転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

文字の大きさ
108 / 115
第二章 街予定地の問題を解決しよう編

12 ひとまず勝利です。でも―― その①

しおりを挟む
「お疲れさま! 皆さんの活躍で、魔物に打ち勝つことが出来ました!」

 新種の魔物に率いられた軍勢をなんとか倒した俺達は、蒸気機関車に乗って前線基地に戻って来ていた。

「これは、この地での初めての勝利です! 全ては皆さんのおかげです! 感謝します!」

 疲れ切ってふらふらな人も居るけれど、誰もが皆、昂揚感をその表情かおには浮かべている。

「今日の戦いで、私は確信しました! 皆さんと協力し続ければ、必ずこの地から魔物をすべて排除できると!」

 根拠も確信もあるが、絶対とは言い切れないことを、俺は断言する。
 それが俺の仕事だ。気心の知れた個人同士ならともかく、お互いを知り尽くしえない集団では、意思を統一し士気を高める共通認識が不可欠だ。

 一歩間違えれば地獄に行進させるようなことでも、口にしなければいけない。
 その上で、誰もそうならないようにするのが、俺たち勇者の仕事なんだ。

「今日は始まりの日です! ここから打ち勝ち続けましょう!
 これから待ち受けている困難の全てを、皆さんの力を借りて打破します!
 どうか、よろしくお願いします!」
「おう! 任せとけ!」

 俺の言葉に、魔術師のみんなと一緒に居た五郎が力強く返す。
 意見の誘導。後ろめたい気持ちはあるけれど、必要なそれを、勇者のみんなには頼んでいる。

 それに続いてくれる人が出るかは賭けだったけれど、仕込みで準備していた勇者のみんなが返してくれるよりも早く、魔術師のみんなは返してくれた。

「頑張ります!」

 元気な声で返してくれたのは、若い魔術師のコニーだ。
 魔術協会に訪れた時に門衛に就いていた彼は、こちらに好意を感じてくれている。
 だから、俺を見詰める眼差しは輝いていた。

(……うぅ、心が痛いよぅ……)

 必要なことだけど、割とろくでもないなぁと自覚している事で純粋な眼差しを向けられると、罪悪感にキリキリする。なのだけど、

「俺だってやってやります!」
「わ、私も頑張ります!」
「魔物なんか、全滅させましょう!」
「俺の活躍をメイドさんに見せつけますよ!」
「お前は黙ってろ!」

 若い魔術師を中心に、一部なんか方向性が違ってるけど、熱い情熱が返ってくる。
 しかも、その熱気に当てられたのか、中堅どころの年かさの魔術師たちも、声は上げないが熱気のある眼差しで俺を見詰めていた。

(士気の維持は何とかなったか)

 みんなの様子に、ひとまず胸をなでおろす。
 魔物の軍勢に打ち勝ったとはいえ、楽勝だったとは、とても言えないからだ。

 瑠璃の魔術で、怪我をした魔術師は出なかったけど、魔物から受けた痛みや恐怖の記憶まで消えた訳じゃない。
 下手をしなくても、心が折れる人が出てもおかしくは無かったけれど、幸いそこまで行った人は居ないみたいだ。 

 それは、俺達が救援に向かうまで戦い続けていた武子達の活躍が大きい。
 みんなを励ましながら、積極的に戦い。守りながら鼓舞し続けた。

 魔物との戦いの中にあって、勇気を見せ、そして奮い立たせた姿が、折れそうな心を支えたみたいだ。
 それもあってか、特に武子の周囲には、熱い視線を向ける魔術師たちが集まっている。

 気のせいか、女の子が多いような気がするけれど。遠巻きに熱い視線を向けてるのは、男どもが多いけど。

 武子は笑顔でみんなに囲まれてるんだけど、気のせいか冷や汗をかいてる気がする。
 以前に聞いた話だと、男にはモテなかったけど女にはモテたって話なので、それを思い出してるのかもしれない。

