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第二章 街予定地の問題を解決しよう編
幕間 捜査の進捗
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「30年前の資料、ここに置いておきますね」
「ありがとうございます。では、こちらに上げておいた人物の昇進と経歴に関する資料を手に入れて来てくれますか?」
「うわぁ……」
思わず少女は、げんなりとした声を上げた。
少女の名前は、リーン・カルナヴァル。最初の頃に見せていた意気込みは息をひそめ、ぐったりとした気配を漂わせている。
「疲れましたか? では、お茶にしましょう」
やわらかく笑みを浮かべ、この部屋に居るもう1人、草凪真志は持って来ていた水筒をランチボックスから取り出して、品の良い白の茶器にお茶を注いでいく。
「え、あっ、いいです! いらないです! これぐらいで休んでたら――」
「ダメです」
慌てて断るリーンに、真志はキッパリと言い切った。
「休むべき時に、休まないと。疲れていては、効率が悪くなります。それなのに無理をすれば、余計に時間がかかるものです。急がば回れ、ですよ」
「……そういうものでしょうか?」
「はい。経験上、実感しています。ですから、今は休みましょう。
ああ、とはいえ、座る場所を作らないと」
真志は、自分の周りの床に積み上げられた、無数の紙の束をまとめて端に寄せる。
いま居る部屋は、魔術協会に収められた資料を閲覧する場所だったが、いたる所が同様の有様だ。
その全てが、魔術協会に属している人物の経歴を記した資料である。
「――と、これで良し。ちょっと狭いですけど、良いですか?」
「え……あ、その……別に良いです」
広さよりも、真志のすぐ横なのが気になるリーンだったが、
(別に、何かされるって訳でもないし……真志さん、紳士だし……でも気の迷いでこう、ふらふら~っと……ってある訳ないかーっ、私だし~、胸ないし~……って自分で突っ込んでて悲しくなるわーっ)
色々と自分の中で葛藤を経て、少しだけ恥ずかしそうに真志の横に座る。
そういうお年頃なリーンであった。
しかし真志は、全くそういった事に気付かずに、お茶と一緒にお茶菓子を並べる。
「どうぞ。私達の世界であったチョコレートというお菓子を、こちらで再現してみた物です。食べてみて下さい」
「はぁ……その、私、甘い物はあんまり好きじゃないと言いますか……こう、じゃりじゃりする感じで口の中が焼ける様なのが……」
「ああ、それなら大丈夫ですよ。ただ甘いだけの、砂糖まみれなお菓子ではないですから。騙されたと思って、一口食べてみて下さい」
「はぁ、そこまで言われるなら……」
半々半疑で、一口サイズの物をパクリと。
舌にのせ、ほんのりとした苦味を伴う甘味が、少しずつ溶けだして。コクのある美味しさを、無言で味わう。
こくりと飲み込んで、ほにゃっと表情がほころぶ。
「美味しいですね、これ」
「気に入りましたか? なら、まだありますから、どうぞ」
「はい! いただきます!」
勢い込んで、次々食べる。食べれば食べるほど、美味しさにほころんでいく。
一息つくように、お茶を飲み。じんわりと、疲れが取れるような心地好さに浸る。
そうして、まったりと休憩していたリーンだったが、途中から表情が曇る。
「どうしました?」
「え……いえ、その……こんなにのんびりしてて良いのかなぁって思っちゃいまして……まだ、誰の話も聞けていませんし……やってる事と言ったら、昔の人事資料を読んでるだけですし……」
不安を滲ませるリーンに、真志は穏やかな声で言った。
「十分ですよ。いま我々が調べるべきは、現在ではなく過去の手口です」
「過去の手口、ですか?」
不思議そうに尋ねるリーンに、真志は応える。
「はい、そうです。もとより私は、聞き込みで何かが分かるとは期待していませんから」
「ええっ、そうなんですか!?」
「はい。今回の犯行ですが、どのような物だったか、知っていますね?」
「え? あっ、はい!」
確認するような真志の問い掛けに、リーンは答え合わせをするように返していく。
「カルナ・ストラドフォード氏の自宅を訪れた勇者の御1人、カゲナギ・ヒイロさまが帰られてから凡そ40分後。カルナ氏の自宅を人工物と思われる魔物が襲撃。
ほぼ同時刻、ヒイロさまも同様に襲撃を受けるも撃退。
即座にカルナ氏の自宅に引き換えし、カルナ氏と協力して、こちらの魔物も撃退されるも、どこの誰が犯人かは判別できず……ですよね?」
「はい、正解です。ここで大事なのは、なんの手掛かりも残っていないということです。どういうことか、分かりますか?」
「え、その……犯人が、有能だった……とか?」
自信なさ気に応えるリーンを、褒めるような口調で真志は返す。
「ええ、その通りです。こちらには遠隔視も、過去3日という条件があるとはいえ過去視も出来る勇者が居るにも拘らず、何の証拠も残さないほど有能です。
この事から考えられるのは、まず一つ。今回の犯人は、私たち勇者の能力を知っている相手であるということです」
「……だから私達、魔術協会の中に、犯人は居ると……」
「これだけでは、そこまで言えません。王政府の関係者や、そこから漏れ出ることで知った誰かの可能性もありますから。
ですがそんなことよりも問題なのは、今回の犯人は、知り得た情報を駆使して、自分の犯行の証拠を残さないほど有能だということです。
それだけの人物ですから、単純に聞き込みをする事で正体がバレるようなミスはしないでしょう」
「それだと、見つけられない事になるんじゃ……」
「いえ、そうとは限りません。なぜなら、今回の犯人は有能ですが、同時に衝動的な人物だと思われるからです」
「有能なのに、衝動的……ですか?」
どこか矛盾するような言葉に、リーンは不思議そうに聞き返す。それに真志は、お茶を継ぎ足しながら返した。
「カルナ氏が襲われた理由ですが、ほぼ間違いなく陽色が訪れたことが原因でしょう。
そうでなければ、あまりにも偶然が過ぎます。
そしてここで重要なのは、陽色がカルナ氏の自宅を訪れることを決めたのは、襲撃がなされた当日です。
これでは、事前の計画も何もあった物ではありません。
にも拘らず、カルナ氏は襲われました。
しかも、問題なのは陽色まで襲われた事です」
「え……でも、それって、おかしなことですか?」
「はい。あまりにも目的が、分散しすぎているんです。
カルナ氏を襲い殺すことが目的なら、戦力の分散なんてしなければ良いんです。
仮に、陽色を殺害する事が目的だったとしても同様です。
なのに、折角の手駒を分散させて、どちら共を襲撃させている。
酷く優柔不断で思いつきに流され、その上で強欲だ。
恐らく何かを同時に思いついて、我慢できずに実行してしまったのでしょう」
「だから、衝動的な相手だってことですか? でも……そんな人いるんでしょうか? そんな迂闊な事をして、バレちゃったら……」
「バレない自信があるんでしょう。それだけの有能さは持っている。
けれどだからこそ、バレないだけの準備をしてしまったなら、あとは何をしても構わない。
そんな事を考える相手だとしたら?」
真志は、お茶を一口飲んでのどを潤してから、続けていく。
「バレなければ、何をしても良い。
考え無しの子供のようですが、この人物の不幸は、それで何事もなく人生を成し遂げられた。
それだけの能力が有ったことでしょう。
そういう人物は、衝動的に犯行を繰り返します」
「そ、そんな人……本当に居るんでしょうか?」
「少なくとも、私達の元居た世界では居ましたよ。そういう事例があります。
秩序型の社会性のある連続殺人者。
現状で得られた情報から推測するに、今回の犯人は、そういった性質の相手だと思われます。
だからこそ、過去の事例を調べるのは重要なんです」
「え、えっと、それって……」
悩み考えて、リーンは自分なりの結論を口にする。
「衝動的だから、今回だけでなく、昔からずっと同じようなことを続けてる? でも……手掛かりを残さないほど有能だから……あっ、でも、手掛かりは無くても、結果だけは残る! その……そういうこと、ですか?」
「はい。私もそう思っています」
頑張る生徒を見詰めるように、やさしい眼差しで真志は言った。
「殺人を容易く手段の一つとして行う人物なら、過去にも繰り返している筈です。
そして、犯行は証拠を残さない。場合によっては、死体さえ出ていない事もあるでしょう。
ですが、かつて確かに居た人物が消えてしまったという結果だけは、確実に残る」
「だから魔術協会内の、過去の失踪者や死亡者、そういった事例を調べて、犯人を手繰ろうという訳ですね!」
「はい、その通りです。それと同時に、そういった失踪者や死亡者が出ることで、なんらかの得をした人物が居ないかも調べましょう。
犯行の痕跡と動機。
その両面の捜査が、当面の私達の仕事です。
かなり地道で根気のいる仕事ですが、お願いできますか?」
