5 / 8
5
しおりを挟む
連れ出された会場の外で、6人が声を合わせて、僕の名前を言った。
『大丈夫ですか?怖かったでしょう、ミケル?』
「……お前達、僕の名前を知ってたのか?」
「気付いてましたよ、貴方がミケルだって。」
「なんせ、貴方は王子の婚約者だった方だ。大人しくしていても、目立たない訳がない。」
「奥ゆかしくて、素敵だなと思っていました。」
「清楚で美しくて。」
そう言われても困ってしまう。
「じゃあ、幻滅したろ?こんな奴になって…。」
『いいえ。』
間髪入れずに言われた。
「妖艶に着飾って、奔放に振る舞う貴方も、根っこの優しさは、変わりません。」
「自由な貴方も輝いていて、素敵です。」
「違った顔と、元気な貴方が見れて幸せです。」
「自由になった貴方と会話できて楽しい。」
「ちゃんと、節度は守ってらっしゃいましたよ。」
「手が届かなくて、それでも愛しいミケルです。」
優しく、労られた。
照れ臭くて顔が火照ってくる。
「でも…ああは言ったけど、恋人を決めないと不誠実だよな…。」
「物事を深く考え過ぎて、すぐに答えが出せないのも、貴方のままですよ。」
笑われた。笑い事じゃないのに!
「いっそ、俺達6人、全員と結婚しませんか?」
「ええっ!!」
そんなバカな!!!
「側妃がいて、妻が沢山いる王だっているんです。貴方の事を、俺達は心から愛している。何からも守りたいと思っている。馬鹿な王子に傷つけられた貴方に、6人くらい居ても構わないでしょう。」
「え…?そういう問題?…そんなのあり?」
「あの王子を撃退するには、6人で力を合わせた方が心強い。」
「いいの…?本当に…?」
『はい。』
「今の僕は、間に受けちゃうからね?…フフフッ。」
僕は改めて、僕の夫になる彼らの名前を呼んだ。
「ゼリグ、アッシャー、バラック、ベネト、エイジャス、ロレート、これから末永く宜しくね。」
僕は、王でもないのに6人の男と事実婚をした、前代未聞の貴族になった。
それから王子は、まだ僕を諦めて無いようだが、さすがに僕の家と6人の夫の家、合計7つもの王国貴族を敵に回せないらしく、手が出せないようだ。
王子は僕がミケルと知っても、何度も手紙を送ってくる。
――俺と婚約してる時からそうしていれば、捨てなかったのに。
――喜べ。婚約者に戻してやる。
――俺に振り向いて欲しかったのだろう?意地を張るな。
…………いい加減にして欲しい。
不機嫌な僕を、呼ぶ声がした。
「ミケル、お茶にしよう。」
花に囲まれた庭で、テーブルに7脚のイス。
にこやかに待つ6人の夫。
「ふふっ。美味しそうだね。」
僕は敢えてイスに座らずゼリグの膝に座った。
クッキーを咥えてアッシャーに差しだす。
「ありがとうミケル。」
口を引っ付けて2人で食べる。
「バラック。」
僕が呼ぶと心得たように、口移しでお茶を飲ませてくれる。
「ベネト、クリームも欲しい。」
「はい、どうぞ。」
ベネトが指ですくったクリームに、僕は舌を這わせて舐め上げる。
「付いたよ、ミケル。」
エイジャスが、僕の頬に付いたクリームを舐め取った。
「俺も喉が渇いたな。」
ロレートが言うので僕が口に含んで飲ませてやった。
「幸せだ。」
「良かった。俺達6人は、ミケルの幸せの為なら、何でもするからね?」
館の使用人が、真っ赤な顔でうつむいてるけど知らない。
「ね、もうベッドに行きたい。」
6人が笑って僕を抱えて歩きだす。
寝屋の中でも、彼らを間違えない。
真っ赤な唇を妖艶に微笑ませ、林檎の君ミケルは、ぎゅっと6人を抱き返した。
…ねぇ魔法使いさん。あなたにとって気紛れでも、僕は幸せになれたよ、ありがとう。
『大丈夫ですか?怖かったでしょう、ミケル?』
