162 / 196
チュート殿下 120 この世界の理に 8
しおりを挟む
朝だ。
今まで体験したことがないほど爽やかな朝だ。
あの国以外でも今まで何度か朝を迎えたことはあったが、とにかくなぜだか今までとは何かが違う朝なのだ。
俺のことがわかってしまうキールと同じ様に、俺ももしかしなくてもキールの心持がわかっているのかもしれない。意識していなかっただけで。
だから今のこのすっきりした気持は、自分だけでなくキールの心根も含まれたものなのかもしれないなぁ、と思いつつ、隣のベッドに寝ているキールの様子を窺う。
『そう言えば寝ているキールの姿とか、記憶にないかもしれない』
昨日の夜寝てしまった時間が早かったようで、窓の外の朝日もこれからが本番という色合いに見える。
ゆっくりと音を立てないようにキールの寝ているはずのベッドの方に体を向ける。
キールの存在は俺にとってあまりにも近すぎて、人だとかそうじゃないとか全く意識するものでは無かったが、きっちり人として存在しているキールは、今までとは違うもの。
俺に対しての話し方も、年上でランクも上の冒険者であれば俺の方が敬語で話しかけなければいけないはずなのに、「他に人が居なければ今まで通りに」と、やたら丁寧な侍従モードを変えない。
それに反論するのも子供っぽいので、「キールはキールだし」と自分の中で折り合いをつけた。それは言葉遣いだけではなく、その存在に対してだということは、目が覚めた瞬間すんなりと認められたことだ。
段々と明るくなりつつある部屋の中で、隣のベッドの上にこちらに背を向けているキールの後ろ頭が見える。
寝息は聞き取ることはできない。
「生きているよね?……」
心の声はしっかりと唇に乗っていたようで……。
「……生きてますよ。この状態がそうであると言うのなら……」
そう、音もなく振り返るキールと目が合った。
寝転がったままのキールも珍しいな。
まだ俺も起きたばかりで思考も寝ぼけているのか、意味も無い変な方向に思考が転がっていく……。
起き上がって朝の支度を始める。この宿は風呂も洗面所も付いているので、洗面用の水がわざわざ用意されるのを待つ事無くすぐに動けるので、俺としてはこっちの方が楽だ。
流石に朝風呂とまではいかないから、洗面所で顔を洗うだけにする。
いつの間にか背後にキールが立っていて顔を拭く布を持っていた。
なぜかキールはすでにしっかりと外出できる準備ができている。
「……なんかずるい……」
こいつ汗かいたりしないのか?そう言えばトイレとか……?
『何変な事考えてるのですか……確かに実体を持った以上排せつ物に関しては同じようにした方がいいのかなぁ……必要はないけど……』
ふむふむと考えるようなそぶりを見せながらわざわざ念話で聞いてくるところはやっぱりキールであった、変わっていないところに安心した。
アミュレット王国の中では、キールは一種のバグ。あくまでも俺のスキルの一つとして存在しているから、誰にでも見える所謂実体化をしても、人間というか生物としての営みとして必要な呼吸とか排泄とか睡眠や食事だって、全く必要ではなかったようだ……。
俺がそのようなことを全く意識していなかったので、言われるまで全く気付かなかった。
だからあの国以外では、人間として存在できるということで、随分と喜んでいたキールも、きちんとした?人間として生活していくうえで、普通の姿を取るのであれば、食事や睡眠はもちろんのこと、排せつや汗をかくこと等も、行った方がいいのか、ということになったのだ。
……必要のないことをわざわざする必要もないのでは?
と俺は考えてしまうのだが、俺以外の人間が居るとことでそれらのことを全く行わなかったら流石におかしく思われるか知れないが、それはその時に考えればいいような気がした。
「俺と二人きりの間は別に考えなくてもいいのではないか?じっくり腰を据えるようなことがあれば、不都合もあるだろうが、どうせ一泊すれば次の街に向かうのだろう?」
すでに荷物もすべてキールのストレージにしまってしまった。何も荷物を持っていないと冒険者としておかしいかもしれないから、簡単な装備は携えているけど。
今まで体験したことがないほど爽やかな朝だ。
あの国以外でも今まで何度か朝を迎えたことはあったが、とにかくなぜだか今までとは何かが違う朝なのだ。
俺のことがわかってしまうキールと同じ様に、俺ももしかしなくてもキールの心持がわかっているのかもしれない。意識していなかっただけで。
だから今のこのすっきりした気持は、自分だけでなくキールの心根も含まれたものなのかもしれないなぁ、と思いつつ、隣のベッドに寝ているキールの様子を窺う。
『そう言えば寝ているキールの姿とか、記憶にないかもしれない』
昨日の夜寝てしまった時間が早かったようで、窓の外の朝日もこれからが本番という色合いに見える。
ゆっくりと音を立てないようにキールの寝ているはずのベッドの方に体を向ける。
キールの存在は俺にとってあまりにも近すぎて、人だとかそうじゃないとか全く意識するものでは無かったが、きっちり人として存在しているキールは、今までとは違うもの。
俺に対しての話し方も、年上でランクも上の冒険者であれば俺の方が敬語で話しかけなければいけないはずなのに、「他に人が居なければ今まで通りに」と、やたら丁寧な侍従モードを変えない。
それに反論するのも子供っぽいので、「キールはキールだし」と自分の中で折り合いをつけた。それは言葉遣いだけではなく、その存在に対してだということは、目が覚めた瞬間すんなりと認められたことだ。
段々と明るくなりつつある部屋の中で、隣のベッドの上にこちらに背を向けているキールの後ろ頭が見える。
寝息は聞き取ることはできない。
「生きているよね?……」
心の声はしっかりと唇に乗っていたようで……。
「……生きてますよ。この状態がそうであると言うのなら……」
そう、音もなく振り返るキールと目が合った。
寝転がったままのキールも珍しいな。
まだ俺も起きたばかりで思考も寝ぼけているのか、意味も無い変な方向に思考が転がっていく……。
起き上がって朝の支度を始める。この宿は風呂も洗面所も付いているので、洗面用の水がわざわざ用意されるのを待つ事無くすぐに動けるので、俺としてはこっちの方が楽だ。
流石に朝風呂とまではいかないから、洗面所で顔を洗うだけにする。
いつの間にか背後にキールが立っていて顔を拭く布を持っていた。
なぜかキールはすでにしっかりと外出できる準備ができている。
「……なんかずるい……」
こいつ汗かいたりしないのか?そう言えばトイレとか……?
