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第二章 街予定地の問題を解決しよう編
10 魔物の軍勢 その④ 三人称視点
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「お呼びですかな、ご主人さま」
「あらあら、ピンチですわね」
「無駄口を叩くな! それより自分の仕事をせい!」
和花は、神与能力で創り出した悪魔と天使に口早に命令する。これに、
「承りました」
悪魔は速やかに応える。ヤギと狼を足したような顔つきの悪魔は、背中から生やしたコウモリのような翼を広げ振わせる。
その途端、周囲の世界そのものが震え出す。
空間でも物質でもなく、世界そのものが震え、悪魔を中心にして細かな亀裂のような漆黒が世界から滲み出る。
そこから溢れ出すのは、膨大な魔力。途切れることなく流れ続ける。
これこそが悪魔の能力。時間単位での上限はあるものの、際限なく魔力を供給する能力だ。
例えるなら、自動MPの回復をもたらす能力と言えた。
それにより生み出された膨大な魔力を、ごっそりと和花は取り込む。それを確認してから、
「次は、わたくしの出番ですわね」
両目を眼帯で覆った、美しい女の姿をした天使は、背中の純白の翼を広げ流麗な歌声を響かせる。
それが、和花の詠唱を肩代わりする。和花が使用する魔術の威力を底上げし、通常なら使えないほど大量の魔術を一度に行使させる。
それこそが天使の能力。魔術の高速並列処理と強化をもたらす能力だ。
例えるなら、複数のアプリを同時起動しても、軽々と実行させる事の出来る能力と言えた。
この天使と悪魔こそが、魔術神マゲイアの勇者に与えられた神与能力だ。
和花だけでなく、武子と瑠璃も同じように召喚している。
「ギイイ!?」
異変に気付いた魔物が、武子と瑠璃の天使と悪魔に襲い掛かろうとするが、全ての攻撃は通り抜けてしまう。
「あらあら、無駄ですわよ。わたくしたち、別に物質的に存在してる訳ではありませんもの」
「我らは法則が具現化したモノ。魔法たる我らに干渉したければ、同域に辿り着くのだな、魔物ども」
魔物達を嘲るように天使と悪魔は挑発し、創造主たる和花たちを助けていく。
それを最大限に生かすように、和花たちは即座に動いた。
「周囲の魔術結界の構成を変更した! これで外側からの攻撃は届かんが、こちらからの攻撃は届くようになった筈じゃ! じゃから安心して、外の部隊を援護射撃せい!」
和花が檄を飛ばすと、周囲でなにをするべきか迷っていた魔術師たちは一斉に動き始める。
指揮者であるラングレーの命令が出ていなくても、自分達を守るために和花が苦労しているのは目の当たりにしているのだ。
その和花の指示に、動かない筈もない。
それぞれ魔術師は一斉に、孤立した部隊を囲む魔物たちに攻撃魔術を撃ち放つ。
爆発や雷撃で吹っ飛ぶ魔物たち。
それにより、襲撃される圧力が減った隙を突いて、武子と瑠璃が孤立した魔術師たちの強化を行う。
「魔術防具、付与するから。使って」
瑠璃は悪魔から供給される魔力を消費し、40人近い魔術師全てに、盾や鎧といった魔術で造り上げた防具を与える。そして、
「怪我とかしても、結果の付け替えで無かった事にするから。だから死なないから、安心して」
瑠璃は魔術師たちの命の保証を口にする。
これにより、魔術師たちの精神的な負担は大きく下がり、戦う意志が湧いて出る。更に、
「魔術武具、付与するから~。使って一緒に戦おう~」
武子が魔術師全てに、すでに持っている者には強化を、持っていなかった者には、それぞれに合った武器を付与する。そして、
「じゃ、いっくよ~」
武子が率先して魔物と戦うことで、魔術師たちの士気を上げていく。
一斉に攻勢に出る魔術師たち。果敢に戦い、一体ずつ確実に魔物達の数を減らしていく。
だがこの時、不気味な声が周囲に響いた。
「グッルオオオオオウウウウウ」
それは巨人の形をした新種の魔物の吠え声。それが幾つも重なっていく。
見れば、新種の魔物の体中から新たな口が発生し、それぞれが異なる吠え声を上げている。
それは魔術の詠唱だった。その効果は、即座に現れる。
全ての魔物の身体が一斉に一回り大きくなったかと思うと、それぞれが今まで持っていなかった武器や防具を手にしていた。
(ぶさけるな! そっちまで仲間の強化をするでないわ!)
