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第6章 転生隠者の望む暮らし
14.謎と星と隠者
しおりを挟むこのレイヴァーンで現在メインに使われている、魔法を一度に出して変化させて発動させる魔法は、私が調べた限りでは一番最初に生まれた魔法に近い。
(そして、私が転生してたまたま最初に読んだ魔法の本が紋様術に関するもので……これは、紋様を描くことができれば一度に出す魔力は初級魔法と変わらないくらいで済むんだよね)
机の上に、ギルマス達にもらった本を広げながらつらつら考える。ちなみに、紋様術自体は仮に初期の魔法———初期魔法と呼ぼうか……この魔法が生まれてから、多分初めて出てきた『アレンジした魔法』だと思う。
(この紋様が魔法陣に変化して、多分同時期くらいに魔法錬金術が生まれていると思うんだよね。そして、少し遅れて精霊達の力を借りる精霊魔法がエルフとか魔族の中の精霊が比較的見える人たちによって確立した、と)
そして、精霊王達が言うには、錬金術と、魔法陣を刻んで作る魔道具が進化して行って、遠距離攻撃が出来る武器が完成し、それを各地に投下しあい、打ち上げた時に空中でぶつかり合ってとんでもないことになった……というのが、所謂『最初の滅び』だった。水の精霊王と風の精霊王に連れて行ってもらった遺跡の町は、多分その時に海の中に沈むことになったのだろう。
(そして……)
また100年前後の時間をかけて、魔法の形が変わった。人間の数が徐々に増え、エルフや魔族の言葉をそのまま使っていた詠唱にアレンジが加わるようになる。魔法に関する文化が大きく進化して、おそらくは魔導学と呼ばれるものが生まれたのがこの次期だと思う。
しかし、魔法を使えるものと、あまり多くは使えない者との差がハッキリするようになった時期でもある。その差は国によっては人間同士の争いの火種になった。
(そして、風水害による飢饉がトリガーになって戦争が起きて……大きい大陸の国同士が争って、そこに大地震が起きた。これが2度目の滅び……)
3度目、4度目と続くようなのだが、この滅びと滅びの間隔が実はかなり曖昧だ。
本の奥付のようなところに発行日が書いてある物もあるのだが、独自の年号を使っているので単純にはわからず、年号について調べようとすると……
(うん、今日はもう終わろう)
調査対象の本が多すぎる。
いつのまにか深夜だった。お風呂はやめて浄化魔法で済ませる。
「主様!お風呂入った方がいいです!」
「もう遅いから……」
「主人様、風呂は思考の友だそうです」
カルラだけでなくブラドにまで風呂に入るように促され、小袋に入ったハーブを渡されて入浴した。
(セカイさん、セカイさんはこの世界のことを全部知っているの?)
風呂に浸かって、窓から外を見上げる。
(星が……前世と同じような感じなら、星の位置とかはほぼ変わらないのかな……資料をあたるのと一緒に、天体観測の記録が無いか調べてもいいのかも)
ハーブでうっすらと色づいたお湯が肌を滑り落ちる。保湿成分があると言うハーブのせいか、少しとろみのついたお湯は心地よい。、
風呂から上がって脱衣所にある鏡に目をやると、ヒョロンとした人影がこちらを見ていた。
(セカイさんと……似てると思ってたけど)
自分の顔を繁々と眺めて、やはり違うかもしれないと思い直す。自分よりは、光の精霊王の方がより似ているだろう。
(セカイさんと、また話したいな……)
前世ほどではないが、セカイさんの顔と声が少しずつおぼろげになっていくのはしょうがないのかもしれないけれど……ふとそれが寂しいと思ってしまった。
「会ったら質問攻めにしそうだから……セカイさんは迷惑かもね」
ふふ……と鏡の中の私が笑う。
(ねえ、セカイさん。私は楽しくやっているよ。セカイさんは、どうですか……?)
その時こちらに一番近いオーロラの端が揺らいだのは、ここからは見えなかった。
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