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第一章 街を作る前準備編
18 転んでもタダでは起きないよ その②
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「それは、どういう意味なのか……?」
探るように訊いてくる長老の一人に、俺は静かに返す。
「そのままの意味と受け取って下さい。私達は、今回の件で痛感しているのです。自分達だけでは足らない力を、貴方達からお借りするべきだと」
「……随分と、卑屈な事を言われる……魔王殺しの勇者殿の言葉とは思えませんな……我らの力が、必要か?」
「はい。ぜひ」
即座に力強く返す俺に、長老は押し黙る。そこへ畳み掛けるように俺は言った。
「貴方達の力が、私達には必要なんです。どうか、お力をお貸しください」
すぐには応えは返ってこない。じっくりと悩むような間を置いて、長老たちは返してきた。
「正直、信じられませんな。私達は、魔王を滅ぼせなかった。それを成し遂げた貴方達に、力が必要などと言われても……」
「本音を申し上げる。私達は今回の件で、貴方がたに利用される事を恐れているのだ」
「ただでさえ我らの権威は、魔王を滅ぼせず、そののち、貴方がたの推進した特許制度で権益を減らされることで、かなり下がっている」
「その上、ここでそちらの言われるままに力を貸すなど……」
長老たちの言葉に、俺は実感する。確実に、魔術協会は自信を無くしている、と。
(……しまった。完全に失敗した……)
今この場でのやり取りではなく、これまでの俺たちの行動の失敗を自覚する。
(もっと早く、魔術協会とは交流を持つべきだった……完全に、自信を喪失してる)
魔術師、というよりは魔術協会の尊大さは普段から知っていたので、見誤ってしまった。
(ひょっとすると、魔術協会全体じゃなく長老達だけかもしれないけど、このままだとマズいな)
過信を持たれても困るが、自信を無くされるのも問題だ。
(でも、まだマシか。本格的に手を組んでから気付いてたら遅すぎたからな。今の段階で気付けたのは助かる)
俺は内心では冷や汗をかきながら、平静を装い返す。
「失礼ですが、貴方達はご自身を過小評価されている」
本音を込めて、俺は続ける。
「貴方達が培ってきた歴史、そして人材。それらに支えられた技術と応用力。全て、私達にはない物です」
何一つ隠さず、本心を口にする。今ここで必要なのは駆け引きじゃない。
全力で口説き落すことだ。
「ハッキリと申し上げます。私達は貴方達の力が欲しい。
ですがそれは、私達の下に就いて欲しい訳ではありません。
むしろ逆です。貴方達には自主独立を保ったまま、私達に力を貸して頂きたい。
私達が欲しいのは、共に手を携えることのできる同胞です」
一言一言に想いを込めて、何一つはぐらかすことなく真意を告げる。
それが俺たち勇者隊の本意だ。
間違っても、奴隷や思い通りになる道具が欲しい訳じゃない。
だから、俺は続ける。
「貴方達は私達に恐怖を感じると言われる。
だが私達は、貴方達を称賛しているのです」
「……称賛?」
窺うように聞き返す長老に、俺は力強く返す。
「当然です。貴方達は、私達がもたらした変化を乗り切った。
素晴らしい事です! 容易く出来ることではない。そして今も、組織を崩壊させることなく維持している。
これだけのことを成し遂げて、称賛しない訳がありません!
