シスターもどきは諦めが悪い

夜ノポテ人

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夜勤バイト…終了

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予定通り夕方頃に起床し支度をする。やはり筋肉痛になったみたい。でも、思ったよりは酷くない。湯船に浸かったのが良かったのかも。まずは、食堂へ降りよう。

店内はすでに他のお客様で賑わい始めていたので手早く済ませて部屋に戻ろう。ナズナちゃんは……今日はお休みみたい…。話はまた今度かな。

何となくあっさりしたものが食べたい。鯖のみぞれ煮定食…これにしよう。ママさんやミリーと少し話したかったけど…今はやめておこう。

食べ終わり定食の代金を支払う。さらにお持ち帰りでサンドイッチを2つを購入。ママさんが不思議そうな顔をしていたけど、特に何も聞いてこなかった。二人に軽く挨拶してから部屋に戻る。

魔獣大図鑑の続きを読もうと思い、読み進めてみたけど…疲れからかすぐに眠くなってしまった。

アラームをセットしベッドに横たわる。数時間後にはまたあの作業を長時間やると考えると憂鬱だったけど、今日は昨日よりは上手く出来る気がする。慌てず、タイミングよく、落ち着いてやる。今日は失敗しない。


五時間ほど経過し、アラームが鳴る。支度を整えていざ二日目の夜勤バイトへ。

バイト先の工場へ向かう道中、仕事を終えた人達が疲れた表情だったり、安堵した表情を浮かべながらすれ違っていく。…羨ましい。私は今からバイトです。憂鬱です。今朝と真逆の気持ちになってしまう。

工場内の倉庫に着き管理者の方へ挨拶し更衣室に向かう。昨日と同じようにロッカーを開け、つなぎに着替える。やはり使い捨てマスクが一枚用意してある。

着替えてクリーンルームの前で待機していると倉庫内にチャイムが鳴る。しばらくして工場長のウォルドがやってきて他のバイトの人達を近くに集める。

「今日も時間までよろしく頼む。迅速に、丁寧にな。では持ち場についてくれ。新人も昨日と同じ場所で頼む」

「わかりました」

クリーンルームに入り、皆それぞれの持ち場に向かっていく。…私も頑張ろう。

ベルトコンベアが稼働する。ツナマヨが入った容器を両手で持ち上げ流れてくるおにぎりを待つ。…やはり重い。しかも筋肉痛が…。バイトが終わるまでもつかな…。


二時間が経過し、一回目の休憩時間を告げるチャイムが鳴る。やっと休憩。とりあえず外のベンチで休もう。

移動し、ベンチに腰を降ろす。…長い。立った二時間なのにこの体感時間は一体…。しかも何かおかしい。確かに筋肉痛はあるけど…やり方やコツがわかった分、気持ち的に楽になっているはず…。それを上回る肉体的疲労感。二日目とは言えこんなに疲れるものなのかな。でも、今はとにかく体を休めよう。

業務再開のチャイムが鳴りまた持ち場に向かう。うう…休憩時間短い…。あと三十分くれてもいいのに…。

作業中にふと違和感を感じる。ベルトコンベアの速度が昨日より上がっている…?こんなものだったかな?一つ具材を注入してからもう少し間隔が空いていたような…。疲れてるからそう感じるだけ…?いや、今は集中しよう。今日もミスしたらまずい。

さらに二時間経過し二回目の休憩時間になる。筋肉痛がさらに酷くなってきた。腕が重い。ママさんのサンドイッチを口に運ぶのも辛い。

それと、作業中もう一つ違和感を覚える。

ツナマヨの容器を交換するための冷蔵庫までの距離が…。遠くなっている?…なわけないよね。そんな事したら別の人に負担が掛かる(私が一度ズルしようと考えた事だけど…)
この場合だと隣の持ち場の人が楽になり私がキツくなる。そんな状態を上の人が許すはずはない。バイト同士立場は同じなんだから贔屓は認められない…はず。

