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第二章 街予定地の問題を解決しよう編
7 リベンジ兼ねて実践演習に向かいます その①
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魔術協会に魔物退治の協力を要請してから3日後。
早速、俺達は魔物が蔓延るシュオルに向け、蒸気機関車で向かっていた。
乗り込む魔術協会からの応援は483名。
予想の上限ギリギリまで来てくれたのは、正直ありがたい。
魔術師の名家が、それぞれの威光と権威を守るため送り出してきた300名と、募集に応じた志願者183名。
その内の1人、志願者として来ていたコニーに俺は声を掛けた。
「緊張してる?」
「へっ、は、はい! じゃなくていいえ!」
青年というよりは少年と言った見た目のコニーが、緊張した声で慌てて返す。
思わず苦笑する。こちらの世界の常識だと、すでに大人の仲間入りをした年齢だけど、やっぱりまだまだ子供だ。
「緊張しても良いんだよ」
俺は、気負い過ぎた意気込みをほぐすようにコニーに言う。
「い、良いん……ですか?」
恐る恐るというように聞き返すコニーに、
「うん。だって、緊張してるってことは、それだけやる気が漲ってる証拠だよ。それを消しちゃ、もったいないよ」
「で、でも……怯えてるみたいで……」
「なおのこと良いよ。それって、状況が見えてる証拠だもの。これから魔物と戦おうってのに、何も感じない方が問題だって。怖いものが無いって、それは単なる考え無しと同じなんだから」
「けど……」
「怖くて戦えそうにない?」
「それはっ……――」
コニーは、すぐに返そうとして、思い悩むような間を空けて返してくれた。
「分からないです……父さんの仇を討ちたくて志願して来たのに……怖さは消えてくれなくて……」
「大丈夫。戦えるよ」
ぽんっ、コニーの肩に手を置いて、俺は意識して穏やかな声で言った。
「やる気も恐怖も手に入れてるんだ、あとは慣れだけだよ。それを手に入れる時間は、俺達が用意する。安心して欲しい」
すると、コニーは俺を黙ってじっと見ていたが、やがて目をキラッキラに輝かせて、
「はい! 俺、頑張ります!」
俺を信じ切るように返してくれた。
(……うぅ、心が痛い……)
どう考えても自分がやってるのは扇動行為なので、罪悪感めいた物が湧いて出る。なのだけど、
「勇者さまのお蔭で、俺、戦える勇気が湧いてきました! 期待に応えられるぐらい、頑張ります!」
更にコニーは、やる気を見せてくれる。しかも、それはコニーだけでなく、いま居る車両の若い子たちみんなが、同じような眼差しで俺を見詰めていた。
(うぅ……心だけじゃなくて、胃も痛くなってきた……)
内心は結構キツイ物があるんだけど、戦意高揚は大事な仕事なので、キッチリやり遂げないといけない。
だから俺は更に、みんなの戦意を高めるように続けて言った。
「みんな、聞いて欲しい」
呼び掛けを一つ。みんなの視線と意識がこちらに向き、俺の言葉を待ってくれる。
けれどすぐには口を開かず、みんながじれるような間を空けて俺は続けた。
「あと2時間で、現場には到着する。そこでの戦いは、苦しいものになると思う。
けど、キミたちなら大丈夫。絶対に死なない。生き残れる。
俺たち勇者が、約束する」
みんなは言葉もなく、食い入るように俺を見詰める。
必死という言葉をそのまま表しているかのような、みんなの態度に、俺は心地好さを感じながら続けた。
「今回の戦いでみんなに知って欲しいのは、生き残ること、これだけだよ。
他は、何も要らない。
勝たなくても良い、倒さなくても良い。
必要なのは戦って、生きて帰って来れること。
それを今回の戦いで学んで欲しい。
なぜなら、魔物との戦いは、決して終わらないんだ」
俺の言葉に、みんなの表情は強張る。相打ち覚悟で死ぬ気で戦っても、それでは決して終わらない徒労。それを直に聞かされて、怯むような気配が滲む。
けれど、それだけじゃない。終わらぬ徒労だろうと立ち向かおうとする気迫が、その目の輝きには灯っている。
その眼差しに、ほころびそうになった表情を無理やり抑え、更に続ける。
「続けること。それが俺達に出来ることだよ。
それは、繋げることでもあるんだ。
今日の自分の経験を、明日の自分に重ねることも出来る。
ここには居ない誰かに、伝える事だって出来るんだ。
だから、負けても良い。逃げても良い。
その代償は、俺たち勇者が払うから」
息を飲むような気配が沸き立つ。どこか罪悪感めいたそれに、俺は苦笑しながら返した。
「後ろめたさを、感じる必要はないよ。
だって、俺達は信じてるから。
いつかきっと、俺達が居なくてもみんなは、やっていけるようになるって。
それまでの時間稼ぎなら、喜んで俺達はするよ。
その為にも、生き残って欲しい。そして必死になって欲しいんだ。
それがきっと、みんなの未来に繋がる筈だから。
出来るかな? みんな」
俺の問い掛けに、みんなはすぐには返せなかった。
けれど、覚悟を決めるような間を置いて、
「出来ます! やってみせます!」
「もちろんです! 任せて下さい!」
「頑張ります!」
みんなは口々に決意を返してくれた。
(……ぁ、マズい。ちょっと泣きそう……)
やる気を見せてくれるみんなに嬉しくなって、少しうるっと来る。
それを誤魔化すように、俺は笑顔を浮かべながら、
「うん、みんなやる気を出してくれて何よりです。でも、それと同じぐらい、英気を養える時には養わないとダメだよ。という訳で、今の内に食事をとっておこう」
