転生したら当て馬王子でした~絶対攻略される王太子の俺は、フラグを折って幸せになりたい~

HIROTOYUKI

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閑話 ある冒険者の話 3

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  元々俺の持ち物など何も持っていないので、本当に着の身着のまま家に帰る事はせずに冒険者ギルドに足を向けた。

  そう大きな街ではない、このままここで冒険者をするつもりであったが、さっきの様子ではすんなりいきそうもない。せっかく冒険者に向いたスキルを持つことができたのに、俺は……。

  冒険者ギルドは何時もと変わらず活気にあふれていた。

  2番目の兄ちゃんが口をきいてくれて、それから何くれとなく気をかけてくれた冒険者ギルドの兄さんは、このギルドの副ギルマスだった。

  今日の出来事をつっかえつっかえ話すと、腕を組み少し考えた様子を見せた後、大きく頷いてカウンターにいる受付嬢お姉さんの一人に声をかけた。

「彼、今日15歳になってスキルの確認済んだから、正式なランクの手続きして。それと……」

  気がつくと俺は一端の冒険者の装備を携えて、隣の街の街道に繋がっている門に立っていた。

「お前大物になるぜ。周りがお前の為に右往左往している中で、大いびき書いて寝ているんだからな」

  笑いながら俺の横に立ち上からバンバン叩いてくる大男は、この街からほぼ出たことない俺の為に、一緒に隣の街に行ってくれる大先輩の冒険者だ。

「この街生粋の冒険者としてこの街で育てたかったんだが、まぁその手間を隣のギルドに任せたって、この街で何年か後に立派な冒険者として活躍してくれていれば同じだよね」

  この様なお膳立てをしてくれた副ギルマスもわざわざ見送りに来てくれた。

  俺の親達が何か言ってくるか心配だったが、あの女将さんが言っていた様に、大人になった俺のことにその時点で口を出す資格はないそうだ。俺個人が借金をしているなどの場合、何かしら制約が生じる事はあるが、俺にはその様な事は全くないことはこの短時間でも証明できた。

「言ったら悪いけど、子供から搾取する親の典型だね」

  だから何を言われてもこっちは痛くもかゆくもないから、と言って笑ってる。

  俺はそのちょっと胡散臭くはあるけれど、優しい笑顔に口約束ではあってもこの約束は必ず守ると心に決めて、この辺境の街サウスエンドから旅立った。

  因みに、この俺の生まれ育った街の名前は、隣のギルドに行ってどこの出身か聞かれるまで意識する事なく、知りもしなかった。
   


  約束通りと言えるか、立派な冒険者にというか一応一人でも活動できる冒険者となって、この街に戻ってきた。

  このサウスエンドは魔の森に接している最前線の街であり、このタリスマン帝国からすれば最南端の街、ここから先は何もない所とされている。

  冒険者になって、いろいろと知るところによれば、この魔の森の向こうにも人の住む国があり、時々この国にやってくるらしい。その時は必ずこの街を通るのだとか……。

   この街の特殊な立地からも、この大昔に造られた砦を基にした城壁に囲まれた範囲より外に、人の住まう地域を増やす事は不可能だとされている。

  この街に戻ってきて時々魔の森の中、と言っても浅いところまで、に入る機会ができてなおのこと、この森の中に街を畑を人の営みを広げる事は無理だと感じた。

  タリスマン帝国ではそれぞれの街で自立していく事が国是とされているから、食糧の自給自足が非常に難しいこの街では、何かで金を稼いでそれで違う街から食糧を手に入れるしかない。

   曲がりなりにも食堂で育った俺は、この街で野菜やミルクの様な、魔獣の肉以外手に入れることが困難であることを知っている。肉といえば魔獣の肉ではなくて放牧されている牛や豚の肉をさすのが常識だと知ったのも、この街を出てからだった。

  その金を稼ぐ手段は、魔獣の肉を売りさばくことと、魔獣から薬になるツノやら爪やら、そして魔道具の燃料になる魔石を手に入れること。

   それとその魔獣討伐の様子をショウにして見せ、旅人観光客をこの街に招くことで、内需の拡大を図ることだと言う。
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