転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

文字の大きさ
49 / 115
第一章 街を作る前準備編

16 戦いは、終ってからの方が気苦労が多い その②

しおりを挟む
 有希のどこでも倉庫チートスキルの能力を使って、俺たちは屋敷に移動した。
 出口は、緊急用に用意してある屋敷中央の部屋だ。
 ここを使う時は、なんらかの緊急事態なので、使うと同時に勇者のみんなには連絡が自動的に行くようにしてある。

「カルナ、連いて来て。ミリィを治す部屋に連れていくから」

 俺はカルナを誘導する間に、一緒に連いて来てくれた有希と和真に指示を出す。

「有希、悪いけどこれから、みんなの所を回って事の詳細を伝えて欲しい。手が空いてる人が居たら、こっちに来て貰えるようにも頼んでおいて」
「分かったっすよ。リトとララとロッカを部屋に連れていったら、すぐに動くっすよ。部屋は、いつもの所で良いっすね?」
「うん。いつもの来客用の部屋を使って。それで和真は――」
「分かった。休んどく」
「後にして! いま屋敷には、五郎が来てるから、ミリィが体力回復できるような料理を作って貰えるよう頼みに行って。多分、厨房に居ると思うから」
「へいへい、分かりやしたよ」
「頼むよ。それが終わったら、好きにしてくれて良いから」
「おっ、それじゃま、ただ飯とタダ酒にありつかせて貰いますかねっと」

 気安い言葉を交わし、俺たちはそれぞれ目指す場所に動く。

「……手慣れていますね」

 移動しながら話し掛けてくるカルナに、

「魔王との戦いで、こういうのには慣れちゃったから。それに――」

 ちょっと言葉を選んでから続けて返す。

「魔王との戦いが終わっても、なにがあるかは分からないからね。その用心に、色々と訓練とかしてるから」
「……それは、王政府や……魔術協会と、争いになることを考えての物ですか?」
「全部だよ」

 俺の答えに、カルナの息を飲むような気配が伝わってくる。
 それを和らげるように、俺は続けた。

「別に、こちらから何かをするつもりはないよ。あくまでも、ただの自衛だから。命は惜しいからね」
「……魔物と、あれだけの戦いをされたのに、随分と慎重なんですね」
「命を懸けなきゃいけない時は賭けるよ。でも死にたくないし、誰も死なせたくないんだ。死ぬことは一度経験したけど、二度も繰り返したいとは思えないからね」
「……それは、貴方達の元居た世界でのことですか?」
「うん。俺以外の勇者も、殺されたり病死だったり寿命だったり事故だったり、それぞれ色々な理由で死んでるけど、みんな俺と同じ気持ちだよ。
 みんなと一緒に生きていたい。それだけなんだ。
 もちろん、この世界の人達みんな、ともね。
 そのための苦労なら、頑張ってするさ」
「…………」
 
 応えは返ってこない。
 俺の、そしてみんなの素直な気持ちを伝えたつもりだけれど、それをカルナがどう思ってくれるかは分からない。
 でも、これから友達として一緒に生きていたいと想える相手には、自分の本音を伝えたかったんだ。

 そうしてお互い無言のまま、医務室へと向かう途中で、

「陽色、どうしたの!?」

 リリスに出会った。リリスは、俺の様子を見るなり慌てて走り寄って来ると、

「怪我してるの? どうして? どこかで危ないことしたの?」

 不安と恐怖の入り混じった表情で、俺に問い掛けてくる。
 俺はリリスを安心させてあげたかったけど、事態が事態なので、手短に話す。

「心配しないで、俺は大丈夫だから。それより、リリスに癒して欲しい子がいるんだ」

 俺は、カルナに抱き抱えられたミリィを示すと、

「魔物の魔術毒を受けてるんだ。治してあげて」

 手早く説明する。リリスは、少しだけ俺に何か言いたそうだったけど、ミリィを優先させてくれた。
 リリスは、ミリィの傍に近付くと、苦しげに汗ばむ頬に手を当てて、

「こんなに苦しんで……大丈夫、すぐに治してあげる」

 ミリィを、そしてカルナを力付けるように優しい声で言った。そして、

「医務室に連れて行ってあげて。そこで治すから。陽色――」

 リリスは俺に何か言いたげに見つめる。それが何かは、聞かなくても分かったのでこの場で返す。

「カルナも一緒で大丈夫だよ。リリスが俺の女神だってことは、もう伝えてるから」
「……そう。分かったわ。なら、ここで姿を変えても良いわね」

 リリスはカルナを興味深げに見つめると、やわらかく笑みを向け、

「驚かないでね?」

 いたずらっぽく言うと、一気に成長した。
 少女の姿から、成熟した大人の女性の姿へと変わる。着ている服も分解と再構成を瞬時に行い、華やかで可愛らしい空色のワンピースから、厳かな黒を基調としたドレスへと造り替えた。
 そして、抑えていた女神としての本性を開放する。
 その途端、周囲に溢れるような神々しい気配が広がっていく。
 傍に居るだけで頭を垂れてしまいそうになる神気が、リリスが居るだけで満ちてくる。

「本当に……本物の、神……」

 呆然と呟くカルナに、

「その子、早く治してあげましょう。部屋に、ついて来てくれる?」

 リリスは落ち着かせるように優しく言った。その優しい声に、張り詰めていた気持ちが緩んだのか、少しだけ涙ぐみながらカルナは、リリスの言葉に従い俺たちの後について医務室に入る。
 部屋の中は、元居た世界の保健室といった感じだ。医務室を作る時、元居た世界を懐かしんで、似せて作ったんだ。

「そのベットに、その子を寝かせて」

 リリスの指示に従い、カルナは大事そうにそっと、ミリィをベットに横たえる。心配そうに彼女を見詰めるカルナに、

「名前を教えてくれる? 貴方と、その子の名前を」

 リリスは神の奇跡をより確実な物にするために問い掛ける。すぐにカルナは、

「カルナ・ストラドフォードと申します。彼女は、ミリィです」

 縋るような眼差しでリリスを見詰めながら応えた。その眼差しに、リリスは返す。

「分かったわ、カルナ。これから貴方の祈りを糧に奇跡を起こします。だから、彼女の手を繋いであげて、カルナ」

 リリスの言葉に従い、カルナはミリィの手を取る。
 跪くようにして、ベットに横たわるミリィの傍に寄り、彼女の手を両手で包み込んだ。

 その途端、カルナとミリィを囲むように、温かな輝きを放つ法円が生まれる。
 リリスが、奇跡を生み出す結界を創り出したのだ。
 この法円に包まれ、聖別された空間では、人の祈りが因果を超越した事実を生み出す。

 これこそが神の力。人の祈りにより過程も因果も無視した現実を形にする力だ。
 祈りある限り万能であり、そして祈りの質と量に左右される限定的な力でもある。
 人では決して再現できない、神の業だ。
 それは、確かな形となって現れた。

「ミリィ……」

 カルナは祈る。ただひたすらに。ミリィのことだけを想って。
 その祈りが、奇跡へと変わる。
 ミリィの青ざめていた肌の色が、徐々に赤みを帯びていき、浅く多く繰り返されていた息が、ゆっくりと落ち着いた物へと変わっていく。

「もう、大丈夫。貴方の祈りは叶ったわ。このまま祈り続けていれば、彼女はすぐに目を覚ますでしょうね」
「……良かった……ありがとう、ございます……」

 静かに涙を流しながら感謝の言葉を口にするカルナの頭を、リリスは優しく撫でる。
 そして同じように、ミリィの頭も撫でてあげると、

「陽色、しばらく2人にしてあげましょう。私達がここに居なくても、大丈夫だから」

 カルナとミリィの2人を気遣うように、リリスは言った。

「うん、分かったよ。
 カルナ、しばらく、俺たちは離れるから。もし何かあれば、そこの水晶玉に触れながら喋って。遠話用の魔導具だから、すぐに来るから」
「はい……」

 涙を流しながら、不器用に笑い応えるカルナに、

「それじゃ、しばらく離れるよ。あとで、色々と聞く事があるかもしれないけど、その時はよろしくね」

 俺はカルナに言うと、リリスと一緒に医務室を後にする。
 すると、部屋を出た途端、

「怪我、痛くない?」

 リリスは俺の手をぎゅっと握りしめ、心配そうに見つめてきた。
 俺は、リリスを安心させるように笑顔で返す。

「大丈夫。大したことないから」
「……ホントに? 嘘は、ダメなんだからね」
「うん、本当だって。ちょっと時間がかかりそうな相手だったから、神与能力チートスキル使っただけで」
神与能力チートスキル、使ったの?」
「……えっと、うん……」
「なんで、目を逸らすの? どうせまた、無茶したんでしょ」
「……別に、そんな無茶って訳じゃ……」
「嘘。絶対無茶したんでしょ。約束、また破ったの?」
「……いや、そんなことは……」
「あとで、お説教だからね」
「……はい」

 涙目で言うリリスに反論なんて出来なくて、俺は頷くしか出来なかった。

 そうして、陽色とリリスが部屋を出た後、2人きりになった医務室で、カルナはミリィを想い続けていた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

異世界転生おじさんは最強とハーレムを極める

自ら
ファンタジー
定年を半年後に控えた凡庸なサラリーマン、佐藤健一(50歳)は、不慮の交通事故で人生を終える。目覚めた先で出会ったのは、自分の魂をトラックの前に落としたというミスをした女神リナリア。 その「お詫び」として、健一は剣と魔法の異世界へと30代後半の肉体で転生することになる。チート能力の選択を迫られ、彼はあらゆる経験から無限に成長できる**【無限成長(アンリミテッド・グロース)】**を選び取る。 異世界で早速遭遇したゴブリンを一撃で倒し、チート能力を実感した健一は、くたびれた人生を捨て、最強のセカンドライフを謳歌することを決意する。 定年間際のおじさんが、女神の気まぐれチートで異世界最強への道を歩み始める、転生ファンタジーの開幕。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

転生貴族の領地経営〜現代日本の知識で異世界を豊かにする

ファンタジー
ローラシア王国の北のエルラント辺境伯家には天才的な少年、リーゼンしかしその少年は現代日本から転生してきた転生者だった。 リーゼンが洗礼をしたさい、圧倒的な量の加護やスキルが与えられた。その力を見込んだ父の辺境伯は12歳のリーゼンを辺境伯家の領地の北を治める代官とした。 これはそんなリーゼンが異世界の領地を経営し、豊かにしていく物語である。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

処理中です...