和花が心の中で叫ぶ中、強化された魔物たちは攻勢に出てくる。
優勢になっていた魔術師たちが、再び劣勢に押しやられているのを見ながら和花は、
(おのれ! じゃが、これだけの魔術を使い続ければ、いかな魔物とはいえ魔力は尽きる。その隙に一斉攻撃を叩込めば――)
諦めることなく勝機を探っていく。
だが、それすら新種の魔物は嘲笑うかのように乗り越える。
新種の魔物は近くに居た仲間を手に取ると、首から下腹部に掛けて縦1筋の亀裂を生み出し、大きく開く。
それは巨大な口。幾つもの針のような歯が生えたそこに、捕まえた仲間を放り込むと、一気に噛み潰し咀嚼した。
その途端、新種の魔物から溢れるほどの魔力の気配が。
(共食いして魔力を回復させたじゃと!)
思わず顔を強張らせる和花の見ている前で、新種の魔物は仲間の強化と同時に攻撃魔術まで放とうとする。
巨大な光球が新種の魔物の前に発生し、一気に圧縮される。
それが、戦い続ける武子や瑠璃たちの元に向けられる。
「止め――」
和花が叫び声を上げようとした、まさにその瞬間、
「雷帝の槍よ!」
カルナの詠唱と共に飛来した雷の槍が、新種の魔物の生み出した光球に突き刺さり炸裂した。
圧縮されていた光球も、その場で破壊の力を解き放ち爆発。
新種の魔物に高熱の衝撃波を叩きつけた。
よろめく新種の魔物。表面がただれたように崩れているが、新たに近くの魔物を食らい回復する。
だが、新種の魔物が回復に専念する間、他の魔物達の動きが鈍る。
その隙を逃さぬように、蒸気機関車が突っ込んできた。
「おらっ! 轢かれてぶっ飛べ!」
周囲の瓦礫や荒れ地を神与能力で整備しながら、八雲が蒸気機関車を魔物の群れに誘導する。
数千トンの重さの物体に跳ね飛ばされ、あるいは挽き潰され破壊される魔物たち。
金切音をさせ蒸気機関車は急ブレーキをすると、孤立した魔術師たちの壁になるように止まる。そして、
「全軍、進撃して」
陽色の号令と共に、蒸気機関車に乗り運ばれてきた全ての戦力が進軍した。
「あらあら、ピンチですわね」
「無駄口を叩くな! それより自分の仕事をせい!」
和花は、神与能力で創り出した悪魔と天使に口早に命令する。これに、
「承りました」
悪魔は速やかに応える。ヤギと狼を足したような顔つきの悪魔は、背中から生やしたコウモリのような翼を広げ振わせる。
その途端、周囲の世界そのものが震え出す。
空間でも物質でもなく、世界そのものが震え、悪魔を中心にして細かな亀裂のような漆黒が世界から滲み出る。
そこから溢れ出すのは、膨大な魔力。途切れることなく流れ続ける。
これこそが悪魔の能力。時間単位での上限はあるものの、際限なく魔力を供給する能力だ。
例えるなら、自動MPの回復をもたらす能力と言えた。
それにより生み出された膨大な魔力を、ごっそりと和花は取り込む。それを確認してから、
「次は、わたくしの出番ですわね」
両目を眼帯で覆った、美しい女の姿をした天使は、背中の純白の翼を広げ流麗な歌声を響かせる。
それが、和花の詠唱を肩代わりする。和花が使用する魔術の威力を底上げし、通常なら使えないほど大量の魔術を一度に行使させる。
それこそが天使の能力。魔術の高速並列処理と強化をもたらす能力だ。
例えるなら、複数のアプリを同時起動しても、軽々と実行させる事の出来る能力と言えた。
この天使と悪魔こそが、魔術神マゲイアの勇者に与えられた神与能力だ。
和花だけでなく、武子と瑠璃も同じように召喚している。
「ギイイ!?」
異変に気付いた魔物が、武子と瑠璃の天使と悪魔に襲い掛かろうとするが、全ての攻撃は通り抜けてしまう。
「あらあら、無駄ですわよ。わたくしたち、別に物質的に存在してる訳ではありませんもの」
「我らは法則が具現化したモノ。魔法たる我らに干渉したければ、同域に辿り着くのだな、魔物ども」
魔物達を嘲るように天使と悪魔は挑発し、創造主たる和花たちを助けていく。
それを最大限に生かすように、和花たちは即座に動いた。
