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第二章 街予定地の問題を解決しよう編
5 王は真っ黒です その①
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シュオルを訪れた次の日。謁見を申し出た俺に、王は許しを与えた。
「それで、如何なる用件で来たのか。元勇者隊ヒイロよ」
その声には、疑問の響きは無い。
玉座に座り、俺を見下ろすような眼差しで、確認するように言った。
俺は王の声の響きに、心が冷えていくのを感じながら返していく。
「昨日、元魔王都市シュオルに、私と他の勇者で訪れました。その際、現地にはびこる魔物と接触し戦いとなりました」
「ほう、それは難儀であったな。それで、倒したのであろうな」
「いえ、叶わず逃げ出しました」
王の周囲がざわめく。魔王を殺した勇者の1人である俺の口から出た言葉とは信じられなかったのか、疑いと怯えが入り混じった気配が滲む。
けれど、王は僅かたりとも揺らがなかった。
平然とした口調で、攻めるために問い掛けてくる。
「遺憾である、ヒイロよ。魔王を殺した汝らの力をもってしても、倒せぬ魔物であったのか?」
「いえ。あのまま留まり戦えば、可能でした。ですが、不測の事態と判断し、一時撤退を行いました」
「不測とは? 汝らほどの者が、予測しえなかったとは、よほどのことであろうな」
「こちらが予測していた魔物より、強力な魔物でした。また、その魔物は、他の魔物を支配下に置き指揮する能力を持っていると思われます」
ざわめきが更に広がる。
それを耳にしながら、変わらず王は平然と言った。
「まるで魔王のようであるな」
「はい。恐らくは、我らが倒した魔王、あるいは眷属の在り様を真似て、発生した新種の魔物だと思われます」
ざわめきが、一瞬止まる。
それは恐怖のせいだ。
かつて王都を蹂躙した魔物の軍勢。
苦痛を与える、という魔物の本能に従い、死者こそ少なかったものの、大勢の人達が傷を負わされた記憶は、まだ残っている。
この場に居る貴族たちは比較的安全だったとはいえ、その恐怖から逃れられたわけでもない。
「な、なぜ、何故そんな物が居るのだ! 魔王とその眷属は、お前達が倒したのではないのか!」
王の傍に居ることを許された大貴族の1人、ブロシェ大公が引きつった声を上げる。
王政府の財務に関わる彼は武官ではないが、魔王が現れるまでは勇猛さで知られていた人物だ。
その勇猛さが祟って、魔王の眷属が率いる魔物の軍勢が攻めて来た時には私兵を率い戦って、全滅させられた人物だ。
死者は無く、けれど無傷な者など一人たりとも無く。
ブロシェ公は、両手足を身動きできぬよう固定された上で、下の奥歯を砕かれ続けたと聞いている。
その豪胆さから、今では日常生活を送るのに問題は無いらしいが、それでもその時の恐怖を忘れた訳ではないだろう。
だからこそ、俺を責めるように声を荒げる。
「お前が! お前達が! すべて倒したというから、私は……私は……」
「倒しました。全て」
はっきりと俺は言い切る。
この場に居る誰もが安心してくれるよう、力強く、俺は続けた。
「断言します。魔王は既に存在しません。その眷属も、尽くを滅ぼしました。
たとえまた、現れたとしても、我ら勇者が倒します。
我らが神々に懸けて、誓います」
ここで揺らぐ訳にはいかない。
恐怖に囚われた人々に勇気を与える。
それが勇者だ。それを望まれて、俺達はこの世界に召喚された。
葛藤もあったけど、今ではそれを俺たちみんなが受け入れている。
だから、誰もが安心し、勇気を持てるように、力強くなけりゃいけないんだ。
その想いが、少しは伝わってくれたのか、周囲のざわめきが静まる。
けれど、それを掻き乱すように、王は言った。
「ヒイロよ、汝の言葉、疑う訳ではない。
確かに、汝ら勇者は、魔王とその眷属を滅ぼしたのであろう。
だが、それは過去の話だ。いま新たに表れた脅威の話ではない。
だからこそ、我は王として問おう。
ヒイロよ。汝ら勇者たちは、新たなる脅威に、どう対処するつもりだ?」
空手形を切らせるように、王は俺に問い掛ける。
まるでこの世すべての責任が、俺達にあるかのような物言いだ。
自分達の責任は、知らぬとばかりに投げ捨てて。
だから俺は、攻め返すように問い掛けた。
「お答えする前に、一つお聞きしたい事があります」
「許す。言ってみよ」
「我らにあの土地を下賜される前は、王政府直轄地でした。
だからこそ、今まであの地にはびこる魔物の対処は、王政府が行われていた筈です。
どうやって、今まで対処されていたのか、お聞きしたい」
今までとは違うざわめきが走る。
それは、王の意図を読もうとするざわめきだ。
先ほどまでの恐怖と怯えではなく、損得に彩られている。
そのざわめきを斬り裂くように、自信に満ちた声が響いた。
「もちろん、我らが倒し続けていました。一匹残らず、勇猛果敢に」
声は、王のすぐ傍から。
傍らに居ることを許された1人。
王直属の近衛軍団長である、アガト大公の声だった。
「何の問題も、ありませんでしたとも」
どこか揶揄するように、金髪碧眼の美青年であるアガト公は、続けて言った。
