双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

HIROTOYUKI

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13 キャラバン隊の終点・辺境の村

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「あの言い伝えも今の俺のような経験をした者の戒めのようなものだったのかもしれない」

 山越えにもワイバーンや、氷魔法の魔獣、高山病の危険などがあるが、大回りをすること以外にこの山越えをしない道には、消えてしまう海の砂浜の道と魔法適性のあるものを溺れさせるような魔素の濃さがあるが、ヴォラスのような冒険者でない魔法適性のない者に取っては、こっちの道が辺境の村に行くただ一つのものと思えるのだ。

 ヴォラスは、この道のりを進む中で、10年前のカーラが、どの様な道を通って辺境の村にたどり着けたのかを考える。

 誰かに連れていってもらったのか、この道であっても山越えであっても、並大抵ではたどり着くことはできない。

「しかし……」

 ヴォラスは自身の持つマジックバックの中にしまわれている、彼女が作った彼女の名前が見えるポーションのことを思って迷いを振り捨てる。

 時々、思い出したように現れる巨大化している獣と、採取を得意とする冒険者が、狂喜するほど効能の高い薬草とに出会いながら、魔の森の淵、山の中腹を這うようにキャラバンは進む。

 全く変わり映えしなかった景色に変化が表れて来たのは、突然だった。一面に見えた魔の森の緑の中に一本の線が現れたと思ったら、真っ直ぐに張った布に入れた切れ目が広がっていくように,山の麓から薄緑の三角形が徐々に大きくなっていく。

 元気になった冒険者のリーダーが、山の形を確かめながら大きく頷いた。

「あの薄緑の所が辺境の村のある所だ、間違いない」

 その言葉を聞いて誰からともなく歓喜の声が上がった。

「「「やったー!やったぞ!俺たちはやったんだぁ!」」」

 まだまだ警戒領域只中だが、最後がわからない冒険程つらいものはないから、今だけ、リーダーのベテラン冒険者も苦笑いを浮かべるだけで、そのことを咎めることは無かった。

 幾分か、進む速度が速くなった気がする。目的地はまだまだ目の端に見えるほど先、今日中に到着するような距離ではない。

 薄緑に見える裂け目がどんどんと大きくなり、その中に一点建物があることが分かった時、その場に確かに人の営みがあることに安堵した。

 確認できる建物のようなものがしばらくの間その一つだけだった時には、少し不安になったが……。

 裂け目が見え始めてから5日目、やっと魔の森の端が切れて……高い山の山麓に広がる長閑な田舎の村が現れたのだった。

 
 
 村の中でも聞きなれない音が普段物音がしない方向からしてきたのは、もうそろそろ森に大きく西日が落ち始めたこれから夕飯時かな、という頃だ。

 冒険者たちも魔の森の浅いところから戻り、この村唯一の娯楽場であり宿泊施設であり、冒険者ギルドの支部もある通称「社交場」。その前の広場に、山と魔の森との境、太陽が沈む方向から大きな影を背負って、幌馬車を引き連れたキャラバン隊が現れたのだ。

 建物の中から冒険者たちが飛び出してくる。

 この辺境の村に馬はいない。馬が居ないので馬車は無い。

 馬だけでなく、この村には家畜が居ない。食用の動物は魔の森から調達する。

 今まで誰もこの村に来る時に、馬に乗ってくるものはいなかった、いや山越えで来ることしかできないと、考えられていたここに、馬で来るものはいなかったのだ。

 犬や猫、鶏、豚など家畜や愛玩動物といわれるものも、一切この村に運び込まれることがなかったから、馬も含めてこの村には居ない。

 だから、聞きなれていて、この村では聞きなれない馬の嘶きと蹄の立てる音に驚いて、建物から飛び出してきたのだ。

 押っ取り刀で、飛び出してきた冒険者たちは、やって来たキャラバン隊の中に顔見知りが居たことに驚いた。

 遅れること少し、この村の住人である元冒険者たちも疲れ切った顔に満面の笑みをたたえたキャラバン隊の中の見知った顔に驚くのだった。

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