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第一章 街を作る前準備編
6 神さん会議 その④ 三人称視点
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「お前は、それで良いのか?」
気遣うように問い掛けたのはデミウルゴス。
「正直、私はお前の情念が分からん。私は造形の神だからな。
だが、お前は違う。情愛の女神であるお前は、ある意味、人に最も近い神だ。
人の女は、自分の男が他の女に心を奪われる事を許さないのではないのか?」
「浅い考えね、デミウルゴス」
リリスは、愛でるような微笑を浮かべながら返す。
「人は、貴方が思っているより混沌よ。貴方が思うほど人の心は正しくも無ければ間違ってもいない。ひとりひとり、異なる想いと心があるの」
「……ふむ。それは、お前もそうだという事か? だから、許すと」
「いいえ、許さないわ。陽色を、他の女が想うことも、陽色が……他の女を想うことも、許せるものではないわ。でもね、デミウルゴス――」
リリスは諭すような声で、答えを口にした。
「許せないけれど、私は受け入れる。ただ、それだけのことなの。誰かが誰かを好きになって、愛することは、本人にだって、絶対に止められるものじゃないんだから」
「……それは矛盾せぬか?」
「いいえ。ただ、混沌であるというだけよ。綺麗なモノも正しいモノも、汚くて間違ったモノも、どちらも同じように心の中で生まれ、人を形作るモノなんだから」
「……そういうものか?」
「そうよ。私達と、同じようにね」
リリスの言葉に、デミウルゴスは考え込むように黙り込む。そして更に問い掛けた。
「リリスよ、何故お前は、そう思うのだ?」
「変質してしまったからよ」
いぶかしげに黙るデミウルゴスに、そして全ての神々に、リリスは言った。
「私は陽色と一緒に、10年間現世で生きてきたわ。誰かと関わり誰かを知って、人間なんていう記号じゃない、生きているひとりひとりが世界には居るんだって感じることが出来たの。
だから、いまの私は、許せない事でも受け入れることが出来る。
そういうモノに、変わってしまったの」
「それは、拙くは無いか?」
疑念を口にしたのは、魔術の神マゲイア。ローブを着込み、横たわりながらふわふわと宙に浮いていた彼は、不安を滲ませ言った。
「お前がそのように変わってしまったというのなら、私達も現世に実体を持って顕現すれば、同じように変質してしまうのではないか?」
「ばかね」
くすくす笑いながら、リリスは言い切った。
「もう手遅れよ。
私達はそれぞれ、自分の勇者を異世界から召喚した。
その時から、それ以前とは変わってしまっているのよ」
リリスの言葉に、反論する神はいない。それは意識することを避けていた事実。
どこか目をそらすようにいたそれを、リリスは神々に自覚させるべく続けて言った。
「私達は、この世界全ての人に平等に奇跡をもたらすよう、この世界と外なる神によって創られたわ。
だから、誰か特定の個人にだけ神の奇跡が向かわないよう、神座なんて場所に囚われたまま、どこの誰の物かも分からない祈りの声を聞き届け、その祈りの大きさに比例して奇跡の力を現世に送っていた。
でも魔王を倒すために、より直接、神の力を望んだ強い祈りに応えるために、私達は異世界から勇者を召還し、初めて記号じゃない、自分達以外の誰かを知ることが出来た。
その時から、私達は変質してしまっているの。もう、戻ることなんてできないわ」
「ならば、その変質をより小さく抑えるべきでは?」
どこか縋るように問うマゲイアに、リリスは包み込むような優しい笑みを浮かべながら応えた。
「無駄よ。私達は、引き返せないほど変わってしまってる。絶対に、元の在り様には戻れないわ。
ううん。戻りたいと、思わない。その証拠に――」
リリス以外の全ての神々。彼らと彼女達が、あえて気付かぬふりをしていた確信を、リリスは口にした。
