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「風呂どうしようか」
「俺は別にどっちでも」
「じゃあこのまま抱かせてもらおう。実を言うと店にいる時からずっと抱きたかった」
トンっと軽く胸を押され、ベッドに倒れ込む。
上から彼が被さり、そしてゆっくりと服を脱がされた。生まれた時と同じ姿になるなんてお風呂の時くらい。
恥ずかしくて手で大事なところを隠す。けれど彼の手が重なって、包み込みながらそれを外してしまった。
「……初めてだから優しく出来なかったらごめん」
耳元で囁かれ、ピクリと身体が震えた。
今からダイチに抱かれる。
改めて自覚すると、俺の中のオメガの血がドクドクと巡り出した。施設にいた時は全く反応しなかったのに、たった一人の愛する人のためだけに発情し始める。
「発情してるの?」
恥ずかしくて声が出ない。代わりに小さく首を縦に振る。すると彼は柔らかく笑い、キスを落としてくれる。
額に、頬に、胸に、腹に、太ももに、足に。
身体を撫でるように徐々に下っていく。そして最後に腰にキスをする。
それを合図に俺はうつ伏せになり、一度も使われたことのない穴を晒す。
恥ずかしい。けれどすぐに彼を受け入れたくて、お尻を突き出す形で。ダイチはそれをゆっくりと撫で、そして一つキスを落とした。
「ごめん」
そう囁いて、穴に指を入れた。初めてと言う割には指先は自由に動き回っている。
まるでオメガの良いところを知っているかのように。
といっても俺もこんなことされるのは初めてで、気持ちいいのは彼の指だからかもしれない。少なくとも施設内の教育の一環として、自分の指でほぐした時は気持ち良くなんてなかった。
すでに発情しているのも気持ちよさを増幅させているのだろう。何度か軽く達してしまった。
後ろはすでに柔らかくなっているのに、ダイチはまだまだ足りないと奥を探り始める。
「こんなんじゃ足りない。……挿れて?」
軽く尻を横に振り、そして枕に頭を埋めながらおねだりをする。
するとゆっくりと指が引き抜かれる。代わりに両方の尻たぶを両手で捕まれ、ぐいっと穴を広げられる。
ごくりと唾を飲む音が聞こえた気がした。
遅れて今までとは違うものが中へと入っていく。
太くて温かくて、ずっとずっと欲しいと願っていたもの。中に入ってくるだけで電流が走るみたいにビリビリとする。
癖になりそう。この感覚に溺れてしまいたい。
そう思う一方で、最後までしっかりと意識を保っていなければと自分を律する。
だって溺れてしまったらダイチの熱を覚えていることが出来ないから。
彼を手に入れられない代わりに、いつまでもこの感覚だけは忘れないでいたいと思うのだ。
奥にトンっと軽く触れると、彼がいきなり掴む場所を変えた。強く左右の腰を掴み、そして一気にペニスを入り口付近まで引き抜いた。
かと思えば今度は奥まで一気に貫く。そんな強引で簡単な動きを何度も何度も繰り返す。
「ユキちゃん……もう一度会いたかった。会って、好きだって言いたかった。あの時、怖がらせちゃってごめんねって謝りたかった」
俺の上にボロボロと涙を溢しながら。
これが俺にとっての初めての性行為で、初めての恋で、はじめての失恋。
初恋は実ることはない。
そんなの昔から知られている言葉なのに、こんなにも胸が痛くてたまらない。
なのに身体は素直で貪欲で。頭が馬鹿になりそうな快楽に、意識を手放してしまえと何度も警告を送ってくるのだ。
目の前が真っ白に光る度、グッと我慢する。
そうして何とか意識を保つと同時に、中はきゅうきゅうとしまった。
ダイチの精を一滴も逃すまいとする行為が、まるで自分が彼に縋り付いているように思えて。惨めで悔しくて、気持ち良くて愛おしくて。
けれど明日にはこんな思い、彼の中ではなかったことになる。全て忘れて、俺の中でだけこの日の記憶が残り続ける。
番選びに参加し始めて八年目でようやく、嘘の日の意味を理解させられたのだった。