それを聞いて俺は、
(ヤロー。最初っから、こっちをハメる気だったな)
王を見詰めながら確信した。
「それで、如何なる用件で来たのか。元勇者隊ヒイロよ」
その声には、疑問の響きは無い。
玉座に座り、俺を見下ろすような眼差しで、確認するように言った。
俺は王の声の響きに、心が冷えていくのを感じながら返していく。
「昨日、元魔王都市シュオルに、私と他の勇者で訪れました。その際、現地にはびこる魔物と接触し戦いとなりました」
「ほう、それは難儀であったな。それで、倒したのであろうな」
「いえ、叶わず逃げ出しました」
王の周囲がざわめく。魔王を殺した勇者の1人である俺の口から出た言葉とは信じられなかったのか、疑いと怯えが入り混じった気配が滲む。
けれど、王は僅かたりとも揺らがなかった。
平然とした口調で、攻めるために問い掛けてくる。
「遺憾である、ヒイロよ。魔王を殺した汝らの力をもってしても、倒せぬ魔物であったのか?」
「いえ。あのまま留まり戦えば、可能でした。ですが、不測の事態と判断し、一時撤退を行いました」
「不測とは? 汝らほどの者が、予測しえなかったとは、よほどのことであろうな」
「こちらが予測していた魔物より、強力な魔物でした。また、その魔物は、他の魔物を支配下に置き指揮する能力を持っていると思われます」
ざわめきが更に広がる。
それを耳にしながら、変わらず王は平然と言った。
「まるで魔王のようであるな」
「はい。恐らくは、我らが倒した魔王、あるいは眷属の在り様を真似て、発生した新種の魔物だと思われます」
ざわめきが、一瞬止まる。
それは恐怖のせいだ。
かつて王都を蹂躙した魔物の軍勢。
苦痛を与える、という魔物の本能に従い、死者こそ少なかったものの、大勢の人達が傷を負わされた記憶は、まだ残っている。
この場に居る貴族たちは比較的安全だったとはいえ、その恐怖から逃れられたわけでもない。
「な、なぜ、何故そんな物が居るのだ! 魔王とその眷属は、お前達が倒したのではないのか!」
王の傍に居ることを許された大貴族の1人、ブロシェ大公が引きつった声を上げる。
王政府の財務に関わる彼は武官ではないが、魔王が現れるまでは勇猛さで知られていた人物だ。
その勇猛さが祟って、魔王の眷属が率いる魔物の軍勢が攻めて来た時には私兵を率い戦って、全滅させられた人物だ。
死者は無く、けれど無傷な者など一人たりとも無く。
ブロシェ公は、両手足を身動きできぬよう固定された上で、下の奥歯を砕かれ続けたと聞いている。
その豪胆さから、今では日常生活を送るのに問題は無いらしいが、それでもその時の恐怖を忘れた訳ではないだろう。
だからこそ、俺を責めるように声を荒げる。
「お前が! お前達が! すべて倒したというから、私は……私は……」
「倒しました。全て」
はっきりと俺は言い切る。
この場に居る誰もが安心してくれるよう、力強く、俺は続けた。
「断言します。魔王は既に存在しません。その眷属も、尽くを滅ぼしました。
たとえまた、現れたとしても、我ら勇者が倒します。
我らが神々に懸けて、誓います」
ここで揺らぐ訳にはいかない。
恐怖に囚われた人々に勇気を与える。
それが勇者だ。それを望まれて、俺達はこの世界に召喚された。
葛藤もあったけど、今ではそれを俺たちみんなが受け入れている。
だから、誰もが安心し、勇気を持てるように、力強くなけりゃいけないんだ。
その想いが、少しは伝わってくれたのか、周囲のざわめきが静まる。
けれど、それを掻き乱すように、王は言った。
「ヒイロよ、汝の言葉、疑う訳ではない。
確かに、汝ら勇者は、魔王とその眷属を滅ぼしたのであろう。
だが、それは過去の話だ。いま新たに表れた脅威の話ではない。
だからこそ、我は王として問おう。
ヒイロよ。汝ら勇者たちは、新たなる脅威に、どう対処するつもりだ?」
空手形を切らせるように、王は俺に問い掛ける。
まるでこの世すべての責任が、俺達にあるかのような物言いだ。
自分達の責任は、知らぬとばかりに投げ捨てて。
だから俺は、攻め返すように問い掛けた。
「お答えする前に、一つお聞きしたい事があります」
「許す。言ってみよ」
「我らにあの土地を下賜される前は、王政府直轄地でした。
だからこそ、今まであの地にはびこる魔物の対処は、王政府が行われていた筈です。
どうやって、今まで対処されていたのか、お聞きしたい」
今までとは違うざわめきが走る。
それは、王の意図を読もうとするざわめきだ。
先ほどまでの恐怖と怯えではなく、損得に彩られている。
そのざわめきを斬り裂くように、自信に満ちた声が響いた。
「もちろん、我らが倒し続けていました。一匹残らず、勇猛果敢に」
声は、王のすぐ傍から。
傍らに居ることを許された1人。
王直属の近衛軍団長である、アガト大公の声だった。
「何の問題も、ありませんでしたとも」
どこか揶揄するように、金髪碧眼の美青年であるアガト公は、続けて言った。
それを聞いて俺は、
(ヤロー。最初っから、こっちをハメる気だったな)
王を見詰めながら確信した。
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