『何変な事考えてるのですか……確かに実体を持った以上排せつ物に関しては同じようにした方がいいのかなぁ……必要はないけど……』
ふむふむと考えるようなそぶりを見せながらわざわざ念話で聞いてくるところはやっぱりキールであった、変わっていないところに安心した。
アミュレット王国の中では、キールは一種のバグ。あくまでも俺のスキルの一つとして存在しているから、誰にでも見える所謂実体化をしても、人間というか生物としての営みとして必要な呼吸とか排泄とか睡眠や食事だって、全く必要ではなかったようだ……。
俺がそのようなことを全く意識していなかったので、言われるまで全く気付かなかった。
だからあの国以外では、人間として存在できるということで、随分と喜んでいたキールも、きちんとした?人間として生活していくうえで、普通の姿を取るのであれば、食事や睡眠はもちろんのこと、排せつや汗をかくこと等も、行った方がいいのか、ということになったのだ。
……必要のないことをわざわざする必要もないのでは?
と俺は考えてしまうのだが、俺以外の人間が居るとことでそれらのことを全く行わなかったら流石におかしく思われるか知れないが、それはその時に考えればいいような気がした。
「俺と二人きりの間は別に考えなくてもいいのではないか?じっくり腰を据えるようなことがあれば、不都合もあるだろうが、どうせ一泊すれば次の街に向かうのだろう?」
すでに荷物もすべてキールのストレージにしまってしまった。何も荷物を持っていないと冒険者としておかしいかもしれないから、簡単な装備は携えているけど。
33
あなたにおすすめの小説
転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~
ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。
コイツは何かがおかしい。
本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。
目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る
マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息
三歳で婚約破棄され
そのショックで前世の記憶が蘇る
前世でも貧乏だったのなんの問題なし
なによりも魔法の世界
ワクワクが止まらない三歳児の
波瀾万丈
転生貴族のスローライフ
マツユキ
ファンタジー
現代の日本で、病気により若くして死んでしまった主人公。気づいたら異世界で貴族の三男として転生していた
しかし、生まれた家は力主義を掲げる辺境伯家。自分の力を上手く使えない主人公は、追放されてしまう事に。しかも、追放先は誰も足を踏み入れようとはしない場所だった
これは、転生者である主人公が最凶の地で、国よりも最強の街を起こす物語である
*基本は1日空けて更新したいと思っています。連日更新をする場合もありますので、よろしくお願いします
【完結】ポーションが不味すぎるので、美味しいポーションを作ったら
七鳳
ファンタジー
※毎日8時と18時に更新中!
※いいねやお気に入り登録して頂けると励みになります!
気付いたら異世界に転生していた主人公。
赤ん坊から15歳まで成長する中で、異世界の常識を学んでいくが、その中で気付いたことがひとつ。
「ポーションが不味すぎる」
必需品だが、みんなが嫌な顔をして買っていく姿を見て、「美味しいポーションを作ったらバカ売れするのでは?」
と考え、試行錯誤をしていく…
悪役令息に転生したけど、静かな老後を送りたい!
えながゆうき
ファンタジー
妹がやっていた乙女ゲームの世界に転生し、自分がゲームの中の悪役令息であり、魔王フラグ持ちであることに気がついたシリウス。しかし、乙女ゲームに興味がなかった事が仇となり、断片的にしかゲームの内容が分からない!わずかな記憶を頼りに魔王フラグをへし折って、静かな老後を送りたい!
剣と魔法のファンタジー世界で、精一杯、悪足搔きさせていただきます!
お前には才能が無いと言われて公爵家から追放された俺は、前世が最強職【奪盗術師】だったことを思い出す ~今さら謝られても、もう遅い~
志鷹 志紀
ファンタジー
「お前には才能がない」
この俺アルカは、父にそう言われて、公爵家から追放された。
父からは無能と蔑まれ、兄からは酷いいじめを受ける日々。
ようやくそんな日々と別れられ、少しばかり嬉しいが……これからどうしようか。
今後の不安に悩んでいると、突如として俺の脳内に記憶が流れた。
その時、前世が最強の【奪盗術師】だったことを思い出したのだ。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる