14 / 57
13 キャラバン隊の終点・辺境の村
しおりを挟む
「あの言い伝えも今の俺のような経験をした者の戒めのようなものだったのかもしれない」
山越えにもワイバーンや、氷魔法の魔獣、高山病の危険などがあるが、大回りをすること以外にこの山越えをしない道には、消えてしまう海の砂浜の道と魔法適性のあるものを溺れさせるような魔素の濃さがあるが、ヴォラスのような冒険者でない魔法適性のない者に取っては、こっちの道が辺境の村に行くただ一つのものと思えるのだ。
ヴォラスは、この道のりを進む中で、10年前のカーラが、どの様な道を通って辺境の村にたどり着けたのかを考える。
誰かに連れていってもらったのか、この道であっても山越えであっても、並大抵ではたどり着くことはできない。
「しかし……」
ヴォラスは自身の持つマジックバックの中にしまわれている、彼女が作った彼女の名前が見えるポーションのことを思って迷いを振り捨てる。
時々、思い出したように現れる巨大化している獣と、採取を得意とする冒険者が、狂喜するほど効能の高い薬草とに出会いながら、魔の森の淵、山の中腹を這うようにキャラバンは進む。
全く変わり映えしなかった景色に変化が表れて来たのは、突然だった。一面に見えた魔の森の緑の中に一本の線が現れたと思ったら、真っ直ぐに張った布に入れた切れ目が広がっていくように,山の麓から薄緑の三角形が徐々に大きくなっていく。
元気になった冒険者のリーダーが、山の形を確かめながら大きく頷いた。
「あの薄緑の所が辺境の村のある所だ、間違いない」
その言葉を聞いて誰からともなく歓喜の声が上がった。
「「「やったー!やったぞ!俺たちはやったんだぁ!」」」
まだまだ警戒領域只中だが、最後がわからない冒険程つらいものはないから、今だけ、リーダーのベテラン冒険者も苦笑いを浮かべるだけで、そのことを咎めることは無かった。
幾分か、進む速度が速くなった気がする。目的地はまだまだ目の端に見えるほど先、今日中に到着するような距離ではない。
薄緑に見える裂け目がどんどんと大きくなり、その中に一点建物があることが分かった時、その場に確かに人の営みがあることに安堵した。
確認できる建物のようなものがしばらくの間その一つだけだった時には、少し不安になったが……。
裂け目が見え始めてから5日目、やっと魔の森の端が切れて……高い山の山麓に広がる長閑な田舎の村が現れたのだった。
村の中でも聞きなれない音が普段物音がしない方向からしてきたのは、もうそろそろ森に大きく西日が落ち始めたこれから夕飯時かな、という頃だ。
冒険者たちも魔の森の浅いところから戻り、この村唯一の娯楽場であり宿泊施設であり、冒険者ギルドの支部もある通称「社交場」。その前の広場に、山と魔の森との境、太陽が沈む方向から大きな影を背負って、幌馬車を引き連れたキャラバン隊が現れたのだ。
建物の中から冒険者たちが飛び出してくる。
この辺境の村に馬はいない。馬が居ないので馬車は無い。
馬だけでなく、この村には家畜が居ない。食用の動物は魔の森から調達する。
今まで誰もこの村に来る時に、馬に乗ってくるものはいなかった、いや山越えで来ることしかできないと、考えられていたここに、馬で来るものはいなかったのだ。
犬や猫、鶏、豚など家畜や愛玩動物といわれるものも、一切この村に運び込まれることがなかったから、馬も含めてこの村には居ない。
だから、聞きなれていて、この村では聞きなれない馬の嘶きと蹄の立てる音に驚いて、建物から飛び出してきたのだ。
押っ取り刀で、飛び出してきた冒険者たちは、やって来たキャラバン隊の中に顔見知りが居たことに驚いた。
遅れること少し、この村の住人である元冒険者たちも疲れ切った顔に満面の笑みをたたえたキャラバン隊の中の見知った顔に驚くのだった。
山越えにもワイバーンや、氷魔法の魔獣、高山病の危険などがあるが、大回りをすること以外にこの山越えをしない道には、消えてしまう海の砂浜の道と魔法適性のあるものを溺れさせるような魔素の濃さがあるが、ヴォラスのような冒険者でない魔法適性のない者に取っては、こっちの道が辺境の村に行くただ一つのものと思えるのだ。
ヴォラスは、この道のりを進む中で、10年前のカーラが、どの様な道を通って辺境の村にたどり着けたのかを考える。
誰かに連れていってもらったのか、この道であっても山越えであっても、並大抵ではたどり着くことはできない。
「しかし……」
ヴォラスは自身の持つマジックバックの中にしまわれている、彼女が作った彼女の名前が見えるポーションのことを思って迷いを振り捨てる。
時々、思い出したように現れる巨大化している獣と、採取を得意とする冒険者が、狂喜するほど効能の高い薬草とに出会いながら、魔の森の淵、山の中腹を這うようにキャラバンは進む。
全く変わり映えしなかった景色に変化が表れて来たのは、突然だった。一面に見えた魔の森の緑の中に一本の線が現れたと思ったら、真っ直ぐに張った布に入れた切れ目が広がっていくように,山の麓から薄緑の三角形が徐々に大きくなっていく。
元気になった冒険者のリーダーが、山の形を確かめながら大きく頷いた。
「あの薄緑の所が辺境の村のある所だ、間違いない」
その言葉を聞いて誰からともなく歓喜の声が上がった。