「はい! もちろんです! でも、その……私なんかで、良いんですか? 他の、もっと有能な人達が……」
「いいえ、そんな事はありません」
やさしく真志は言い切ると、続けて問い掛ける。
「リーンさん。私は、かなり確定的に言っていますが、実際のところは推測に基づく総当たりです。
言ってみれば、ただのカンで、無駄になるかもしれない事に協力して下さいとお願いしているんです。
それでも、かまいませんか?」
これにリーンは、はっきりと返した。
「かまいません! だって、それで何も無いって分かったら、他のやり方をする余裕が出来るってことじゃないですか! 無駄だけど、無駄じゃないです! だから、その、頑張ります!」
これに真志は、嬉しそうに笑みを浮かべると、
「そういう貴女だから、私は手助けをお願いしたいんです。捜査に何よりも大事なのは、根気と、信頼できる仲間ですから。よろしくお願いします、リーンさん」
頭を下げてまで言う真志に、リーンは顔を真っ赤にしながら、
「や、止めて下さい! わ、私なんかに頭を下げたら……その、頑張ります。一生懸命、頑張りますから!」
誓いを口にするように真志に返した。
これに真志は、苦笑するように目を細めながら、
「ありがとう。頼りにしてますよ。さて、それでは、また頑張るその前に、残りのお菓子も食べちゃいましょう。頑張るのも大事ですけど、休むのも大事ですからね」
ランチバスケットから、バームクーヘンやらのお菓子を取出した。
リーンは、一瞬悩んだ後、
「えっと……いただきます!」
休む時は休む! と言わんばかりに、お茶とお菓子を楽しんだ。
そうして休んだ後、再び資料の海に跳び込む事に。
「早く、痕跡を見つけられると良いですね」
意気込むリーンに、
「ええ。そうすれば、きっと陽色がどうにかしてくれるでしょうから」
「ぁ……信じてるんですね」
「はい。もちろんです。だって彼は――」
真志は悪戯っぽい笑顔で応えた。
「殴られたら、殴り返してくれる人物ですから。頼りになりますよ」
などということを言われているとは全く思っていない陽色は、真志たちが苦労している頃、同じように色々と苦労していた。
「ありがとうございます。では、こちらに上げておいた人物の昇進と経歴に関する資料を手に入れて来てくれますか?」
「うわぁ……」
思わず少女は、げんなりとした声を上げた。
少女の名前は、リーン・カルナヴァル。最初の頃に見せていた意気込みは息をひそめ、ぐったりとした気配を漂わせている。
「疲れましたか? では、お茶にしましょう」
やわらかく笑みを浮かべ、この部屋に居るもう1人、草凪真志は持って来ていた水筒をランチボックスから取り出して、品の良い白の茶器にお茶を注いでいく。
「え、あっ、いいです! いらないです! これぐらいで休んでたら――」
「ダメです」
慌てて断るリーンに、真志はキッパリと言い切った。
「休むべき時に、休まないと。疲れていては、効率が悪くなります。それなのに無理をすれば、余計に時間がかかるものです。急がば回れ、ですよ」
「……そういうものでしょうか?」
「はい。経験上、実感しています。ですから、今は休みましょう。
ああ、とはいえ、座る場所を作らないと」
真志は、自分の周りの床に積み上げられた、無数の紙の束をまとめて端に寄せる。
いま居る部屋は、魔術協会に収められた資料を閲覧する場所だったが、いたる所が同様の有様だ。
その全てが、魔術協会に属している人物の経歴を記した資料である。
「――と、これで良し。ちょっと狭いですけど、良いですか?」
「え……あ、その……別に良いです」
広さよりも、真志のすぐ横なのが気になるリーンだったが、
(別に、何かされるって訳でもないし……真志さん、紳士だし……でも気の迷いでこう、ふらふら~っと……ってある訳ないかーっ、私だし~、胸ないし~……って自分で突っ込んでて悲しくなるわーっ)
色々と自分の中で葛藤を経て、少しだけ恥ずかしそうに真志の横に座る。
そういうお年頃なリーンであった。
しかし真志は、全くそういった事に気付かずに、お茶と一緒にお茶菓子を並べる。
「どうぞ。私達の世界であったチョコレートというお菓子を、こちらで再現してみた物です。食べてみて下さい」
「はぁ……その、私、甘い物はあんまり好きじゃないと言いますか……こう、じゃりじゃりする感じで口の中が焼ける様なのが……」
「ああ、それなら大丈夫ですよ。ただ甘いだけの、砂糖まみれなお菓子ではないですから。騙されたと思って、一口食べてみて下さい」