「……お前達、僕の名前を知ってたのか?」
「気付いてましたよ、貴方がミケルだって。」
「なんせ、貴方は王子の婚約者だった方だ。大人しくしていても、目立たない訳がない。」
「奥ゆかしくて、素敵だなと思っていました。」
「清楚で美しくて。」
そう言われても困ってしまう。
「じゃあ、幻滅したろ?こんな奴になって…。」
『いいえ。』
間髪入れずに言われた。
「妖艶に着飾って、奔放に振る舞う貴方も、根っこの優しさは、変わりません。」
「自由な貴方も輝いていて、素敵です。」
「違った顔と、元気な貴方が見れて幸せです。」
「自由になった貴方と会話できて楽しい。」
「ちゃんと、節度は守ってらっしゃいましたよ。」
「手が届かなくて、それでも愛しいミケルです。」
優しく、労られた。
照れ臭くて顔が火照ってくる。
「でも…ああは言ったけど、恋人を決めないと不誠実だよな…。」
「物事を深く考え過ぎて、すぐに答えが出せないのも、貴方のままですよ。」
笑われた。笑い事じゃないのに!
「いっそ、俺達6人、全員と結婚しませんか?」
「ええっ!!」
そんなバカな!!!
「側妃がいて、妻が沢山いる王だっているんです。貴方の事を、俺達は心から愛している。何からも守りたいと思っている。馬鹿な王子に傷つけられた貴方に、6人くらい居ても構わないでしょう。」
「え…?そういう問題?…そんなのあり?」
「あの王子を撃退するには、6人で力を合わせた方が心強い。」
「いいの…?本当に…?」
『はい。』
「今の僕は、間に受けちゃうからね?…フフフッ。」
僕は改めて、僕の夫になる彼らの名前を呼んだ。
「ゼリグ、アッシャー、バラック、ベネト、エイジャス、ロレート、これから末永く宜しくね。」
僕は、王でもないのに6人の男と事実婚をした、前代未聞の貴族になった。
それから王子は、まだ僕を諦めて無いようだが、さすがに僕の家と6人の夫の家、合計7つもの王国貴族を敵に回せないらしく、手が出せないようだ。
王子は僕がミケルと知っても、何度も手紙を送ってくる。
――俺と婚約してる時からそうしていれば、捨てなかったのに。
――喜べ。婚約者に戻してやる。
――俺に振り向いて欲しかったのだろう?意地を張るな。
…………いい加減にして欲しい。
不機嫌な僕を、呼ぶ声がした。
「ミケル、お茶にしよう。」
花に囲まれた庭で、テーブルに7脚のイス。
にこやかに待つ6人の夫。
「ふふっ。美味しそうだね。」
僕は敢えてイスに座らずゼリグの膝に座った。
クッキーを咥えてアッシャーに差しだす。
「ありがとうミケル。」
口を引っ付けて2人で食べる。
「バラック。」
僕が呼ぶと心得たように、口移しでお茶を飲ませてくれる。
「ベネト、クリームも欲しい。」
「はい、どうぞ。」
ベネトが指ですくったクリームに、僕は舌を這わせて舐め上げる。
「付いたよ、ミケル。」
エイジャスが、僕の頬に付いたクリームを舐め取った。
「俺も喉が渇いたな。」
ロレートが言うので僕が口に含んで飲ませてやった。
「幸せだ。」
「良かった。俺達6人は、ミケルの幸せの為なら、何でもするからね?」
館の使用人が、真っ赤な顔でうつむいてるけど知らない。
「ね、もうベッドに行きたい。」
6人が笑って僕を抱えて歩きだす。
寝屋の中でも、彼らを間違えない。
真っ赤な唇を妖艶に微笑ませ、林檎の君ミケルは、ぎゅっと6人を抱き返した。
…ねぇ魔法使いさん。あなたにとって気紛れでも、僕は幸せになれたよ、ありがとう。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
26
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる