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第二章 街予定地の問題を解決しよう編
10 魔物の軍勢 その③ 三人称視点
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100を超える破壊の群れ。
あまりにも早すぎる魔物の動きに、魔術師たちは対応しきれない。
周囲全体に防御魔術を張る余裕もなく、反射的に自分の身を守るべく、個人用の防御魔術を使うのが関の山だ。
それどころか、中には何も出来ずにいる者まで居る。
放っておけば、確実に死人が出る。
それを防ぐべく、和花は全力で防御魔術を使う。
「閉ざせ! 永久壁霧!」
本隊の部隊をドーム状に覆うようにして、霧状の魔術結界が発生する。
結界に触れた途端、魔物の攻撃魔術は爆発し、衝撃と炎を撒き散らす。
だが、結界の内側には届かない。
音まで防ぐことは出来なかったので、絶え間ない爆音に曝されはするが、それ以外の被害は無い。
ひとまずの安全を確保してから、和花は陽色に通信の魔導具で助けを求める。
「すまん! 助けてくれ! 統率された魔物の群れに襲われとる! 前に戦った新種と同系統の奴が率いとる!」
すぐに陽色は返してくる。
【場所を教えて! すぐに行く!】
助けを求め応えはすぐに返って来たが、ここに来るまでには時間がかかる。
その間に、孤立した魔術師たちの部隊は、魔物に蹂躙されていた。
「ひっ!」
魔物に腕を捕まれた魔術師が悲鳴を上げる。
周囲を囲まれ攻撃魔術で迎撃するも、距離が近すぎて爆破や炎を撒き散らすような魔術は使えない。
必然的に、白兵戦の魔術武具で対応するしかなかったが、武具の威力がどれだけあろうと振うのが素人ではどうにもならない。
1体に斬りつけ動きが止まった所を、死角から忍び寄っていた魔物に捕まれたのだ。
「こっ、このっ!」
反射的に、魔術師が斬りつけようとするよりも早く、腕がねじ折られた。
「ひぎっ!」
肉をねじ切られ骨を砕かれる痛みに、魔術師の口から苦痛の声が上がる。
その声に、魔物は楽しげに笑う。
「イヒ、イヒャヒャヒャヒヒヒッ!」
笑いながら自分がねじ折った魔術師の腕を殴る。
何度も何度も何度も、魔術師の悲鳴が上がるたびに喜びの声を上げ、殴り続けた。
魔物に苦痛を与えられているのは、その魔術師だけではない。
「やめ、やめで……」
「クヒッ!」
魔術師の懇願をあざ笑いながら、魔物は足首を掴んだまま魔術師を振り上げる。
高々と振り上げて、そのまま地面に叩きつけた。
「ぐぶっ……」
肺から空気を無理やり押し出されるような声を上げ、魔術師は苦痛にうめく。
それを、魔物は繰り返す。何度も何度も何度も。
魔術師が死んでしまわないよう繊細に、けれど最大限に痛みを与えられるように工夫しながら。
魔物たちの目的は、人間に負の感情を生み出させること。
そのためには、殺してしまう訳にはいかない。
生かさず殺さず弄り者にするように、笑いながら魔物は魔術師を痛めつけていった。
周囲には阿鼻叫喚が響く。
耳触りな魔物の嘲笑は留まることなく、新たな犠牲者に手を伸ばす。
「あっ……」
戦いの中、体勢を崩しこけてしまった魔術師の少女に、魔物の1体が近付く。
恐怖で動けない少女に、魔物は見せつけるように凶器をさらす。
10数の刃物の鋭さを持った触手を体中から生やし、貫かんと狙いを付け――
「調子乗り過ぎ~」
武子の矛に、全てを斬り裂かれた。
触手を真上からの振りおろしで真っ二つに断ち切り、返す刀で胴も斬り裂く。
それでもなおも動こうとしていた魔物を、矛の柄をくるりと回し跳ね上げると、真下から殴り付け真上に高々と跳ね飛ばした。
「攻撃、よろしく~」
「え、あっ――」
武子に声を掛けられ、慌てて魔術師の少女は、真上に跳ね飛ばされた魔物に照準を合わす。
瞬時に発動した攻撃魔術は命中し、魔物を爆散させた。
「うわっ、すごいすご~い。その調子だよ~。慌てないで良いから~。キミは私が、守るからね~」
そう言うと、武子は近付いてきた魔物に踏み込む。
数メートルの距離を一呼吸で詰め、詰める動きに合わせ矛を振るう。
その動きに無駄は一切なく、優美でさえあった。
思わず、戦場の只中だというのに、魔術師の少女は見惚れてしまう。
その少女に視線を向けた武子は、同時に矛を投げつけた。
「ギイッ!」
少女の背後から魔物の悲鳴が上がる。
反射的に少女が向けば、そこには矛が刺さった魔物が。
それに少女が気付いた時には、すでに武子は傍に戻って来ていた。
武子は魔物を貫く矛の柄を取り、そこまで突進した勢いと、地面を踏み込み生まれた全身の捩じりを刃先に伝える。
魔物は、突き刺さった刃先に身体を捩じられ、粉微塵に粉砕された。
「す、すごい……」
惚けたように声を上げる少女に、
「ありがと~。でもまだまだ、これからだよ~。魔物なんてやっつけちゃうから、力を貸して~」
武子はウインクをしながら、気軽な声で呼びかける。
魔物を寄せ付けないその強さと、綺麗だと思ったその立ち振る舞いに、少女の心の内に力が湧いて出る。
すなわち、勇気が。
勇気をもたらす者、勇者として動く武子に力付けられ少女は魔術を振るう。
武子の動きに合わせ、魔術を撃ち放つ。
自らに近付く魔物に恐怖しながらも、決して魔術を撃つ手は止めない。
なぜなら武子が、傍に居るから。
恐怖を勇気で押さえつけ、少女は戦い続ける。
それが武子に、他の魔術師を助ける猶予を与える。
魔物を斬り裂き、少女の雷撃魔術で動きが止まった所で、その先で魔術師を痛めつけている魔物の元に。
足首を掴み叩きつけようとした腕を、矛で断ち切る。
「ギイッ!」
腕を断ち切られた怒りに任せ、槍のように変形させた腕を武子に向け突き出す。
しかしその時には、すでに武子はその場に居ない。
魔物を倒す事よりも、地面に叩きつけられる途中で投げ出された魔術師を助けることを優先する。
自分の身体をクッションにして、魔術師を受け止める。
「ひあっ……」
今まで魔物に痛め続けられ、恐慌をきたしたように暴れようとした魔術師を、武子はぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫。怪我は無いから。よく見て、自分の身体を」
力強く、安心させるように掛けられた武子の声に、魔術師は自らの身体を見る。
あれだけ地面に叩きつけられ苦しんだ筈なのに、傷跡1つ、どこにもなかった。
「え、あ、なんで……?」
「瑠璃の魔術だよ~。結果の付け替え~。ここに居るみんなを対象にしてるから、怪我は無かった事になるから~」
そう言うと武子は、魔物の攻撃を避け続けている瑠璃に視線を向ける。
巨大なクマのぬいぐるみの形をした魔術武具を抱きかかえながら、瑠璃は危なげなく避け続けていた。
抱きしめるクマのぬいぐるみは、よく見ればいたる所が擦り切れ、足などはねじ切れている。
それは今、武子が助けた魔術師が受けていた傷と同じ個所が、傷付いていた。
結果の付け替えと呼ばれる、超高等魔術が行われているのだ。
死んでさえいなければ、効果対象が受けた結果を、クマのぬいぐるみの形をした魔術武具に付け替える魔術。
魔物に地面に叩きつけられて怪我をしたという結果を、魔術武具に肩代わりさせたのだ。
「アレを使えば、みんなの怪我は無かった事になるから~。でも、死んじゃったらそこで終わっちゃうから、助けよう。手を貸して、お願い」
そう言うと、武子は魔物の群れに跳び込む。
いま助けた魔術師に、向かって行かないようにするためだ。
助けられた挙句に、今も庇われている。
その事実に、助けられた魔術師は頭に血が上る。
何かをしなくてはと、心を急かされる。
魔物から受けた恐怖は消えることなく。
けれど、それが霞んでしまうような激情に動かされ、助けられた魔術師は戦いの場に戻っていく。
1人、また1人と。武子に助けられ、瑠璃に怪我を無かった事にされた魔術師たちは、戦線に戻っていく。
けれど、魔物の数はあまりにも多い。
数体、数を減らした所で、痛痒を覚えているように見えない。しかも、
「グ、ルルルルルアアアア」
指揮者役の新種の魔物が声を上げると、魔物達の動きが洗練されて行く。
ただでさえ劣勢の所に、敵は勢いを増していく。
武子も瑠璃も力を振るい続けるも少しずつ押され、本隊を守るために防御結界を張り続ける和花も、休みなく続く魔物の砲撃にじれていった。
だからこそ、和花は念話で武子と瑠璃に叫んだ。
(神与能力を使え! わしも使う!)
