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アルフの外出
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アルフは、朝食後すぐに、得意武器である剣を腰に挿し、庭へ出て御者に命じた。
「出かける。馬車を出してくれ。」
「どちらへ行かれますか?」
「スライ子爵家へ。僕の親友の家だ。」
サイラス=スライ子爵令息は、同い年の幼なじみだ。
アルフが生家デーベ子爵家次男だった頃、同じ子爵家の次男として仲良くなった。
自分は剣が得意で、彼は弓が得意だった。
二人で良く狩りをしたものだ。
兄に代替りをして家を出る時が来たら、二人で組んで仕事をするのも良いな、と良く話していた。
しかしアルフが親戚の伯爵家へ、養子に行く事に決まった時にも、「頑張りが認められて選ばれた」のだと、誰よりも喜んでくれた。
サイラスは気の良い奴だ。
馬車が動き出す。
場所的に、スライ領は生家からもアッカー家からも距離がそう変わらない。
線で結ぶと三角形のような位置関係になる。
昼前には着くだろう。
アルフは剣を握りしめ、
ぎりっと奥歯を噛み締めた。
――アルフは預り知らない原作設定になるが、サイラスはアルフの親友にして、右腕となる人物だ。
物語に良く居る、主人公の相棒ポジションである。
アルフより背が高く、筋肉の美しく付いた美丈夫だ。
――そのサイラスは今、森で狩りをしていた。
「ハッ!!!」
弓を引き絞り、獲物を狙う。
彼の腕前は「女神の祝福を授かりし腕」と称えられている。
目も鋭くとても良い。
バシッと獲物に突き刺さり、獣は一発で地に倒れた。
「ありがとな、大事に頂くよ。」
サイラスは獲物に礼をした。
「サイラス様~!」
スライ家の使用人がやって来た。
「どうした?」
「アルフ様がいらっしゃいました。
サイラス様のお部屋にお通ししております。」
「アルフが?!アッカー伯爵家へ行ってから初めて会うな。
すぐ戻る、獲物を頼むよ。」
「はい。立派な獲物ですね、流石です。」
サイラスは屋敷に駆ける。
こんなに早々会いに来るなんて、余程の事があったのだろうか。
良い話だといいのだが……。
「アルフ!」
急いでドアを開けると、
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
何やら暗黒の霧が漏れ出てきてぎょっとした。
据わった目のアルフがこっちをギロッと見て来る。
「…サイラス、協力して欲しい事がある。」
剣を床に打ちつける。
余程気が立っているようだ。
「どうした、そこまで怒ってるなんて、初めて見たぞ。
アッカー家で嫌な事でもあったのか?」
「アッカー家は良い家だ。
そうじゃなくて、゛神力通信機゛だ。」
「神力通信機?」
神力通信機は文字盤と画面の付いた、据え置き型の生活道具だ。
山から採掘する、エネルギーを秘めた゛神石゛と呼ばれる石を嵌め込んで使う。
貴族や金持ちの家に1台以上、
領民用に領民館に1台以上ある物で、連絡や情報のやり取りが出来る。
「見てほしいスレがある。」
そう言うので、スライ家の通信機を使わせた。
゛アッカー伯爵家の元使用人だけど質問ある? ゛
…という画面を、アルフは睨み付けていた。
「おい、これは…。」
「この〇〇□とスレ主が許せない。」
サイラスは嫌な予感がした。
「まさかこの〇〇⑧はお前か?!
何やってんだよ?!」
「特定と捕縛を手伝ってくれ、サイラス。」
(何だ、こいつは本当にアルフなのか?)
サイラスは思わずアルフを観察してしまった。
真面目で責任感のある好少年といった風だったアルフ。
確かに少々皮肉屋で、好戦的な所が無かったとは言わないが、
今のアルフは迂闊に触れるとすぐ剣を抜いてきそうな狂戦士みたいな匂いがする。
「手伝ってやるよ、親友だからな。
でも本当にどうしたんだ?一旦落ち着けよ、アルフ。
血が上りすぎてるぞ。」
「…義兄が大切なだけだ。」
「仲良くなれたんだな?良かったよ。」
養子に行って、心配していた親友の心など知らず、
ゲキオコプンプンでの、アルフ=アッカー伯爵令息としての初対面だったのだが、分かってるのかな?