「「「やったー!やったぞ!俺たちはやったんだぁ!」」」
まだまだ警戒領域只中だが、最後がわからない冒険程つらいものはないから、今だけ、リーダーのベテラン冒険者も苦笑いを浮かべるだけで、そのことを咎めることは無かった。
幾分か、進む速度が速くなった気がする。目的地はまだまだ目の端に見えるほど先、今日中に到着するような距離ではない。
薄緑に見える裂け目がどんどんと大きくなり、その中に一点建物があることが分かった時、その場に確かに人の営みがあることに安堵した。
確認できる建物のようなものがしばらくの間その一つだけだった時には、少し不安になったが……。
裂け目が見え始めてから5日目、やっと魔の森の端が切れて……高い山の山麓に広がる長閑な田舎の村が現れたのだった。
村の中でも聞きなれない音が普段物音がしない方向からしてきたのは、もうそろそろ森に大きく西日が落ち始めたこれから夕飯時かな、という頃だ。
冒険者たちも魔の森の浅いところから戻り、この村唯一の娯楽場であり宿泊施設であり、冒険者ギルドの支部もある通称「社交場」。その前の広場に、山と魔の森との境、太陽が沈む方向から大きな影を背負って、幌馬車を引き連れたキャラバン隊が現れたのだ。
建物の中から冒険者たちが飛び出してくる。
この辺境の村に馬はいない。馬が居ないので馬車は無い。
馬だけでなく、この村には家畜が居ない。食用の動物は魔の森から調達する。
今まで誰もこの村に来る時に、馬に乗ってくるものはいなかった、いや山越えで来ることしかできないと、考えられていたここに、馬で来るものはいなかったのだ。
犬や猫、鶏、豚など家畜や愛玩動物といわれるものも、一切この村に運び込まれることがなかったから、馬も含めてこの村には居ない。
だから、聞きなれていて、この村では聞きなれない馬の嘶きと蹄の立てる音に驚いて、建物から飛び出してきたのだ。
押っ取り刀で、飛び出してきた冒険者たちは、やって来たキャラバン隊の中に顔見知りが居たことに驚いた。
遅れること少し、この村の住人である元冒険者たちも疲れ切った顔に満面の笑みをたたえたキャラバン隊の中の見知った顔に驚くのだった。
51
あなたにおすすめの小説
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
公爵家の五男坊はあきらめない
三矢由巳
BL
ローテンエルデ王国のレームブルック公爵の妾腹の五男グスタフは公爵領で領民と交流し、気ままに日々を過ごしていた。
生母と生き別れ、父に放任されて育った彼は誰にも期待なんかしない、将来のことはあきらめていると乳兄弟のエルンストに語っていた。
冬至の祭の夜に暴漢に襲われ二人の運命は急変する。
負傷し意識のないエルンストの枕元でグスタフは叫ぶ。
「俺はおまえなしでは生きていけないんだ」
都では次の王位をめぐる政争が繰り広げられていた。
知らぬ間に巻き込まれていたことを知るグスタフ。
生き延びるため、グスタフはエルンストとともに都へ向かう。
あきらめたら待つのは死のみ。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
婚約破棄された悪役令息は従者に溺愛される
田中
BL
BLゲームの悪役令息であるリアン・ヒスコックに転生してしまった俺は、婚約者である第二王子から断罪されるのを待っていた!
なぜなら断罪が領地で療養という軽い処置だから。
婚約破棄をされたリアンは従者のテオと共に領地の屋敷で暮らすことになるが何気ないリアンの一言で、テオがリアンにぐいぐい迫ってきてーー?!
従者×悪役令息
偽物勇者は愛を乞う
きっせつ
BL
ある日。異世界から本物の勇者が召喚された。
六年間、左目を失いながらも勇者として戦い続けたニルは偽物の烙印を押され、勇者パーティから追い出されてしまう。
偽物勇者として逃げるように人里離れた森の奥の小屋で隠遁生活をし始めたニル。悲嘆に暮れる…事はなく、勇者の重圧から解放された彼は没落人生を楽しもうとして居た矢先、何故か勇者パーティとして今も戦っている筈の騎士が彼の前に現れて……。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
なぜ処刑予定の悪役子息の俺が溺愛されている?
詩河とんぼ
BL
前世では過労死し、バース性があるBLゲームに転生した俺は、なる方が珍しいバットエンド以外は全て処刑されるというの世界の悪役子息・カイラントになっていた。処刑されるのはもちろん嫌だし、知識を付けてそれなりのところで働くか婿入りできたらいいな……と思っていたのだが、攻略対象者で王太子のアルスタから猛アプローチを受ける。……どうしてこうなった?
学院のモブ役だったはずの青年溺愛物語
紅林
BL
『桜田門学院高等学校』
日本中の超金持ちの子息子女が通うこの学校は東京都内に位置する幼少中高大院までの一貫校だ。しかし学校の規模に見合わず生徒数は一学年300人程の少人数の学院で、他とは少し違う校風の学院でもある。
そんな学院でモブとして役割を果たすはずだった青年の物語
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる