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第二章 街予定地の問題を解決しよう編
13 ひとまず帰宅したけれど―― その②
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「なにかあったの?」
壮真の言葉に、俺は軽い口調で問い掛ける。
気遣いをさせないようにするためだったけど、それに気付いたのか、壮真は苦笑するような響きを込め返してくれた。
「ちょっとね。こっちで問題発生しちゃって」
「問題? 人で? それとも物とか、何か事件でもあったの?」
「大量の魔物が発生したんだ」
予想してたより悪い応えに、ちょっと言葉が止まる。
そんな俺に、壮真は説明してくれた。
「大量って言っても、そっちで対処してるみたいに、一か所にまとまって発生した訳じゃないんだ」
「どういうこと? 複数の場所で、同時多発的に発生したってこと?」
「うん。こっちが知ることが出来ただけでも、13か所で発生してる」
「それは……ちょっと多いね」
壮真が活動の中心にしている地方は、王都や辺境領の中枢みたいに、魔物が発生する前に元となる淀みを処理する、ということが出来辛い。
なにしろ、広さが違う。農産物の供給を地方はしているけど、そのせいで、生活圏が恐ろしく広い。
しかも、農作業のような日々の生活以外に余力を割く余裕は無いので、魔物の発生を事前に防ぐということも出来辛いんだ。
なので、都心部よりも地方の方が魔物の発生率は高い。
とはいえ、俺達が対処しているシュオルみたいに、ぽこぽこ湧く訳じゃない。
それなのに、そんなにも同時に沸いたのは、偶然とは思い辛い。
「壮真。そっちで、何かオカシなことはない? なにか人為的な事で、魔物が発生するような」
俺とカルナが、人工的な魔物に襲われた事件もあるんだ、壮真の居る地方でも、何も無いとは限らない。
そんな心配をしながら訊いたんだけど、
「あ、ごめん。ちょっと言い方が悪かった。発生というよりは、正確には発見って言った方が良いかもしれない」
「? それって、どういうこと?」
状況がつかめないので訊き返すと、壮真は説明してくれた。
「冒険者のギルドの事は、知ってるよね?」
「うん。冒険者の互助会みたいなもんだよね? 大抵は、顔見知りの10数人程度の集まりで、一番大きい所でも、1000人ぐらいって聞いてるけど」
「その一番大きいギルドが、今回の引き金を引いたんだ」
「どういうこと?」
頭の中で話をまとめるような間を空けて、壮真は返してくれた。
「最初の発端は、ある村の近くで魔物が発生したことなんだ。それは、いま言った最大手のギルド『王虎の爪』が、犠牲者が出る前に倒したんだ」
「犠牲者が出る前に? 運が良かったね」
「うん。大抵は、誰かが犠牲になってから、気付いて冒険者に助けを求めるからね。でもその時は、ちょうど別の件で、たまたま依頼を受けていた王虎の爪のメンバーが居たんだ。そのお蔭で、村を襲おうとした魔物は返り討ちってわけ」
「それでめでたしめでたし、って訳じゃないんだよね?」
「うん。魔物を倒したのは良いけど、村の人達が不安になっちゃったらしくて。そりゃ、魔物が一体とは限らないしね。それで、周囲の森を探してみたら、他にも魔物が居たんだ」
「それも倒して終わり……なら良いけど、違うんだよね?」
否定して欲しいなぁ、と思って尋ねると、
「うん。こっからが、むしろ本番なんだ」
嫌な予感ほど当たるもの。壮真は続けて説明してくれた。
「周囲の森を少し探しただけで居たんだ。他の場所は違うとは言えないだろ?