「俺は別にどっちでも」
「じゃあこのまま抱かせてもらおう。実を言うと店にいる時からずっと抱きたかった」
トンっと軽く胸を押され、ベッドに倒れ込む。
上から彼が被さり、そしてゆっくりと服を脱がされた。生まれた時と同じ姿になるなんてお風呂の時くらい。
恥ずかしくて手で大事なところを隠す。けれど彼の手が重なって、包み込みながらそれを外してしまった。
「……初めてだから優しく出来なかったらごめん」
耳元で囁かれ、ピクリと身体が震えた。
今からダイチに抱かれる。
改めて自覚すると、俺の中のオメガの血がドクドクと巡り出した。施設にいた時は全く反応しなかったのに、たった一人の愛する人のためだけに発情し始める。
「発情してるの?」
恥ずかしくて声が出ない。代わりに小さく首を縦に振る。すると彼は柔らかく笑い、キスを落としてくれる。
額に、頬に、胸に、腹に、太ももに、足に。
身体を撫でるように徐々に下っていく。そして最後に腰にキスをする。
それを合図に俺はうつ伏せになり、一度も使われたことのない穴を晒す。
恥ずかしい。けれどすぐに彼を受け入れたくて、お尻を突き出す形で。ダイチはそれをゆっくりと撫で、そして一つキスを落とした。
「ごめん」
そう囁いて、穴に指を入れた。初めてと言う割には指先は自由に動き回っている。
まるでオメガの良いところを知っているかのように。
といっても俺もこんなことされるのは初めてで、気持ちいいのは彼の指だからかもしれない。少なくとも施設内の教育の一環として、自分の指でほぐした時は気持ち良くなんてなかった。
すでに発情しているのも気持ちよさを増幅させているのだろう。何度か軽く達してしまった。
後ろはすでに柔らかくなっているのに、ダイチはまだまだ足りないと奥を探り始める。
「こんなんじゃ足りない。……挿れて?」
軽く尻を横に振り、そして枕に頭を埋めながらおねだりをする。
するとゆっくりと指が引き抜かれる。代わりに両方の尻たぶを両手で捕まれ、ぐいっと穴を広げられる。
ごくりと唾を飲む音が聞こえた気がした。
遅れて今までとは違うものが中へと入っていく。
太くて温かくて、ずっとずっと欲しいと願っていたもの。中に入ってくるだけで電流が走るみたいにビリビリとする。
癖になりそう。この感覚に溺れてしまいたい。
そう思う一方で、最後までしっかりと意識を保っていなければと自分を律する。
だって溺れてしまったらダイチの熱を覚えていることが出来ないから。
彼を手に入れられない代わりに、いつまでもこの感覚だけは忘れないでいたいと思うのだ。
奥にトンっと軽く触れると、彼がいきなり掴む場所を変えた。強く左右の腰を掴み、そして一気にペニスを入り口付近まで引き抜いた。
かと思えば今度は奥まで一気に貫く。そんな強引で簡単な動きを何度も何度も繰り返す。
「ユキちゃん……もう一度会いたかった。会って、好きだって言いたかった。あの時、怖がらせちゃってごめんねって謝りたかった」
俺の上にボロボロと涙を溢しながら。
これが俺にとっての初めての性行為で、初めての恋で、はじめての失恋。
初恋は実ることはない。
そんなの昔から知られている言葉なのに、こんなにも胸が痛くてたまらない。
なのに身体は素直で貪欲で。頭が馬鹿になりそうな快楽に、意識を手放してしまえと何度も警告を送ってくるのだ。
目の前が真っ白に光る度、グッと我慢する。
そうして何とか意識を保つと同時に、中はきゅうきゅうとしまった。
ダイチの精を一滴も逃すまいとする行為が、まるで自分が彼に縋り付いているように思えて。惨めで悔しくて、気持ち良くて愛おしくて。
けれど明日にはこんな思い、彼の中ではなかったことになる。全て忘れて、俺の中でだけこの日の記憶が残り続ける。
番選びに参加し始めて八年目でようやく、嘘の日の意味を理解させられたのだった。
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