「自分の勇者が死んでいなくなることに、耐えられる神は、誰もいないんだから」
気遣うように問い掛けたのはデミウルゴス。
「正直、私はお前の情念が分からん。私は造形の神だからな。
だが、お前は違う。情愛の女神であるお前は、ある意味、人に最も近い神だ。
人の女は、自分の男が他の女に心を奪われる事を許さないのではないのか?」
「浅い考えね、デミウルゴス」
リリスは、愛でるような微笑を浮かべながら返す。
「人は、貴方が思っているより混沌よ。貴方が思うほど人の心は正しくも無ければ間違ってもいない。ひとりひとり、異なる想いと心があるの」
「……ふむ。それは、お前もそうだという事か? だから、許すと」
「いいえ、許さないわ。陽色を、他の女が想うことも、陽色が……他の女を想うことも、許せるものではないわ。でもね、デミウルゴス――」
リリスは諭すような声で、答えを口にした。
「許せないけれど、私は受け入れる。ただ、それだけのことなの。誰かが誰かを好きになって、愛することは、本人にだって、絶対に止められるものじゃないんだから」
「……それは矛盾せぬか?」
「いいえ。ただ、混沌であるというだけよ。綺麗なモノも正しいモノも、汚くて間違ったモノも、どちらも同じように心の中で生まれ、人を形作るモノなんだから」
「……そういうものか?」
「そうよ。私達と、同じようにね」
リリスの言葉に、デミウルゴスは考え込むように黙り込む。そして更に問い掛けた。
「リリスよ、何故お前は、そう思うのだ?」
「変質してしまったからよ」
いぶかしげに黙るデミウルゴスに、そして全ての神々に、リリスは言った。
「私は陽色と一緒に、10年間現世で生きてきたわ。誰かと関わり誰かを知って、人間なんていう記号じゃない、生きているひとりひとりが世界には居るんだって感じることが出来たの。
だから、いまの私は、許せない事でも受け入れることが出来る。
そういうモノに、変わってしまったの」
「それは、拙くは無いか?」
疑念を口にしたのは、魔術の神マゲイア。ローブを着込み、横たわりながらふわふわと宙に浮いていた彼は、不安を滲ませ言った。
「お前がそのように変わってしまったというのなら、私達も現世に実体を持って顕現すれば、同じように変質してしまうのではないか?」
「ばかね」
くすくす笑いながら、リリスは言い切った。
「もう手遅れよ。
私達はそれぞれ、自分の勇者を異世界から召喚した。
その時から、それ以前とは変わってしまっているのよ」
リリスの言葉に、反論する神はいない。それは意識することを避けていた事実。
どこか目をそらすようにいたそれを、リリスは神々に自覚させるべく続けて言った。
「私達は、この世界全ての人に平等に奇跡をもたらすよう、この世界と外なる神によって創られたわ。
だから、誰か特定の個人にだけ神の奇跡が向かわないよう、神座なんて場所に囚われたまま、どこの誰の物かも分からない祈りの声を聞き届け、その祈りの大きさに比例して奇跡の力を現世に送っていた。
でも魔王を倒すために、より直接、神の力を望んだ強い祈りに応えるために、私達は異世界から勇者を召還し、初めて記号じゃない、自分達以外の誰かを知ることが出来た。
その時から、私達は変質してしまっているの。もう、戻ることなんてできないわ」
「ならば、その変質をより小さく抑えるべきでは?」
どこか縋るように問うマゲイアに、リリスは包み込むような優しい笑みを浮かべながら応えた。
「無駄よ。私達は、引き返せないほど変わってしまってる。絶対に、元の在り様には戻れないわ。
ううん。戻りたいと、思わない。その証拠に――」
リリス以外の全ての神々。彼らと彼女達が、あえて気付かぬふりをしていた確信を、リリスは口にした。
「自分の勇者が死んでいなくなることに、耐えられる神は、誰もいないんだから」
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