だから王虎の爪は、他の魔物がまだ確認されてない場所も見て回ることにしたらしいんだ」
「それは……英断だね」
言葉を選び、俺は返す。それに壮真は、苦笑するような響きを滲ませ続けた。
「うん、英断だよ。元々、王虎の爪は、勇猛果敢さと強さもだけど、英雄的な行動が有名なギルドだから。それを支持する村は多し、冒険者だって例外じゃないんだ」
「……ひょっとして、ボランティア活動の協力、みたいな圧力が掛かった?」
言葉は選んだけど、結局のところ、ただ働きで俺たちの活動に協力しろ、ということがあったのかなと思って聞いてみる。
「直接的な圧力は無いよ。それ以上に断り辛い、同調圧力があるけど」
「それに協力しないと拙いってこと? もしかして」
「……うん」
無言の圧力ってことだろうけど、それを断るのは冒険者相手だとキツイだろう。
元々、冒険者は色んな所からあぶれた人間が、最終的に行き着く仕事なだけあって、横の繋がりが強い。
逆に言うと、横の繋がりが無くなれば、なんの伝手も無くたった一人きりで生きていかなきゃならないってことだ。
故郷も何も無く、要らない者として放り出されたら、そうならざるを得ない。
だからこそ、横の繋がりを維持する事に、冒険者は必死だ。
いや、もはやそれは、文化と言っても良いかもしれない。
それほどに強い、無言の圧力があったなら、無視は出来ない。
「それだと、少なくとも今、こちらが冒険者の斡旋をしたら、拙いよね?」
「絶対にやめて欲しい。それだけは」
大きい声じゃないけど、強い口調で壮真は言った。
「いまそんな事したら、確実に消えないしこりになって残る。
ただでさえ王都の関係者は、地方だと嫌われてるんだ。
魔王が出た時に、冒険者を無理やり集めて、地方の守りを薄くしたからね。
その時の被害の記憶はまだまだ強く残ってるし、冒険者の方だって、使い捨てにされたのを忘れてないんだ。
陽色たちが、形の上だけと言っても、王の命令で動いて居る以上、今のタイミングでそんなことしたら、後々どうなるか全く予想できないよ」
ため息をつくように、壮真は言った。
壮真の言葉は、もっともなんだ。それぐらい、魔王が出現した時に、王都や辺境領の中枢はやらかしている。
簡単に言えば、自分達を守るためだけに地方の守りを切り捨てて冒険者を集め、事が終われば冒険者を投げ捨てた。
これに尽きる。
さんざん危険なことをさせたというのに、ろくに報酬も払わずに追い払った所さえあるらしい。
「うちは関係ないんだけどな……」
心の底から頭が痛い。
俺達も、立場的には同じだけど、こっちは魔王を倒して英雄扱いされたけど、向こうは違う。
名もない使い捨ての冒険者として、粗末に扱われたんだ。
「どれぐらい、今の状況は続くと思う?」
頭は痛いけど、唸ってる場合でもない。とりあえず、先の見通しが立たないか聞いてみたんだけど、
「……ごめん。全く分かんない。活動がどんどん広がって、調べる人と範囲が広がってるから、次から次に魔物が見つかってるから」
「そっか……」
ダメだこれ。全く先の見通しが立たない。
(諦めないとダメか……)
俺は、無駄に悩んでいても時間が惜しいので、決断する。
「壮真、状況は分かったよ。こっちの方は気にしないで。どうにかするから。
それよりも、そっちの方で何かあったら教えて。出来る限り、対処するから」
「うん……ありがとう。ごめんな、陽色」
「いいよ。気にしないで」
出来る限り明るい声で俺は返し、壮真との通信を俺は終える。そして、
「さて、どうしよう……」
思いっきり弱音を吐いた。
壮真の言葉に、俺は軽い口調で問い掛ける。
気遣いをさせないようにするためだったけど、それに気付いたのか、壮真は苦笑するような響きを込め返してくれた。
「ちょっとね。こっちで問題発生しちゃって」
「問題? 人で? それとも物とか、何か事件でもあったの?」
「大量の魔物が発生したんだ」
予想してたより悪い応えに、ちょっと言葉が止まる。
そんな俺に、壮真は説明してくれた。
「大量って言っても、そっちで対処してるみたいに、一か所にまとまって発生した訳じゃないんだ」
「どういうこと? 複数の場所で、同時多発的に発生したってこと?」
「うん。こっちが知ることが出来ただけでも、13か所で発生してる」
「それは……ちょっと多いね」
壮真が活動の中心にしている地方は、王都や辺境領の中枢みたいに、魔物が発生する前に元となる淀みを処理する、ということが出来辛い。
なにしろ、広さが違う。農産物の供給を地方はしているけど、そのせいで、生活圏が恐ろしく広い。
しかも、農作業のような日々の生活以外に余力を割く余裕は無いので、魔物の発生を事前に防ぐということも出来辛いんだ。
なので、都心部よりも地方の方が魔物の発生率は高い。
とはいえ、俺達が対処しているシュオルみたいに、ぽこぽこ湧く訳じゃない。
それなのに、そんなにも同時に沸いたのは、偶然とは思い辛い。
「壮真。そっちで、何かオカシなことはない? なにか人為的な事で、魔物が発生するような」
俺とカルナが、人工的な魔物に襲われた事件もあるんだ、壮真の居る地方でも、何も無いとは限らない。
そんな心配をしながら訊いたんだけど、
「あ、ごめん。ちょっと言い方が悪かった。発生というよりは、正確には発見って言った方が良いかもしれない」
「? それって、どういうこと?」
状況がつかめないので訊き返すと、壮真は説明してくれた。
「冒険者のギルドの事は、知ってるよね?」
「うん。冒険者の互助会みたいなもんだよね? 大抵は、顔見知りの10数人程度の集まりで、一番大きい所でも、1000人ぐらいって聞いてるけど」
「その一番大きいギルドが、今回の引き金を引いたんだ」
「どういうこと?」
頭の中で話をまとめるような間を空けて、壮真は返してくれた。
「最初の発端は、ある村の近くで魔物が発生したことなんだ。それは、いま言った最大手のギルド『王虎の爪』が、犠牲者が出る前に倒したんだ」
「犠牲者が出る前に? 運が良かったね」
「うん。大抵は、誰かが犠牲になってから、気付いて冒険者に助けを求めるからね。でもその時は、ちょうど別の件で、たまたま依頼を受けていた王虎の爪のメンバーが居たんだ。そのお蔭で、村を襲おうとした魔物は返り討ちってわけ」
「それでめでたしめでたし、って訳じゃないんだよね?」
「うん。魔物を倒したのは良いけど、村の人達が不安になっちゃったらしくて。そりゃ、魔物が一体とは限らないしね。それで、周囲の森を探してみたら、他にも魔物が居たんだ」
「それも倒して終わり……なら良いけど、違うんだよね?」
否定して欲しいなぁ、と思って尋ねると、
「うん。こっからが、むしろ本番なんだ」
嫌な予感ほど当たるもの。壮真は続けて説明してくれた。
「周囲の森を少し探しただけで居たんだ。他の場所は違うとは言えないだろ?
