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チュート殿下 133 タリスマン帝国の旅 9
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「昨夜は晩酌に付き合ってもらった。その時に君が昨日出した魔獣以外にも、特別討伐褒賞級の魔獣を倒した事が有ると聞いた……昨日見た素材も倒し方が上級なみだ。キールが手をかしたのかと聞いたがそうではなくすべて君が討伐したものだと」
人を見る目はあるつもりだ、おや……ギルド……めんどくさい、おやっさんでいいか……が言う。
キールの言葉を信じたおやっさんは、昨日の分の査定と、今から新たに見せる大熊で判断を下したい、と言った。
「判断?」
急かされるように、俺はさっき出し掛けた魔獣を、作業台の上にマジックバックから出すような擬装は忘れずに出した。
倒した時は気付かなかったが、目の前に出した大熊魔獣は殊の外大きかった。
「こいつは深淵の……それにこのキズは……」
俺が出したブツを検分しながらおやっさんはその手は止めずにブツブツと呟きながら、何か書類のような物にチェックを入れている。
俺が大熊の額に開けたレーザーによる焼け焦げた穴とか、全く腐敗していない事とか、今の俺のランクや年齢などから怪しい事は山盛りであると思うけど、眉間に皺は寄せているが身上に対しては聞かれる事なく、査定に必要などの場所で誰が討伐したかなど聞かれただけでその場の査定は終わった。
「剥取りはお願いします。その他欲しい素材も無いので全部買取でお願いします」
キールがどこのギルドでも変わらないやり取りをして建物を出る事とする。
俺たちは入った時に使った扉からもう一度ギルドの窓口に行って呼ばれるまで待つ様に指示されて、おやっさんは他にある扉から戻るようだ。
ギルドの中に戻ると、思ったよりも時間が掛かっていたのかあれほど混雑していた依頼受付も閑散としていた。
おやっさんの姿がカウンターの向こうに見えたので近づいていくと、手で2階を指したので頷き合図を送り、ギルドの正面入り口からは見えずらい所に設置されている階段から2階に上がった。
初めて上がったギルドの2階はいくつかの扉が並んでいるこの世界の事務所という感じか。
一番奥の他に比べて少し大きな扉が少し開けられているのが見える、
キールは迷うことなくその扉を目指す、キールにしてみれば知って居る気配からどこに誰がいるかくらいこの街中なら意識しなくてもわかるのだろう。
俺も意識して気配察知を使えば、この狭い空間ぐらいならばわかる。
まだキールの様に心根の中を探っての敵味方まではわからない、今のところ意識して相手の魔力量の様なものを光の強弱で現すことができる様になったくらいか、魔力の属性までの判別はもう一段階修練が必要だ。
少し開けられた扉の先には、大きな文机とソファーセットがあって、大きな窓を背にしてその文机におやっさんが座っていた、
服装は作業している時から汚れ防止のエプロンを外しただけなのに、書類を捌いているだけでギルド長にちゃんと見えるから不思議だ。
何か書類にペンを走らせていたおやっさんはその書類を持って椅子から立ち上がると、部屋の真ん中に据えられているソファーセットの一人がけの方に座った。
キールがその対面にある二人用のソファに座ったので、俺はその隣に座ることにした。
ソファーの前にあるローテーブルの上に手にした書類を滑らせたおやっさっんいやギルド長は、俺ではなくキールの目を見て口を開いた。
「昨日納品してもらったブツの等級と状態の良さから、君の仕事だと思ったがそうでは無いという。少し疑ったところはあったが一日君たちの様子を見させてもらって、君たちが偽の申請をしていないと儂が判断した。その上でもう一つ昨日のそれら以上のものがあるかと尋ねたら、自信満々であると……ならばそれを持って判断させてもらうということになった。その結果がこれだ」
覗き込んだ書類にはアークという名前の下に、Dランクに昇級と書いてある。
「君の実力であればCでも構わないと思うが、この帝国でもその若さでCランクは目立つなという方が無理だ。後もう少しそう一年でもおくか、またはもっと冒険者の多くいるダンジョン都市にでも行って昇級すればそんなに目立つこともないかもしれないが……」
目立つ事は求めていないという俺たちの心情をわかっているのだろう。
「君ほどの実力があって、Cランクのままでいるということはそう言うことだろう」
ギルド長の顔をしておやっさんは目を細めてキールを見ている。
なんでもギルド長を務めるような人間は、ギルドに貢献が大の者。簡単に言えばランクの高かった元冒険者上がりの者が務めるのだとか。
剥取り担当の様な顔をしてこのおやっさんも、冒険者の国であるこの帝国でそれほど大きな街ではないとしても、魔の森に近い所にあるギルドの長なのだから一流ランクの冒険者であったのだろう。
きっとキールはそんなこともお見通しで、そんなキールの隠している実力もその一部であってもおやっさんは感じ取っていて、自分の討伐した獲物を他人のものとする様な事はしないだろうと言う判断もあった事だと思う。
