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チュート殿下 47 伯爵王子と教練場 1
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『……自分の目の前で、自分のことを話されるのって、どのような内容でも恥ずかしいものだね』
誰も居なくなった廊下で、漏れてくる授業の音を聞きながら、赤の光点の下にゆっくりと向かう。
ここでの有益な情報は、結構俺の容姿、というか髪色が広がっているということと、異母兄が「伯爵王子」と呼ばれていることを知ったこと、かな。
みんながみんなそういう風に言っているかは、これからの情報収集にもよるけれど、彼が王子として認識されていることは確かなことと、その「王子」の前に「伯爵」がつくことで、あまり敬っている感じがしていないように思ったのは、俺だけか?
その俺の考えに、魔力の波動から、その時の心情まで推し量るころができるらしいキールが、俺の考えを肯定してくれた。
『ただし、話をしていた集団の皆が、彼の方々に元々良い感情を抱いていないようでしたから』
という、注釈付きであるが。
確かに、王子云々の前に、彼の取り巻きを「虎の威を借る狐」って言っていたし。
取り巻きの質を見れば、本人の本質も見えてくるもの。
兎にも角にも、情報が少ない状態で考えても仕方が無いから、授業の様子でも見に行きますか。
目標は校舎から外に出て、教練場にいるようだ。魔術、武術、どちらの教練か?
初級学校でも二年生になると、それぞれの実力や能力に差が出てきて、教練の時は纏まって授業を受けることもないようだ。
俺が言うのもなんだが、王族の証といわれている「光属性」は、治癒に特化しているわけでもないが、あまりにも攻撃魔法がしょぼいため、治癒にしか利用されない。
王族にしょぼいですね、とも言えないから、水魔法でもできる治癒魔法はそこに存在が無いように、光魔法の治癒をありがたがっている。これは、貴族だけだけど……。
だから、光属性の王族は、戦場の前線に立つことなく、後方で治癒魔法を行うという建前の上でちまちま魔法を、貴族にのみ行使するというのが常識らしい。
教練場を一番上から覗き見ると、競技場も兼ねている教練場の中央に、何をすることもない数人の集団がただ立っているのが見える。
その周りでは、3,4人が人チームを作り、剣と魔法が入り乱れて戦いを行っている。
それぞれの戦闘フィールドは結界によって区別されていて、結界に当たった攻撃魔法はその壁に吸い込まれるように消えている。
使えても初級の初級の攻撃魔法だから、そう怖がるものでもないけど、当たればかすり傷では済まない可能性もある。
剣士タイプの者は、身体強化を使える者とそうでない者とは流石に戦わせていないようで、フィールドの隅の方で剣を振りながら、教師に教えを受けている者も見受けられる。
この初級学校への入学条件に、精霊契約ができた者というのがあるらしく、基本、初級の魔法は何かしら使えることになっているようだが、ただ発動するのと使いこなすのでは違うため、なかなかに難しいようだ。
俺の場合はあくまでもチートだから、一生懸命に訓練している人を見ると、逆に使いこなせることに罪悪感を感じるほどだ。
俺の心の動きを察した、キールが心配そうな視線を向けているのがわかる。
俺のこの感情は、違う捉え方をすれば、チートであるキールの存在を心の底で否定しているようにもとられかねないものだ。
俺は、そのような感情ではない事をハッキリとキールに伝える。
『できることに驕らないで、もっともっとキールと成長していきたいと、本気で思ってる!俺は、すっごく恵まれているんだと実感できるから』
傍から見れば、閉じ込められて命を狙われている、かわいそうな子供であることも事実だが、俺は前世のことや、これから起こるかもしれない受け入れがたい未来を知っていることを含めて、一番にキールがそばにいてくれることが最大の幸福であると思っているから。
そのことを、誠心誠意伝える。
二人しか存在していない教練場の一番上で、顔を見合わせて固まることしばし、フィールドの騒がしさで意識が戻った。
フィールドの真ん中に陣取って突っ立ているだけであった、例の集団がやたらめったら周りの結界に魔法を撃ち込み始めたのだ。
普段から面倒くさい連中なのだろう、結果、どこもあいつらを相手にすることを嫌がって、お山の大将よろしく、中央で立ちんぼ。
いくらバカでもこの状態の意味を知り、今頃になって暴れ始めた、というところか。
教師たちも扱い辛いのだろうなぁ、何と言ってもこの騒ぎの中心にいるのが「伯爵王子」なのだから。
誰も居なくなった廊下で、漏れてくる授業の音を聞きながら、赤の光点の下にゆっくりと向かう。
ここでの有益な情報は、結構俺の容姿、というか髪色が広がっているということと、異母兄が「伯爵王子」と呼ばれていることを知ったこと、かな。
みんながみんなそういう風に言っているかは、これからの情報収集にもよるけれど、彼が王子として認識されていることは確かなことと、その「王子」の前に「伯爵」がつくことで、あまり敬っている感じがしていないように思ったのは、俺だけか?
