西遊記・亜

宵闇 歩

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原罪

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悟空「そういやお前、滅多に術を使わないよな」 

八戒「なんで?」 

悟浄「「使いたくない」からだよ」

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 

悟浄「俺は流砂河の近くの村で生まれた。貧しい暮らしだったが兵としてなんとか成り上がろうと、努力はした。 おかげで数年ののちに大将にまで上り詰め、人望も集まり、村の筆頭を任されるようになったわけだ。

 あいつがやってきたのはそれからだったな。 

ボロボロの身なりをし、今にも倒れそうな風貌で村の門に現れた。昔の自分が重なってしまった。 進んで家に住まわせ、食べ物を分けてやった。 感謝を述べ、涙を流しながらむしゃぶりつくのを見て、なんだか温かい気持ちになった。 

武術を教えてやることにしたんだが物覚えが早いのなんの、たちまちものにしてしまったんだ。

 以前はどこかの町で傭兵をしていたそうで、この村のことも守りたいと申し出た。決定権は俺にあったから、喜んで引き受けた。 

何年も過ごすうちに兄弟のように親しくなっていったよ。

 そいつは過去のことを語ってくれた。 

生き別れた弟がいること 

前の町が、戦争でなくなってしまったこと 

女房がいたが、敵に連れ去られて行方が分からなくなっていること 

戦ったが力及ばず、命からがら逃げだしたこと

 そして無事でいてほしい、と何度も涙を流した 

悔しくて悔しくてこのままじゃ死ねない、なんとか生きて二人とも探し出してやる、と拳を握った。

 俺はその度に力強くうなずいた。 

 

しかし時は待たない 

 

ある日、いつものように酒を交わしていると、そいつの右のこめかみが赤くなっているのに気づいた。 

「おい、それ、どうした?」

 しばらく黙っていたが、やがて口を開くと

 「・・・兄貴、ちょっと聞いてくれないか。」 

どうやら俺がそいつのことばかり気に掛けるものだから、妬みや恨みを買っているらしい。 

反省した。

 何度も誤った。 

そいつはもう、ここには住まない、と言った。そして寂しそうに、ありがとうと言った。 

うなずくしかなかった。

 

 しばらく様子を見ていたが、うまく他の者とも馴染めているようで安心したんだ。

 

 しかし、殺された。

容疑者は 「俺」になった。 

 

 

これはあとで分かったんだが、どうも殺されたその日、村には部外者がやってきたらしい 

部外者はそいつの、親友のことを探していたようで、村の長に問い詰めたのだ 

「どこにいる?出せ。ここにいることは分かっている。」 

長は困った。なにせ、やってきたのは、黒いヒョウの紋章をつけた、最近おそろしいほど力をつけているという「噂」のやつらじゃないか

 「我々には提案がある。」 

黒いマスクをかぶった代表が言う

 「さっさと居場所を吐いてこの村の住民全員の安全を確保するか、それとも逆か。」 

長は前者を選んだようで、それがあいつの殺人へと繋がった。

 そして何故か容疑者として俺が挙げられた。

 何にも知らずに捕らえられ、白状するまで、つまり冤罪を認めるまで拷問を受け続けた 

刺青はその時につけられたもんだ。それでも 

俺は生きたかった、

あいつのために生きたかった。 

認めるわけにはいかなかった 

殺されるわけにはいかなかった 

 

しかし、もはや限界に近かった 

どうせならいっそ、あの世であいつに会おう。 

 

 

裁かれる当日、今まで穏やかだった人たちが目の色を変えて怒鳴りつけてきた 

飛び交う石にうつむこうとしたその時、目が宙で凍り付いた。

 

 いる。 

 

が、兵と兵の間に立って、無表情でこちらを見ていた。 

確かにそうだった。民衆にバレないように、顔を無理やり焼いたのだろうが。

 俺には分かる

 「あれ」は「あいつ」だ 

途端に理解したよ 

これは兵たちの「画策」だったことに  それが、あいつらが金や富で釣り上げたためということは知る由もなく

 憤りを覚えてももう遅い 

民衆の罵声が頭に響いて痛い 

今まで 

ずっと

 信じて・・・ほしかったのに・・・・・ 

 

 

 

 

 

俺は流砂河の水牢に閉じ込められた。 

決定は「餓死」。 

冷たい河の奥底で 

俺は憎かった。初めて村に殺意が湧いた

 村では「一大英雄の転落物語」となってる 

村では裏切り者がのうのうと生きている。 

憎い、憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い・・・・・・・・・・・・

 いつしかその「念」が凝り固まり、俺は文字通り、その村を「呪い殺した。」 念が形をつくって「黒鬼」となってしまったんだ 

餓えに苦しみ念を使い水上の人を喰らい・・・・・ 

お師匠さんに出会わなければ、そのまま妖魔となっていただろう。

 だが、一度開放してしまった力は残る。後遺症なんて生易しいものじゃない。

 ほら、鳥もケモノも、虫でさえも、俺から逃げていくだろう? 

それは俺があの日、あの時から、「自然」であることを捨ててしまったからだ。 

それでもお天道様は、俺が「人間以外」になることを赦してはくださらない。 

とても孤独だった。 

 

俺のこの力はねじ曲がっている。だから相手がねじ曲がったヤツでない限り、こいつを発動させるようなことは絶対にしない。」
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