転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

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第二章 街予定地の問題を解決しよう編

2 街予定地に到着するまで車内販売試食会 その③ 鳥釜飯とパエリヤ風釜飯 まずは配膳

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 五郎が車内販売の試食を持って来てくれる間、俺はみんなを何とはなしに見る。
 最初に目が行くのは、有希たちのテーブルだ。

「ねぇねぇ、てんちょー。なに? なにがあるの?」

 お気に入りのエプロンドレスを着た8才になる女の子、リトが保護者な有希に訊く。
 五郎が台所に消えたのを見て興味津々、期待一杯なのが見てるだけで伝わってくる。
 そんなリトに、有希は優しい笑みを浮かべながら応えてあげた。

「五郎が、美味しい物を持って来てくれるんすよ。だから、良い子にして待ってるっすよ」
「おいしいもの! なに! なになに! わたがし? わたがしまた食べて良いの!」

 さっき食べた綿菓子が、余程お気に入りになったのか、目を輝かせ座っていた椅子から降りて喜ぶ。
 これに有希は苦笑しながら、

「ん~、どうっすかね~? 多分違うと思っすけど」
「え~、違うの……」

 しゅん、とうなだれるリトに、

「大丈夫っすよ。綿菓子じゃなくても、きっと美味しい物を食べさせてくれるっすから」
「わたがしじゃなくても、おいしいの?」
「もちろんっすよ。だから、それまで、良い子にして待ってるっすよ?」
「うん! わかった!」

 有希に頭を撫でられ、嬉しそうに笑顔を浮かべたリトは、ぶつかるような勢いで有希に抱き着くと、

「んっしょ」

 満面の笑顔を浮かべ、有希の膝の上に乗る。すると、

「リト、ダメじゃない。店長は椅子じゃないのよ」

 リトより4つ年上の女の子、ララがたしなめるように言う。それに突っ込みを入れたのは、同い年の男の子、ロッカだ。

「別に、良いと思う。ララだって、去年まで、隠れて店長の膝の上に乗っかってたんだし」
「……っ! そ、それは……人前じゃなかったからだし……もう今は、私は子供じゃないんだから、しないわ」
「リトは、まだ子供だから、良いと思う。今だけだし、大目にみよう」
「……分かったわよ」

 頬を染めながら拗ねたように返すララに、のほほんとのんびりした表情のロッカ。そんな2人を、楽しそうに見つめる有希とリト。
 仲の好い家族、といった感じだ。そんな有希たちを、というよりはリトを見詰めているのは、ロリコンなロリババアの和花だった。

「あぁ……好い……尊いのぉ……わしが椅子になりたい」

 ロリっ子と戯れる時に絵になるからという理由だけで、魔術でちびっこ姿になっているヤツは言うことが違う。

「それ以上、近付いたらウチの店、出禁っすから」
「なぜじゃ!」

 離れたテーブルからにじり寄って来た和花に有希が釘を刺す。

「うぅ、せっかく、折角おめかしまでしたというのに……」

 今日の和花の姿は、深窓のお嬢さまといった感じの、彩りが華美にならない程度に縫い付けられた淡い白色系のワンピース。思わず目が惹かれるほど愛らしい。
 なのだけど、中身が中身なので、色々と台無しではある。そんな和花に、

「アンタ、元の世界でよく捕まらなかったわよねぇ」

 同じテーブルで座っている、男好きな美青年、薫が呆れたように言う。

「うっさいわ! わしは愛でるだけで実害なしじゃ! おやつ感覚で男に手を出すお前と一緒にするな!」
「誰がよ! 晩御飯食べるぐらいの手間は掛けるわよ!」
「リトもララもロッカも、あの2人には近付いちゃダメっすよ」
「なんでよ!」
「なんでじゃ!」

 いつもながら、みんな賑やかだ。それを苦笑するように見詰めているのはカルナ。その傍には、ミリィが静かに寄り添って立っている。

 この場に居るのは、残りは台所に行ってる五郎と俺で全部だ。あとは、運転席に行っている出雲と八雲、そしてデミウルゴスが、今回の蒸気機関車の試運転に参加した全員だ。

(あとで、交代するか、料理を持って行ってあげないとな)

 この場に居ない出雲達のことを考えている間に、五郎が料理を持って来てくれる。

「ほいよ。特製鳥釜飯と、パエリヤ風釜飯だ」

 どう見ても駅弁売り。そんな恰好で、五郎は料理を持って来てくれた。
 いつの間に作っていたのか、蒸気機関車の描かれた法被はっぴを着て、料理の入った箱を持って来る。

「好いね、その法被はっぴ。どこで作ったの?」
「瀬戸に頼んで作って貰った。釜飯を入れてる器も一緒にな」

 瀬戸は俺達の世界の陶芸や着物なんかを、こちらの世界で再現しようとしている勇者の1人なんだけど、腕は確かだ。
 それは、料理の入っている器を見ても明らかだ。

「うわっ、うわっうわっ! てんちょ、てんちょ! これかわいいね!」

 手のひらにちょこんと乗る大きさの器に、リトが嬉しそうな声を上げる。
 目を輝かせて手に取ると、まじまじと見つめる。全体的な形は、俺達の世界の駅弁でよく見る釜飯の器なんだけど、細かな飾り付けがされている。

 片方には、彩り鮮やかな花や、ころんっとまるまるとした鳥の飾り付け。
 もう一つには、海の波や、かわいらしくまるっこい感じにイカやえびの飾り付けがされてた。

「器も良いね」
「瀬戸に頼んだら、かなりノリ気でな。結構気合の入ったのを作ってくれた。いま出してるのは、試食用の小さいヤツだけど、実際に売り出すヤツも同じ柄で頼んでる」
「旅行の記念で欲しがる人が出るかも。でも、これだけ器が良いと、ちょっと高くなり過ぎるかな?」
「食べ終わったら回収して再利用する予定だ。食べ終わった器を持って来たら、お金をその分返す、ていう形にすりゃ良いんじゃねぇか?」
「好いね。それならコストを抑えられるかも」
「だろう? と、経営話はこれぐらいにして、そろそろ食べてくれ。みんなも待ってるしな」

 五郎に言われて視線を追うと、こっちをじーっと見ているリトが。
 待ち遠しそうに、我慢している。
 俺は、苦笑しそうになるのを我慢しながら、

「そうだね。それじゃ、頂こうか」

 わくわくしながら、釜飯のふたを開けた。
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