そして、最後の業務再開のチャイムが鳴る。あと二時間…なんとか乗り切るしかない。

…またしてもミスをしてしまった。今回は昨日よりも酷い。おにぎりを四つも逃してしまった。でも、このおかげで先程の疑念が確信変わった。やはり、おかしい。昨日よりも素早く冷蔵庫に向かい持ち場に戻ったのに、戻った時点でおにぎり三つは過ぎた後だった(もう一つは唖然としている間に流れていった)

私のミスで間違いないのだけど…工場長に確認してみよう。コンベアの速度は理解出来る。『慣れてきたから少し速くした』と言われればそれまで。でも、冷蔵庫の件はダメ。完全に隣の人贔屓になる。…するなら新人の私の方に近付けてくれないと困る…(結局自己中な考えに…)

なんとか業務終了時間までやり切りクリーンルームを出る。大袈裟だけど凄まじく疲れた…。私の体力が無いだけなのか、単純な作業の割に実は重労働なのかわからない。とにかく終わった。

しばらくして工場長が昨日と同じようにやってく来る。

「皆よくやってくれた。今日の分を渡すから俺の前に並んでくれ。受け取ったら解散。次もよろしく頼む」

…。

昨日とほぼ同じセリフのような…。このおじさん…もしかして中身がロボットなんじゃ…?…まあ、同じ業務を繰り返しているから言うことも同じになるのかな…。気にしないでおこう。

工場長が皆に給料袋を渡していく。私も最後尾に並び給料を受け取る。

「お疲れさん。今日の分だ。…それよりどうした?昨日よりミスが多かったぞ。初日よりは慣れてきたはずだろ?」

一瞬ムカッときたけど我慢我慢。冷静になりなさいユリカ。工場長に噛み付いてはいけない。彼は上司。逆らってはいけない。『チミ、明日から来なくていいよ』と言われたらどうするの?大人の会話をするのです。

「すみませんでした。昨日の今日でまたミスをしてしまって…。そこそこ慣れてはきたのですが…。二つほど質問してもよろしいでしょうか?」

「構わんがどうかしたか?」

「昨日に比べてベルトコンベアの速度が上がっていると思うのですが…」

「その通りだ。昨日より一段階速い設定で機械を稼働させた。最初に言ったと思うが、この仕事はスピード勝負だ。いかに早く生産・納品出来るかが重要なんだ。昨日の時点で君がある程度こなせるとわかった以上、余裕を持てる程の業務スピードでやるのは非効率だからな。しっかり付いてきてくれよ」

いや、余裕なんか全然無かったですけど!二つもおにぎり逃したし、体力切れでバイト終了後もヘトヘトだったでしょ?!どこ見てんの!このおっさんは!?

…と言いたいけど抑えよう。上司が厳しいこと言うのは当たり前。期待の表れかもしれない…。

「そうだったのですね…。すみません。経験不足の未熟者で…。もう一つは私の持ち場についてなのですが…」

「何かあったか?床が油ぬるぬるで動けなかったとか?ハハッ!…今の面白かったろ?」

そんな訳ないでしょ。中華料理屋の厨房じゃあるまいし。自分でボケて何笑ってんの?全然面白くないし。寧ろ不愉快。確認してくるところもムカつく。…鼻に正拳突き食らわせてやりたい。