「周囲の魔術結界の構成を変更した! これで外側からの攻撃は届かんが、こちらからの攻撃は届くようになった筈じゃ! じゃから安心して、外の部隊を援護射撃せい!」
和花が檄を飛ばすと、周囲でなにをするべきか迷っていた魔術師たちは一斉に動き始める。
指揮者であるラングレーの命令が出ていなくても、自分達を守るために和花が苦労しているのは目の当たりにしているのだ。
その和花の指示に、動かない筈もない。
それぞれ魔術師は一斉に、孤立した部隊を囲む魔物たちに攻撃魔術を撃ち放つ。
爆発や雷撃で吹っ飛ぶ魔物たち。
それにより、襲撃される圧力が減った隙を突いて、武子と瑠璃が孤立した魔術師たちの強化を行う。
「魔術防具、付与するから。使って」
瑠璃は悪魔から供給される魔力を消費し、40人近い魔術師全てに、盾や鎧といった魔術で造り上げた防具を与える。そして、
「怪我とかしても、結果の付け替えで無かった事にするから。だから死なないから、安心して」
瑠璃は魔術師たちの命の保証を口にする。
これにより、魔術師たちの精神的な負担は大きく下がり、戦う意志が湧いて出る。更に、
「魔術武具、付与するから~。使って一緒に戦おう~」
武子が魔術師全てに、すでに持っている者には強化を、持っていなかった者には、それぞれに合った武器を付与する。そして、
「じゃ、いっくよ~」
武子が率先して魔物と戦うことで、魔術師たちの士気を上げていく。
一斉に攻勢に出る魔術師たち。果敢に戦い、一体ずつ確実に魔物達の数を減らしていく。
だがこの時、不気味な声が周囲に響いた。
「グッルオオオオオウウウウウ」
それは巨人の形をした新種の魔物の吠え声。それが幾つも重なっていく。
見れば、新種の魔物の体中から新たな口が発生し、それぞれが異なる吠え声を上げている。
それは魔術の詠唱だった。その効果は、即座に現れる。
全ての魔物の身体が一斉に一回り大きくなったかと思うと、それぞれが今まで持っていなかった武器や防具を手にしていた。
(ぶさけるな! そっちまで仲間の強化をするでないわ!)
和花が心の中で叫ぶ中、強化された魔物たちは攻勢に出てくる。
優勢になっていた魔術師たちが、再び劣勢に押しやられているのを見ながら和花は、
(おのれ! じゃが、これだけの魔術を使い続ければ、いかな魔物とはいえ魔力は尽きる。その隙に一斉攻撃を叩込めば――)
諦めることなく勝機を探っていく。
だが、それすら新種の魔物は嘲笑うかのように乗り越える。
新種の魔物は近くに居た仲間を手に取ると、首から下腹部に掛けて縦1筋の亀裂を生み出し、大きく開く。
それは巨大な口。幾つもの針のような歯が生えたそこに、捕まえた仲間を放り込むと、一気に噛み潰し咀嚼した。
その途端、新種の魔物から溢れるほどの魔力の気配が。
(共食いして魔力を回復させたじゃと!)
思わず顔を強張らせる和花の見ている前で、新種の魔物は仲間の強化と同時に攻撃魔術まで放とうとする。
巨大な光球が新種の魔物の前に発生し、一気に圧縮される。
それが、戦い続ける武子や瑠璃たちの元に向けられる。
「止め――」
和花が叫び声を上げようとした、まさにその瞬間、
「雷帝の槍よ!」
カルナの詠唱と共に飛来した雷の槍が、新種の魔物の生み出した光球に突き刺さり炸裂した。
圧縮されていた光球も、その場で破壊の力を解き放ち爆発。
新種の魔物に高熱の衝撃波を叩きつけた。
よろめく新種の魔物。表面がただれたように崩れているが、新たに近くの魔物を食らい回復する。
だが、新種の魔物が回復に専念する間、他の魔物達の動きが鈍る。
その隙を逃さぬように、蒸気機関車が突っ込んできた。
「おらっ! 轢かれてぶっ飛べ!」
周囲の瓦礫や荒れ地を神与能力で整備しながら、八雲が蒸気機関車を魔物の群れに誘導する。
数千トンの重さの物体に跳ね飛ばされ、あるいは挽き潰され破壊される魔物たち。
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