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連れ出された会場の外で、6人が声を合わせて、僕の名前を言った。


『大丈夫ですか?怖かったでしょう、ミケル?』


「……お前達、僕の名前を知ってたのか?」


「気付いてましたよ、貴方がミケルだって。」

「なんせ、貴方は王子の婚約者だった方だ。大人しくしていても、目立たない訳がない。」

「奥ゆかしくて、素敵だなと思っていました。」

「清楚で美しくて。」

そう言われても困ってしまう。

「じゃあ、幻滅したろ?こんな奴になって…。」

『いいえ。』

間髪入れずに言われた。


「妖艶に着飾って、奔放に振る舞う貴方も、根っこの優しさは、変わりません。」

「自由な貴方も輝いていて、素敵です。」

「違った顔と、元気な貴方が見れて幸せです。」

「自由になった貴方と会話できて楽しい。」

「ちゃんと、節度は守ってらっしゃいましたよ。」

「手が届かなくて、それでも愛しいミケルです。」


優しく、労られた。
照れ臭くて顔が火照ってくる。

「でも…ああは言ったけど、恋人を決めないと不誠実だよな…。」

「物事を深く考え過ぎて、すぐに答えが出せないのも、貴方のままですよ。」

笑われた。笑い事じゃないのに!



「いっそ、俺達6人、全員と結婚しませんか?」

「ええっ!!」

そんなバカな!!!

「側妃がいて、妻が沢山いる王だっているんです。貴方の事を、俺達は心から愛している。何からも守りたいと思っている。馬鹿な王子に傷つけられた貴方に、6人くらい居ても構わないでしょう。」

「え…?そういう問題?…そんなのあり?」

「あの王子を撃退するには、6人で力を合わせた方が心強い。」

「いいの…?本当に…?」

『はい。』

「今の僕は、間に受けちゃうからね?…フフフッ。」

僕は改めて、僕の夫になる彼らの名前を呼んだ。

「ゼリグ、アッシャー、バラック、ベネト、エイジャス、ロレート、これから末永く宜しくね。」

僕は、王でもないのに6人の男と事実婚をした、前代未聞の貴族になった。



それから王子は、まだ僕を諦めて無いようだが、さすがに僕の家と6人の夫の家、合計7つもの王国貴族を敵に回せないらしく、手が出せないようだ。
王子は僕がミケルと知っても、何度も手紙を送ってくる。

――俺と婚約してる時からそうしていれば、捨てなかったのに。

――喜べ。婚約者に戻してやる。

――俺に振り向いて欲しかったのだろう?意地を張るな。



…………いい加減にして欲しい。

不機嫌な僕を、呼ぶ声がした。

「ミケル、お茶にしよう。」



花に囲まれた庭で、テーブルに7脚のイス。
にこやかに待つ6人の夫。

「ふふっ。美味しそうだね。」

僕は敢えてイスに座らずゼリグの膝に座った。

クッキーを咥えてアッシャーに差しだす。
「ありがとうミケル。」
口を引っ付けて2人で食べる。

「バラック。」
僕が呼ぶと心得たように、口移しでお茶を飲ませてくれる。

「ベネト、クリームも欲しい。」
「はい、どうぞ。」
ベネトが指ですくったクリームに、僕は舌を這わせて舐め上げる。

「付いたよ、ミケル。」
エイジャスが、僕の頬に付いたクリームを舐め取った。

「俺も喉が渇いたな。」
ロレートが言うので僕が口に含んで飲ませてやった。

「幸せだ。」

「良かった。俺達6人は、ミケルの幸せの為なら、何でもするからね?」

館の使用人が、真っ赤な顔でうつむいてるけど知らない。

「ね、もうベッドに行きたい。」

6人が笑って僕を抱えて歩きだす。
寝屋の中でも、彼らを間違えない。
真っ赤な唇を妖艶に微笑ませ、林檎の君ミケルは、ぎゅっと6人を抱き返した。

…ねぇ魔法使いさん。あなたにとって気紛れでも、僕は幸せになれたよ、ありがとう。



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