そんな俺の言葉を待っていてくれたかのように、良いタイミングで、ミリィ達が戦う前の食事を持って来てくれた。
早速、俺達は魔物が蔓延るシュオルに向け、蒸気機関車で向かっていた。
乗り込む魔術協会からの応援は483名。
予想の上限ギリギリまで来てくれたのは、正直ありがたい。
魔術師の名家が、それぞれの威光と権威を守るため送り出してきた300名と、募集に応じた志願者183名。
その内の1人、志願者として来ていたコニーに俺は声を掛けた。
「緊張してる?」
「へっ、は、はい! じゃなくていいえ!」
青年というよりは少年と言った見た目のコニーが、緊張した声で慌てて返す。
思わず苦笑する。こちらの世界の常識だと、すでに大人の仲間入りをした年齢だけど、やっぱりまだまだ子供だ。
「緊張しても良いんだよ」
俺は、気負い過ぎた意気込みをほぐすようにコニーに言う。
「い、良いん……ですか?」
恐る恐るというように聞き返すコニーに、
「うん。だって、緊張してるってことは、それだけやる気が漲ってる証拠だよ。それを消しちゃ、もったいないよ」
「で、でも……怯えてるみたいで……」
「なおのこと良いよ。それって、状況が見えてる証拠だもの。これから魔物と戦おうってのに、何も感じない方が問題だって。怖いものが無いって、それは単なる考え無しと同じなんだから」
「けど……」
「怖くて戦えそうにない?」
「それはっ……――」
コニーは、すぐに返そうとして、思い悩むような間を空けて返してくれた。
「分からないです……父さんの仇を討ちたくて志願して来たのに……怖さは消えてくれなくて……」
「大丈夫。戦えるよ」
ぽんっ、コニーの肩に手を置いて、俺は意識して穏やかな声で言った。
「やる気も恐怖も手に入れてるんだ、あとは慣れだけだよ。それを手に入れる時間は、俺達が用意する。安心して欲しい」
すると、コニーは俺を黙ってじっと見ていたが、やがて目をキラッキラに輝かせて、
「はい! 俺、頑張ります!」
俺を信じ切るように返してくれた。
(……うぅ、心が痛い……)
どう考えても自分がやってるのは扇動行為なので、罪悪感めいた物が湧いて出る。なのだけど、
「勇者さまのお蔭で、俺、戦える勇気が湧いてきました! 期待に応えられるぐらい、頑張ります!」
更にコニーは、やる気を見せてくれる。しかも、それはコニーだけでなく、いま居る車両の若い子たちみんなが、同じような眼差しで俺を見詰めていた。
(うぅ……心だけじゃなくて、胃も痛くなってきた……)
内心は結構キツイ物があるんだけど、戦意高揚は大事な仕事なので、キッチリやり遂げないといけない。
だから俺は更に、みんなの戦意を高めるように続けて言った。
「みんな、聞いて欲しい」
呼び掛けを一つ。みんなの視線と意識がこちらに向き、俺の言葉を待ってくれる。
けれどすぐには口を開かず、みんながじれるような間を空けて俺は続けた。
「あと2時間で、現場には到着する。そこでの戦いは、苦しいものになると思う。
けど、キミたちなら大丈夫。絶対に死なない。生き残れる。
俺たち勇者が、約束する」
みんなは言葉もなく、食い入るように俺を見詰める。
必死という言葉をそのまま表しているかのような、みんなの態度に、俺は心地好さを感じながら続けた。
「今回の戦いでみんなに知って欲しいのは、生き残ること、これだけだよ。
他は、何も要らない。
勝たなくても良い、倒さなくても良い。
必要なのは戦って、生きて帰って来れること。
それを今回の戦いで学んで欲しい。
なぜなら、魔物との戦いは、決して終わらないんだ」
俺の言葉に、みんなの表情は強張る。相打ち覚悟で死ぬ気で戦っても、それでは決して終わらない徒労。それを直に聞かされて、怯むような気配が滲む。
けれど、それだけじゃない。終わらぬ徒労だろうと立ち向かおうとする気迫が、その目の輝きには灯っている。
その眼差しに、ほころびそうになった表情を無理やり抑え、更に続ける。
「続けること。それが俺達に出来ることだよ。
それは、繋げることでもあるんだ。
今日の自分の経験を、明日の自分に重ねることも出来る。
ここには居ない誰かに、伝える事だって出来るんだ。
だから、負けても良い。逃げても良い。
その代償は、俺たち勇者が払うから」
息を飲むような気配が沸き立つ。どこか罪悪感めいたそれに、俺は苦笑しながら返した。
「後ろめたさを、感じる必要はないよ。
だって、俺達は信じてるから。
いつかきっと、俺達が居なくてもみんなは、やっていけるようになるって。
それまでの時間稼ぎなら、喜んで俺達はするよ。
その為にも、生き残って欲しい。そして必死になって欲しいんだ。
それがきっと、みんなの未来に繋がる筈だから。
出来るかな? みんな」
俺の問い掛けに、みんなはすぐには返せなかった。
けれど、覚悟を決めるような間を置いて、
「出来ます! やってみせます!」
「もちろんです! 任せて下さい!」
「頑張ります!」
みんなは口々に決意を返してくれた。
(……ぁ、マズい。ちょっと泣きそう……)
やる気を見せてくれるみんなに嬉しくなって、少しうるっと来る。
それを誤魔化すように、俺は笑顔を浮かべながら、
「うん、みんなやる気を出してくれて何よりです。でも、それと同じぐらい、英気を養える時には養わないとダメだよ。という訳で、今の内に食事をとっておこう」
そんな俺の言葉を待っていてくれたかのように、良いタイミングで、ミリィ達が戦う前の食事を持って来てくれた。
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