その呼び掛けに武子も瑠璃も神与能力を使い、天使と悪魔が出現した。
あまりにも早すぎる魔物の動きに、魔術師たちは対応しきれない。
周囲全体に防御魔術を張る余裕もなく、反射的に自分の身を守るべく、個人用の防御魔術を使うのが関の山だ。
それどころか、中には何も出来ずにいる者まで居る。
放っておけば、確実に死人が出る。
それを防ぐべく、和花は全力で防御魔術を使う。
「閉ざせ! 永久壁霧!」
本隊の部隊をドーム状に覆うようにして、霧状の魔術結界が発生する。
結界に触れた途端、魔物の攻撃魔術は爆発し、衝撃と炎を撒き散らす。
だが、結界の内側には届かない。
音まで防ぐことは出来なかったので、絶え間ない爆音に曝されはするが、それ以外の被害は無い。
ひとまずの安全を確保してから、和花は陽色に通信の魔導具で助けを求める。
「すまん! 助けてくれ! 統率された魔物の群れに襲われとる! 前に戦った新種と同系統の奴が率いとる!」
すぐに陽色は返してくる。
【場所を教えて! すぐに行く!】
助けを求め応えはすぐに返って来たが、ここに来るまでには時間がかかる。
その間に、孤立した魔術師たちの部隊は、魔物に蹂躙されていた。
「ひっ!」
魔物に腕を捕まれた魔術師が悲鳴を上げる。
周囲を囲まれ攻撃魔術で迎撃するも、距離が近すぎて爆破や炎を撒き散らすような魔術は使えない。
必然的に、白兵戦の魔術武具で対応するしかなかったが、武具の威力がどれだけあろうと振うのが素人ではどうにもならない。
1体に斬りつけ動きが止まった所を、死角から忍び寄っていた魔物に捕まれたのだ。
「こっ、このっ!」
反射的に、魔術師が斬りつけようとするよりも早く、腕がねじ折られた。
「ひぎっ!」
肉をねじ切られ骨を砕かれる痛みに、魔術師の口から苦痛の声が上がる。
その声に、魔物は楽しげに笑う。
「イヒ、イヒャヒャヒャヒヒヒッ!」
笑いながら自分がねじ折った魔術師の腕を殴る。
何度も何度も何度も、魔術師の悲鳴が上がるたびに喜びの声を上げ、殴り続けた。
魔物に苦痛を与えられているのは、その魔術師だけではない。
「やめ、やめで……」
「クヒッ!」
魔術師の懇願をあざ笑いながら、魔物は足首を掴んだまま魔術師を振り上げる。
高々と振り上げて、そのまま地面に叩きつけた。
「ぐぶっ……」
肺から空気を無理やり押し出されるような声を上げ、魔術師は苦痛にうめく。
それを、魔物は繰り返す。何度も何度も何度も。
魔術師が死んでしまわないよう繊細に、けれど最大限に痛みを与えられるように工夫しながら。
魔物たちの目的は、人間に負の感情を生み出させること。
そのためには、殺してしまう訳にはいかない。
生かさず殺さず弄り者にするように、笑いながら魔物は魔術師を痛めつけていった。
周囲には阿鼻叫喚が響く。
耳触りな魔物の嘲笑は留まることなく、新たな犠牲者に手を伸ばす。
「あっ……」
戦いの中、体勢を崩しこけてしまった魔術師の少女に、魔物の1体が近付く。
恐怖で動けない少女に、魔物は見せつけるように凶器をさらす。
10数の刃物の鋭さを持った触手を体中から生やし、貫かんと狙いを付け――
「調子乗り過ぎ~」
武子の矛に、全てを斬り裂かれた。
触手を真上からの振りおろしで真っ二つに断ち切り、返す刀で胴も斬り裂く。
それでもなおも動こうとしていた魔物を、矛の柄をくるりと回し跳ね上げると、真下から殴り付け真上に高々と跳ね飛ばした。
「攻撃、よろしく~」
「え、あっ――」
武子に声を掛けられ、慌てて魔術師の少女は、真上に跳ね飛ばされた魔物に照準を合わす。
瞬時に発動した攻撃魔術は命中し、魔物を爆散させた。
「うわっ、すごいすご~い。その調子だよ~。慌てないで良いから~。キミは私が、守るからね~」
そう言うと、武子は近付いてきた魔物に踏み込む。
数メートルの距離を一呼吸で詰め、詰める動きに合わせ矛を振るう。
その動きに無駄は一切なく、優美でさえあった。
思わず、戦場の只中だというのに、魔術師の少女は見惚れてしまう。
その少女に視線を向けた武子は、同時に矛を投げつけた。
「ギイッ!」
少女の背後から魔物の悲鳴が上がる。
反射的に少女が向けば、そこには矛が刺さった魔物が。