その俺の考えに、魔力の波動から、その時の心情まで推し量るころができるらしいキールが、俺の考えを肯定してくれた。
『ただし、話をしていた集団の皆が、彼の方々に元々良い感情を抱いていないようでしたから』
という、注釈付きであるが。
確かに、王子云々の前に、彼の取り巻きを「虎の威を借る狐」って言っていたし。
取り巻きの質を見れば、本人の本質も見えてくるもの。
兎にも角にも、情報が少ない状態で考えても仕方が無いから、授業の様子でも見に行きますか。
目標は校舎から外に出て、教練場にいるようだ。魔術、武術、どちらの教練か?
初級学校でも二年生になると、それぞれの実力や能力に差が出てきて、教練の時は纏まって授業を受けることもないようだ。
俺が言うのもなんだが、王族の証といわれている「光属性」は、治癒に特化しているわけでもないが、あまりにも攻撃魔法がしょぼいため、治癒にしか利用されない。
王族にしょぼいですね、とも言えないから、水魔法でもできる治癒魔法はそこに存在が無いように、光魔法の治癒をありがたがっている。これは、貴族だけだけど……。
だから、光属性の王族は、戦場の前線に立つことなく、後方で治癒魔法を行うという建前の上でちまちま魔法を、貴族にのみ行使するというのが常識らしい。
教練場を一番上から覗き見ると、競技場も兼ねている教練場の中央に、何をすることもない数人の集団がただ立っているのが見える。
その周りでは、3,4人が人チームを作り、剣と魔法が入り乱れて戦いを行っている。
それぞれの戦闘フィールドは結界によって区別されていて、結界に当たった攻撃魔法はその壁に吸い込まれるように消えている。
使えても初級の初級の攻撃魔法だから、そう怖がるものでもないけど、当たればかすり傷では済まない可能性もある。
剣士タイプの者は、身体強化を使える者とそうでない者とは流石に戦わせていないようで、フィールドの隅の方で剣を振りながら、教師に教えを受けている者も見受けられる。
この初級学校への入学条件に、精霊契約ができた者というのがあるらしく、基本、初級の魔法は何かしら使えることになっているようだが、ただ発動するのと使いこなすのでは違うため、なかなかに難しいようだ。
俺の場合はあくまでもチートだから、一生懸命に訓練している人を見ると、逆に使いこなせることに罪悪感を感じるほどだ。
俺の心の動きを察した、キールが心配そうな視線を向けているのがわかる。
俺のこの感情は、違う捉え方をすれば、チートであるキールの存在を心の底で否定しているようにもとられかねないものだ。
俺は、そのような感情ではない事をハッキリとキールに伝える。
『できることに驕らないで、もっともっとキールと成長していきたいと、本気で思ってる!俺は、すっごく恵まれているんだと実感できるから』
傍から見れば、閉じ込められて命を狙われている、かわいそうな子供であることも事実だが、俺は前世のことや、これから起こるかもしれない受け入れがたい未来を知っていることを含めて、一番にキールがそばにいてくれることが最大の幸福であると思っているから。
そのことを、誠心誠意伝える。
二人しか存在していない教練場の一番上で、顔を見合わせて固まることしばし、フィールドの騒がしさで意識が戻った。
フィールドの真ん中に陣取って突っ立ているだけであった、例の集団がやたらめったら周りの結界に魔法を撃ち込み始めたのだ。
普段から面倒くさい連中なのだろう、結果、どこもあいつらを相手にすることを嫌がって、お山の大将よろしく、中央で立ちんぼ。
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