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【2027J05131530佐川ユウ 1-6 】
しおりを挟む「あ……いや、なんでと言われても……」
それこそ俺が聞きたいぐらいだ。何なんだよ、ここ。学校なのに砂漠、空、消えたコンビニ。
「答えはあとで聞くわ。離れていなさい」
水野さんは右手にレイピアのような細身の剣、左手にはシルバーのハンドガンを持ち、勢い良く右方向に走って行った。
早い……この砂でよくもまぁ。人影は俺ではなく、動いた水野さんに標的を変えた。
ってか、何を当たり前のようにそんな物騒な物を持っているんですか。
水野さんは走りながらハンドガンを撃った。
「おい、あの人の当たったらマズイ……ん?」
よく見たらあれ、人じゃないぞ。人のシルエットをした黒い何かだ。
「そうだねぇ、あれはなんなのかねぇ。人間ではないことは確かだけど、僕等も詳しくは分からないんだよ」
「!」
いきなり後ろから話しかけられた。
「僕等は便宜上『フェンリス』って呼んでいるんだ。ほら、顔が狼っぽいし」
振り返ると、腕組みをしながらニコニコしている大人の男性がいた。
あれ、この顔……どこかで見たことあるような。
「ああ、僕は長谷川千尋。この高校の事務員をやっているんだ。君は昼に職員室に来ていたよね」
そうか、昼に見たからか。職員室には教師以外にも、学校の運営をしている事務員さんが多くいる。
「それで、君はどうしてここに?」
「それはこっちが聞きたいぐらいです。俺は水野さんを追って歴史資料室の扉を開けたらこんなとこに出て、この有様ですよ」
長谷川さんは不思議そうな顔をしている。
「ふむ。水野君を追って……君が扉を開けて入ったのかい?」
もちろん。扉開けないと入れないだろ。
「まぁ、水野君が扉を閉め忘れる……なんてことはあるわけないか。仮に開いていたとしても無理なんだよねぇ……この位置は固定ゲートからもかなり離れているし。ああ……そうか、水野君をイメージしてここに……端末の補正無しでピンポイントダイブかぁ。君みたいな人は初めて……いや、二人目、か」
何言ってんだかさっぱりだ。
「君、名前は?」
「佐川ユウです」
「佐川……」
ニコニコしていた長谷川さんが急に真面目な顔つきになった。
「ちさちゃ~ん、隊長~置いていかないでよ~」
長谷川さんの後ろから、うちの高校の制服を着た女の子が息を切らして走ってきた。かなり……かわいいぞ。スタイルもとても……良い。
「隊長~ちさちゃんは?」
「ああ、彼女なら大丈夫だよ宮坂君。もうすぐ決着がつくと思うよ」
見ると、水野さんがさっきの黒い何かを剣で切り裂いていた。その途端、水が蒸発するように黒い何かは消えていった。
「お見事。いやぁさすが水野君だ」
長谷川さんはニコニコしながら手を叩いている。
「すごいよ~ちさちゃ~ん。あれ? 隊長、この人は?」
見事なスタイルの女の子が不思議そうに俺を見てきた。
「ん、ああ彼かい? 佐川ユウ君だ。おっとそれ以上は聞かないでくれよ? 僕も彼に出会って三分ぐらいなんだ。あはは」
……なんか長谷川さんって随分軽い感じの人だなぁ。
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