外の世界が侵入する。吐き出す吐息は空気に混じり、再び世界の一部になる。内も外もない。最後には、全て混じり合う。
「……休憩します?」
不意に声をかけられて顔を上げると、無言の大園をどう思ったのか、立ち止まって振り返った国峰が斜面の上からこちらを見下ろしていた。その背後には、枝先の葉がぼんやりと赤く染まり始めた一振りの大枝があり、滑らかな肌の白と思たげな赤、育ちきった幹の無骨とそれらのコントラストの中に、弾けるような自然の、生きたエネルギーを見つけた気がして、大園はぴたりと足を止めた。木々のさざめき。人々の声。この場所では全てが一つだと、不意に思う。人も木も、国峰も、知らない誰かも、ここに在るという、その一点において確かに一つだった。区別なく、一つだった。
「……大園さん?」
黙ったままで世界を見続けると、怪訝そうに眉をしかめた国峰がそう呼び、かくんと首をかしげた。その瞬間、国峰の頭で遮られていた秋空の木漏れ日がきらりと顔を覗かせ、大園の目を射った。光の刺激は鋭く直線的で、外から身を破り中に侵入し、大園を内から灼いた。外が、侵入する。恐怖はない。ただ、満ちる。内が満ちていく。空虚が埋まる。そんな感覚。
「……あと、ちょっとだろ」
登っちゃおうと口にして、大園は足を進めた。目に見えるもの全てが、突然、きらきらと輝き出す。アスファルトの斜面、人々の姿、覆い被さる木々の緑、その隙間から覗く空の抜けるような青。それから。
「……なんだ。大園さん、元気ですね」
目の前で笑む男の姿。楽しげに弾む声、地面を踏みしめる足、前に立って進む背中、それら全てが、きらきらと目映い。その全身から、細かな輝きがぽろぽろと零れ、砂金のような小さな塊が地面に落ちて、黄金の道を作る。その道を踏みしめて進む。区別はない。世界の中にある存在には多分、明瞭な区別など存在しない。森も人も、異性愛者も同性愛者も、あなたも私も、遠い高みから見下ろせばきっと、みんな同じだ。知らない誰かが消えてしまおうと、知らない誰かが異質であろうと、遠くの誰かは何も気がつかない。ひとつの細胞が、人体に特段の影響を及ぼさないのと同じように、世界という枠の中では、一人の存在は酷くちっぽけで、心許ない。だからこそ、きっと。この感情は自分だけのものだ。大園にとって、国峰だけが特別なのだ。他の誰でもない、この男を、自分は選んだのだ。国峰は心臓だと、そう思う。空虚を埋めるポンプ。熱を生む、エネルギーの源。黄金を踏みしめる靴底から染み入る煌めきが、皮膚を抜けて内を照らす。
「……大園さん」
内から溢れる煌めきに視界を奪われていた大園は、国峰の声に引かれて顔を上げた。
「着いた」
光源が笑う。その笑顔を追いかけて踏み出した次の一歩が踏みしめたのは平たい大地で、笑顔の国峰の背景から、覆い被さる緑が消え、視界が、ぱっと開けた。
空が広いと、そう思った。今、大園の前には、無限に広がる青空が、遠く果てしなく続いていた。長い緑の洞窟を抜けた登山者を迎える切り開かれた大地は、数多の人々に踏みしめられて硬く、風に晒されて乾いていた。さらりと吹く風が、足元の砂を巻き上げて吹き過ぎる。
「……大園さん!こっち、展望デッキありますよ」
離れた場所から声がかかる。見える世界の変化に見入り、思わず足を止める大園とは対照的に、国峰は頓着せずに前に進む。斜面を登ってきたのと同じ歩幅で、同じペースでとんとんと進んでいくその背中は、すぐに大園を置き去りにする。置き去りに、するのだけれど。
こっちと振り返る国峰は、足を止めて待ってくれるのだ。テンポが違う。一歩の、歩幅が違う。それでも、先を行く国峰は折々に振り返り、自分を待つ。待っていてくれる。だから、一人きりになることはない。まるっきり同じように進むわけではないけれど、ちゃんと立ち止まって、隣に並ぶまでの時間をくれる。こくりと頷いて、止まっていた足を国峰に向けて進める。その一歩を踏み出す一瞬、ちらりと俯いて、緩む口許を隠す。なんだかくすぐったい。
「……面白い景色ですよね」
大園を伴って展望デッキに到達した国峰は、落下防止の柵を掴んで周囲を見回しそう呟いた。面白い。隣で、国峰に倣って柵に手をかける。
「あぁ……なんか不思議」
車で登るような山と比べたら、高尾山の標高はそれほど高くはない。近景は緑が覆う斜面で、山の麓は以外と近い。ただ、遠景に都心がはっきりと見えるのだ。新宿、東京。点在する高層ビルの島、赤い三角の東京タワー、遠目にはコミカルな形をしたスカイツリー。ここ数日晴れが続いたせいもあり、遠景は靄の彼方でくっきりとは捉えられないが、自然物にはない造形が、深い自然の中に混じり込むこの光景は、確かにちょっと珍しかった。
「……なんか、おもちゃみたい」
「確かに。つまめそうですよね。あの辺のビルとか」
言いながら、国峰は遠くの建物に向けて手を伸ばし、親指と人差し指でつまむような動きをした後で、面白い写真撮れそうですねと無邪気に笑った。
「撮る?」
「いや、いいです」
「いいの?……なんだっけ?えーっと……映え?」
国峰を振り返り、テレビで聞き知った若者言葉を疑問符付きで告げると、目が合った瞬間に笑われた。
「大園さん、そういうとこ疎そうですよね。若者文化と縁なさそう」
「は?若い子とだって話せるよ」