「はぁ、そこまで言われるなら……」
半々半疑で、一口サイズの物をパクリと。
舌にのせ、ほんのりとした苦味を伴う甘味が、少しずつ溶けだして。コクのある美味しさを、無言で味わう。
こくりと飲み込んで、ほにゃっと表情がほころぶ。
「美味しいですね、これ」
「気に入りましたか? なら、まだありますから、どうぞ」
「はい! いただきます!」
勢い込んで、次々食べる。食べれば食べるほど、美味しさにほころんでいく。
一息つくように、お茶を飲み。じんわりと、疲れが取れるような心地好さに浸る。
そうして、まったりと休憩していたリーンだったが、途中から表情が曇る。
「どうしました?」
「え……いえ、その……こんなにのんびりしてて良いのかなぁって思っちゃいまして……まだ、誰の話も聞けていませんし……やってる事と言ったら、昔の人事資料を読んでるだけですし……」
不安を滲ませるリーンに、真志は穏やかな声で言った。
「十分ですよ。いま我々が調べるべきは、現在ではなく過去の手口です」
「過去の手口、ですか?」
不思議そうに尋ねるリーンに、真志は応える。
「はい、そうです。もとより私は、聞き込みで何かが分かるとは期待していませんから」
「ええっ、そうなんですか!?」
「はい。今回の犯行ですが、どのような物だったか、知っていますね?」
「え? あっ、はい!」
確認するような真志の問い掛けに、リーンは答え合わせをするように返していく。
「カルナ・ストラドフォード氏の自宅を訪れた勇者の御1人、カゲナギ・ヒイロさまが帰られてから凡そ40分後。カルナ氏の自宅を人工物と思われる魔物が襲撃。
ほぼ同時刻、ヒイロさまも同様に襲撃を受けるも撃退。
即座にカルナ氏の自宅に引き換えし、カルナ氏と協力して、こちらの魔物も撃退されるも、どこの誰が犯人かは判別できず……ですよね?」
「はい、正解です。ここで大事なのは、なんの手掛かりも残っていないということです。どういうことか、分かりますか?」
「え、その……犯人が、有能だった……とか?」
自信なさ気に応えるリーンを、褒めるような口調で真志は返す。
「ええ、その通りです。こちらには遠隔視も、過去3日という条件があるとはいえ過去視も出来る勇者が居るにも拘らず、何の証拠も残さないほど有能です。
この事から考えられるのは、まず一つ。今回の犯人は、私たち勇者の能力を知っている相手であるということです」
「……だから私達、魔術協会の中に、犯人は居ると……」
「これだけでは、そこまで言えません。王政府の関係者や、そこから漏れ出ることで知った誰かの可能性もありますから。
ですがそんなことよりも問題なのは、今回の犯人は、知り得た情報を駆使して、自分の犯行の証拠を残さないほど有能だということです。
それだけの人物ですから、単純に聞き込みをする事で正体がバレるようなミスはしないでしょう」
「それだと、見つけられない事になるんじゃ……」
「いえ、そうとは限りません。なぜなら、今回の犯人は有能ですが、同時に衝動的な人物だと思われるからです」
「有能なのに、衝動的……ですか?」
どこか矛盾するような言葉に、リーンは不思議そうに聞き返す。それに真志は、お茶を継ぎ足しながら返した。
「カルナ氏が襲われた理由ですが、ほぼ間違いなく陽色が訪れたことが原因でしょう。
そうでなければ、あまりにも偶然が過ぎます。
そしてここで重要なのは、陽色がカルナ氏の自宅を訪れることを決めたのは、襲撃がなされた当日です。
これでは、事前の計画も何もあった物ではありません。
にも拘らず、カルナ氏は襲われました。
しかも、問題なのは陽色まで襲われた事です」
「え……でも、それって、おかしなことですか?」
「はい。あまりにも目的が、分散しすぎているんです。
カルナ氏を襲い殺すことが目的なら、戦力の分散なんてしなければ良いんです。
仮に、陽色を殺害する事が目的だったとしても同様です。
なのに、折角の手駒を分散させて、どちら共を襲撃させている。
酷く優柔不断で思いつきに流され、その上で強欲だ。
恐らく何かを同時に思いついて、我慢できずに実行してしまったのでしょう」
「だから、衝動的な相手だってことですか? でも……そんな人いるんでしょうか? そんな迂闊な事をして、バレちゃったら……」
「バレない自信があるんでしょう。それだけの有能さは持っている。
けれどだからこそ、バレないだけの準備をしてしまったなら、あとは何をしても構わない。
そんな事を考える相手だとしたら?」
真志は、お茶を一口飲んでのどを潤してから、続けていく。
「バレなければ、何をしても良い。
考え無しの子供のようですが、この人物の不幸は、それで何事もなく人生を成し遂げられた。
それだけの能力が有ったことでしょう。
そういう人物は、衝動的に犯行を繰り返します」
「そ、そんな人……本当に居るんでしょうか?」
「少なくとも、私達の元居た世界では居ましたよ。そういう事例があります。
秩序型の社会性のある連続殺人者。
現状で得られた情報から推測するに、今回の犯人は、そういった性質の相手だと思われます。
だからこそ、過去の事例を調べるのは重要なんです」
「え、えっと、それって……」
悩み考えて、リーンは自分なりの結論を口にする。
「衝動的だから、今回だけでなく、昔からずっと同じようなことを続けてる? でも……手掛かりを残さないほど有能だから……あっ、でも、手掛かりは無くても、結果だけは残る! その……そういうこと、ですか?」
「はい。私もそう思っています」
頑張る生徒を見詰めるように、やさしい眼差しで真志は言った。
「殺人を容易く手段の一つとして行う人物なら、過去にも繰り返している筈です。
そして、犯行は証拠を残さない。場合によっては、死体さえ出ていない事もあるでしょう。
ですが、かつて確かに居た人物が消えてしまったという結果だけは、確実に残る」
「だから魔術協会内の、過去の失踪者や死亡者、そういった事例を調べて、犯人を手繰ろうという訳ですね!」
「はい、その通りです。それと同時に、そういった失踪者や死亡者が出ることで、なんらかの得をした人物が居ないかも調べましょう。
犯行の痕跡と動機。
その両面の捜査が、当面の私達の仕事です。
かなり地道で根気のいる仕事ですが、お願いできますか?」
「はい! もちろんです! でも、その……私なんかで、良いんですか? 他の、もっと有能な人達が……」
「いいえ、そんな事はありません」
やさしく真志は言い切ると、続けて問い掛ける。
「リーンさん。私は、かなり確定的に言っていますが、実際のところは推測に基づく総当たりです。
言ってみれば、ただのカンで、無駄になるかもしれない事に協力して下さいとお願いしているんです。
それでも、かまいませんか?」
これにリーンは、はっきりと返した。
「かまいません! だって、それで何も無いって分かったら、他のやり方をする余裕が出来るってことじゃないですか! 無駄だけど、無駄じゃないです! だから、その、頑張ります!」
これに真志は、嬉しそうに笑みを浮かべると、
「そういう貴女だから、私は手助けをお願いしたいんです。捜査に何よりも大事なのは、根気と、信頼できる仲間ですから。よろしくお願いします、リーンさん」
頭を下げてまで言う真志に、リーンは顔を真っ赤にしながら、
「や、止めて下さい! わ、私なんかに頭を下げたら……その、頑張ります。一生懸命、頑張りますから!」
誓いを口にするように真志に返した。
これに真志は、苦笑するように目を細めながら、
「ありがとう。頼りにしてますよ。さて、それでは、また頑張るその前に、残りのお菓子も食べちゃいましょう。頑張るのも大事ですけど、休むのも大事ですからね」
ランチバスケットから、バームクーヘンやらのお菓子を取出した。
リーンは、一瞬悩んだ後、
「えっと……いただきます!」
休む時は休む! と言わんばかりに、お茶とお菓子を楽しんだ。
そうして休んだ後、再び資料の海に跳び込む事に。
「早く、痕跡を見つけられると良いですね」
意気込むリーンに、
「ええ。そうすれば、きっと陽色がどうにかしてくれるでしょうから」
「ぁ……信じてるんですね」
「はい。もちろんです。だって彼は――」
真志は悪戯っぽい笑顔で応えた。
「殴られたら、殴り返してくれる人物ですから。頼りになりますよ」
などということを言われているとは全く思っていない陽色は、真志たちが苦労している頃、同じように色々と苦労していた。
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―――
当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。
なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。
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