双子は不吉と消された僕が、真の血統魔法の使い手でした‼

HIROTOYUKI

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51 魔法契約

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 皆が協力して動き出してからは早かった。

 カーラの実家のファブレ商会の力も、この5年間で以前からは考えられないぐらい、経済だけではなく政治にも口を挟めるほど力を持つ者になっている。

 冒険者ギルドで、とても重要視されている魔の森の収穫について、実質すべてを任されているフロマは、この若さでその上女性でこの様な大仕事を任されるくらい、何事に関しても優秀な人物で、とくにその事務処理と交渉能力には定評がある。

 そのフロマも、カーラが本腰を入れて、以前暮らしていたであろうその国に戻ることを決めたことを知って、手を差し伸べることに躊躇は無かった。

 冒険者ギルドでもどうにもならないそれぞれの国での政治的駆け引きも、これからルフェルが通うことになるであろう魔導学院があるエクサルファ帝国での、ブレーズの実家の力も使う気満々で、カーラの事情を詳しく知っているわけではないが、自分の全力を持って万難を拝するために、できることはすべてやる覚悟で物事を進めていった。

 ブレーズが暴走しそうになってから、この村から山脈の向こうへ旅立てる時期を迎える最短の期間で、この村でできるすべてのことを準備し終えたカーラとルフェル親子は、ブレーズたちの冒険者パーティーを護衛に雇うという形を持って、この村から旅立つことにしたのだった。

 しばらくかかる旅程の準備をする中で、ブレーズたちパーティーは、普段はいることのなかった社交場の奥、この村のギルドの秘密の部屋に呼び出された。

 そう狭くもなく広くもなく、しかし窓がない部屋の中には、無骨な大きめのテーブルとベンチタイプの椅子が置かれているだけ。

 警戒しながらも全員が座れるような長い椅子に腰かける。ブレーズたち以外でこの部屋の中に居るのは、この村ただ一人のギルド職員のフロマとこの村の村長、そしてルフェルの母のカーラだった。

 窓はないためかやけに明るい魔灯がきらめいている室内で、話し始めたのはフロマだった。

「今回この部屋に来ていただいた一番の目的は、もちろんこの度のカーラ達への護衛のことについてですが、それに先立ち確認しておかなければならないことがありまして……そのことで来ていただいたのです」

 受付をしている時と全く違う雰囲気を醸し出すフロマに、少し気圧されるようになりながらも、一応リーダーであるブレーズが正面でその強い視線を受け止める。

「今回の護衛は普段の護衛契約と少し違うところがあります。まずその説明ですが……。今回の護衛についてはそもそもが少しイレギュラーであるので、今回この村からエクサルファ帝国まで護衛をしていただくことにあたり、普段の護衛契約書とは別に、魔法契約を結んでいただく必要があります」

 ブレーズたちパーティーの顔色を見ながらフロマは話を進めていく。

「魔法契約……⁉」

 魔法契約は、重大な機密事項などがある場合に、そのことを誰にも口外しないことを誓うために使われることが多い契約で、違反をすると定められた罰が魔法によって下されるというもの。

 普通の契約よりも手間も金銭的な負担も大きいため、冒険者がその対象として魔法契約を結ぶことは珍しいことだった。

 国の存亡にかかわるような何か災害が起こった時、Sランクメンバーの魔獣の討伐依頼など、魔法契約にかかる金額よりも随分と大きな金額が動くときに行われることがたまにあるくらいで、ブレーズのパーティーはこのようなことを経験したことはまだなかった。

「今回の護衛は俺たちから申し込んだようなものでもあるから、依頼料がそんなに高いことは無いし、魔法契約をする意味を考えられないが?」

 リーダーのブレーズではなく、契約などの頭脳労働が必要な時に担当となっている、魔術師が部屋の隅から声を上げた。

 そんな魔術師に同館の意を表すように一つ肯いてから、フロマは話を進める。

「今回はイレギュラーと言っても、普段魔法契約が使われる条件には当てはまらないものです。ただ、こちらとしましては非常に大切なことがこの護衛を受けてもらうことによって生じるのです。金額が問題ではないことは明らかですが……」

 ここでまた頭脳担当の魔術師が考え込みながら呟いた。

「私たちが依頼を受けることで生じること……何かとてつもない金銭を生じるかもしれないこと……情報ですか?」

 思考を整理し終えた魔術師の答えを聞いて、フロマたちは肯定もしなかったがまた否定もしなかった。

「情報?」

 その他のメンバー(リーダーを含む)は今一つ二人のやり取りの意味が解っていなかったが、ここであえて口をはさむほど頭が悪いわけではないので、黙って二人のやり取りを見守ることとした。

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