「話せないなんて思ってないですよ。会社の人たちとも仲良さそうでしたもんね……俺とも、最初の時から色々、話、してくれたし」
大園さんは話しやすい人ですよ、と国峰は言い、だからこっちの問題なんですけどと視線を再度彼方に投げた。
「……なんか大園さんって、大人、って感じするんですよね。一本筋が通ってる感じ。それで怖じ気づいちゃうというか。子供っぽいところ見られたくないなって思っちゃうんです。多分」
さらさらと吹く風に、国峰の髪が煽られて揺れる。明るい日差しに目を眇める横顔が、白く、眩しい。
知っていることがあると、そう思う。国峰について、知っていることがある。何事もそつのない彼が、意外と臆病なこととか。あんなに無邪気に笑うくせに、自分が嫌いで卑屈なこととか。冷たく見える三白眼が、本当はどんなに優しいかとか。外見と中身がちぐはぐで。ちぐはぐ、なのだけれど。自分は、そんな国峰に惹かれている。ばらばらでちぐはぐな、国峰の全部を、好きだと思う。
「……別に、大人じゃないよ」
小さく、呟く。怖かっただけだと、そう思う。自分をさらけ出すのが、怖かっただけ。ばらばらもちぐはぐも許さない、歪みのない表向きの仮面が、板についてしまっただけ。物わかりの良い大人として振る舞うのが一番楽だった。ただ、それだけ。本当の自分は、もっとずっと子供で、わがままだ。見映えばかり完璧に仕立てた一張羅を身に纏った子供と同じ。立派な服に着られてしまい、落ち着かなくてもじもじする。みんなはそれを誉めてくれるのだけれど、本当は、その堅苦しい衣装を脱ぎ捨てたくてたまらない。そのくせ誉められたくて仕方がないから、にこにこにこにこ笑って見せる。
理想があって、妥協も知って、一本筋が通ることが“大人になる”ということならば。俺は全然、大人じゃない。
誰かに聞かせる意図のない言葉は、柔く吹きすぎる風が立てる葉擦れよりも、更に小さく密やかで、大園自信の耳にすら、届く前に揺らいで消えた。きっと、誰にも届かない。最初から、そういうつもりで口にした。……それなのに。
見つめる横顔がふわりと笑み、視線がついとこちらに向いた。
「……知ってます」
その目の優しさに、どきりとする。目尻がはんなりと優しく落ちて、美しい彼が蕩け出す。その表情に見入っていると、不意に指先に熱を感じた。ふわりとした心地に囚われたまま、ほとんど無意識に熱源を探して視線を落とし、他の誰からも見えない身体の陰で、柵をつかんだ大園の小指に、隣接した国峰の小指が控えめに絡み付いたのを見つけて、瞬間、びくりと肩を揺らす。国峰がふっと笑うのが、気配で分かった。
「……大園さんは、可愛いですよね」
すごく、と告げる声が近い。近すぎて、顔を上げられない。といって、この手を振り払いたいとも思わないのだ。小指ひとつの熱が、こんなに嬉しい。本当はもっと、くっついていたい。でも、これ以上くっついたら、自分が自分でなくなりそうで、それはそれで、少し怖い。
「……可愛くは、ない」
うつむいたまま口にした小さな抵抗は、語尾が揺らいで、甘えただだっ子のようだった。重なった指が痺れるようで、柵を握り込む手が、知らず強まる。白っぽく色を変えた指の上を、国峰のそれが宥めるようにゆるりと滑る。じわりと、首筋に熱が昇る。笑みを含んだ国峰の声が、可愛いですよと、密やかな囁きを落とす。
「……格好良くて、可愛いです」
こくりと、喉が鳴る。声が、出ない。心臓が喉元までせり上がり、声が出せない。触れ合った指先に、意識の全てが集中する。その声に、聴覚を全て持っていかれる。二人を包む空間だけが、世界から切り取られてしまったかのようだった。静寂の中に、二人きり。冷静な自分も、いないわけではない。こんな場所でと、思う気持ちがないでもない。ただ、好かれている実感と喜びが、それを凌駕する勢いで溢れ出して、止まらない。逃げ出したいほど恥ずかしいのに、この喜びを手放したくない。前にも後ろにも行けなくなって、ここから一歩も動けない。ゆるりゆるりと隠微に動く指先を見つめながら、お前の方こそ、と大園は思う。格好良くて可愛いのは、お前の方だ。思えば最初から、国峰は可愛かった。真っ直ぐで素直で、嬉しいとか悲しいとか、感情表現豊かなくせに、相手へのペーシングが上手いから、振り回される感じは全くない。朗らかで、周りを明るくする人柄は、みんなに好かれる人たらしだ。それでその上。こんなに格好よくなられたら、たまったもんじゃない。国峰は、ほしい言葉をくれる。寂しくなりかけるその瞬間に。“一人ではない”と熱をくれる。“分かっている”と笑顔をくれる。身に纏った一張羅ごと、大きな胸に抱き留めて、それを脱いでも素敵だよと、そんな風に誉めてくれる。
時間にしたら多分、ほんの一瞬の出来事だった。
「……さて、と」
大園の視線の先で、国峰の手がぱっと開く。絡んだ指がするりと離れ、声の調子を戻した国峰が爽やかに言った。
「一休みしたら下んなきゃですよ」
全てを拐う熱波が遠退き、現実が戻る。切り取られた世界が、融合する。唐突に、静寂でなどあり得ない真昼の行楽地のざわめきを認識し、大園ははっとして顔を上げた。喉元の心臓。熱い指先。余韻でぼうっとした視界は少し霞んでいて、ベンチ探しましょうとすぐに背中を向けた国峰の表情は、良く分からなかった。
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