転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

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第一章 街を作る前準備編

18 転んでもタダでは起きないよ その①

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 俺とカルナ達が魔物に襲撃された、次の日の朝。
 いま俺とカルナは、魔術協会に居ます。なぜかと言えば、まずは犯人探し。
 犯人が誰か、今のところ見当もつかないのだけれど、その取っ掛かりぐらいになると良いなと思って、長老たちを前に事情を説明していた。すると、

「……それは、本当なのか、ヒイロ殿……」

 青ざめた顔で、長老の1人が訊いてくる。確認というよりは、嘘であってくれ、という願望がダダ漏れだった。
 演技だったら凄いな、と思うのだけど、どう見ても本気です。

「はい。既にカルナ殿の屋敷が破壊されているのは、知っておられると思いますが、私達が魔物に襲撃された際、それを撃退すると同時に爆発した影響です。何処の誰かは分かりませんが、念のいった事です」

 昨日、カルナの屋敷が魔物の自爆で破壊された後、異変に気付いた周囲の住人が警護の役人に知らせ、そこを経由して魔術協会に連絡が行ったのは、既に調べてこちらも知っている。
 菊野さんの神与能力チートスキルをメインに置いて調べたので、間違いはない。
 可能なら、魔術協会内部の状況も知りたい所だったけど、魔術協会には幾重もの防諜防止の結界が張られているので、菊野さんの神与能力チートスキルは使えない。
 より正確に言うと、過去を見るならともかくリアルタイムなら可能なんだけど、神与能力チートスキルを使ったこと自体はバレるので使えないのだ。

(菊野さんの神与能力チートスキル、バレちゃってるからなぁ)

 こちらの世界に召喚されて、王政府の奴らに根掘り葉掘り、こちらの能力について聞かれた時、菊野さんは正直に言っちゃったのだ。そのせいで、色々と対策が取られちゃってる。
 俺や、他の何人かは、警戒して能力の内容を誤魔化して伝えているのでバレてないけど、素直な勇者のみんなは喋っちゃってるんだ。

(しょうがないよなぁ。あの時は、思いっきり下手に出てるように演技してたからな、あいつら)

 魔王を倒してから、思いっきり本性出しやがったけど。なんて、昔のことを思い出してると、

「カルナよ、どういうことなのか、説明せよ」
 
 俺の横に居たカルナに、前に座った長老たちの1人が聞く。ちなみに、今はミリィはいない。カルナに連いて来ようとしたんだけど、強く言って休ませている。
 カルナは、俺の方を見ることなく、事前の打ち合わせ通り返していく。

「昨夜の11時になりますが、陽色殿と共に魔物に襲われました。幸い、陽色殿の御助力も得て撃退できましたが、そうでなければ危なかったでしょう。倒したと同時に、魔力結晶にならず自爆したことから考えても、何者かに操作された人工的な魔物の可能性が最も高いです」

 カルナの言葉に、長老たちは黙る。
 いまカルナが言ったことは、微妙に事実とは変えている。それは、今回の件の犯人を捜す一環だ。
 まずは長老たちが関わっているのか、事実と異なることを伝えて反応を見てるのだけど、どう見てもこちらの話を信じ切っている。

(長老たち、魔術協会のトップはシロ、かな?)

 決めつけるのは危険だけど、だからと言って、なにも線引しないのはもっと危険なので、ひとまず犯人とは関係ないと見ていった方が良いみたいだ。
 もちろん、他の魔術協会の人間が、関わってないとは限らないけれど。
 そうして長老たちの反応を見ていると、

「……状況は分かった。だがカルナよ、そもそも何故、お前の屋敷にヒイロ殿が訪れているのだ」

 一先ず話を逸らしたいのか、こちらの関係を探るように長老の一人が訊いてくる。
 これも想定の範囲内だ。けど、気を付けて応えないといけない。一歩間違えると、今回の件を俺たちとカルナが仕組んだ物じゃないかと邪推されてしまう。
 だから、カルナは事前に俺たちと話し合った通りに、長老たちに説明した。

