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第1章 牛肉勝負
2 お屋敷にやって来ました
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とある、お屋敷。それを前にして、五郎の連れは口を開いた。
「思ったより、小さい屋敷っすね」
「だな。豪商っていうから、もっとデカいとこ想像してたけど」
連れのチャライ青年に見える仙兎有希に、五郎も同意する。
五郎と同じく、この世界に異世界転生召喚された有希は、肩をすくめるようにして返す。
「こっちの世界の豪商って、成功したら、これ見よがしにデッカイ屋敷建てて、見栄を張るもんっすけどねぇ」
「奥ゆかしい性格してるんじゃないか?」
「だと良いんっすけどね。見栄を張るのは、羽振りの良さを見せて、商売を有利にしようって意味合いもあるっすから。そういうハッタリしなくても良いぐらい、やり手ってだけかもしれないっすよ」
「それで味の感じ方が変わるなら問題だけどよ、別にそういう訳でもねぇだろ。だったらいいさ」
五郎も肩をすくめるようにして返すと、玄関のドアを叩く。
「はいよ。今日は忙しいねぇ」
しわがれた、けれど生気の満ちた声で、1人の老婆が迎え入れる。
「料理勝負しに来たんだろ? アンタらも。話は聞いてるよ。連いてきな」
ろくに説明もせず、老婆は屋敷の中を歩き出す。そのあとを、五郎と有希の2人は連いていった。
「……アンタらは、文句言わないんだね」
「なにをっすか?」
「アンタらの前に来た連中は、ほとんどが文句たらたらだったよ。召使いのクセに態度がデカいだの、口のきき方が悪いだの、ババアじゃなくてもっと若いのを出せだの。はんっ! 王家御用達の料理人だか何だか知らないけどね、口の悪い奴らばっかだよ」
けらけらと笑う老婆。そんな老婆に、五郎は訊いた。
「ほとんど、ってことは、少しはマシなのが居たって事かい?」
「なんだい、気になんのかい?」
「そりゃな、勝負する相手だし。同じ勝負するんなら、楽しくやれる相手の方が良いや」
そう言って笑う五郎に、
「ガラの悪い笑い方するねぇ、アンタ」
「悪ぃな。元から目つきが悪くてよ。その分、愛嬌で勘弁してくれや」
「ははっ、なよなよしたのより、よっぽどアタシの好みだよ」
けらけらと老婆は楽しげに笑うと、
「そうそう、マシなヤツらの話だったね。だったら1人、女の子が来てるんだけどねぇ、あの子は良かったよ」
「へぇ、良い子だったんだ」
「ああ。こんな婆にも気を遣ってくれてね。丁寧だったよ。ああいう子に、うちの子の嫁に来て欲しいんだけどねぇ」
「うちのって、お姐さんの子供だと、結構年なんじゃないっすか?」
合いの手を入れるように問い掛ける有希に、
「婆に色目使うんじゃないよ、坊主が。誰が姐さんだい。むず痒くなるよ」
「そうっすか? 貫禄あるっすから、お婆さんとは言い辛いっすよ」
「はんっ! 無駄に年食ってるだけさ。それよりどこまで話したっけね? そうそう、ウチのバカ息子の話だった。あのバカ。いい年こいて、未だに色気より食い気だからねぇ。嫌になっちまうよ」
「美味い物を食いたいのに、年は関係ねぇさ」
「限度があるよ。あのバカったらねぇ、苦労して稼いだ金をじゃぶじゃぶ使って、何でもかんでも食い漁ってねぇ。飯なんざ、腹が太れば良いのさ。味なんざ、二の次だよ」
「美味い物食うのは、嫌いかい?」
穏やかな声で問い掛ける五郎に、毒気を抜かれたように老婆は返す。
「味なんか、気にする余裕のない時期の方が長かったんでね」
「そうかい。じゃ、美味い物食うのは、嫌いじゃないんだな? だったら、後で飯を作らせてくれねぇか?」
五郎の申し出に、老婆はじっと見つめると、
「アンタで、3人目だね」
「ん? なにがだい?」
「今日、うちに来た料理人で、アタシに美味い物を食わせてやるって言ったのがだよ。アンタと、もう一人はさっき言った女の子さ。あとの1人は、バカだね」
「バカっすか?」
思わず聞き返した有希に、老婆は楽しげに返す。
「ああ、バカだね、ありゃ。
ご老人。美味い物を食おうとしないのは人生の損失だ。それはいかん。吾輩が、人生の喜びを教えてやろう。
とか真顔で言うんだよ。バカだよ、どう考えたって。
ま、嫌いじゃないけどね、ああいうバカは」
笑いながらそう言って、あるドアの前まで辿り着くと、
「この先だよ、みんなが集まってるのは。ま、せいぜい頑張りな」
手短に言うと、そそくさとその場から離れようとする。そこに、
「ありがとな。あとで、美味い物食わせてやるから、楽しみに待っといてくれ」
五郎は軽く手を振って老婆に言うと、有希と一緒に部屋に入っていく。
それを見ながら、
