転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

文字の大きさ
112 / 115
第二章 街予定地の問題を解決しよう編

幕間 闇にて重ねられるたくらみ

しおりを挟む
 創られた偽りの世界で、鳥の面を付けた人物は口を開いた。

「私に協力しろ」
「はぁ? なんでだよ?」

 その場は、虚ろな場所だった。酷く現実感に乏しい紛い物の世界。
 あるのはただ、1つの円卓。

 かつて、12の人物が集まったそこは、今は2人しかいない。
 その内の1人、虎の面を付けた人物が、つまらなそうに続けた。 

「個別の呼び掛けしやがるから、なにかと思えば。なんで俺が、お前に手を貸してやらなきゃならねぇんだよ」

 いま2人が居るその場所は、魔術により創られた仮想の世界。
 そこに接続するための、あるアイテムを持った者だけが、訪れることが出来る。

 そのアイテムを通して、他のアイテム所持者に呼び掛けをする事が出来るのだが、今回は鳥の面の人物の呼び掛けを受け、虎の面の人物が応える形で訪れたのだ。

「色々と、役に立つことも多いから、ここには顔を出してるけどな。別に俺とテメェは顔見知りでも何でもねぇ。そもそもどこの誰なのかも知らねぇ間柄だ。それでよく、図々しくそんな事が頼めるな?」

 いま2人が居るこの場、この世界を去りし外なる神により創られた『魔網回線』は、外なる神が異世界の技術、インターネットなるものを参考にして作られているという。
 どこであろうと、相手が誰かも知らずに、関わり合うことが出来る機能を有している。

 実際、いま居る2人は、この場で話すことはあっても、どこの誰なのかもお互い知らない。
 それは、以前集まった12人すべてがそうではあったが。

 そうであるにも拘らず、話を切ることなく続けているのは、何らかの旨味があるかと探っているのだ。

 だからこそ、鳥の面の人物は、相手の利益に関わることを口にする。

「これは、貴様にも関わり合いのある話だ」
「……どういうこった?」

 探るように、虎の面の人物は聞き返す。
 相手の言葉がハッタリだとは思ってはいない。そういう空手形を切るような相手ではないと、今までの言動で知っている。

 だが同時に、衝動的な相手である事も、虎の面の人物は感じている。
 自覚無く博打めいた真似をして、運がないことに成功し続けた人物。
 破滅する前に失敗をする事が出来なかった、根拠のない自信を脹れあがらせた夢想家。
 それが、いま相対している相手だと、直感していたのだ。

「巻き込む気か、こっちを」

 威嚇するように、虎の面の人物は言う。

 この場に訪れる皆が全て、どこの誰であるかは通常は語らない。 
 例外は、魔王とまでなったオールド・ニコラウスぐらいだ。

 だが、名乗らないからと言って、相手がどこの誰であるのか全く予測できない訳ではない。
 この場で語る言葉と、その後に起る何らかの事件。
 それらを照合して、推測を付けることはできる。

 実際、虎の面の人物は、いま相対している鳥の面の人物が何処の誰であるか、大雑把には推測を付けている。
 それと同じことを、相手が出来ていないとは限らない。

 だからこそ警戒する虎の面の人物に、鳥の面の人物は、どこかなだめるような余裕のある声で言った。

「ああ、すまない。別に、警戒させるつもりはないのだ。ただ、このまま進めば、そちらの計画にも支障が出ると思っただけだ」
「……なんのことだ?」

 余計な感情を削ぎ落とした静かな声で問い掛ける虎の面の人物に、鳥の面の人物は言った。

「このまま進めば、勇者共が冒険者の王になるぞ」
「…………」

 無言のままの虎の面に、鳥の面の人物は、自覚しない優越感を抱きながら続けた。

「奴らは、新しく作る街に巣食う魔物を駆除するため、魔術協会の力を借り受けた。だが、それでは足らないと自覚している。それを補うために、動き出すようだ」
「……つまり、冒険者を使おうってのか? そんな物は、今まで国王だの辺境伯だの、あいつらが使ってきた手だろ。今さら、それぐらいで――」
「冒険者の統一組織を作るつもりだぞ、奴らは」

 返事は返ってこない。それに満足するように、滑らかな声で鳥の面は続ける。

「勇者共にとっては、継続して魔界最接近領からやって来る魔物どもを駆除し続ける必要がある。つまり、継続して使い捨てる駒が必要だ。それは散発的に集めていたのでは、数が足らなくなる。必要なのは、必要な時に必要なだけ集められる仕組みだ」
「それを、勇者のヤツらが作るってのか?」
「そうだ。そしてそれが出来たなら、その仕組みに従わない者は邪魔になる。つまりは、お前だ」

 再び無言になった虎の面に、畳み掛けるように続ける。

「お前は、自分が王になりたいのだろう? なれば良い。だがその為には、勇者共の動きは邪魔だ」
「……なにが出来るってんだ、テメェに」

 どこか冷めた響きを滲ませながら、虎の面は聞き返す。
 それは、思い違いに道化を演じる相手を、憐れむような響きがあった。

 だが、鳥の面は気付けない。
 失敗したことが無い傲慢さに、無自覚に振り回されながら。
 それがただ、運の良かっただけとは思うことが出来ず、全て自分の力量だと過信して。

「お前の望みを言ってみろ。魔術師の王を望む、どこかの誰かさんよ。面白ければ、手を貸してやるぜ」

 僅かに楽しげな響きを滲ませ、虎の面は応える。
 その響きの真意に気付けず、鳥の面は言った。

「魔術協会の長老どもを殺す。可能なら、勇者共もな。その舞台を作るために、手を貸せ。冒険者の王を望む者よ」
「いいぜ」

 即座に、虎の面は返した。
 身の程知らずの道化を、嘲笑うような響きを、その声に乗せながら。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】平凡な魔法使いですが、国一番の騎士に溺愛されています

空月
ファンタジー
この世界には『善い魔法使い』と『悪い魔法使い』がいる。 『悪い魔法使い』の根絶を掲げるシュターメイア王国の魔法使いフィオラ・クローチェは、ある日魔法の暴発で幼少時の姿になってしまう。こんな姿では仕事もできない――というわけで有給休暇を得たフィオラだったが、一番の友人を自称するルカ=セト騎士団長に、何故かなにくれとなく世話をされることに。 「……おまえがこんなに子ども好きだとは思わなかった」 「いや、俺は子どもが好きなんじゃないよ。君が好きだから、子どもの君もかわいく思うし好きなだけだ」 そんなことを大真面目に言う国一番の騎士に溺愛される、平々凡々な魔法使いのフィオラが、元の姿に戻るまでと、それから。 ◆三部完結しました。お付き合いありがとうございました。(2024/4/4)

1歳児天使の異世界生活!

春爛漫
ファンタジー
 夫に先立たれ、女手一つで子供を育て上げた皇 幸子。病気にかかり死んでしまうが、天使が迎えに来てくれて天界へ行くも、最高神の創造神様が一方的にまくしたてて、サチ・スメラギとして異世界アラタカラに創造神の使徒(天使)として送られてしまう。1歳の子供の身体になり、それなりに人に溶け込もうと頑張るお話。 ※心は大人のなんちゃって幼児なので、あたたかい目で見守っていてください。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜

シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。 起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。 その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。 絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。 役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。

猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る

マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・ 何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。 異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。  ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。  断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。  勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。  ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。  勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。  プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。  しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。  それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。  そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。  これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。

処理中です...