目指せへいおんライフ!……波乱万丈なんて望んでない!!

おいしいクルミ

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第2部

50:旅の始まりです!

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さて、日付かわって出発の日。




朝6時ごろ宿を出て門についた。




ライアン君は先にいたようで、門番さんと話していた。




「おはよう。」




「おー、きたか。」




「門番さんと知り合いなの?」




「いや?あー、まあ、今知り合いになったとこ?」




なんと!仲よさそうに見えたのに、今知り合っただと!

ライアン君、すごい。




「じゃあ、二人とも、気を付けるんだよ。この辺りの道は魔物が少ないが、しばらく先にいると魔物が多いところもある。お金があるなら、次の町から護衛の冒険者を雇うことをお薦めするよ。」




「わかった。ありがとう。行ってくる。」




「行ってきます。」




門番さんに挨拶をして門をくぐった。




「馬車は、少し歩いて、門番さんから見えなくなったら出そう。」




「ああ、それがいいな。」




幸い、門から出てすぐにカーブがあったので、死角になるところを探し、マジックバックから昨日つくった馬車と馬のゴーレムを取出した。







「やっぱ、改めて見てもすごいな。」




「特訓の成果だよ。役立ってよかった!」




うん、本当にそう思う。

あの特訓で生活レベルの向上が図れたよ。

すべてのものとられても大丈夫かも。

強くなっても、便利だしメリットもあってよかった。




馬のゴーレムは、まだ魔力を流していないので、動かない。

体に手を当て、魔力を流す。




2分ほどで魔力満タンになったようだ。




馬のゴーレムと馬車をつなぐ。




ゴーレムだから、魔力登録をした人と、作った人、登録車に認められた人の命令に忠実だ。

普通の馬で行くよりはるかに楽な旅ができるだろう。




「じゃあ、乗ろうか。」




馬車に乗りこんで馬のゴーレムに道に沿って進め、と指示を出す。




「なあ、これさ、外からみたら御者台に誰もいないのにしっかり進んでるおかしい馬車じゃね?」




「あ、たしかに。でも、何もしなくていいのにひとりで座ってるのも退屈でしょ?」




「そりゃそうだけどさ……。」




「自動走行の馬車に二人で乗ったら御者がいない、そんなときに活躍するのがこれ!青ボタン!」




「急に何?」




「ふっふっふ。このボタンの正体、気にならない?」




「あ、ああ、気になるけど、なんか、テンション?がおかしい気がするんだけど?」




「気になるのですね!そこまでいうのなら、お見せしましょう!」




「いや、そこまっでって、いやなんて言うか、まあ、ああ、えっと、……。」




「スイッチ―――――、オン!」




ボタンを押すと馬車の屋根と、馬側の壁が開いて、外が見えるようになった。




そのまま前の椅子が回転。




壁の代わりに透明な膜のようなもので全体がおおわれる。




御者台部分は、馬車の下に折りたたまれて収納。




「これで、どう!?」




「……。」




「あ、あれ?ダメ?」




「あ、いや、ダメじゃない、と思う。なんか、すごい。こんな馬車見たことない。」




「でしょ!この馬車だけで生活できる機能が満載なの!快適な旅ができるよ!」




「お、おお。」




「さらに!結界がついていて、解除しない限り、魔物が来てもはじかれます!」




「え!?」




「そして!この体形1では屋根と壁がないかわりに、防水防風防音機能の付いた、透明フィルターがついているのです!」




「……。」




「体形は、10種類あって、それぞれ特徴があるので、どんなシーンでもこれ1台!一家に一台エレナ特製馬車を!」




「……。」




「はっ!すみません。ついつい盛り上がってしまいました。」




「……。あ、いや、大丈夫だ。この馬車、すごいな。」




「そうでしょ!」




「なあ、今思ったんだけど、ボタン、3つしかないよね?」




「ああ、それはですね……。黄色ボタン、スイッチ―――――、オン!」




「え?また!?」




向かい合っているイスの間のスペースの床から、小さなテーブルのようなものが出てきた。




テーブルの天板部分を開けると、5×5に並んだボタンがある。




それぞれ1-1~5-5までの番号が振られており、ボタンが並んでいるところの横の隙間には、小さな冊子が入っている。




「こ、これは?」




「これは、ですね……、詳しくはこの冊子をお読みください!」




「は!?説明してくれねーの!?」




「私が話し始めると終わるころには日が暮れてしまう気がするのです。これらは、本当に便利なのですよ!例えば、これ、3-4は、」




「わ、わかった、読むよ。日が暮れるまでこのまま話されるのはなんというか、ね。」




「そうですか。少し残念ですが、どうぞ。」




「……これ、よめねーんだけど。」




「え?そんなことあります?」




「よめねーっていうか、白紙?」




「え??――――ちょっとかして?」




「ん。」




「……ちゃんと書いてあるけど?白紙には見えないよ?むしろ、文字ばっかり。」




「いや、書いてないけど。」




「?おっかしいなー。私には見えるのにライアン君には見えないの?そんなことあるかな?」




「んー、お前が作ったから、作った人にだけ見えるようになっているとか?」




「そうなのかな?」




「わかんないけど。まあ、機能は使う時に説明してくれればいいから。」




「わかった。」




改良が必要かな?




ふー、しかし危なかった。




ついつい説明したくなっちゃうんだよね、自分で、発明したり、改良したり、発見したりしたことって。




昔からの悪い癖……。




まあ、研究者としては悪くないけど、一般人としては付き合う人が疲れちゃうよね。










そうしている間にも馬車は進んでいく。

とても速い速さで。




話が盛り上がったのと、防風なのとでどちらも気づいてはいなかったが、途中に抜かした馬車の御者は、驚いて二度見して、そのままぼけーっと後姿を見ていたら、事故を起こしてくびになったとかならなかったとか。
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