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【2027J05131530佐川ユウ 1-7】
しおりを挟む「そっかぁ、佐川くんって言うんだ。校章の色は……一年生だね、じゃあ私はお姉さんだ。二年の宮坂アイリ、よろしくね」
よく見たら宮坂さんは二年生の色の校章を付けていた。となると先輩か。
宮坂先輩はムフンといった感じで胸を張っている。これは……大きい。
「任務完了です、隊長」
疲れた様子も無く水野さんが戻ってきた。
しかしこの足場の悪い砂場で、よくあんだけ早く走れるもんだな。俺も体力と運動神経に自信はあるが、砂場ダッシュは専門外だわ。
「お疲れ~さすが水野君だ。目標の発見から排除まで手際がいいね」
「いえ。それより隊長、そいつどうしますか」
水野さんは両手に武器を持ったまま、顎をしゃくって俺を指した。
「はは、どうもこうも……こんなイレギュラーは初めてだからねぇ……そうだなぁ~」
長谷川さんがニヤニヤしながら俺を見てる。なんか悪い予感。
「ちょっ、水野さんこっち」
俺は水野さんの腕を掴み、長谷川さんと宮坂先輩から距離を置く。
「!? ……何すんのよ!」
水野さんは抵抗するが、悪いがこちらのほうが腕力も体重も上だ。ちょっと強引で申し訳ないが、この状況では唯一クラスメイトである水野さんが一番話がしやすいのだ。
「なんだい? 愛の告白かい佐川君~あはは」
……違いますよ長谷川さん。俺は勇者の仲間入りする気はありません。
「腕……離しなさい! 何よ急に!」
「あ、悪い……」
ちょっと強く握り過ぎていたか。しかし聞かないとならんことがある。
「水野さん、ここは一体どこなんだ。俺は水野さんの後を追って、学校の二階の歴史資料室に入ったはずなんだ」
「私の後を追って?」
水野さんは明らかに不審そうな顔をした。
「いや、違うんだ。昨日まであったコンビニが今日は無くなっていて、俺等の英語の担当だった三原先生がいなくなって変わりに笹井さんて知らない女教師がいて小テストも無くなって、それなのに誰も疑問に思っていなくって昼休みに職員室に行って調べたが三原先生なんて元からいなかった扱いになっていて、わけわかんなくなって屋上行ったら水野さんが携帯端末で三原さんがって言って……」
「落ち着きたまえよ佐川君。そんなんじゃ女性は口説けないぞ?」
そ、そうか……俺、焦りすぎか。こんなんじゃ俺の熱い想いが伝わらな……。
「……告白なんてしてませんし。つーかなんで真後ろに普通にいるんですか、二人とも」
長いセリフを思うがままに喋っていたら、二人がこんな側に来ていることに気がつかなかった。
「いやぁ、水野君はモテるからねぇ。今度はどんなふうにひっぱたくのか気になってね~」
「ね~」
長谷川さんだけならまだしも、宮坂先輩まで何を笑顔で「ね~」って。俺は告白なんてしてませんって。つか水野さん……告白してきた男をふる=ひっぱたく、なのか。
そういや高橋……二週間ぐらい前、ほっぺたが赤かったな……あの時か、高橋が勇者になってしまったのは。
「隊長、さっきのこいつの言葉……」
水野さんが真顔で長谷川さんを見る。
「ああ、そうだね僕も気付いたよ。いいかい佐川君、君は女性というもの全く分かっていない。いわゆる女心ってやつを、だ。もっと女性の持つ母性ってものをくすぐるような言葉で巧みに……」
「隊長」
水野さんに笑顔はない。氷点下の視線ってやつだ。
「あはは、ダメですよ隊長~ちさちゃんに冗談は通用しないですよ~」
喋ったことなかったから知らなかったが、水野さんって結構キツイ性格なんだな……。見た目は水野さんが美人系、宮坂先輩はかわいい系って分類かなぁ。
「さて佐川君。君の声が偶然聞こえてしまったんだが」
偶然じゃねぇだろ。
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