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しおりを挟む「__あの子の、気配がする……」
小さな、本当に小さな薄い気配に懐かしい面影を感じて、呆然と呟いた。
いた、見つけた。
そこに、いた。
限りなく薄く、そばにいる複数の強い気配に紛れがちだが確かにそこにいた。
静かな水面のような、凪いだ気配。落ち着く、森の匂いをもつ彼。
風に揺れる銀白髪を押さえながら、小さく笑って何時も手を伸ばしてくれた。
大事な、家族だった人。
姉の息子で、私の甥。
「ユノ……」
私のせいで、迷惑を……私のせいでユノの能力を狂わせてしまった。
狂ったユノの能力は、本来の力を発揮しながら本来の力とは正反対な力を発揮してしまい、ユノはその様を目の前で見てしまった。
ユノ、ユノ……私の可愛い甥。
私の理解者。私の、拠り所。私の……私、の…………?
あれ、なんだっけ。
なにを考えていたんだっけ……。
…………まぁ、いいや。
このままじゃ、力が足りない。
もっともっと……増やさないと。増やさないと、私は私に殺される……。
増やす……あぁ、そうだ。誰かが言っていた。
他所のものを呼べば、そのものを介して莫大な魔力がこちらに運ばれてくると。
それは……なんでだっけ。
わからない、忘れちゃったな。大事なことだった気がする……けど、まぁいいや。
早くしないと……理性がある、うちに……。
早く……はやく………………は、ヤク……。
ーーーーーーーーーーーーー
ノア歴345年。
シルメア国王宮に隣接する神殿の、さらに奥の神殿。その名も司桜宮。
そしてその、地下一階。
そこには老年の青の長衣を纏った男が立ち、その後ろには壮年の同じく青の長衣を纏った男3人が跪くように祈っていた。
その4人の目の前には、一段高くなった祭壇のような場になっており。その地面には淡く光る、金の複雑な陣が描かれている。
老年の男が途切れぬ祝詞を口にし、魔石の埋め込まれた杖を補助に陣へと魔力を注いでいく。
そして後ろの跪く3人の壮年の男は老年の男とはまた別の祝詞を口にしながら、老年の男に向かって魔力を練り上げ、供給していた。
長い、長い祝詞が最終局面を迎え、それに比例し、陣の光が輝きを増す。
互いに違う祝詞をあげていたはずの男達は、最後の祝詞を口にする。
それは召喚の儀。
そして、いつかと同じく混乱を招く災厄の始まり。
輝く陣が一際強い光を発すると、自然ではない風が生まれ、男たちの長衣を揺らした。
そして光も風も収まった時、その陣の中には放心した一人の若い男が座り込んでいた。
「__おぉ……おぉ…………!」
感動に打ち震える老年の男が、固い動きでその若い男に近寄っていく。
対する座り込んだ若い男は見知らぬ格好の見知らぬ男の接近に、放心しながらも警戒し、近づいてくる分だけ距離を取った。
しかし遠慮なく少しずつ近付いてくる老年の男に、とうとう壁際まで追い詰められ、未知の環境や状況に対する恐怖をその目に浮かべながら、老年の男を見上げた。
__比にならない、強い悪寒が若い男を襲った。
見上げた老年の男の顔は、笑みを浮かべながらも虚ろで。
ここではないどこかを見て、恍惚げに微笑んでいた。
目を合わせているはずなのに、目の合わない老年の男から逃げるように視線を背けると、その後ろに跪いていた3人の男に気づいた。そして、今度は恐怖で体を固めることとなる。
一様にして、4人全員が同じような空虚な表情で、笑みを浮かべ。
伽藍堂な瞳が、いやに強く光り。いやに強く、若い男を見つめていた。
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