思いがけないお土産をもらって、その後一階の窓口で無事に俺はDランクのギルドタグを手にした。
昼近くになっていたので、もう一泊したらどうかと勧められたが、俺たちは初めの計画通りムウリカの街から旅立ったのだ。
人を見る目はあるつもりだ、おや……ギルド……めんどくさい、おやっさんでいいか……が言う。
キールの言葉を信じたおやっさんは、昨日の分の査定と、今から新たに見せる大熊で判断を下したい、と言った。
「判断?」
急かされるように、俺はさっき出し掛けた魔獣を、作業台の上にマジックバックから出すような擬装は忘れずに出した。
倒した時は気付かなかったが、目の前に出した大熊魔獣は殊の外大きかった。
「こいつは深淵の……それにこのキズは……」
俺が出したブツを検分しながらおやっさんはその手は止めずにブツブツと呟きながら、何か書類のような物にチェックを入れている。
俺が大熊の額に開けたレーザーによる焼け焦げた穴とか、全く腐敗していない事とか、今の俺のランクや年齢などから怪しい事は山盛りであると思うけど、眉間に皺は寄せているが身上に対しては聞かれる事なく、査定に必要などの場所で誰が討伐したかなど聞かれただけでその場の査定は終わった。
「剥取りはお願いします。その他欲しい素材も無いので全部買取でお願いします」
キールがどこのギルドでも変わらないやり取りをして建物を出る事とする。
俺たちは入った時に使った扉からもう一度ギルドの窓口に行って呼ばれるまで待つ様に指示されて、おやっさんは他にある扉から戻るようだ。
ギルドの中に戻ると、思ったよりも時間が掛かっていたのかあれほど混雑していた依頼受付も閑散としていた。
おやっさんの姿がカウンターの向こうに見えたので近づいていくと、手で2階を指したので頷き合図を送り、ギルドの正面入り口からは見えずらい所に設置されている階段から2階に上がった。
初めて上がったギルドの2階はいくつかの扉が並んでいるこの世界の事務所という感じか。
一番奥の他に比べて少し大きな扉が少し開けられているのが見える、
キールは迷うことなくその扉を目指す、キールにしてみれば知って居る気配からどこに誰がいるかくらいこの街中なら意識しなくてもわかるのだろう。
俺も意識して気配察知を使えば、この狭い空間ぐらいならばわかる。
まだキールの様に心根の中を探っての敵味方まではわからない、今のところ意識して相手の魔力量の様なものを光の強弱で現すことができる様になったくらいか、魔力の属性までの判別はもう一段階修練が必要だ。
少し開けられた扉の先には、大きな文机とソファーセットがあって、大きな窓を背にしてその文机におやっさんが座っていた、
服装は作業している時から汚れ防止のエプロンを外しただけなのに、書類を捌いているだけでギルド長にちゃんと見えるから不思議だ。
何か書類にペンを走らせていたおやっさんはその書類を持って椅子から立ち上がると、部屋の真ん中に据えられているソファーセットの一人がけの方に座った。
キールがその対面にある二人用のソファに座ったので、俺はその隣に座ることにした。
ソファーの前にあるローテーブルの上に手にした書類を滑らせたおやっさっんいやギルド長は、俺ではなくキールの目を見て口を開いた。
「昨日納品してもらったブツの等級と状態の良さから、君の仕事だと思ったがそうでは無いという。少し疑ったところはあったが一日君たちの様子を見させてもらって、君たちが偽の申請をしていないと儂が判断した。その上でもう一つ昨日のそれら以上のものがあるかと尋ねたら、自信満々であると……ならばそれを持って判断させてもらうということになった。その結果がこれだ」
覗き込んだ書類にはアークという名前の下に、Dランクに昇級と書いてある。
「君の実力であればCでも構わないと思うが、この帝国でもその若さでCランクは目立つなという方が無理だ。後もう少しそう一年でもおくか、またはもっと冒険者の多くいるダンジョン都市にでも行って昇級すればそんなに目立つこともないかもしれないが……」
目立つ事は求めていないという俺たちの心情をわかっているのだろう。
「君ほどの実力があって、Cランクのままでいるということはそう言うことだろう」
ギルド長の顔をしておやっさんは目を細めてキールを見ている。
なんでもギルド長を務めるような人間は、ギルドに貢献が大の者。簡単に言えばランクの高かった元冒険者上がりの者が務めるのだとか。
剥取り担当の様な顔をしてこのおやっさんも、冒険者の国であるこの帝国でそれほど大きな街ではないとしても、魔の森に近い所にあるギルドの長なのだから一流ランクの冒険者であったのだろう。
きっとキールはそんなこともお見通しで、そんなキールの隠している実力もその一部であってもおやっさんは感じ取っていて、自分の討伐した獲物を他人のものとする様な事はしないだろうと言う判断もあった事だと思う。
思いがけないお土産をもらって、その後一階の窓口で無事に俺はDランクのギルドタグを手にした。
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