「商談として、訪れられていました。私の作った照明用の魔導具の生産権利を買い取りたいと仰られて」
「照明用の魔導具だと? あんな物、数年も持たずに耐用年数を迎える欠陥品だろう。そんな物を――」
「いえ。我々にとっては、十分に価値のあるものなのですよ」

 非難するように言う長老の言葉を遮り、俺は言った。

「私達、転生者にとって、なによりも安価で大量生産を行える商品というのは大事なのです。例え、性能などの面で、劣る所があったとしても。不思議に思われるかもしれませんが、それが我々の本音です」
「……それは、ヒイロ殿の居た世界での常識、ということなのか?」
「はい。こちらの世界の常識とは、異なるとは思いますが」

 俺の応えに、長老たちは吟味するように押し黙る。カルチャーショックを受けてるみたいだけど、それはしょうがない。
 こちらの世界は、俺が元居た世界のように産業革命が起っている訳じゃない。
 製品の規格統一とかも、まだまだ考えられない状況だ。

 個人の技量に生産量も質も頼り切り、品質の安定と大量供給はほど遠い。
 けれど、だからといって、この世界の技術が劣っているという訳じゃない。
 むしろ、魔術とそれに起因する一部の製品では、元居た現代の製品よりも高性能な物もあるぐらいだ。

 だからこそ、発展しなかったとも言えるけど。
 なにしろ、金と権力さえあれば、俺たちの居た現代の生活とそれほど遜色ない生活が行えるのだから。
 娯楽みたいな、例外はあるけども。

 単純に、世界が異なることによる意識の違い、というヤツだ。それを元に優劣を語るのは間違っている。
 気付ける環境にあるのかどうか、その違いでしかないのだ。 

 だから、カルナの技術は喉から手が出るほど欲しい。
 そう思っているので、長老たちにも、こちらの本気が伝わったのだろう。

「……カルナの屋敷に、ヒイロ殿が訪れられた理由は、よく分かった」

 心情として受け入れるかは別として、納得するように返してきた。そして、

「問題は、なぜ襲われたかだ……人工的な魔物であると、ヒイロ殿は仰られた……それは、我らとて話を聞き、そう判断せざるを得ん。だが……――」

 言葉の途中で、長老はその先を口にするのをためらう。
 それは仕方のないことだろう。何しろ、冷静に考えて、今回の件で一番怪しいのは自分達なのだから。

 正確に言えば、人工的に魔物を創り出し操れる技術を持っていると、真っ先に思い浮かぶのが魔術協会だからだ。
 もちろん、他の組織や個人でも、それが出来る心当たりはあるだろう。
 けれど、それを口にすれば、疑念をそこに抱いたということになり、下手にそれが伝われば争いの元となりかねない。
 かといって、何も言わなければ、自分達の疑惑を強めることになる。

 どう転んでも、自分達にとって不利だ。
 だから、何かを口にすることをためらっている。それがこちらも分かるから、下手なことを言わないで済むよう、先に俺が口を開いた。

「私達は、今回の件を非常に憂慮しております」

 穏やかな声で言ったつもりだけど、長老たちの表情が強張るのが分かる。
 向こうとして見れば、事件があった次の日に、朝一番でやって来たのだ。俺たちが疑念を持って、圧力や牽制を掛けに来たと思ってもおかしくない。
 万が一にでも、そんな事を思われては困る。
 だって、これから協力し合いたい相手なのだから。だからこそ、俺は言った。

「私達は、今回の件により、一つの考えを総意として、今日ここに参りました」

 一つ一つ言葉を区切り、はっきりと相手に伝わるように意識しながら、俺は言った。

「是非、貴方たち魔術協会のお力を、我らにお貸しください」

 この言葉に、長老たちは息を飲んだ。
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