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第二章 街予定地の問題を解決しよう編
7 リベンジ兼ねて実践演習に向かいます その③
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「勇者ヒイロ殿。随分と前の車両では賑わいが絶えないようでしたが、なにかあったのですか?」
温和な笑顔を浮かべながら、わざわざ立ち上がり近付いて来てくれたのは、ラングレーさんだ。
今年で42才になるらしい魔術師の人だけど、若々しいので30代前半の年頃に見える。
相当の実力派で、カルナが抜かすまでは、最年少で2桁の位階を手に入れているほどだ。
しかも若い頃から努力を惜しまず、様々な業績を立て、今ではいずれ長老の席を狙える1人として上げられている。
魔王が暴れまくっていた頃は、勇敢に戦い、多くの魔物を倒したほどの実力を持っているらしい。
そんなラングレーさんだけど、今回の魔物討伐には積極的に協力を申し出てくれた1人だ。
自分の派閥を説得して、多くの魔術師を参加させてくれている。
もしそうで無かったら、500人近い魔術師の協力者は集まらなかっただろうから、下手な対応が出来ない相手でもある。
「戦意高揚も兼ねて、志願者の方達に話をさせて頂いていました。それと合わせて、魔力量を一時的に増大させる食事をとって貰っています。こちらにも、すぐにお持ちする予定です」
「魔力量の一時的な増大、ですか? それは話に聞く、神与能力によるもので?」
「はい。我々、勇者の1人である大口五郎の神与能力によるものです」
「ありがたい。それならば、戦いによる被害は減らすことが出来るでしょう」
「ええ。誰1人として、死者は出しません」
俺の言葉に、ラングレーさんは息を飲むように黙る。けれどすぐに、続けて言った。
「そこまでの御覚悟とは。我らも、肝に命じねばなりませんね。ですがそれだけに、不甲斐ないことです」
苦しむような表情で、ラングレーさんは更に続ける。
「本来なら長老たちも、この場に居るべきだというのに、それも叶わないとは。同じ魔術師として、申し訳ないと思っています」
ラングレーさんが言うように、今この場には長老たちは居ない。
俺達がカルナを介して魔術協会に協力を要請した時、長老たちの返事はあまり良くは無かった。
それは、魔王との戦いで受けた魔術師たちの傷は完全に癒えきってはおらず、未だに恐怖も残っている事が理由だった。
当時の戦いで実戦を経験した魔術師の多くはトラウマを抱え、戦いに出すことなど出来ないと言われたのだ。
その状態で戦力として出せるのは、当時は戦っていない若い魔術師を主体にする事になる。
戦闘の経験が無い者さえいる状況では、とてもではないがすぐには応えられない。
だから、最低限の訓練をする時間も入れて待って欲しい。
というのが、長老たちの返事だった。
本来なら、それで2か月は協力体制が出来上がるのは先になる筈だったけど、そこで動いてくれたのがラングレーさんだったりする。
自分の派閥が積極的に動くことで、他の派閥も動かざるを得ない状況を作り出し、その上で若い魔術師たちに呼び掛けて志願者を募ってくれたのだ。
「私は兼ねてより、貴方たち勇者だけに魔物の脅威を背負わせるべきではないと、思っていたんです」
ラングレーさんは、力強く言った。
「誰かに押し付けるのではなく、1人1人が責を負う。そうあるべきだと、私は思っています。今回の魔物討伐は、その始まりだと思っています。ぜひ協力して、我々で、魔物を排除しましょう」
ラングレーさんの言葉に、俺は穏やかな笑みを浮かべ返す。
「ありがとうございます。そう言って頂けることが、何よりも力強いです。共に、戦いましょう」
「ええ。こちらの指揮は、任せて下さい」