私達は皆、貴方達の力量と在り様に、敬意を払っているのです!」
褒める。とにかく褒める。褒めて褒めて褒めまくる。
嘘は一つも口にはしない。心から想っている事だけを口にして、褒め続ける。
そうでもしなければ、こちらの本意は伝わらない。
いま俺は、自分達の手を取って貰うために必死なのだ。
そんな相手を、褒めないでどうする。
「私達は貴方達の力を求めています。どうか、ぜひ、お願いします」
深々と頭を下げ、心から頼む。
それぐらいしか、今は出来ないのは情けないけれど、出来る事は何でもしてやる。
みんなから交渉役として信じて託されているんだ。
絶対に、長老達には、こちらの話を聞いて貰う。
その意気込みが、少しは伝わって貰えたのか、
「……それは……本気で仰られているのか……ヒイロ殿」
まだまだ距離を取るような慎重な声で、長老は応えてくれた。だから、
「はい! 心から、そう思っているのです!」
俺は真っ直ぐに視線を合わせ、力強く返した。
長老たちの間に、迷うような気配が滲む。
それを急かすことなく、じっと待っていると、長老たちは少しだけ距離を縮めてくれるように、言葉を返してくれた。
探るように訊いてくる長老の一人に、俺は静かに返す。
「そのままの意味と受け取って下さい。私達は、今回の件で痛感しているのです。自分達だけでは足らない力を、貴方達からお借りするべきだと」
「……随分と、卑屈な事を言われる……魔王殺しの勇者殿の言葉とは思えませんな……我らの力が、必要か?」
「はい。ぜひ」
即座に力強く返す俺に、長老は押し黙る。そこへ畳み掛けるように俺は言った。
「貴方達の力が、私達には必要なんです。どうか、お力をお貸しください」
すぐには応えは返ってこない。じっくりと悩むような間を置いて、長老たちは返してきた。
「正直、信じられませんな。私達は、魔王を滅ぼせなかった。それを成し遂げた貴方達に、力が必要などと言われても……」
「本音を申し上げる。私達は今回の件で、貴方がたに利用される事を恐れているのだ」
「ただでさえ我らの権威は、魔王を滅ぼせず、そののち、貴方がたの推進した特許制度で権益を減らされることで、かなり下がっている」
「その上、ここでそちらの言われるままに力を貸すなど……」
長老たちの言葉に、俺は実感する。確実に、魔術協会は自信を無くしている、と。
(……しまった。完全に失敗した……)
今この場でのやり取りではなく、これまでの俺たちの行動の失敗を自覚する。
(もっと早く、魔術協会とは交流を持つべきだった……完全に、自信を喪失してる)
魔術師、というよりは魔術協会の尊大さは普段から知っていたので、見誤ってしまった。
(ひょっとすると、魔術協会全体じゃなく長老達だけかもしれないけど、このままだとマズいな)
過信を持たれても困るが、自信を無くされるのも問題だ。
(でも、まだマシか。本格的に手を組んでから気付いてたら遅すぎたからな。今の段階で気付けたのは助かる)
俺は内心では冷や汗をかきながら、平静を装い返す。
「失礼ですが、貴方達はご自身を過小評価されている」
本音を込めて、俺は続ける。
「貴方達が培ってきた歴史、そして人材。それらに支えられた技術と応用力。全て、私達にはない物です」
何一つ隠さず、本心を口にする。今ここで必要なのは駆け引きじゃない。
全力で口説き落すことだ。
「ハッキリと申し上げます。私達は貴方達の力が欲しい。
ですがそれは、私達の下に就いて欲しい訳ではありません。
むしろ逆です。貴方達には自主独立を保ったまま、私達に力を貸して頂きたい。
私達が欲しいのは、共に手を携えることのできる同胞です」
一言一言に想いを込めて、何一つはぐらかすことなく真意を告げる。
それが俺たち勇者隊の本意だ。
間違っても、奴隷や思い通りになる道具が欲しい訳じゃない。
だから、俺は続ける。
「貴方達は私達に恐怖を感じると言われる。
だが私達は、貴方達を称賛しているのです」
「……称賛?」
窺うように聞き返す長老に、俺は力強く返す。
「当然です。貴方達は、私達がもたらした変化を乗り切った。
素晴らしい事です! 容易く出来ることではない。そして今も、組織を崩壊させることなく維持している。
これだけのことを成し遂げて、称賛しない訳がありません!
私達は皆、貴方達の力量と在り様に、敬意を払っているのです!」
褒める。とにかく褒める。褒めて褒めて褒めまくる。
嘘は一つも口にはしない。心から想っている事だけを口にして、褒め続ける。
そうでもしなければ、こちらの本意は伝わらない。
いま俺は、自分達の手を取って貰うために必死なのだ。
そんな相手を、褒めないでどうする。
「私達は貴方達の力を求めています。どうか、ぜひ、お願いします」
深々と頭を下げ、心から頼む。
それぐらいしか、今は出来ないのは情けないけれど、出来る事は何でもしてやる。
みんなから交渉役として信じて託されているんだ。
絶対に、長老達には、こちらの話を聞いて貰う。
その意気込みが、少しは伝わって貰えたのか、
「……それは……本気で仰られているのか……ヒイロ殿」
まだまだ距離を取るような慎重な声で、長老は応えてくれた。だから、
「はい! 心から、そう思っているのです!」
俺は真っ直ぐに視線を合わせ、力強く返した。
長老たちの間に、迷うような気配が滲む。
それを急かすことなく、じっと待っていると、長老たちは少しだけ距離を縮めてくれるように、言葉を返してくれた。
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