転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

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第二章 街予定地の問題を解決しよう編

7 リベンジ兼ねて実践演習に向かいます その②

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「ヒイロさま。皆様のお食事を、お持ちしました」
「ありがとう、ミリィ。みんなに、配って貰えるかな」

 俺の言葉に、ミリィは他のメイドさん達に指示を出しながら、手際よく出来立ての料理を配ってくれる。
 いま居る車両は、80人ほどの若い魔術師が椅子に座っている。兵員輸送用の車両なので、がらんどうの中に、一人一人椅子を持ち込んで座っている状態だ。
 なので、手で持って食べるような食事しかとれない。
 という訳で、今回のメニューはサンドイッチ。縁起の良さも考えて、カツサンドにしてる。

「チキンサンドとカツサンドの2種類あるから。一つずつ取ってね」

 それぞれ2つの合せて4つ。それがバロムの葉で包まれている。
 俺も1つ手に取ると、ずっしりと重い。そして出来立ての温かさが。

 今回の蒸気機関車は、戦闘用車両として専用の糧食車両を引いている。
 丸々一両全部に、食事を作る設備が詰め込まれ、そこの窯で作られた焼き立てのパンでカツは挟まれていた。

 みんなにカツサンドが行き渡り、のどを潤すお茶入りの水筒も渡されたのを確認してから、

「それじゃ、みんなで食べようか」

 みんなが食べやすいよう、率先して俺から食べる。
 バロムの葉の包みを開き、ふんわり漂ってくる焼き立てパンと、カツのガッツリとした匂いに食欲がそそられる。

 まずはカツサンドから。一口にかぶりつき、ほんのりパンの甘味が舌に乗り、噛み締めればカツの旨味が溢れてくる。
 味付けは、醤油ベースの照り焼き風のタレ。そこにマスタードに似た辛子とマヨネーズが付け足され、アクセントにしゃきしゃきの葉物野菜を刻んだ物をトッピング。

 味付けは、ちょっと濃いめだけど、それに負けないほど豚肉は分厚くて、食べ応えのある美味しさが味わえる。
 美味しさに、あっという間にぺろりとひとつ。

 見れば、みんなも同じで、特に食べ盛りの若い子達なんて夢中になって食べている。
 そんな、みんなの食べっぷりに誘われるようにして、今度は鶏カツサンドを一口頬張る。

 こっちは、サッパリ風味。甘味のある爽やかな酸味が醤油ベースのタレと合わさって、すっきりと食べられる。
 ポン酢に近い味わいだけど、尖った感じがなくてまろやかだ。
 醤油にお酢を混ぜた物じゃなくて、柑橘系の果物の果汁を合わせたものだ。
 作り置きが利かないので、食べるたびに作らなきゃいけないのが難点だけど、その分美味しさは段違い。
 酸味以外の甘味や旨味も合わさって、美味しさが倍増だ。

 そこに、さっくりとした衣の歯ごたえが嬉しい。歯応えでも美味しさが増していく。
 さすがに車両の中で揚げるのは危ないので、豚カツと同じで先に軽く揚げておいたものを、窯で焼き直してる。
 その分、油は落ちて、衣はサックリと。揚げ物サンドだけどクドさはなくて、ほど良い脂のコクだけが楽しめる。

 そう思っているのは俺だけじゃないみたいで、気が付けば、みんなはあっという間に食べ終わっていた。
 
「美味しかった?」

 俺の問い掛けに、みんなは笑顔で応えてくれる。
 その表情には、気力が満ちていて。戦う前の活力が溢れていた。

(やっぱり、美味しい物は大事だよな)

 しみじみ思う。大げさでもなんでもなく、美味しい物が食べられるかどうかで、生きるか死ぬかの問題にも繋がって来るのだ。
 特に、これから生死の関わる戦いに向かうなら、食事の問題は片付けておかなければいけない。

 その為に、急いで糧食車両を作ったけど、十分効果を発揮してくれたみたいだ。

 そうした、やる気や活力の充実以外にも、戦う前に食事をとって貰ったのは理由がある。

「みんな、食べ終わったみたいだから聞いて欲しい。
 いま食べたのは、勇者の1人が神与能力チートスキルを使って作った料理なんだけど、特殊な効果があるんだ。
 食べた分だけ魔力量が増える。
 そんな効果がある筈なんだけど、実感できてるかな?」

 俺の問い掛けに、みんなは自分の体調を確認するような間を空けて、驚いたような表情になる。
 どうやら、問題なく効果は発揮されたみたいだ。

 五郎の神与能力『神の食事アンブロシア』は、出来立て30分以内という制約はあるけれど、食べた相手が誰だろうと効果を及ぼせる利点がある。
 それを利用して、多少無理をして数百人分の料理を一気に作って貰っているんだ。
 少し前にやった料理勝負で仲良くなったらしい、カリーナっていう女の子と、アルベルトさんという男性にも協力して貰って、なんとかやって貰っている。
 その苦労が無駄にはならなかったみたいで嬉しい。
 でも、それはそれとして、みんなに言うべき事は言っとかないといけない。

「魔力量が増えてるのが、みんな実感できてるみたいだね」

 俺は、魔力量が増えて気持ちが盛り上がり過ぎてるみんなに釘を刺す。

「あくまでもそれは一時的に底上げされている物だけど、普段より多くの魔術が使えるようになってる筈だよ。
 だから、これから戦う時は、いつも以上に無理をしても大丈夫。
 ただし、それはあくまでも、緊急時に無理をしてでも逃げ出す為の物だからね。
 魔力量が増えたからって、絶対に無茶はしないで。
 調子に乗るのは、特にダメだからね」

 全員じゃないけれど、一部でバツの悪い表情になる。
 急に、今までにない力を手に入れて気持ちが大きくなるのはしょうがないとは思う。
 でも、それが原因で死にました、なんてことは絶対にさせないためにも、しっかり言っとかないといけないんだ。

 という訳で、口やかましく思われても良いから、しっかり言い聞かせる。
 それぞれの表情を見て、納得したのを確認してから、

「それじゃ。あとは現地に着くまで、このまま待機しておいて。
 俺はこれから、他の車両にも、同じように食事を届けに行くから。
 それじゃ、あと2時間もないけれど、それまでしっかり休んでおいて。
 現地に着いたら、しっかり戦って貰うから。
 頼りにしてるから。みんな、よろしく頼むよ」 

 俺の呼び掛けに、みんなは力強く応えてくる。
 それに笑顔で返し、俺は後続車両へ。
 そこでも同じように戦意高揚の言葉を贈り、魔力量上昇の食事をとって貰い、さらに後続車両に俺は向かった。

 そこは、志願者として来てくれた若い魔術師たちとは違う空気が漂っていた。
 魔術師の名家が、それぞれ威光と権威を守るために送り出してきた、ある意味エリートの集団だ。
 ピンっと張り詰めた空気が広がっている。
 それと同時に、牽制し合うような気配も。
 競争し合う間柄でもあるせいで、どこか刺々しい雰囲気が流れている

 それに当てられて、ため息をつきたい気持ちになった俺に、1人の魔術師が声を掛けてきた。
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