転生して10年経ったので街を作ることにしました

笹村

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第二章 街予定地の問題を解決しよう編

13 ひとまず帰宅したけれど―― その①

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「おかえりなさい、陽色さん」

 勇者の館に帰り、菊野さんに出迎えられた。

「ただいま、菊野さん。なにか、変わったことは無かった?」
「いえ、特に何も。王都近郊も問題はありませんし、私が視ている範囲でも問題はありません」

 菊野さんには、神与能力チートスキルを使って、関係先や近しい人達の様子を見て貰っている。
 離れた場所も見れるので頼んでいるんだけど、複数を同時に見るのは神経を使うみたいなので、苦労をさせている。

「お疲れさま。ごめんね、無理をさせちゃって」
「大丈夫ですよ。出来る範囲でしかしていませんから。それよりも、そちらの方が大変でしょう? 向こうは、どうなっているんですか?」

 ほとんど表情は変わらないけど、僅かに後ろめたそうな響きを、菊野さんは声に滲ませる。 
 防衛の要なので、下手に前線に出せないだけだから気にしなくても良いんだけど、他のみんなが危険な場所に居るのは気になるみたいだ。
 だから俺は、出来る限り明るい声で返す。

「心配しなくても大丈夫。魔術師の人達も優秀だし、みんなも無理せず頑張ってるから。勇者のみんなも、交代制で向こうには出張ってくれてるから、今の規模を維持するだけなら問題ないよ」

 俺達の街になるシュオル。そこを占拠している魔物を排除するために、魔術協会の協力も借りて、勇者のみんなと一緒に頑張っている。
 戦力的に、街の全てを奪還するのは難しいので、それは今のところ捨てて出来ることだけしている。
 半径500メートル程度の半円状の範囲を、ぐるっと壁で覆って、更にその外側に、2重の壁を作って拠点にしてるんだ。
 
 その中で、街の玄関口になる宿泊施設と商業施設、あと序でに慰問も兼ねてのスーパー銭湯まで作ったのを確認してから、俺は王都に戻っていた。

「割と、馴染んでくれてるみたいだよ、魔術師の人達も」

 休みなく戦いの場に出ずっぱりだと、精神的にやられるので、それが一番の懸念だったんだけど、帰る時に見た限りだと大丈夫そうだった。
 とはいえそれでも、自由に王都にも戻れずにシュオルに縛り付けている事には変わりがない。
 それを、菊野さんも分かっているんだろう。心配するように言った。

「魔術師の人達も、今の所は問題ないのですね。でも、このままの状況が続いたら」
「うん、それは俺も気になってるよ。だから余裕を持って、勢力範囲を拡大するためにも、追加の人手は要るね」
「ええ、分かっています。その件で陽色さんが戻ったら、すぐに連絡が欲しいと、石動さんから連絡を貰っています」
「壮真が? 良い返事だったら良いんだけど……」
「ええ。魔導具で向こうとは、いつでも音声でやり取りできるように繋いであります。戻られて直ぐで大変でしょうが、連絡を取って貰えますか?」

 地方で、魔物や魔獣の害から村を守る活動をしている壮真は、それもあって冒険者の人達との縁を繋いでいる。
 俺がシュオルに居る間に、壮真には連絡を取って貰って、シュオルに冒険者の人達を斡旋して貰えないか頼んでいたので、それに関して何らかの応えをしてくれるんだろう。

 俺は、気遣ってくれる菊野さんに笑顔を向けて返す。

「ありがとう、気を遣ってくれて。大丈夫だよ。こっちに戻る間に、蒸気機関車の中で軽く寝たから。皆も頑張ってくれてるんだから、俺も頑張らないとね」
「……そうですか。でも、無理はしないで下さい」

 気遣うように声を掛けてくれた菊野さんと一緒に、俺は通信用の魔導具がある部屋に向かう。
 道中、少し長いので、言葉を交わす。

「そういえば、アルゴスは、どう? こっちの世界を、気に入ってくれた?」

 菊野さんを転生召喚した神、アルゴスは今、現世こちらに来ている。
 俺たち勇者は、転生召喚した神が現世に居ると、どうも神与能力チートスキルが強化されたり、新たな能力に目覚めたりするらしい。
 それを利用して、菊野さんの仕事が楽にならないかと思い、来て貰っていたんだ。

 もっとも菊野さんの場合、今まであった能力が強化されるというよりは、新しい能力に目覚めるタイプだったらしく、見回り仕事が楽になる効果は無かったみたいだ。
 それはそれとして、折角現世に来て貰ったのだから、しばらく滞在して貰っている。

「……非常に気に入ったみたいです。色々な場所に、行きたがりますから」

 ため息をつくように、菊野さんは返す。

現世こちらに来たばかりの頃のように、私に四六時中べったりなのも困りますけど、勝手にふらつかれるのも困ったものです」
「ははっ、楽しんでるみたいだね。じゃ、今は、どこに居るの?」
「外に出ています。陽色さんが戻られる少し前に、

 お客さんが来るみたいだから、迎えに行って来よう。菊野は待っていなさい。

 とか言って、出ていったきり、まだ戻りませんから」
「お客さん? なにかが、見えたのかな?」

 神々は、それぞれ得意とする能力があり、アルゴスの場合は『視る』ことに特化している。

「ひょっとすると、未来でも視えたのかな?」

 菊野さんもそうだけど、アルゴスも未来視が出来るらしい。
 もっとも本人でもコントロール出来ず、突発的に視えたりするみたいなんだけど。

「……言われてみれば、そうかもしれません。単純に、遊びに出ただけの可能性も、ありますけど」

 ため息をつくように、菊野さんは言った。

 そうしてお喋りをする内に、部屋に辿り着く。
 中に入り、すぐに通信用の魔導具を起動する。

「これって留守番電話みたいに、こちらからの言葉を、向こうに残せるんだよね?」
「ええ。向こうからの連絡記録は……今のところないみたいですね」

 菊野さんがそう言った、まさにその時だった。

『もしもーし。陽色、居る?』

 こちらから連絡を取るつもりだった、壮真の声が魔導具から聞こえてきた。

「ひさしぶり、壮真。ちょうど、今こっちに戻って来た所だよ」
『うわっ! びっくりした! こういうの、ドンピシャってヤツかな?』
「ははっ、きっとそうだよ。それで、壮真。どうかしたの?」

 俺の問い掛けに、一瞬言いよどむような間を空けて、

『ごめん。俺の方から冒険者の斡旋をするの、ちょっと無理っぽい』

 気遣うような、声が聞こえてきた。
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