(……男にモテないっての、単純に声を掛ける勇気のあるヤツが居なかったからじゃ……)

 遠巻きに見詰めてる男どもを見てるとそんな気がするけど、それはそれで置いておいて、俺は俺で自分の仕事をしていこう。
 みんなの歓声が落ち着くのを待ってから、俺は声を上げる。

「ありがとうございます! 皆さんの賛同が、力強いです! この勢いを、維持していきましょう!」

 再び上がった歓声を聞きながら、盛り上がった気持ちが消えないよう気を付けながら、落ち着いて貰えるように言葉で誘導する。

「皆さんの想いに、感謝です! それを維持するためにも、適度な休憩は必要です! これから休憩して貰う班と、警護に当たって貰う班に分かれて貰います!」

 俺の言葉に続くようにして、コンテナ車両の1つから、メイドさん達が出て来る。
 彼女達は、蒸気機関車の引っ張っている車両の中で、一番頑丈で防音設備が整っていたコンテナ車両で待機して貰っていた。
 万が一の時は、有希の神与能力チートスキルがバレるのも覚悟の上で、避難用の空間移動の扉も内部には完備してあるコンテナ車両だ。

 俺達が戦っている間も、ある意味一番安全な場所に居て貰ったとはいえ、メイドさん達は全員、平然としたものだ。 
 人材派遣業をしている、誓約神ミトラの勇者、坂上東海子が、

「肝っ玉座ったの派遣するから。頼りにしてちょうだい」

 と言っていたけれど、実に頼もしい。その分、お給料は高いけど、安く思えるぐらい十二分だ。

「休憩班の皆さんは、今あちらに居るメイドさん達がお世話をしてくれますので、休憩用の設備が整ったコンテナ車両で英気を養って下さい」

 俺の言葉に、特に一部の男どもの間で、歓声が上がる。正直者だ。
 思わず苦笑しそうになったけれど、それを抑え、俺は手早く指示を出して行く。

 そうして、一先ずの待機態勢が整う。
 五郎や有希、そして和花たちに、まだ余力のある魔術師の人達を指揮して貰いながら周囲の索敵をして貰う。
 幸い、今のところ周辺に魔物の気配は無い。しばらく休む余裕はあるだろう。

 残りの魔術師の人達は休憩に回って貰う。
 こちらは、カルナやラングレーさん達、魔術師サイドの上役に当たる人達に対応を任せた。

 そして、一時的に指揮者役から離れた俺は、蒸気機関車に向かう。
 反省会を、五十鈴とするためだ。

 ドアを開け、中に入る。先に来ていた五十鈴は、ゆったりと椅子に座りながら、

「運が良かっただけやねぇ」

 やわらかな口調で言ってくれた。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

異世界でぼっち生活をしてたら幼女×2を拾ったので養うことにした【改稿版】

きたーの(旧名:せんせい)
ファンタジー
【毎週火木土更新】 自身のクラスが勇者召喚として呼ばれたのに乗り遅れてお亡くなりになってしまった主人公。 その瞬間を偶然にも神が見ていたことでほぼ不老不死に近い能力を貰い異世界へ! 約2万年の時を、ぼっちで過ごしていたある日、いつも通り森を闊歩していると2人の子供(幼女)に遭遇し、そこから主人公の物語が始まって行く……。 ――― 当作品は過去作品の改稿版です。情景描写等を厚くしております。 なお、投稿規約に基づき既存作品に関しては非公開としておりますためご理解のほどよろしくお願いいたします。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう

お餅ミトコンドリア
ファンタジー
 パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。  だが、全くの無名。  彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。  若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。  弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。  独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。  が、ある日。 「お久しぶりです、師匠!」  絶世の美少女が家を訪れた。  彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。 「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」  精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。 「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」  これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。 (※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。 もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです! 何卒宜しくお願いいたします!)

処理中です...