だから王虎の爪は、他の魔物がまだ確認されてない場所も見て回ることにしたらしいんだ」
「それは……英断だね」
言葉を選び、俺は返す。それに壮真は、苦笑するような響きを滲ませ続けた。
「うん、英断だよ。元々、王虎の爪は、勇猛果敢さと強さもだけど、英雄的な行動が有名なギルドだから。それを支持する村は多し、冒険者だって例外じゃないんだ」
「……ひょっとして、ボランティア活動の協力、みたいな圧力が掛かった?」
言葉は選んだけど、結局のところ、ただ働きで俺たちの活動に協力しろ、ということがあったのかなと思って聞いてみる。
「直接的な圧力は無いよ。それ以上に断り辛い、同調圧力があるけど」
「それに協力しないと拙いってこと? もしかして」
「……うん」
無言の圧力ってことだろうけど、それを断るのは冒険者相手だとキツイだろう。
元々、冒険者は色んな所からあぶれた人間が、最終的に行き着く仕事なだけあって、横の繋がりが強い。
逆に言うと、横の繋がりが無くなれば、なんの伝手も無くたった一人きりで生きていかなきゃならないってことだ。
故郷も何も無く、要らない者として放り出されたら、そうならざるを得ない。
だからこそ、横の繋がりを維持する事に、冒険者は必死だ。
いや、もはやそれは、文化と言っても良いかもしれない。
それほどに強い、無言の圧力があったなら、無視は出来ない。
「それだと、少なくとも今、こちらが冒険者の斡旋をしたら、拙いよね?」
「絶対にやめて欲しい。それだけは」
大きい声じゃないけど、強い口調で壮真は言った。
「いまそんな事したら、確実に消えないしこりになって残る。
ただでさえ王都の関係者は、地方だと嫌われてるんだ。
魔王が出た時に、冒険者を無理やり集めて、地方の守りを薄くしたからね。
その時の被害の記憶はまだまだ強く残ってるし、冒険者の方だって、使い捨てにされたのを忘れてないんだ。
陽色たちが、形の上だけと言っても、王の命令で動いて居る以上、今のタイミングでそんなことしたら、後々どうなるか全く予想できないよ」
ため息をつくように、壮真は言った。
壮真の言葉は、もっともなんだ。それぐらい、魔王が出現した時に、王都や辺境領の中枢はやらかしている。
簡単に言えば、自分達を守るためだけに地方の守りを切り捨てて冒険者を集め、事が終われば冒険者を投げ捨てた。
これに尽きる。
さんざん危険なことをさせたというのに、ろくに報酬も払わずに追い払った所さえあるらしい。
「うちは関係ないんだけどな……」
心の底から頭が痛い。
俺達も、立場的には同じだけど、こっちは魔王を倒して英雄扱いされたけど、向こうは違う。
名もない使い捨ての冒険者として、粗末に扱われたんだ。
「どれぐらい、今の状況は続くと思う?」
頭は痛いけど、唸ってる場合でもない。とりあえず、先の見通しが立たないか聞いてみたんだけど、
「……ごめん。全く分かんない。活動がどんどん広がって、調べる人と範囲が広がってるから、次から次に魔物が見つかってるから」
「そっか……」
ダメだこれ。全く先の見通しが立たない。
(諦めないとダメか……)
俺は、無駄に悩んでいても時間が惜しいので、決断する。
「壮真、状況は分かったよ。こっちの方は気にしないで。どうにかするから。
それよりも、そっちの方で何かあったら教えて。出来る限り、対処するから」
「うん……ありがとう。ごめんな、陽色」
「いいよ。気にしないで」
出来る限り明るい声で俺は返し、壮真との通信を俺は終える。そして、
「さて、どうしよう……」
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(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
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