笑顔のまま、ラングレーさんは俺に返した。
今回の指揮は、志願してきてくれた若い魔術師たちは俺たち勇者が。
名門の魔術師達で構成された部隊は、一部を除いてラングレーさんが指揮をとることになっている。
理由は単純に、権限の有無だ。
協力関係にあるとはいえ別組織なので、指揮系統は別々にせざるを得ないんだ。
長老たちが来たなら、指揮権は長老たちが持つことになるけれど、居ない今は誰が指揮を執るかで揉めたらしい。
色々とあってラングレーさんが大半の支持をとりつけ、代表という形で指揮を執るらしい。
それでも反発して、独自に動こうとしてる集団も居るので、正直不安しかない。
志願者の若い魔術師たちの指揮権を俺たちが手に入れたのは、名門魔術師の派閥闘争に、若い魔術師が巻き込まれないようにするためだ。
そんなのに巻き込まれたら、下手をすると肉の盾代わりに使われかねない。
やらせないためにも、多少無理を言って、長老たちには苦労して貰い指揮権を手に入れている。
名門魔術師たちにとっても、対立する派閥に若手魔術師たちが取り込まれるよりはマシだと思ったんだろう。消極的だったけど、何とか受け入れて貰っている。
この時にも、ラングレーさんが取り成してくれたらしい。
「貴方が居てくれて、実に力強いです。これからも、よろしくお願いします」
「ええ、もちろんですよ」
俺は笑顔でラングレーさんと言葉を交わし、他の車両の挨拶に回る。
挨拶回りも重要な仕事なので、しっかりとこなした後、最後尾の機関車両に訪れた。
今回は、最前と最後尾の車両に機関車を連結している。
安定して大量の人員を、戦うために必要な車両も込みで運ぶので、もしもの時も考えての車両構成だ。
ただの機関車だと、速度の上げ下げやブレーキの掛け方などで同調させられないので無理だったけど、出雲の作り出したアンドロイド、ロコが機関車2台と同調する事で可能にしている。
(あとで、甘酒でも持って行ってあげよう)
そんなことを考えながら、最後尾の車両に乗り込む。
そこに居たのは、勇者の1人。軍神シュウユの勇者である、倶利伽羅五十鈴だった。
温和な笑顔を浮かべながら、わざわざ立ち上がり近付いて来てくれたのは、ラングレーさんだ。
今年で42才になるらしい魔術師の人だけど、若々しいので30代前半の年頃に見える。
相当の実力派で、カルナが抜かすまでは、最年少で2桁の位階を手に入れているほどだ。
しかも若い頃から努力を惜しまず、様々な業績を立て、今ではいずれ長老の席を狙える1人として上げられている。
魔王が暴れまくっていた頃は、勇敢に戦い、多くの魔物を倒したほどの実力を持っているらしい。
そんなラングレーさんだけど、今回の魔物討伐には積極的に協力を申し出てくれた1人だ。
自分の派閥を説得して、多くの魔術師を参加させてくれている。
もしそうで無かったら、500人近い魔術師の協力者は集まらなかっただろうから、下手な対応が出来ない相手でもある。
「戦意高揚も兼ねて、志願者の方達に話をさせて頂いていました。それと合わせて、魔力量を一時的に増大させる食事をとって貰っています。こちらにも、すぐにお持ちする予定です」
「魔力量の一時的な増大、ですか? それは話に聞く、神与能力によるもので?」
「はい。我々、勇者の1人である大口五郎の神与能力によるものです」
「ありがたい。それならば、戦いによる被害は減らすことが出来るでしょう」
「ええ。誰1人として、死者は出しません」
俺の言葉に、ラングレーさんは息を飲むように黙る。けれどすぐに、続けて言った。
「そこまでの御覚悟とは。我らも、肝に命じねばなりませんね。ですがそれだけに、不甲斐ないことです」
苦しむような表情で、ラングレーさんは更に続ける。
「本来なら長老たちも、この場に居るべきだというのに、それも叶わないとは。同じ魔術師として、申し訳ないと思っています」
