アンチヴレイブ~異世界に降り立った鬼才~

NTIO

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第6話

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「なるほどね。東應高校を中心としたものじゃなかったわけだ。まあ、いいけど。それで俺たちに勇者を倒して欲しいわけ? だけど少し考えが甘いんじゃないか? 俺たちが、俺が素直にハイそうですかとやると思うか? 」

 才華は邪神の話を聞いてから、1つ頷いて目を細めた。
 すると、空間を揺らすように邪神が笑う。

【ハハハ!! するさ。するとも。貴様ならばな。】

「なに? 」

【こんなに”面白そうなこと”貴様が見逃す筈があるまい? 】

 才華は邪神にそう言われて、顔に手を当てた。
 その手の下には笑顔が浮かんでいる。
 満面の笑みだ。
 そう、才華は邪神の言う通り今の状況をとても面白そうなものと思っていた。
 そして、邪神の話しを聞いて是非行ってみたい! という気持ちが高ぶっていた。

 ではなぜ、あのようなことを言ったのか。
 それは邪神にそういう言葉を使ってみたかったから。
 ただそれだけに他ならない。

 頭のネジが飛んでいるとしか言えない行動だが、それが才華の全てだ。
 楽しそう=命を懸けてでもやる、これが才華が生きてきた中で身につけたただ1つの生き方。
 それ以外は、適当に流れに任せ記憶にも残らない退屈なオブジェクトを眺めながら、のほほんと過ごす。
 常人では到底理解できないものだろう。
 しかし、これが鬼才と言われた霧ヶ峰 才華の生き方なのだから仕方ない。誰にも彼を変えることは出来ないのだから。

「ククク、ハハハ!! その通りだ。さすが邪神。俺の考えをよく分かっているじゃないか。ああ、やるさ。勇者なんて”面白そうなもの”、遊ばなきゃ損だ。」
「え!? 才華行くつもりなの!? あの邪神の世界ってところに! 」
「才華さん。あなたって人は5年前となんら変わっていないんですね。はぁ。」

 雫は才華の反応を見て声を荒らげ、美鈴はため息を吐いた。
 才華は顔に当てていた手を下ろして雫と美鈴に顔を向ける。
 雫と美鈴は才華の顔を見て、息を飲んだ。

 とても美しい、今の才華の表情はその一言に尽きる。
 もともと整っていた顔立ちに加え、そこに満面の笑みだ。
 少なからず、才華に思いを寄せている2人がそれを見たらどうなるかいうまでもない。

 だが、才華は興味がないことにはとことん興味がないので、雫と美鈴の状況に気づかずに口を開いた。

「ああ俺は行く。こんな面白そうなこと逃せないしな。」
「面白そうって……なんであんたの判断基準はいつもそうなのよ!分かっているの!? これから勇者っていうとんでもない輩と戦わないといけないんだよ!? 」
「だからこそじゃないか。勇者とか、ふふふ、燃える。」
「バカ! 底なしのバカ! だいたい……」

 雫が更に言おうとした所で、美鈴が手で遮った。
 雫は不機嫌を前面に出しながらも口を閉じる。
 それ見た、美鈴は首を横に振った。

「雫さん。才華さんはこうなったら人の話しを聞きません。五年前の『飽きた』発言の時もそうでしたもの。はぁ どうして私はこんな人を好きになったのかしら? 不思議だわ。」
「美鈴……」

 美鈴は再びため息をついてから、なにやら顎に手を当ててブツブツ呟いている才華に話しかける。

「才華さん、私もついて行ってよろしいでしょうか? これでも祖父から様々な知識を学んでおります。これから才華さんが行く世界でもこの知識は役に立つと思いますが、どうでしょうか?」
「ちょっと美鈴!? 」

 雫はえ!? と声を荒らげた。
 その声はとても大きいものだったが、美鈴はジッと才華を見つめるだけで雫を気にしていないようだ。
 才華は真剣な視線を美鈴に向けられて、う~んと考え、やがて頷いた。

「いいぞ。まあ、俺たちがどう言おうと邪神の世界に行くのは確定だろうけどな。」
「「え!? 」」
「な、邪神。」

 才華は本日何度目かになる驚きの表情を浮かべた2人をよそに、上を見上げて邪神に向かってそう言った。
 邪神は頷くように瞳孔を閉じる。

【その通りだ。せっかく我が力を使って呼んだのだ。わざわざ返すわけあるまい。我の世界に行ってもらう。
 さて、そろそろ貴様らをここに止めている力が尽きそうだ。今すぐに我の世界に送るとしよう。
 向こうに送る際に、我の世界の知識に言語、そして邪神の加護と神器をつける。向こうに着いたら確認して欲しい。
 最後に我は神らしいことを1つ言っておこう。】

 邪神がそう言うと、才華、雫、美鈴の足元に紫色の魔法陣が浮かんだ。
 その魔法陣は才華が屋上で見たものと瓜二つだ。
 才華は改めて魔法陣を見て、心を高揚させる。

「よっしゃぁぁ!! 異世界で遊び倒してやるぜ! 」
「なによこれーー!! 」
「これは車の中で見たものですね。改めて見ると綺麗だわ。」

【邪神の使徒よ。勇者を滅ぼし、世界を救ってくれ。我は貴様らの活躍を期待している。】

 邪神のその言葉とともに、魔法陣は輝き、この白い空間を覆うほどの光を発した。
 才華は手で目を覆う。
 すると、徐々に光が薄れてきた。
 もう大丈夫かな? と手をどけて見るとそこにはーー

ーー大きな青い空が広がっていた。
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