転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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クリフ・マークィス・ゲイル 5

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私が王都にやって来て五年の歳月が流れた。

 昨年、無事に精霊契約の儀式に臨み、我が侯爵家の当主が必ず結ばれなくてはならない水の精霊と契約を結ぶことができた。

 それもただの水の聖霊ではなく、どうも父親の契約した精霊よりも上位の精霊のようで、髪の色も目の色も父親よりも濃い青色を得ることができた。

 そのことに喜びながらも時々余り良い感情がこもったとは思えない瞳で私を見ることが増えてきた父親に、今までのように肯定できない気持ちが育ってきていることを止めることができないでいた。

 そして私の一年前には、あの伯爵王子も精霊契約を済ませ、一般的な感覚でいえば不義の子供であったことをその契約で表ざたになったということなのに、王の子供であることを証明したことによって、その立場がより明確になった、という少しおかしなことになっている。

 つまり、弱くはあるが非常に弱くはあるが、我が国の王家特有ともいえる光の精霊と契約ができたということだ。髪の色にほんのりと金が浮かぶような一見薄い茶色に、瞳は薄い青の二属性。

 この年は精霊と契約できた者が殊の外少なく、髪の色と瞳の色が契約によって変化した伯爵王子は、それは目立ち、控えの間で待っていた国王陛下に抱きしめられて寿がれたことで、一気にその存在が在野まで知られることになった。

 そして今年は我が妹フォスキーアを含めて、かの本物の殿下も精霊契約を結ぶ十歳だ。

 まだ成人前である私は、当然の如く神殿までついていくことは許されなかったので、タウンハウスで大人しく儀式を終えて帰ってくる妹たちを待つ。

 流石に精霊契約の儀式を受けない、などということはできるわけもなく、この王都に来ることを嫌がっていた妹も母と共に五日前にはこの屋敷に到着していた。

 初めての王都に興味を示すことは無く、何か本能的にこの王都を嫌っている妹。

 母も幼い妹の意志を尊重する態度を崩す事なく、自身もこの王都に滞在することを厭っていることを隠しもしない。

 子供の目からも決して夫婦仲が悪いようにも見えないのだが、表ではなく裏側の力関係が、父よりも母が強い面があることに、その醸し出す空気で気付くものだ。

 今日も母は神殿までついていくことなく、渋る妹をこの屋敷で見送った。

 今はこの屋敷の中で一番見晴らしと日当たりの良い夫人の主室で、私と同じように妹たちの帰りを待っていることだろう。

 ……結果。妹は無事私と同じように精霊と契約ができたようで、朝とは全く違う色を纏って帰ってきた。

 ただ私がほぼ水に特化していることとは違って、水とそして土の精霊の二属性を備え、魔力量も多い、とても貴重な令嬢に生まれ変わって帰ってきたのだが……。

 このことは本来ならば、とても喜ばしく誇らしいものであるはずのものである。

 しかし、喜びの儀式から帰ってきたはずの妹は、挨拶もそこそこに自室にこもってしまったし、率先して祝いの宴でも開こうとした父親も、娘のこと以上に気になることでもあったのか、館に帰ってきたと思いしな、王城にとんぼ返りしてしまった。

 私は仕方なく、今日の儀式に付添としていた侍女長に説明を求めたが、もちろんあの儀式の中までついて行けるわけもなく、神殿の中にも入っていくことができずに、外で待っていた侍女長には詳しい状況もわかるはずもなく……。

「お嬢様が、『きらきらひかる髪の毛の方が居たの……。あの方は……怖い……』とおっしゃられた後ふさぎこまれてしまいまして……。旦那様も魔法でどなたかとお話をされていたのか、馬車の中でも全くお嬢様にお声をかけてくださることもなくて……」

 と、いつもは全く浮かべない不満を顔一面に浮かばせて、母に呼ばれると下がっていった。

 何が起こったのかわからないまま、結局妹のための祝いを行うこともなく、妹は流石にプレ舞踏会には出席しなければならずに出席したが、その感想を話すことなく領地に帰ってしまった。

  すぐに初級学校に入学しなければならないのにだ。

 もちろん母は妹について行き、父はそのことに何も言わなかった。

 そんな父は、妹のことにも母のことにも全く気を留めていないようで、そのことに日々不満が募っていた矢先に、私は父に王城の執務室に呼び出された。

  初めて訪れる宰相である父の執務室。

  ドキドキする心臓を抑えながら、憧れの王城で、何かと不満に思っていることがあったとしても尊敬している父から直接下された初仕事は、初級学校においての王子殿下との接触だった。
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