「楽しみだよ。せいぜい頑張っとくれ」
老婆は楽しげに笑いながら、その場を後にした。
「思ったより、小さい屋敷っすね」
「だな。豪商っていうから、もっとデカいとこ想像してたけど」
連れのチャライ青年に見える仙兎有希に、五郎も同意する。
五郎と同じく、この世界に異世界転生召喚された有希は、肩をすくめるようにして返す。
「こっちの世界の豪商って、成功したら、これ見よがしにデッカイ屋敷建てて、見栄を張るもんっすけどねぇ」
「奥ゆかしい性格してるんじゃないか?」
「だと良いんっすけどね。見栄を張るのは、羽振りの良さを見せて、商売を有利にしようって意味合いもあるっすから。そういうハッタリしなくても良いぐらい、やり手ってだけかもしれないっすよ」
「それで味の感じ方が変わるなら問題だけどよ、別にそういう訳でもねぇだろ。だったらいいさ」
五郎も肩をすくめるようにして返すと、玄関のドアを叩く。
「はいよ。今日は忙しいねぇ」
しわがれた、けれど生気の満ちた声で、1人の老婆が迎え入れる。
「料理勝負しに来たんだろ? アンタらも。話は聞いてるよ。連いてきな」
ろくに説明もせず、老婆は屋敷の中を歩き出す。そのあとを、五郎と有希の2人は連いていった。
「……アンタらは、文句言わないんだね」
「なにをっすか?」
「アンタらの前に来た連中は、ほとんどが文句たらたらだったよ。召使いのクセに態度がデカいだの、口のきき方が悪いだの、ババアじゃなくてもっと若いのを出せだの。はんっ! 王家御用達の料理人だか何だか知らないけどね、口の悪い奴らばっかだよ」
けらけらと笑う老婆。そんな老婆に、五郎は訊いた。
「ほとんど、ってことは、少しはマシなのが居たって事かい?」
「なんだい、気になんのかい?」
「そりゃな、勝負する相手だし。同じ勝負するんなら、楽しくやれる相手の方が良いや」
そう言って笑う五郎に、
「ガラの悪い笑い方するねぇ、アンタ」
「悪ぃな。元から目つきが悪くてよ。その分、愛嬌で勘弁してくれや」
「ははっ、なよなよしたのより、よっぽどアタシの好みだよ」
けらけらと老婆は楽しげに笑うと、
「そうそう、マシなヤツらの話だったね。だったら1人、女の子が来てるんだけどねぇ、あの子は良かったよ」
「へぇ、良い子だったんだ」
「ああ。こんな婆にも気を遣ってくれてね。丁寧だったよ。ああいう子に、うちの子の嫁に来て欲しいんだけどねぇ」
「うちのって、お姐さんの子供だと、結構年なんじゃないっすか?」
合いの手を入れるように問い掛ける有希に、
「婆に色目使うんじゃないよ、坊主が。誰が姐さんだい。むず痒くなるよ」
「そうっすか? 貫禄あるっすから、お婆さんとは言い辛いっすよ」
「はんっ! 無駄に年食ってるだけさ。それよりどこまで話したっけね? そうそう、ウチのバカ息子の話だった。あのバカ。いい年こいて、未だに色気より食い気だからねぇ。嫌になっちまうよ」
「美味い物を食いたいのに、年は関係ねぇさ」
「限度があるよ。あのバカったらねぇ、苦労して稼いだ金をじゃぶじゃぶ使って、何でもかんでも食い漁ってねぇ。飯なんざ、腹が太れば良いのさ。味なんざ、二の次だよ」
「美味い物食うのは、嫌いかい?」
穏やかな声で問い掛ける五郎に、毒気を抜かれたように老婆は返す。
「味なんか、気にする余裕のない時期の方が長かったんでね」
「そうかい。じゃ、美味い物食うのは、嫌いじゃないんだな? だったら、後で飯を作らせてくれねぇか?」
五郎の申し出に、老婆はじっと見つめると、
「アンタで、3人目だね」
「ん? なにがだい?」
「今日、うちに来た料理人で、アタシに美味い物を食わせてやるって言ったのがだよ。アンタと、もう一人はさっき言った女の子さ。あとの1人は、バカだね」
「バカっすか?」
思わず聞き返した有希に、老婆は楽しげに返す。
「ああ、バカだね、ありゃ。
ご老人。美味い物を食おうとしないのは人生の損失だ。それはいかん。吾輩が、人生の喜びを教えてやろう。
とか真顔で言うんだよ。バカだよ、どう考えたって。
ま、嫌いじゃないけどね、ああいうバカは」
笑いながらそう言って、あるドアの前まで辿り着くと、
「この先だよ、みんなが集まってるのは。ま、せいぜい頑張りな」
手短に言うと、そそくさとその場から離れようとする。そこに、
「ありがとな。あとで、美味い物食わせてやるから、楽しみに待っといてくれ」
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それを見ながら、
「楽しみだよ。せいぜい頑張っとくれ」
老婆は楽しげに笑いながら、その場を後にした。
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