ラングレーさんが言うように、今この場には長老たちは居ない。
俺達がカルナを介して魔術協会に協力を要請した時、長老たちの返事はあまり良くは無かった。
それは、魔王との戦いで受けた魔術師たちの傷は完全に癒えきってはおらず、未だに恐怖も残っている事が理由だった。
当時の戦いで実戦を経験した魔術師の多くはトラウマを抱え、戦いに出すことなど出来ないと言われたのだ。
その状態で戦力として出せるのは、当時は戦っていない若い魔術師を主体にする事になる。
戦闘の経験が無い者さえいる状況では、とてもではないがすぐには応えられない。
だから、最低限の訓練をする時間も入れて待って欲しい。
というのが、長老たちの返事だった。
本来なら、それで2か月は協力体制が出来上がるのは先になる筈だったけど、そこで動いてくれたのがラングレーさんだったりする。
自分の派閥が積極的に動くことで、他の派閥も動かざるを得ない状況を作り出し、その上で若い魔術師たちに呼び掛けて志願者を募ってくれたのだ。
「私は兼ねてより、貴方たち勇者だけに魔物の脅威を背負わせるべきではないと、思っていたんです」
ラングレーさんは、力強く言った。
「誰かに押し付けるのではなく、1人1人が責を負う。そうあるべきだと、私は思っています。今回の魔物討伐は、その始まりだと思っています。ぜひ協力して、我々で、魔物を排除しましょう」
ラングレーさんの言葉に、俺は穏やかな笑みを浮かべ返す。
「ありがとうございます。そう言って頂けることが、何よりも力強いです。共に、戦いましょう」
「ええ。こちらの指揮は、任せて下さい」
笑顔のまま、ラングレーさんは俺に返した。
今回の指揮は、志願してきてくれた若い魔術師たちは俺たち勇者が。
名門の魔術師達で構成された部隊は、一部を除いてラングレーさんが指揮をとることになっている。
理由は単純に、権限の有無だ。
協力関係にあるとはいえ別組織なので、指揮系統は別々にせざるを得ないんだ。
長老たちが来たなら、指揮権は長老たちが持つことになるけれど、居ない今は誰が指揮を執るかで揉めたらしい。
色々とあってラングレーさんが大半の支持をとりつけ、代表という形で指揮を執るらしい。
それでも反発して、独自に動こうとしてる集団も居るので、正直不安しかない。
志願者の若い魔術師たちの指揮権を俺たちが手に入れたのは、名門魔術師の派閥闘争に、若い魔術師が巻き込まれないようにするためだ。
そんなのに巻き込まれたら、下手をすると肉の盾代わりに使われかねない。
やらせないためにも、多少無理を言って、長老たちには苦労して貰い指揮権を手に入れている。
名門魔術師たちにとっても、対立する派閥に若手魔術師たちが取り込まれるよりはマシだと思ったんだろう。消極的だったけど、何とか受け入れて貰っている。
この時にも、ラングレーさんが取り成してくれたらしい。
「貴方が居てくれて、実に力強いです。これからも、よろしくお願いします」
「ええ、もちろんですよ」
俺は笑顔でラングレーさんと言葉を交わし、他の車両の挨拶に回る。
挨拶回りも重要な仕事なので、しっかりとこなした後、最後尾の機関車両に訪れた。
今回は、最前と最後尾の車両に機関車を連結している。
安定して大量の人員を、戦うために必要な車両も込みで運ぶので、もしもの時も考えての車両構成だ。
ただの機関車だと、速度の上げ下げやブレーキの掛け方などで同調させられないので無理だったけど、出雲の作り出したアンドロイド、ロコが機関車2台と同調する事で可能にしている。
(あとで、甘酒でも持って行ってあげよう)
そんなことを考えながら、最後尾の車両に乗り込む。
そこに居たのは、勇者の1人。軍神シュウユの勇者である、倶利伽羅五十鈴だった。
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