それに少女が気付いた時には、すでに武子は傍に戻って来ていた。
武子は魔物を貫く矛の柄を取り、そこまで突進した勢いと、地面を踏み込み生まれた全身の捩じりを刃先に伝える。
魔物は、突き刺さった刃先に身体を捩じられ、粉微塵に粉砕された。
「す、すごい……」
惚けたように声を上げる少女に、
「ありがと~。でもまだまだ、これからだよ~。魔物なんてやっつけちゃうから、力を貸して~」
武子はウインクをしながら、気軽な声で呼びかける。
魔物を寄せ付けないその強さと、綺麗だと思ったその立ち振る舞いに、少女の心の内に力が湧いて出る。
すなわち、勇気が。
勇気をもたらす者、勇者として動く武子に力付けられ少女は魔術を振るう。
武子の動きに合わせ、魔術を撃ち放つ。
自らに近付く魔物に恐怖しながらも、決して魔術を撃つ手は止めない。
なぜなら武子が、傍に居るから。
恐怖を勇気で押さえつけ、少女は戦い続ける。
それが武子に、他の魔術師を助ける猶予を与える。
魔物を斬り裂き、少女の雷撃魔術で動きが止まった所で、その先で魔術師を痛めつけている魔物の元に。
足首を掴み叩きつけようとした腕を、矛で断ち切る。
「ギイッ!」
腕を断ち切られた怒りに任せ、槍のように変形させた腕を武子に向け突き出す。
しかしその時には、すでに武子はその場に居ない。
魔物を倒す事よりも、地面に叩きつけられる途中で投げ出された魔術師を助けることを優先する。
自分の身体をクッションにして、魔術師を受け止める。
「ひあっ……」
今まで魔物に痛め続けられ、恐慌をきたしたように暴れようとした魔術師を、武子はぎゅっと抱きしめた。
「大丈夫。怪我は無いから。よく見て、自分の身体を」
力強く、安心させるように掛けられた武子の声に、魔術師は自らの身体を見る。
あれだけ地面に叩きつけられ苦しんだ筈なのに、傷跡1つ、どこにもなかった。
「え、あ、なんで……?」
「瑠璃の魔術だよ~。結果の付け替え~。ここに居るみんなを対象にしてるから、怪我は無かった事になるから~」
そう言うと武子は、魔物の攻撃を避け続けている瑠璃に視線を向ける。
巨大なクマのぬいぐるみの形をした魔術武具を抱きかかえながら、瑠璃は危なげなく避け続けていた。
抱きしめるクマのぬいぐるみは、よく見ればいたる所が擦り切れ、足などはねじ切れている。
それは今、武子が助けた魔術師が受けていた傷と同じ個所が、傷付いていた。
結果の付け替えと呼ばれる、超高等魔術が行われているのだ。
死んでさえいなければ、効果対象が受けた結果を、クマのぬいぐるみの形をした魔術武具に付け替える魔術。
魔物に地面に叩きつけられて怪我をしたという結果を、魔術武具に肩代わりさせたのだ。
「アレを使えば、みんなの怪我は無かった事になるから~。でも、死んじゃったらそこで終わっちゃうから、助けよう。手を貸して、お願い」
そう言うと、武子は魔物の群れに跳び込む。
いま助けた魔術師に、向かって行かないようにするためだ。
助けられた挙句に、今も庇われている。
その事実に、助けられた魔術師は頭に血が上る。
何かをしなくてはと、心を急かされる。
魔物から受けた恐怖は消えることなく。
けれど、それが霞んでしまうような激情に動かされ、助けられた魔術師は戦いの場に戻っていく。
1人、また1人と。武子に助けられ、瑠璃に怪我を無かった事にされた魔術師たちは、戦線に戻っていく。
けれど、魔物の数はあまりにも多い。
数体、数を減らした所で、痛痒を覚えているように見えない。しかも、
「グ、ルルルルルアアアア」
指揮者役の新種の魔物が声を上げると、魔物達の動きが洗練されて行く。
ただでさえ劣勢の所に、敵は勢いを増していく。
武子も瑠璃も力を振るい続けるも少しずつ押され、本隊を守るために防御結界を張り続ける和花も、休みなく続く魔物の砲撃にじれていった。
だからこそ、和花は念話で武子と瑠璃に叫んだ。
(神与能力を使え! わしも使う!)
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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