まあ、こんなに怒ってしまう程、親友の新しい家族が良い人みたいで安心した。
サイラスはニカッと笑った。
「じゃ、犯人探しに行くか!」
「頼んだ。」
目を合わせて拳を合わせた。
「出かける。馬車を出してくれ。」
「どちらへ行かれますか?」
「スライ子爵家へ。僕の親友の家だ。」
サイラス=スライ子爵令息は、同い年の幼なじみだ。
アルフが生家デーベ子爵家次男だった頃、同じ子爵家の次男として仲良くなった。
自分は剣が得意で、彼は弓が得意だった。
二人で良く狩りをしたものだ。
兄に代替りをして家を出る時が来たら、二人で組んで仕事をするのも良いな、と良く話していた。
しかしアルフが親戚の伯爵家へ、養子に行く事に決まった時にも、「頑張りが認められて選ばれた」のだと、誰よりも喜んでくれた。
サイラスは気の良い奴だ。
馬車が動き出す。
場所的に、スライ領は生家からもアッカー家からも距離がそう変わらない。
線で結ぶと三角形のような位置関係になる。
昼前には着くだろう。
アルフは剣を握りしめ、
ぎりっと奥歯を噛み締めた。
――アルフは預り知らない原作設定になるが、サイラスはアルフの親友にして、右腕となる人物だ。
物語に良く居る、主人公の相棒ポジションである。
アルフより背が高く、筋肉の美しく付いた美丈夫だ。
――そのサイラスは今、森で狩りをしていた。
「ハッ!!!」
弓を引き絞り、獲物を狙う。
彼の腕前は「女神の祝福を授かりし腕」と称えられている。
目も鋭くとても良い。
バシッと獲物に突き刺さり、獣は一発で地に倒れた。
「ありがとな、大事に頂くよ。」
サイラスは獲物に礼をした。
「サイラス様~!」
スライ家の使用人がやって来た。
「どうした?」
「アルフ様がいらっしゃいました。
サイラス様のお部屋にお通ししております。」
「アルフが?!アッカー伯爵家へ行ってから初めて会うな。
すぐ戻る、獲物を頼むよ。」
「はい。立派な獲物ですね、流石です。」
サイラスは屋敷に駆ける。
こんなに早々会いに来るなんて、余程の事があったのだろうか。
良い話だといいのだが……。
「アルフ!」
急いでドアを開けると、
ゴゴゴゴゴゴゴゴ……
何やら暗黒の霧が漏れ出てきてぎょっとした。
据わった目のアルフがこっちをギロッと見て来る。
「…サイラス、協力して欲しい事がある。」
剣を床に打ちつける。
余程気が立っているようだ。
「どうした、そこまで怒ってるなんて、初めて見たぞ。
アッカー家で嫌な事でもあったのか?」
「アッカー家は良い家だ。
そうじゃなくて、゛神力通信機゛だ。」
「神力通信機?」
神力通信機は文字盤と画面の付いた、据え置き型の生活道具だ。
山から採掘する、エネルギーを秘めた゛神石゛と呼ばれる石を嵌め込んで使う。
貴族や金持ちの家に1台以上、
領民用に領民館に1台以上ある物で、連絡や情報のやり取りが出来る。
「見てほしいスレがある。」
そう言うので、スライ家の通信機を使わせた。
゛アッカー伯爵家の元使用人だけど質問ある? ゛
…という画面を、アルフは睨み付けていた。
「おい、これは…。」
「この〇〇□とスレ主が許せない。」
サイラスは嫌な予感がした。
「まさかこの〇〇⑧はお前か?!
何やってんだよ?!」
「特定と捕縛を手伝ってくれ、サイラス。」
(何だ、こいつは本当にアルフなのか?)
サイラスは思わずアルフを観察してしまった。
真面目で責任感のある好少年といった風だったアルフ。
確かに少々皮肉屋で、好戦的な所が無かったとは言わないが、
今のアルフは迂闊に触れるとすぐ剣を抜いてきそうな狂戦士みたいな匂いがする。
「手伝ってやるよ、親友だからな。
でも本当にどうしたんだ?一旦落ち着けよ、アルフ。
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「仲良くなれたんだな?良かったよ。」
養子に行って、心配していた親友の心など知らず、
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まあ、こんなに怒ってしまう程、親友の新しい家族が良い人みたいで安心した。
サイラスはニカッと笑った。
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「頼んだ。」
目を合わせて拳を合わせた。
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