転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

文字の大きさ
91 / 115
第二章 街予定地の問題を解決しよう編

7 リベンジ兼ねて実践演習に向かいます その③

しおりを挟む
「勇者ヒイロ殿。随分と前の車両では賑わいが絶えないようでしたが、なにかあったのですか?」

 温和な笑顔を浮かべながら、わざわざ立ち上がり近付いて来てくれたのは、ラングレーさんだ。
 今年で42才になるらしい魔術師の人だけど、若々しいので30代前半の年頃に見える。
 相当の実力派で、カルナが抜かすまでは、最年少で2桁の位階を手に入れているほどだ。

 しかも若い頃から努力を惜しまず、様々な業績を立て、今ではいずれ長老の席を狙える1人として上げられている。
 魔王が暴れまくっていた頃は、勇敢に戦い、多くの魔物を倒したほどの実力を持っているらしい。

 そんなラングレーさんだけど、今回の魔物討伐には積極的に協力を申し出てくれた1人だ。
 自分の派閥を説得して、多くの魔術師を参加させてくれている。
 もしそうで無かったら、500人近い魔術師の協力者は集まらなかっただろうから、下手な対応が出来ない相手でもある。

「戦意高揚も兼ねて、志願者の方達に話をさせて頂いていました。それと合わせて、魔力量を一時的に増大させる食事をとって貰っています。こちらにも、すぐにお持ちする予定です」
「魔力量の一時的な増大、ですか? それは話に聞く、神与能力によるもので?」
「はい。我々、勇者の1人である大口五郎の神与能力によるものです」
「ありがたい。それならば、戦いによる被害は減らすことが出来るでしょう」
「ええ。誰1人として、死者は出しません」

 俺の言葉に、ラングレーさんは息を飲むように黙る。けれどすぐに、続けて言った。

「そこまでの御覚悟とは。我らも、肝に命じねばなりませんね。ですがそれだけに、不甲斐ないことです」

 苦しむような表情で、ラングレーさんは更に続ける。

「本来なら長老たちも、この場に居るべきだというのに、それも叶わないとは。同じ魔術師として、申し訳ないと思っています」

 ラングレーさんが言うように、今この場には長老たちは居ない。
 俺達がカルナを介して魔術協会に協力を要請した時、長老たちの返事はあまり良くは無かった。
 それは、魔王との戦いで受けた魔術師たちの傷は完全に癒えきってはおらず、未だに恐怖も残っている事が理由だった。
 当時の戦いで実戦を経験した魔術師の多くはトラウマを抱え、戦いに出すことなど出来ないと言われたのだ。

 その状態で戦力として出せるのは、当時は戦っていない若い魔術師を主体にする事になる。
 戦闘の経験が無い者さえいる状況では、とてもではないがすぐには応えられない。
 だから、最低限の訓練をする時間も入れて待って欲しい。
 というのが、長老たちの返事だった。

 本来なら、それで2か月は協力体制が出来上がるのは先になる筈だったけど、そこで動いてくれたのがラングレーさんだったりする。
 自分の派閥が積極的に動くことで、他の派閥も動かざるを得ない状況を作り出し、その上で若い魔術師たちに呼び掛けて志願者を募ってくれたのだ。

「私は兼ねてより、貴方たち勇者だけに魔物の脅威を背負わせるべきではないと、思っていたんです」

 ラングレーさんは、力強く言った。

「誰かに押し付けるのではなく、1人1人が責を負う。そうあるべきだと、私は思っています。今回の魔物討伐は、その始まりだと思っています。ぜひ協力して、我々で、魔物を排除しましょう」

 ラングレーさんの言葉に、俺は穏やかな笑みを浮かべ返す。

「ありがとうございます。そう言って頂けることが、何よりも力強いです。共に、戦いましょう」
「ええ。こちらの指揮は、任せて下さい」

 笑顔のまま、ラングレーさんは俺に返した。
 今回の指揮は、志願してきてくれた若い魔術師たちは俺たち勇者が。
 名門の魔術師達で構成された部隊は、一部を除いてラングレーさんが指揮をとることになっている。
 
 理由は単純に、権限の有無だ。
 協力関係にあるとはいえ別組織なので、指揮系統は別々にせざるを得ないんだ。
 長老たちが来たなら、指揮権は長老たちが持つことになるけれど、居ない今は誰が指揮を執るかで揉めたらしい。

 色々とあってラングレーさんが大半の支持をとりつけ、代表という形で指揮を執るらしい。
 それでも反発して、独自に動こうとしてる集団も居るので、正直不安しかない。

 志願者の若い魔術師たちの指揮権を俺たちが手に入れたのは、名門魔術師の派閥闘争に、若い魔術師が巻き込まれないようにするためだ。
 そんなのに巻き込まれたら、下手をすると肉の盾代わりに使われかねない。
 やらせないためにも、多少無理を言って、長老たちには苦労して貰い指揮権を手に入れている。
 名門魔術師たちにとっても、対立する派閥に若手魔術師たちが取り込まれるよりはマシだと思ったんだろう。消極的だったけど、何とか受け入れて貰っている。
 この時にも、ラングレーさんが取り成してくれたらしい。

「貴方が居てくれて、実に力強いです。これからも、よろしくお願いします」
「ええ、もちろんですよ」

 俺は笑顔でラングレーさんと言葉を交わし、他の車両の挨拶に回る。
 挨拶回りも重要な仕事なので、しっかりとこなした後、最後尾の機関車両に訪れた。

 今回は、最前と最後尾の車両に機関車を連結している。
 安定して大量の人員を、戦うために必要な車両も込みで運ぶので、もしもの時も考えての車両構成だ。
 ただの機関車だと、速度の上げ下げやブレーキの掛け方などで同調させられないので無理だったけど、出雲の作り出したアンドロイド、ロコが機関車2台と同調する事で可能にしている。

(あとで、甘酒でも持って行ってあげよう)

 そんなことを考えながら、最後尾の車両に乗り込む。
 そこに居たのは、勇者の1人。軍神シュウユの勇者である、倶利伽羅五十鈴くりからいすずだった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

生贄にされた少年。故郷を離れてゆるりと暮らす。

水定ゆう
ファンタジー
 村の仕来りで生贄にされた少年、天月・オボロナ。魔物が蠢く危険な森で死を覚悟した天月は、三人の異形の者たちに命を救われる。  異形の者たちの弟子となった天月は、数年後故郷を離れ、魔物による被害と魔法の溢れる町でバイトをしながら冒険者活動を続けていた。  そこで待ち受けるのは数々の陰謀や危険な魔物たち。  生贄として魔物に捧げられた少年は、冒険者活動を続けながらゆるりと日常を満喫する!  ※とりあえず、一時完結いたしました。  今後は、短編や別タイトルで続けていくと思いますが、今回はここまで。  その際は、ぜひ読んでいただけると幸いです。

異世界ほのぼの牧場生活〜女神の加護でスローライフ始めました〜』

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業で心も体もすり減らしていた青年・悠翔(はると)。 日々の疲れを癒してくれていたのは、幼い頃から大好きだったゲーム『ほのぼの牧場ライフ』だけだった。 両親を早くに亡くし、年の離れた妹・ひなのを守りながら、限界寸前の生活を続けていたある日―― 「目を覚ますと、そこは……ゲームの中そっくりの世界だった!?」 女神様いわく、「疲れ果てたあなたに、癒しの世界を贈ります」とのこと。 目の前には、自分がかつて何百時間も遊んだ“あの牧場”が広がっていた。 作物を育て、動物たちと暮らし、時には村人の悩みを解決しながら、のんびりと過ごす毎日。 けれどもこの世界には、ゲームにはなかった“出会い”があった。 ――獣人の少女、恥ずかしがり屋の魔法使い、村の頼れるお姉さん。 誰かと心を通わせるたびに、はるとの日常は少しずつ色づいていく。 そして、残された妹・ひなのにも、ある“転機”が訪れようとしていた……。 ほっこり、のんびり、時々ドキドキ。 癒しと恋と成長の、異世界牧場スローライフ、始まります!

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

異世界スローライフ希望なのに、女神の過保護が止まらない

葉泪秋
ファンタジー
HOTランキング1位感謝です!(2/3) 「小説家になろう」日間ランキング最高11位!(ハイファンタジー) ブラック企業で過労死した俺、佐久間遼。 神様に願ったのは、ただ「異世界で、畑でも耕しながらのんびり暮らしたい」ということだけ。 そうして手に入れた、辺境の村での穏やかな日々。現状に満足し、今度こそは平穏なスローライフを……と思っていたのだが、俺の妙なスキルと前世の社畜根性が、そうはさせない。 ふとした善意で枯れた井戸を直したことから、堅物の騎士団長やら、過保護な女神やらに目をつけられることになる。 早く穏やかに暮らしたい。 俺は今日も、規格外に育った野菜を手に、皆の姿を眺めている。 【毎日18:00更新】 ※表紙画像はAIを使用しています

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

処理中です...