「いえ、油は無かったんですけど…。冷蔵庫の設置場所が昨日より少し離れているような気がするのですが…」

「それは確かか?もし、事実だとしたら…良くはないな」

「そうですね。離れた距離の分、私が遠くなりますから。その分体力を消耗しますし、隣の持ち場の人を贔屓している事になりますよね?平等じゃないです」

「そうだな…。言いたいことはわかるが…新人…」

「はい。何でしょうか?」

「君は年功序列という言葉を知っているか?」

いきなり何?それがどうしたの?説教タイムかな?疲れてるから遠慮させていただいきたいのですが…。

「何となくは知っていますが…」

「君の隣の持ち場を担当しているスタッフはな、この工場が出来た頃から働いてくれているんだ。無断欠勤も無いし、病欠も滅多に無い。優秀で信頼出来る人材だ」

「そうなんですか。それは頼もしいですね。…ですがこの件と何か関係があるのでしょうか?」

あえてとぼけてみる。何が言いたいか大体想像つくけど…。

「察しが悪いな。長年真面目に勤めてきた人間と、昨日来たばかりのいつ居なくなるかわからん人間…どちらに融通を利かせるのが普通か。答えは明白だろ?」

最初は『無駄の無いクールなおじさん』…なんて思った自分がアホらしい。良い格好したいだけの木偶の坊オヤジじゃないですか。事情はわかったけど…それを当事者の私に向かって言うべきではないと思う。『お前は新人で信用してないから多少キツくても我慢しろ』と言ってるようなもの。そんな事を言う工場長の下で働ける訳がない。こういう事をしてるから新人がすぐ辞めちゃうんでしょ?入れ替わりが激しいのは自分達のせいだとなぜ気付かないんですか?

…と逆に説教してやりたい。黙っとくけど…。無駄に疲れるし。

「そうですね。私はまだ新人ですから仕方ないのかもしれませんね」

面倒臭いから適当に話を合わせておこう。早く帰りたいな。

「大体、君は大袈裟だ。離れているって言っても昨日の位置から2メートルずらしただけだ。騒ぐほどのものじゃない」

お馬鹿。2メートルもずらしたら間に合うわけないでしょ。コンベアの速度も上がってるし、昨日の時点でギリギリだったんだから。よくおにぎり四つのミスで済んだものだ、と誉めてもらいたいくらい。このおっさんと話してるとイライラしてくる。残念だけど明日は来ません。何か他の策を考えよう。

「ソーデスネ。ワタシ大袈裟デシタ。スミマセンデシタ」

今度はこっちがロボットの番ですね。

「君はまだ若いし、体力もあるだろ?あっちは君より一回り上だし、持病の腰痛もある。それでも、一生懸命工場の為に働いてくれている」

知りません。興味も無いし、どうでもいいです。

「それは凄いですね。私には出来ないと思います。そこまで頑張って下さるスタッフ様がいらっしゃるとは…ここは素敵な職場ですね」

褒めてあげたから着替えて帰っていいですか?…まだダメ?

「新人の君もあと3年程ここで働けば良さが分かるようになる」

働く訳ないでしょ。ゴリラ男。そろそろバナナの時間じゃないですか?解散しましょうよ。

「そうですかねーアハハ…」

「ところで明日はどうする?シフトは空いているが…」

来ないって。どうせ明日もコンベアが更に速くなって冷蔵庫も離れてるんでしょ?無理だから。根性無しでごめんなさい。

「すみませんが、明日はお休みさせて頂きたいのですが…。少し疲れてしまって…」

途端に不服そうな顔をするゴリラ工場長(改名)

「そうか。…明後日はどうだ?」

もういいって。聞かなくても。

「すみません。予定がありまして…」

「むう…。色々言ったが俺は君に期待している。若さは力だからな。積極的にシフトに入ってくれるとありがたいのだが…」

私は放っておいてもらえるとありがたいです。さっきぞんざいに扱ったくせに何を今さら…。

「ご期待に添えず申し訳ありません」

「うーん…じゃあ、来れそうな時はその前日にでも申請に来てくれないか?すぐ入れると思うから」

しつこいゴリラですね。とにかく人手不足って事かな。

「わかりました。来れそうな時はそうさせてもらいます」

話が終わらないから承知しておく。

よほどお金が欲しい時じゃないと行かない…きっと。

「よろしく頼む。では、またな」

「はい。お疲れ様でした。失礼します」

その場を後にし更衣室に向かう。やっと業務からもゴリラ男からも解放された。早く着替えて家に帰ろう。

でも、明日バイトに入らないとなると別の方法でお金を稼がなきゃいけない。あと6000ゴルほど…。とりあえず家に帰って休んでから考えよう。
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